ワセダ勢、メダルラッシュ!

競泳

 日本選手権4日目は、ワセダ勢が輝きを放った。女子200メートル平泳ぎで渡部香生子(スポ1=東京・武蔵野)が自身の持つ日本新記録を更新して3冠目。3選手が新たな種目で世界選手権代表に内定し、表彰台が合計5つと好成績が続出した。ワセダの精鋭たちが、日本最高峰の舞台で躍進を続けている。

★瀬戸、坂井がワンツーフィニッシュ!共に代表入り

レース後、喜び合う坂井(左)と瀬戸

  男子200メートルバタフライ決勝。このレースの主役はワセダの選手たちだった。昨年の今種目王者・瀬戸大也(スポ3=埼玉栄)と坂井聖人(スポ2=福岡・柳川)。良きライバルとしてしのぎを削る二選手は隣のレーンで決勝の舞台へと臨んだ。スタートの合図が響くと好位置につけたのは坂井。一方の瀬戸は最初の50メートルで6位と出遅れた。前半はロンドン五輪銅メダリストの松田丈志(セガサミー)がぐっと前に出る状況。「しっかり落ち着いて自分のレースを」(瀬戸)、「どうなるのかな」(坂井)。この時、二人の心境は対照的だった。中盤から後半にかけ、瀬戸は徐々にギアを上げていく。勝負のラスト50メートルを、瀬戸が2位、坂井が3位という順位で迎えた。瀬戸はターン後、盤石の泳ぎで先頭へ。一方の坂井は「いっぱいいっぱいだった」という中、少しずつ差を詰める。残り15メートル付近、ついに松田を捉えるとそのまま逃げ切り2位でタッチ。順位を確認すると、二人はすぐに互いの健闘をたたえて抱き合った。世界選手権派遣標準記録も突破し、そろって代表内定。カザンの地で輝くため、切磋琢磨(せっさたくま)を続ける。

(記事 谷田部友香、写真 河野美樹)

★納得の泳ぎを見せ、日本記録更新!

日本記録を更新し、ガッツポーズをする渡部

 女子200メートル個人メドレー決勝。渡部香生子(スポ1=東京・武蔵野)はこの種目の日本記録保持者として挑んだ。「しっかりと気持ちを切り替えることができた」と、前日の女子100メートル平泳ぎでの悔しさを引きずることなくスタートを切ると、前半から積極的なレースを展開。順調に1回目のターンを終え、全体から頭1つ分のリードを奪う。さらに100メートルを1分38秒62で折り返すと、周りとの差を広げ他の追随を許さない。「日本記録を上回るペース」という実況アナウンスに呼応した会場全体の声援を受け、そのままの勢いでフィニッシュ。見事自身の持つ日本記録を0秒77更新し、2分09秒81という新たな記録を樹立した。2分10秒を切るという目標を達成し、笑顔を見せた渡部。しかし「この結果にも満足せずに」とその目はすでに次を見据えている。残るは昨年主要国際大会全てで金メダルを獲得した女子200メートル平泳ぎ。伝説の4冠へ向け、舞台は整った。

(記事 吉田麻柚、写真 河野美樹)

★自己ベストを更新し、充実の2位

表彰台で笑顔を見せる瀬戸(左)

  男子200メートルバタフライ決勝に出場した30分後、瀬戸大也(スポ3=埼玉栄)は男子200メートル個人メドレー決勝に挑んだ。「100分の1秒でもベストを更新しよう」と意気込んで臨んだ今種目。瀬戸は前半では前に出ることができず、3位でレースを折り返した。しかしここからが圧巻。得意の平泳ぎに入ると、一掻きごとに先頭の萩野公介(東洋大)に近づいていく。100メートル時点で1秒以上あった差を、150メートル時点では0秒30まで縮めた。最後の自由形は萩野との一騎打ち。瀬戸は必死に食らいついていくが、わずかに及ばず2位。今種目初優勝とはならなかったが、自己ベストを更新し笑顔を見せた。「きょうは本当に何も言うことはない」。男子200メートルバタフライに続き、納得の泳ぎで確実に世界選手権代表権を獲得。充実感あふれる1日となった。最後に控える男子400メートル個人メドレーでは、次こそ萩野に打ち勝ち栄冠をつかみたい。

