【連載】競泳ルーキー特集『NEW STAGE』 第2回 渡部香生子

競泳

 この春、ワセダの門をたたいた大型ルーキーがいる。4月の日本選手権で日本女子競泳界史上2人目となる4冠を達成した渡部香生子(スポ1=東京・武蔵野)だ。昨年度は世界短水路選手権やパンパシフィック大会などの主要国際大会でも金メダルを獲得。今回はそんな日本のエース渡部にこれまでの競技生活や、リオデジャネイロ五輪代表内定を懸けた世界選手権への意気込みを伺った。

※この取材は4月22日に行われたものです。

ワセダに順応中

ワセダでの生活について語る渡部

――大学生活はいかがでしょうか

初めての環境だったので不安なこともあったのですが、友達も結構できて、授業も楽しくできています。

――授業と試合の両立は大変ですか

あまり授業に出られないので、その分を埋めるというのが少し大変かなと思います。

――大学生になって変わったことはありますか

授業に出られないことを先生に報告したりだとか、全部自分でやらなければいけないことが少し大変です。

――休日はどのように過ごしていますか

普段は毎日朝練があって、目覚ましをかけないで寝るということができないので、目覚ましをかけないで起きるまで寝ています(笑)。そこからは友達とご飯に行ったり買い物に行ったりしています。

――先日の日本選手権では4冠を達成しましたが、振り返ってみていかがですか

まず初日の50メートル(平泳ぎ)で優勝できてから4冠を意識するようになったのですが、50メートルで優勝できていなかったら4冠も無理だったので、初日にいい勢いをつけられたことで4冠できたかなと思っています。

――日本選手権では勝利を期待されていてプレッシャーもあったかと思いますが

優勝が重なるたびに自分でも4冠のプレッシャーを感じていたので、最後の200メートル平泳ぎは自分でも参ってしまうほどかなり緊張していたのですが、こうして無事4冠できたことで本当にほっとしています。

――プレッシャーを乗り越える方法はありましたか

あまり気にしないで泳ぐことが一番だと思います。あとは先生や友達に助けられました。

――200メートル個人メドレーで日本新記録を更新しましたが感触はいかがでしたか

いつも前半が遅れてしまうので後半が勝負という感じだったのですが、今回は前半からいい位置で泳げていてタイムも良かったので、100メートルでターンしたときに周りを見て「いけるかな」と(笑)。

――会場も盛り上がっていましたが、泳いでいるときは聞こえていましたか

盛り上がりはタッチした瞬間に顔を上げて聞こえました。泳いでいるときは聞こえないですね。

――最後の200メートル平泳ぎで優勝し、4冠が決まったときのお気持ちは

4冠が決まってうれしいし、本記録を狙って泳いでいたのであと0.2秒足りないのも悔しいですが、全部終わってほっとしたといういろいろな感情が混ざっていました。

――先日のアリーナ杯東京六大学春季対抗戦は初の大学チーム戦でしたが、どのような印象でしたか

前から先輩に「たくさん出るからきついよ」と聞いていたので、「どんなものなのかな」と思っていたのですが、実際にやってみたら本当にきつくて(笑)。これまでに体験したことがないくらいにきつくてびっくりしたのですが、チームとして戦うというのはとても楽しくできたかなと思います。

挫折を乗り越えて

――水泳を始めたきっかけは

風邪をよく引いていたので、4歳の時に両親が体を丈夫にするためにということで近くのスイミングスクールに入れてくれたことがきっかけです。

――水泳がつらくなった時期などはなかったのでしょうか

(ロンドン)五輪の次の年にあんまり結果が出なくなって、そこが一番つらかったのですが、水泳をやめようとは思わなかったです。

――逆に水泳をやっていて良かったと思うことは

いろんなところに友達がたくさんできたこととか、試合で勝てたときの喜びなどは、やっていて良かったなと思います。

――好きな練習や嫌いな練習はありますか

もともと練習はそんなに好きじゃないのでなんとも言えないのですが(笑)、長くたくさん泳ぐ練習は苦手で、逆に一本に集中して泳ぐ練習は得意だと思います。

――中学3年生の時にジャパンオープン2011で50、100、200平泳ぎの中学生記録を更新しました

その時は自分に全国大会で優勝した経験がなくていきなり結果が出たので周りも騒ぐし、自分もそれに追い付けなくて分からなかったというのがありますね。

――ロンドン五輪は振り返っていかがですか

国際大会自体が初めてのことだったので、分からないこともたくさんありましたし、4年に1回ということだけあってすごく緊張した雰囲気があって、自分はそこで泳いでいたのですがそれも覚えていないくらい緊張していたと思います。

――一方で、おととしは不振に陥ってしまいました。うまくいかなかった点はありますか

気持ちで、200メートル平泳ぎを泳ぐ前にだけ、嫌だなとか、タイムを出さなきゃいけないとか、そういうことを考えてしまって。それで結果が出なかったのだと思います。

――昨年、世界短水路選手権などの主要国際大会で金メダルを獲得しました。要因は何だとお考えですか

2013年(平25)の日本選手権の後からいまの先生とやるようになったのですが、その先生とやり始めてから気持ちの問題なども指導してもらっていたので、泳ぎとかでも良くなったのですが、強い気持ちを持てたということが一番の要因だと思います。

