【特集】『世界短水路事後インタビュー』瀬戸大也

競泳

 昨年末に行われた世界短水路選手権(世界短水路)で男子400メートル個人メドレーの2連覇達成を始めとする好成績を残し、揺るぎない強さを見せた瀬戸大也(スポ2=埼玉栄)。出場全種目で自己ベストを更新する好調ぶりをうかがわせた今大会の振り返りと、ハードスケジュールを駆け抜けた昨年について。そして、五輪代表内定を懸けた世界選手権が開催されることしへの熱い意気込みを語っていただいた。頂点を見据え成長を続ける瀬戸の歩みから、ますます目が離せない。

※この取材は1月7日に行われたものです。

「怖いものがなかった」

メダルを前に大会を振り返る瀬戸

――世界短水路選手権では優勝1つ、さらに表彰台も2つという結果でした。大会を総括していかがですか

最初のレースが4個メ(400メートル個人メドレー)で2連覇が懸っていて、自分の考えでは毎回の試合で一発目のレースがすごく大切なので予選から気合を入れていきました。ワールドカップ(FINAワールドカップ2014ドーハ大会)でも同じ会場を使っていて、結構縁起がいい、相性のいいプールだったので、いいイメージで調整をしていたらどんどん調子も上がってきて、平泳ぎのキックもかかってきて。だんだん自分の流れになってきたので「これはきた」と思って、そこからは怖いものがありませんでした。予選からしっかりいいイメージで泳いで、自分の目標タイムぐらいでこられたので、アドレナリンが出せれば世界新記録くらいまでいけるかなと思っていました。決勝は前半から積極的にいったら、平泳ぎの時点で歓声がすごくて、公介(萩野、東洋大)との差もすごく大きかったのでこれは世界新ペースだなと気づきました。(世界記録は)ラストの自由形が速いのは知っていたので頑張って粘ったのですが、ラスト50メートルのところで世界新から遅れてしまいました。0秒8くらい世界新に足りなかったのですが、金(メダル)を取れて2連覇はすごく良かったですね。2連覇というのはやっぱり自信になりました。2個メ(200メートル個人メドレー)はライアン・ロクテ選手(米国)と泳ぐのも久しぶりで、前回大会は隣で泳いですごい大きな差だったので、今回は頑張ってついていこうと思っていました。予選もしっかり泳いで、公介もいたのですごく楽しみなレースになって。2個メもベストだったのですごく良かったと思います。ただ自分も自己ベストを出したのと同時に公介もまたばーんとベスト(日本新記録)が出ていて、また上がって逃げられたという感じなので、200はまだまだ頑張っていかなければなと思いました。2バタ(200メートルバタフライ)はチャド選手(レクロー、南アフリカ)がすごく調子が良くて、でも自分も調子がいいのは分かっていたので、絶対勝ってやるという意気込みで予選もいい感じに泳げて、また決勝は世界新との戦いになるなと思っていました。正直2バタの方は勝負にもこだわったというか、最初の50(メートル)を抑え気味で入ってしまって、それでラストの50も競ったんです。そうなるとドルフィン(キック)も向こう(チャド選手)の方がうまいので、タッチ差で負けてしまって。終わった後にもうちょっといけたなという感じだったのでまだまだアドレナリンも出せたし、もっと良いタイムも出せそうだと思いました。でも短水路であそこまでいけたことは、ことしの世界水泳(世界選手権)にすごくつながるし、自分の中では会心のレースだったと思うので、ことしの世界水泳では絶対に負けないと思いますね。

――400メートル個人メドレーは、予選では4分03秒73で5位でした。予選は決勝に向けてどのようなことを意識して泳がれたのですか

全体的に気持ちよく泳いでいて、4泳法の感覚を確かめながら泳いだという感じでした。自分は最終組から前の組で、次の組が速くて、結果的には予選が5位通過で2コースになってしまったのですが、4分05(秒)を割れたらいいかなと。4分03(秒)くらいできていたので、すごくいいイメージで気持ちよく泳げてかなり余力もあったので、あとは(決勝に)残ればと思っていました。それで次の組を見たら4人ぐらい競っていたので、これは(ほかの選手たちに自分よりも上位に)入られたと思って。できれば真ん中の方で泳ぎたかったのですが、決勝は自分のレースをすればいいやと切り替えました。自分の流れはつくれていたので、本当に怖いものはなかったというか、世界水泳(2013年世界選手権バルセロナ大会)みたいな感じですごく居心地が良かった感じなのでこうやってタイムが出たんじゃないかなと思います。