(記事 谷田部友香、写真 河野美樹)

★中村副将、悔しさ残る2位に

表彰台で歓声に応える中村副将

 男子50メートル自由形決勝に、中村克副将(スポ4=東京・武蔵野)が出場した。自己ベストを狙って臨んだ今回のレース。だが「全体的に気合いが入りすぎてしまった」と話すように、泳ぎに力が入ってしまう。調子が良くなかったことも重なり、目標には及ばず22秒34でフィニッシュ。レース後、自身のタイムに対して悔しげな表情を浮かべた。しかし本調子ではない中で、昨年より順位を上げて2位につけたことは成長の証しだろう。また、「このレースでこの大会の雰囲気がよく分かった」と得られた収穫も大きい。世界選手権代表入りを目指して、あすは男子100メートル自由形での自己ベスト更新を誓う。

(記事 吉田麻柚、写真 河野美樹)

結果

◇決勝

男子200メートルバタフライ

瀬戸 1分54秒63【優勝】

坂井 1分55秒23【2位】

男子50メートル自由形

中村 22秒34【2位】

女子200メートル個人メドレー

渡部 2分09秒81【優勝】※日本新記録

男子200メートル個人メドレー

瀬戸 1分56秒82【2位】

◇準決勝

女子200メートルバタフライ

志賀珠理奈(スポ1=埼玉・武南) 2分12秒06【9位】

男子200メートル平泳ぎ

渡辺一平(スポ1=大分・佐伯鶴城) 2分09秒89【2位】※世界ジュニア新記録

加納雅也主将(スポ4=県岐阜商) 2分14秒90【16位】

◇予選

女子200メートルバタフライ

志賀 2分11秒54【2位】

男子200メートル平泳ぎ

渡辺 2分11秒29【3位】

加納 2分12秒88【11位】

コメント
決勝進出者

中村克副将(スポ4=東京・武蔵野)

――きょうの泳ぎを振り返って

全体的に気合いが入り過ぎてしまって、力んでしまいました(笑)。

――ご自身の中できょうのタイムは何点くらいですか

ベストタイムでもないので全然点数がつかないと思います。本当だったら22秒10や22秒20を狙っていたのですが。ベストタイムは出なかったので点数自体は低いのですが、このレースでこの大会の雰囲気がとても分かったので、あしたあさってのレースには影響しないようにしっかりと頑張っていきたいと思います。

――今回の調子はいかがですか

正直あまりよくはないと思うのですが、自分の中での自力がとてもついているので、それでベストタイムに近いタイムが出たと思います。

――あした以降への意気込みをお願いします

あしたの100メートル(自由形)が自分の世界水泳の代表のラストチャンスなので、自分らしさを出して調子はあまりよくないですが、ベストは軽く更新していきたいなと思っています。

瀬戸大也(スポ3=埼玉栄)※囲み取材より抜粋

――きょうの泳ぎを振り返っていかがですか

きょうは本当に何も言うことはないと思います。

――きょう2種目目という中での男子200メートル個人メドレーでしたが、その点についてはいかがですか

正直バタフライのほうでは代表権を獲得できればいいかなというふうに泳いで、きょうは個人メドレーで100分の1秒でもベストを更新しようと泳ぎました。その中でしっかり泳いでベストが更新できたので良かったと思いますし、全体的に個人メドレーのほうは良かったです。強いて言えば前半が200メートルバタフライでもあまりスパーンといかないというのがありますが重たくはないので、後半などで合宿の成果が出たと思います。今回は特に平泳ぎがいい感じなので、最終日までこの感覚を忘れずにやって、公介(萩野、東洋大)も本調子ではないと思うのですが、400メートルのほうではしっかりと勝負にこだわっていきたいと思います