――練習方法などは何か変えたりしたのですか

方法はそこまで変わっていないのですが、練習の回数が朝練や2回練などになったりして、増えました。

――その中でワセダを選んだ理由は

同じクラブの瀬戸先輩(大也、スポ3=埼玉栄)や、高校の中村克先輩(スポ4=東京・武蔵野)がワセダにいっていて、そういう先輩方がかっこいいと思って、自分もああなりたいと思って選びました。

――入ろうと決めた時期は

結構早い段階から決めていましたね。

――女子部は人数も少なく、チームの期待も高いと思います

結構期待されているとは思うのですが、それを気にしすぎて自分がつぶれてしまうのは良くないと思うので、ほどほどにしています。

――早大水泳部の印象は

すごく先輩方も優しくしてくださって、この前の春六でもよくしてくれたので、入ってよかったと思います。

――山口真旺選手(スポ2=兵庫・須磨学園)とマンション暮らしをされているそうですが、いつごろからでしょうか

山口さんがきょねん(早大に)入った時なので、ちょうど1年になりますね。

――実家と比べて大変な部分もあると思うのですが

うーん、実家の方が…(笑)。二人暮らしなのですが部屋が分かれていて。掃除とか部屋の片付けとか家事をやるようになったので、それが大変ですね。

――自炊などはされるのですか

ご飯は栄養士さんがついてくださっていて、それを送ってきてもらって食べるという感じですね。

――同期の仲はいかがですか

あまり人数も多くないので仲はいいと思いますし、ご飯も何回か行ったりしているので、いいんじゃないかなと思います。

――憧れの選手は

星奈津美さん(平25スポ卒=現ミズノ)ですね。

――どういったところが

この前に手術して、それで日本選手権で代表に戻っていてすごいと思います。自分だったらそういうことができるのかなとか、思います。

――ジンクスなどは何かあったりするのでしょうか

ジンクスはほぼなくて、試合に行く時もいつも通りに行こうと思っているので、そういうのも決めてないです。

――同期に渡辺一平選手(スポ1=大分・佐伯鶴城)という同じワタナベ姓の方がいますが、意識などはしますか

自分が意識するよりも、周りに「ワセダとダブルワタナベで、同じWだね」ってよく言われたりします(笑)。

――渡辺一平選手は「渡部香生子選手に追い付けるように頑張りたい」とおっしゃっていました

一緒に頑張ります(笑)。

尊敬される選手に

日本選手権では圧巻のパフォーマンスを披露した

――次の大会はジャパンオープン2015です。今季は好調のようですが自信は

自信もまあまあありますし、100メートル自由形に出ることになったので、専門外なのですがそこもしっかりやりたいなと思います。

――世界選手権での目指すところは

ことしの世界選手権で金メダルをとるとリオ五輪が決まるので、やはり一番はそこ(金メダル)だと思います。金メダルをとれれば一番いいのですが、最低でも表彰台には上りたいなと思います。

――世界選手権に向けてどのような調整をしていきたいと思いますか

世界選手権の前に2カ月くらい海外にいくのですが、そこはやはり一番練習に集中できると思います。日本選手権では最後のスタミナが課題になったので、そこでしっかりできればいいなと思っています。

――海外の練習が増えるということでしたが、海外遠征はお好きですか

はい。まあまあ好きです。

――海外だと英語を使う機会も多いと思いますが、英語は得意ですか

全然できないです(笑)。

――基本的にはジェスチャーや単語ですか

はい。先輩といるとだいたい先輩が話してくれるので、そんな感じで成り立っています(笑)。

――世界と戦うために必要なことは何だと思いますか

やはり技術や体力もそうだと思いますが、「世界に臨む、戦える」というメンタルの方が最近では大事なのかなと思っています。日本では勝てていても世界大会で自分の力が出しきれないことがたまにあったりもするので、やはりメンタルかなと思います。

――来年のリオ五輪については

ロンドン五輪に出たときは全然納得のいく結果を出すことができなかったので、最近はいい調子できているので、このままリオにつなげて、リオではしっかりと笑えるような結果を出したいなと思います。

――その次は東京五輪になります。位置付けはいかがですか

東京五輪のときは23歳だと思うので、まだまだいける年だなと感じています。地元でやるオリンピックはこれでもうないと思うので、東京五輪では金メダルを目指して頑張りたいと思います。

――卒業時にはどのような選手になりたいですか

いろんな人から尊敬されるような選手でありたいなと思っています。

――ことしはルーキーイヤーとなります。目標をお願いします

ことしはオリンピックの前年ということで大事な年になってくると思うので、同期に一平もいますし(笑)、一緒に頑張っていければいいかなと思っています。

――ありがとうございました!

(取材・編集 角田望、谷田部友香、吉田麻柚)

大学4年間の抱負を『チャレンジ!』と書いていただきました

◆渡部香生子(わたなべ・かなこ)

1996年(平8)11月15日生まれ。身長168センチ。東京・武蔵野高出身。スポーツ科学部1年。専門種目は平泳ぎ。試合前にはカステラをよく食べるという渡部選手ですが、ジンクスなどは特に決めていないとのこと。自然体で試合に臨んでいることが好調の要因なのかもしれませんね!