――2コースを泳ぐのと3~5コースを泳ぐのでは意識に違いがあるのですか

そうですね。真ん中の方が全体を見られるというのもあるのですが、真ん中の方がかっこいいですよね(笑)。端から優勝もかっこいいですけど。でも2コースになったときは自分のレースをしろということだなと思ったりとか、いろいろ考え方は変えられるので、本当にポジティブに考えられていたことがアドレナリンを出せたことにつながったのかなと思います。

――ワールドカップ東京2014ではレースプランを「前半から積極的に」とおっしゃっていましたが、今大会でのレースプランは

(ワールドカップ)東京大会でも世界短水路に向けてのレース展開をしようと思っていて、前半から積極的にいきました。その泳ぎが生きたのか世界短水路でも(前半から)積極的にいったのですが、とんでもない速いペースで入っていて、300(メートル時点)で3分を割った選手は、ロクテも世界新ペースでは3分を割っていなかったので、いないと思います。多分、平泳ぎも1分05秒とかでこられた人はいなくて、全体的に前半から積極的にいったのに、後半も耐えられていたんです。その東京大会で突っ込んでいったのが(今回の)レース感覚につながって、世界短水路では自分も気持ちよく積極的にいくけど、まだ余力はあったということにつなげられました。今後も積極的にいくというのを忘れないでやっていきたいと思います。

――お話にもありましたが、最初のバタフライは53秒82で入りました。ご自身の評価としてはいかがですか

やっぱり3秒台(53秒台)で入っていかないとなと思っていました。東京大会では54秒台で、3秒台では入ったことがなくて、3秒台で入っていこうと思っていました。それで終わった後にラップを見たら3秒台で入っていて、バック(背泳ぎ)もしっかり揃えられていて、平泳ぎは1分05秒できていたので、「これは速いわ!」と。あとの自由形の粘りは今後の練習だなと思いました。バッタが53秒で入ったことによって、「これは2バタでベストが出そうだな」というのにもつながったので、4個メと2バタはちょっと似ているところがあると思います。

――ワールドカップ東京大会からタイムを上げられた要因は

調子が良かったのと、気分もすごく上がっていていい感じで、(2年前の)世界水泳のような心理状態だったので、これは(ハイペースで)突っ込んでいってもアドレナリンが出そうだなと感じました。自分を信じて積極的に前半から入れたので、一気にドカンとタイムが上がったと思います。2秒以上ベストが更新できたのはそういうところにあると思います。

――あまり得意ではない背泳ぎでも他の選手との差を広げられていました

そうなんですよね。短水路はターンの回数とバサロキックの回数が多いので、潜るのは得意ですし、潜って、ターンとかでも焦らずしっかり蹴るというのを意識してやっています。だから苦手なところでもしっかりグイッと差を縮められず、そのまま逃げ切っていて、得意な平泳ぎにつなげられたと思うので、いま練習でやっている背泳ぎの強化と、平泳ぎも安定して泳げるような強化をやっていればカザンの世界水泳ではもっといいタイムが出るんじゃないかなと思います。

――200メートル終了時点で1分53秒99でした。ご自身のレースプランは達成できましたか

最初から自分のレースに集中していたのですが、思ったより(後続との)差が開いていて、あとは世界新との勝負だと思いながら泳いでいました。平泳ぎもうまく泳げていて、歓声もすごくて。タッチしたときは(3分)56秒で、2連覇と日本新を更新できたのはうれしかったのですが、自分でもびっくりするぐらい落ち着いていて、「よし」という感じでした。目標にしているところが世界新を出すことでしたし、(国際舞台でも)結構金メダルとかも取ってきて経験もついてきているんじゃないかなと。あまり派手には喜ばなかったのは、自分でも不思議だなと思いました。

――終わった直後というのはうれしい気持ちよりも悔しい気持ちが大きかったのですね

悔しかったですね。でも素直に日本新と2連覇はうれしかったです。

――他の選手を意識するよりも世界新を意識しての泳ぎになっていたのですか

そうですね。最初から世界新は意識していたので。そのなかでも200メートルの時点で公介の位置は確認したんですけど、もうそこからは自分のレースだとパッと切り替えられたりして、やっぱり調子がいい時は余裕があるんですよね。(2年前の)世界水泳の時も余裕があって、電光掲示板のビジョンを見ながら、公介とあんまり離れてないなということを見ていたりとか、そういうのが調子のいい時はできます。パンパシ(パンパシフィック選手権)とかアジア大会の時はいっぱいいっぱいだったので、「離れないようにしなきゃ」という気持ちでしたね。調子がいいゾーンをつくれるようにしていきたいと思います。

――泳ぎながら電光掲示板を見ることもあるのですか

そうですね。世界水泳の時は、多分バスケットコートのものだと思うのですが、360度(電光掲示板が)ついていて、ちょうどターンをする前に見えて、あんまり離れてないなと。今回は遠かったので見ていなくて、やっぱり25(メートルは)狭いので旗とかもどんどん来ますし、そっちの方が集中できますね。