――平泳ぎで一気に追い上げましたが、萩野選手を意識していましたか

そうですね。公介がこっちに寄っていたので公介の波を借りて、とりあえず代表権は勝ち取りたかったので自分も楽していきました。太将さん(藤森、ミキハウス)よりリードしているのが分かったので公介について行って、6秒台(1分56秒台)を出したいなと思っていたら最後に6秒台が出たので良かったと思います。

――最後の自由形でいい勝負をできていたということで、もしかしたら勝てるのではという思いはありましたか

そうですね。最後まで頑張ったのですが、まだ自分の力は100パーセント以上は出していないので、世界水泳(世界選手権)ではまた大幅な自己ベスト更新を目指していきたいです。

――決勝2種目目ということもあったと思いますが

最後の自由形でタッチした時は結構余力があったので、まだまだいけるかなというのがあるので、大幅ベスト更新は世界水泳にお預けということで、最終日の400メートル個人メドレーもベスト目指して頑張りたいと思います。

――萩野選手に勝って個人メドレーでの優勝ということは瀬戸選手にとって大きな目標になると思いますが

日本選手権の個人メドレーで勝てたことがないので、調子は悪くないので自分の自己ベストを目標に勝負にもこだわっていきたいと思います。

――200メートルバタフライについてはいかがですか

バタフライに関しては4秒台(1分54秒台)半ばぐらいで泳いでいきたいなというのがありました。4秒代前半でこられたら本当は良かったのですが、それでも3秒台は見えてくるような泳ぎができたので、前半のキレがあったらもっと行けたと思うので、世界水泳では3秒頭を目指して金メダルを取りたいと思います。

――松田丈志選手(セガサミー)が前半からいっていましたが、そこ焦りは感じましたか

正直かっこよかったです(笑)。こんな先輩になりたいなと思います。でも勝負なのでしっかり落ち着いて自分のレースをして、いまの自分の調子と相談したレース展開だったと思います。

――焦りはなかったですか

特になかったです。最後の50(メートル)でちょっと上げればいいかなと思ったので、しっかり最後抜いて1番で帰って来られたので良かったなと思います。

坂井聖人(スポ2=福岡・柳川)※囲み取材より抜粋

――レースを振り返ってご自身の中でタイム、泳ぎはいかがでしたか

今回の日本選手権は世界水泳(世界水泳選手権)の代表を懸けた試合だったので、きょねんもパンパシ(パンパシフィック選手権代表)に入ったのでことしも代表入りをするようにレース目標を持っていました。今回のレースで代表に入れたことはとてもうれしいです。

――最初に松田選手(丈志、セガサミー)が出ていきましたが、それは見えていましたか

そうですね。ちょっと見て泳いでいたので。最初に遅れていたのが分かったのでラスト50メートルで抜かせるように頑張りました。

――疲れというのは感じましたか

150メートルに入った時はいっぱいいっぱいだったのでどうなるかと思ったのですが、最後粘れてよかったと思います。

――前半54秒92でしたが、そこについてはいかがですか

予選が思ってより前半が速かったので楽に入っていたのですが、きょうはいっぱいいっぱいで100(メートル)に入ったので、もっと前半楽に入って後半泳ぎ切れないと世界では戦っていけないと思いました。

――瀬戸選手を意識していましたか

ちょっと近かったので、僕がちょっと速いのかなというのはあったのですが最後瀬戸さんが上がってきて後半差されたので、いずれは瀬戸さんにも勝てるようなレースをしたいなと思います。

