【連載】インカレ直前特集『TOP SPEED』 第1回 阿久津直希×寺崎拓海

競泳

 目前に迫った全日本学生選手権(インカレ)。今季共にベストを更新し波に乗っている2年生コンビがいる。阿久津直希(スポ2=埼玉栄)と寺崎拓海(スポ2=茨城・並木中教校)だ。距離は違えど自由形を専門種目にするお二人に、インカレに向けての意気込みを伺った。

※この取材は8月13日に行われたものです。

「大学に入って初めてのベスト」(寺崎)

――今季ここまでの試合を振り返っていかがですか

寺崎 僕はきょねん散々な結果だったのですが、5月のジャパンオープンで大学に入って初めてベストが出たので、きょねんよりは良かったかなと思います。

阿久津 僕はきょねん、ベストは出ていたのですが、日本選手権やジャパンオープンの標準記録を突破していなくて。昨シーズンの3月の大会でも(標準記録を)切れなくて悔しい思いをしたので、4月の六大学(東京六大学春季対抗戦)でジャパンオープンのタイムを突破して、日本選手権は出られなかったのですがジャパンオープンに初めて出ることができました。緊張はしたのですがそこでもベストが出たので、いままでを振り返ると良かったと思います。

――ジャパンオープンの標準記録を突破した東京六大学春季対抗戦のレースを振り返っていかがですか

阿久津 さっき言った3月末の大会ではあと0.06秒くらいで切れなくて。でもそこから1カ月後の六大学では絶対に切れる気がしていました。その時の練習は楽しいというか調子が良くて、そのまま切れる気しかなくてレースもずっと前向きに臨めましたね。そうしたらレースでも切れちゃってという感じで、特に何も考えなかったです。

――その400メートル自由形のレース後にはガッツポーズをされていましたが自然と出たものだったのでしょうか

阿久津 そうですね。ジャパンオープンもずっと切ったことがなくて、狙っていたといえば狙っていたのですが、初めてジャパンオープンを切れたので、うれしかったですね。あと日本選手権のタイムも一応切って、10月にあるワールドカップ(FINAワールドカップ2015東京大会)のタイムも切れたのでついガッツポーズが出ちゃいました。

今季を振り返る寺崎

――ジャパンオープンではお二人共にベストを更新されましたが振り返っていかがですか

寺崎 うーん。あんまり覚えていないんですけど(笑)、結構うれしかった気がします。

――タイムは15分36秒34でしたが

寺崎 タイムは、ちょっとそのタイムだとインカレの決勝は厳しいので、まだちょっと遅いのですが、大学に入って初めてのベストだったのでこれから上げていこうみたいな感じでした。

――阿久津選手はいかがですか

阿久津 まだ(インカレの)レギュラーが決まっていなかったので、最低限の目標である早稲田基準を切ろうと思ってやっていました。あとはいつものレース展開があるのですが、それを監督(奥野景介監督、昭63教卒=広島・瀬戸内)に変えようと言われて変えてやってみたらベストが出たので収穫のあったベストという感じですね。泳ぎ方も展開とかも変えたので、また違ったベストでした。

――予選のレースでは坂井聖人(スポ2=福岡・柳川)選手と同じレースでしたね

阿久津 そうですね。聖人はもう短水路とか長水路でもバッタ(バタフライ)だけじゃなくてフリー(自由形)も速いので、あんまり競えるとは思っていませんでした。なのであまり見ないようにして自分だけを見てやっていました。でも最終的に結果をみたらあんな(3分53秒16、予選4位)だったので、ちょっと怖いなと思いました。

――坂井選手とレース前にお話をされたとお聞きしましたが

阿久津 はい、そうですね。400(メートル自由形)の枠は後輩の井上奨真(スポ1=県岐阜商)と先輩の八木さん(隼平、スポ3=京都外大西)が決まっていて、あと僕だけだったので、そこはもう切っていこうという話をしました。