――300メートル時点まで世界記録更新ペースでしたが、その時点でご自身として記録更新への手ごたえは感じていましたか

バリバリありました。(世界記録の)自由形の54秒のラップはめちゃくちゃ速くて頑張って耐えていたのですが…。56秒も自分の自由形のベストラップくらいなので、やっぱりロクテは速いなと。でも絶対次の短水路で泳ぐときは(世界新記録が)狙えそうなので、それに向けてしっかり短水路の方も、一つ一つの細かいターン動作や浮き上がりも練習から意識していきたいなと思います。

――最終的な記録へのご自身の評価は

もう二重丸だと思います。欲を言えば世界新を出したかったのですが、まあそんなにうまくポンポンいくものではないので。2年前のバルセロナ(世界選手権)前も初めて世界短水路に出て4分割って優勝できて、これだったら(長水路で)4分10秒は割れるなと思っていました。長短で大体のタイムは予想できるので今回3分56まで出ているということは、カザンでは最低でも10秒落ちで4分06秒。あとはうまくいって4分05秒、4分04秒と長水路でも世界新を出していきたいので、そういうところを目標に、大体のイメージはついたので世界短水路はすごくいい試合でした。

――最後の自由形で世界新記録を逃すかたちとなりましたが、今後自由形はどのように強化していきたいですか

400メートルの最後は乳酸菌がバンバン出て、全然動かなくなってくるところを耐えられる体をつくりたいです。いま頑張って耐乳酸の練習をして、練習の最後などきついところでレースのイメージをして頑張って耐えたりできているので、そういうことを続けてレースで生かせるようにしたいなと思っています。

――今後世界新記録を出すために必要なことは

基本全部なのですが、前半の積極性と苦手種目の背泳ぎの強化、あとはラストの自由形で競った時は負けない、抜けたときは見えない自分との勝負というか、きついところでしっかりと耐えられる体力をつくっていくことが、世界水泳や世界新記録を出すために必要だと思います。

――萩野選手に破られたご自身の日本記録を取り返しましたが、その点についてはいかがですか

それは結構うれしかったですね。「あー良かった!」と(笑)。(萩野選手に)日本新を出されたときはショックだったんですけど、(日本記録を)奪還できてうれしいです。そうやって切磋琢磨(せっさたくま)して二人でどんどん上にいきたいですし、いま3分55秒の4個メの世界新や、1分49秒の2個メの世界新は、まだまだ記録は上がっていくと思うので、二人でどんどん更新しあっていけたらいいなと思います。

――試合後、英語でのインタビューもされていましたね

やばいっす!(笑)You Tubeで見ました?レース後で疲れているところに通訳さんから「インタビューオッケー?」みたいな感じで言われて、「ノーノーノー」と言っているのに「3・2・1」みたいな感じで始まって、「なになに!?」って(笑)。自分でも何を言っているのか…。全然英語できなくてすごく恥ずかしいです。なんで(インターネットに)載せるのみたいな。ああいうふうに公開処刑もされたので、英語も頑張んなきゃなと思っているんですけど…あれは恥ずかしかったですね(笑)。

――以前チュートリアルイングリッシュ(少人数の英会話の授業の名称)が楽しいとおっしゃっていましたが

チュートリレベルじゃなかったですね(笑)。言っていることは分かるのですが、言いたいことが言えないというか。あの時も(You Tubeに)出されていないやつには全部日本語で言ったのとかもあったりして。言われているのは分かるのですが、言うのがまだできません。それはもうチュートリはないので(笑)、大学を卒業してから海外に水泳留学とかで行ったときに、英語は学んでいけたらなと思うんですけど、あれはすごく恥ずかしかったです…(笑)。

――12月に萩野選手は単身でイギリスに行かれていましたね

(萩野選手は)世界短水路が終わった後にイギリスに行っていましたね。公介は英語科なので、公介の(英語でのインタビュー映像)は見ていないですけど多分すごいと思います。ああいうので分かっちゃいますよね、頭のレベルが(笑)。

――留学にも興味はありますか

そうですね。(英語はあまり)話せないですけど、自分の中で自信があることは、海外の選手の友達が多いことです。ワールドカップで転戦しているので、みんな話かけてくれて、たまに分かって言葉を返せたりして。話せないのに自分からあいさつをしにいっちゃうとかがあるので、多分トビウオ(日本代表選手団)の中だったら一番友達は多いと思います。だから英語を話せるようにならないとです(笑)。