――松田選手についてはいかがですか

松田さんは前半出ていたので、ちょっとどうなるかなとは思ったのですがラスト差せて良かったと思います。

――レース展開的にはご自身でどのように捉えていますか

なるべく瀬戸さんに付いて泳いでいこうと思ったので、レース展開的にはあまり良くはなかったと思います。

――瀬戸選手とレース前に話しましたか

リラックスして泳げという指示があって、緊張しつつリラックスして泳げたらいいなと思っていました。

――レース後すぐに寄ってきましたね

はい。うれしかったです。

――目標としていた1分54秒台はお預けとなりましたが、その点についてはいかがですか

世界水泳では1分54秒前半を狙ってメダル争いに食い込んでいけたらと思います。

――改めて世界選手権にどのように臨みたいですか

まだ54秒(1分54秒)を出していないので、世界水泳では決勝に残っていい順位に食い込んでいけるように頑張りたいと思います。

渡部香生子(スポ1=東京・武蔵野)

――日本記録を達成されていかがですか

きのうのレースで目標の5秒台(1分05秒台)にも届かず少し悔しい思いをしました。日本記録を出してあしたからのメドレーにまたつなげたいなと思っていたので、本当に良かったと思います。

――日本新記録につながったレースの中でのポイントはどこにあったと思いますか

前半の2種目で積極的に入れたことが、日本記録につながったのではないかなと思います

――きのうは記録が出ずに悔しい思いもされたと思うのですが、きょうに向けてどのように気持ちを切り替えましたか

気持ちの切り替えは自分でも得意な方だと思っているのでしっかりと気持ちを切り替えることができたので、きょうのこの結果にも満足せずにまたあしたから1番大事なレースがあるので、それに向けてしっかりと気持ちを切り替えていきたいと思います。

準決勝進出者

加納雅也主将(スポ4=県岐阜商)

――準決勝のタイムは予選よりも2秒ほど落ちましたが、その要因というのは何だと考えますか

まだまだ足りないなというのがありますね。

――男子100メートル平泳ぎに続いて男子200メートル平泳ぎでも準決勝に進んだという点については

100メートルが良かったので200メートルでもタイムが出るかなと思ったのですが、配分ミスというかペースミスなのかなと思います。

――まだ大会は続きますが、ここまでの早大勢の働きはいかがですか

評価できるところはたくさんあったので、ことしのワセダは乗りに乗っているなという感じですね

――3年生の活躍が多くありました

3年生は上げているなという子が多いので、夏が楽しみですね

――層の厚さが課題とされていましたが、今回その点は改善されているのではないでしょうか

ずっと2番手3番手が課題で、2人3人と出てきたのでそこは評価できると思います。

――最後にアリーナ杯東京六大学春季対抗戦に向けて一言お願いします

男子総合優勝を目指して、女子も優勝してほしいなと思います。

渡辺一平(スポ1=大分・佐伯鶴城)

――きょうのレースを振り返っていていかがでしょうか

予選は(2分)11秒29でいい感じでいいタイムが出たので、準決勝でさらにタイムを上げられればいいなと思っていました。まさか準決勝で2分9秒が出るとは思っていなかったので、正直びっくりしました。

――想定していたタイムより良かったということでしょうか

そうですね。準決勝で10秒7というインターの記録(インターナショナル標準記録)を突破できればいいなと思っていました。9秒台が出たのではうれしいので、あしたの決勝でさらにタイムを上げられればいいなと思います。

――予選からどこを修正してきましたか

予選でラスト50メートルが少し空回りしてしまったので、ラスト50メートル焦らず、という気持ちで泳ぎました。

――決勝へ向けて目標としているタイムは

9秒台を出してしまったのでさらに上を狙うのはもちろんですけれども、9秒後半では話にならないので、9秒前半という難しい記録ではありますががんばっていきたいと思います。

――改めて決勝へ向けて意気込みをお願いします

調子はいいと思うので、9秒前半だったり、少しでも上の順位だったり、自己ベストを大幅に更新できればいいなと思います。