水泳について語る阿久津

――レースの前などは緊張しますか

寺崎 僕は緊張したことはあんまりないですね(笑)。

阿久津 僕は結構色々と考えちゃうので、ガチガチになってしまいます。

――何かリラックス法などはありますか

阿久津 ずっと音楽を聞いていますね。ずっと自分の好きな曲をストレッチしながら聞いています。あとは、炭酸水を飲みます。炭酸が好きなんですけど、コーラとかそういう甘いのだと駄目で、普通の苦いような炭酸水を飲むとちょっと緊張が和らぎます。

――寺崎選手は小さい頃から緊張されないタイプですか

寺崎 いや、学校の発表とかは緊張するんですけど(笑)。

一同 (笑)

寺崎 スポーツはあんまり緊張しないかもしれないですね。

――阿久津選手は早慶対抗戦でも200メートル自由形で早稲田基準を突破されましたが、好調の要因は

阿久津 要因…なんだろう。

寺崎 仕事が終わったからじゃない?

阿久津 ああ、それはあるな。1年生の時はプールの準備とか寮の掃除とかをやらなければいけないのですが、それがなくなって自由な時間がちょっと増えて、練習前もストレッチができるようになったり夜も早く寝られたりとかもあるので、そういうところですかね。あまり気にしたことはなかったのですが、多分それが良かったのかなと思います。

茨城で出会い、共にワセダへ

ワセダの長距離を担う寺崎

――お二人は茨城出身とのことですが以前から面識はありましたか

阿久津、寺崎 はい。

――ワセダに入学して久しぶりに会ったという感じですか

寺崎 インターハイとかでたまに会いました。JO(ジュニアオリンピックカップ)とかでも会ったりしていました。

――ワセダに進学することはお互い知っていたのですか

阿久津 いつ知ったんだろう。

寺崎 どっちもスポ推(スポーツ推薦入学)なので、受験指導みたいなのがあって、その時に「お前もワセダなの」みたいな(笑)。

――茨城のいいところなどあれば教えてください

阿久津 僕はどちらかというと茨城が嫌というか、高いレベルを求めて茨城を出て、埼玉栄に行ったのであんまりいいところは思い浮かばないですね(笑)。

寺崎 僕は筑波(出身)なのですが、筑波は東京に近いです。秋葉原まで45分なので。あと、JAXA(宇宙航空研究開発機構)があります。

阿久津 俺、水戸だもん。

寺崎 水戸はないね。

阿久津 県庁所在地だもん。納豆とかは有名ですけど。いいところは納豆くらいです。

――埼玉栄高に進学された理由は

阿久津 正直、茨城県だとあまり競う相手がいなくて、僕の小学校のコーチが「埼玉とかはレベルが高いから県外に行きなさい」と。中2くらいの時に埼玉栄の先生に「お話を聞いたいので入りたいです」ということを言って、いいよと言われたので埼玉栄に入ったのですが、瀬戸大也さん(スポ4=埼玉栄)や他大学の人や、田村さん(美紅、スポ3=埼玉栄)などがいて全然レベルが違うので圧倒されました。

寺崎 僕は中高一貫校なんですよ。小学生の時に受験して入ったので、水泳部員は1人でした。

――強豪というわけではなかったのですか

寺崎 僕の学校は東大とかが毎年出るような勉強中心のところで、部活は5月くらいで引退してしまうんですよ。めっちゃ弱くて。9月まで僕は(部活を)やっていたのですが、すごく勉強に関して不安でした。

――ワセダを選んだのは水泳、勉学の両立ということもあるのでしょうか

寺崎 最初は筑波大に一般(入試)で入ろうと思っていたのですが、高3のインターハイかなにかで、ワールドカップの(参加)標準を切って、シニアの大会の標準を切ったのが初めてだったんですよ。高3でワールドカップに出るためには、大学を決めて安心して出たいなと思っていたので、推薦でいいかなと。

――2年生の代の特徴は

阿久津 仲はいいよね。

寺崎 仲はいいですね。

阿久津 小さい幼児用のビニールプールがあって、プールの水が温かいので、ビニールプールに体を冷やすために水を張って、たまたまなんですけど同期6人で入ったりとか(笑)。一緒にいる時間は結構ある気がします。

――オフの日の過ごし方は

寺崎 オフの日は野球を観に行ったりしています。

阿久津 疲れているとき、寮でずっと漫画を読んだり、ゴロゴロしています。遊ぶときはちょっと遠出をして、友達と買い物に行ったりします。

――大学野球などに観に行かれるのですか

寺崎 プロです。(西武プリンスドームが)近いので、原付でパパッと。

――後輩が入ってきて意識などの変化はありましたか

寺崎 あんまりないですね(笑)。

阿久津 僕は(専門が)200メートル、400メートル(自由形)なのですが、1年生の井上奨真が400でインターハイで優勝していたりだとか、すごく速いんですよ。後輩というより同じ種目の選手として、僕の方が後輩というかんじで奨真のことを見ています。練習とかでも速いところを見て、後輩から学ぶところもあります。

――寺崎選手はワセダで唯一の長距離選手ですが、練習はどのようにしていますか

寺崎 基本は200、400のフリーの選手とやっているので、あまり大変ではないです。

阿久津 きょねん、静岡合宿で1500を7本くらい一人でやってたね。

――泳いでいる時は無心ですか

寺崎 逆にいろいろ考えています。きょう夕飯何を作ろうかなとか。

――長距離専門の理由は

寺崎 長距離しか向いてなかったからです。中2の冬くらいにやっと選手コースに入ったんですよ。みんなより競技歴が短くて、種目始めようと思ったときに、全国大会に出られるやつが1500しかなくて。中3の全国も1500でしか出られなかったので。気付いたら1500になっていた感じです。

――阿久津選手は泳いでいる時何を考えていますか

阿久津 僕はレースの展開しか考えていないですね。400だったら100を軽くいって、150までは耐えて、ラスト50で上げるということをずっと考えています。

――隣の選手を見たりしますか

阿久津 見ないです。僕はメンタルが弱いので。離れていると楽しくなるのですが、自分より先に行かれてしまうと遅いのかなということを考えてしまうので、だったら見ないようにしようということで。

――練習中も展開を意識して泳ぎますか

阿久津 400の中盤の泳ぎなどを、こんな感じかなとか、基本そういうこと考えています。

「ベストを尽くして点を取る」(阿久津)

今季好調を維持する阿久津

――インカレが目前に控えていますが調子はいかがですか

寺崎 僕は調子とかはあまり考えないので…。調子良いなとか悪いなとか分からなくて。感覚悪いなと思っていてもタイムが良い時もあるしそ、の逆もあるので…。すみません、分からないですね(笑)。

阿久津 いまは悪くもなく良くもないのですが、あまり普段から調子いい調子いいと思うと駄目だったときの精神的なダメージが大きいので。さっきも言った通りメンタルがちょっと弱いのであまり普段からそういうことを考えないようにしていますね。あまり調子良くないなと思っていて、調子が良いときの方が楽しいので(笑)。だからぼちぼち、普通かなと感じますね。本当に調子が悪いときは悪いと感じるのですが、いまは絶好調でもなく悪くもなく、普通という感じです。

――ワセダの水泳部の雰囲気はどのようなものですか

寺崎 いままで水泳部も1人だったし、スイミングも弱いところでやっていたので、他がわからないから分からないんですけど(笑)。でも居心地は良いので、良いんじゃないですかね。

阿久津 練習中とかも選手やマネージャーで声を出したりしているので、結構良いと思いますね。

――世界で活躍している選手が同じチームにいるということで、刺激を受けることはありますか

寺崎 はい。特に大也くんと(坂井)聖人は一緒に練習をすることもあるので、結果を聞くと自分のことのようにうれしいですし、自分も頑張ろうと思います。

阿久津 大也さんは高校の時からずっと一緒でインハイとかのリレーの時もその時からずっとポジティブで、練習でもポジティブにいこうと思うので影響を受けていますね。聖人も練習が日本の選手の中でも5番目くらいに入るんじゃないかというくらい本当に強くて、よく隣でやったりするとすごく速いのですが、これについていけばという感じでやっているので自分のためにはなるなと思いますね。

――阿久津選手は瀬戸選手と出身高校が一緒ですが、高校時代から関わりはありましたか

阿久津 (瀬戸選手は)普通の人なので、一緒に映画に行ったり学校帰りに遊んで帰ったりしていました。結構なんでもする人ですね。

――昨年のインカレでは寺崎選手は14位、阿久津選手は23位でしたがそれぞれ振り返っていかがですか

寺崎 昨年はあまり覚えていないのですが、3点ですけど得点が入ったので褒められた記憶はあります(笑)。

阿久津 その時もやっぱり緊張していて、ベストは出る気がしていたのでどこまでいけるかなという感じだったのですが、思ったほどベストではなかったのでがっかりしましたね。あとは4年生の先輩と練習を結構一緒にやっていて好きだったので、その4年生のために点を取りたいと思っていたのですが、取れなかったので…。ベストは出たけど点は取れなかったので、あんまりどっちつかずという感じですね。うれしいのか悔しいのかみたいな感じでした。

――1年生として臨んだ大会でしたがどのようなお気持ちで臨みましたか

阿久津 僕はルーキーということで下がいないので、上の2、3、4年生を食っていくというか、インカレとかどの大会に出ても上級生に食らいついていこうとか倒そうとかを考えていました。泳ぐことに関しては後ろがいないので、正直恐いものはなかったですね。

寺崎 そうですね。下がいないので…同じですね(笑)。でも僕はレースに挑む気持ちはいつも同じです。頑張ろうという気持ちで挑んでいます。

――ことしは2年生として臨むことになりますがどのような大会にしたいですか

寺崎 目標は決勝に残ることなのですが、決勝に残ったら良い大会になると思います。15分30秒を切ればほぼ確実なので、そのタイムを目指そうと思っています。

阿久津 きょねん点を取れなかったというのがあるので、ことしは最低限点を取るということと、400(メートル自由形)でも200(メートル自由形)でも、(予選、B決勝・決勝の)2回泳げるようにしたいです。まだ分からないのですが、最終日は800メートルの(フリー)リレーにもしかしたら予選で出るかもしれないので、そこでまた良いタイムを出して決勝も出られるようにしたいなと考えています。

――最後にインカレへの意気込みをお願いします

寺崎 ベストを尽くして頑張ります。

阿久津 終わり?(笑)僕の意気込みは、ベストを尽くして点を取るというのと、1年生に負けないように、そして3、4年生も食らいたいです。

――ありがとうございました!

(取材・編集 大森葵、八木美織)

同郷の自由形コンビの活躍に期待です!

◆阿久津直希(あくつ・なおき)(※写真右)

1995年(平7)4月14日生まれ。身長172センチ、体重65キロ。埼玉栄高。スポーツ科学部2年。専門種目は自由形。自己ベスト更新やジャパンオープンの参加標準記録を突破するなど、今季波に乗っている阿久津選手。色紙には「6回泳ぐ」と書いてくださいました。これは阿久津選手が出場する種目において、予選もB決勝・決勝も全て泳ぐという意味。インカレで6回泳いでいる姿に期待しましょう!

◆寺崎拓海(てらさき・たくみ)(※写真左)

1995年(平7)11月17日生まれ。身長172センチ、体重70キロ。茨城・並木中教校高出身。スポーツ科学部2年。専門種目は自由形。モアイ像の絵が得意だという寺崎選手。色紙の余白に羽根の生えたモアイ像を描いてくださいました。取材中の穏やかな様子からも、愛されるキャラクターを垣間見ることができました!