取り組むべき課題

——200メートルバタフライについてお聞きします。レースの目標はいかがでしたか

4個メも2バタも、どちらも世界新記録を狙っていました。自分にとって今大会初レースだった初日の4個メがすごくいい感じに泳げていたので、2バタもベストが出ると思っていました。世界王者でもないですし、挑戦者の気持ちなので、怖いものはなかったですね。もちろん4個メもチャレンジャーの気持ちでした。特に2バタは世界新記録を持っていてロンドン五輪金メダリストでもあるチャド選手がいたので胸を借りるつもりで、そして倒してやろうと思っていました。チャド選手の3連覇を阻止したかったですし、レース自体も楽しめていました。予選から1分50秒で泳げたのは、世界新記録が近いと感じる手応えもありました。少し前まで50秒がベストだったのに、予選でそれくらい泳げていて、最近出した49秒台というベストをまた更新できそうだなと。それに個人メドレーとバタフライは全然違って、バタフライは単体種目なので調整の仕方も比べるととても楽です。アップでもこれでいいのかというくらい調子が良くて、予選からいいイメージで泳げていたので、決勝もいい泳ぎができたと思うのですが、強いて言うなら、最初の50メートルで少し(力を)ためたというか、積極的に完璧に行けたとは言えないです。でも前半52秒で入って行こうと思ってできたので、タイムと感覚は一致していた試合ですね。

——ラスト50メートルでチャド選手に競り負ける結果となりましたが、隣同士で泳ぐことで、チャド選手の泳ぎはどのように感じましたか

チャド選手はドルフィンキックに破壊力があるし、自分は見ていないのですが、(レース中にチャド選手は瀬戸選手のことを)すごく見てきます。チャド選手の泳ぎの特徴なのですが、見ていなかったらもう少し速いと思うんですけど。スピードも後半の粘りもあるので、それがロンドン五輪の金メダルにつながっているのだと思います。自分は積極性も忘れずに、あとラスト50メートルが勝負だと思います。ラスト50メートルのターンでチャド選手に体半分リードできていれば絶対に勝てるのですが、世界短水路ではほぼ同時で入って。差が少なくても競り勝てるようなラスト50メートルの粘りが欲しいです。バタフライを練習する時に意識することは、ラストの15メートルを上げることと焦らずにしっかり掻くということですね。バタフライは世界選手権に向けて楽しみな種目です。

――1分48秒92という結果へのご自身の評価は

4個メ同様、二重丸です。日本新記録を出したのもすごくうれしいですし、丈志さん(松田、セガサミー)の記録を破ることができたので。次は長水路でも日本新記録を出したいです。日本新記録が1分52秒台なので、オリンピックまでに最低限そこをクリアしていけば、ロンドン五輪は52秒台で金メダルでしたし、金メダル獲得も見えてくるのではないかなと思います。2バタもしっかり取り組んでいきたいです。

——チャド選手にもあと一歩と迫りましたが、勝つ為の手応えは感じましたか

そうですね。短水路はまた修正して臨みたいと思いますし、長水路は楽しみで仕方ないですね。(1月30日から豪州で行われる)BHP4カ国対抗戦は泳ぎ込んでいるのでタイムが伸びるかわからないですけど、昨年はそこでいきなり(1分)54秒台が出たので、ことしは出せる力を出し切って、53秒台が出たらすごいと思います。カザンまでには53秒台頭、52秒台が出せたら、オリンピック出場が決まると思います。バタフライは楽しみでしょうがないです。

——短水路世界新記録までは0秒36。記録更新が見えてきましたか

そうですね。本番(オリンピック)は長水路なので、長水路の世界新記録が欲しいのですが、短水路でも世界新記録を出すことができれば自信にもつながると思います。でもその前に世界選手権があるので、長水路の方でまずは2バタの日本新記録を目指します。

——続いて、200メートル個人メートルを振り返って

短水路の2個メは展開がすごく速くて、正直泳いでいてよくわからなくなるのですが、とにかく全力を出し切ろうと思っていました。最後のターンをして、ロドリゲス(エンリケ、ブラジル)が見えたので、勝てるかなと思ったのですが、でも最後まで気を抜かずにタッチしてビジョンを見たら3番に入っているのがわかったので、よかったとりあえず(表彰台に)入れたと。ロクテとタイムが離れていなかったのもうれしかったですね。2個メはスピードがないので、正直あまり自信がなかったのですが、こうして3番に食い込んで、メダルをもらえるともっともっと頑張ろうと思えます。世界選手権に向けて、大幅なベスト更新をしなければならないのですが、まずは1分56秒台を目指したいと思います。日本選手権は2個メと2バタが同じ日なので、きついレースにはなると思うのですが。日本選手権はもしかしたらしっかりと代表を決める、というのが最低条件になるかもしれません。2個メの方もしっかり強化していけば、4個メにもつながると思います。

——3位に食い込んだことで、後半に粘れているという感触もあるのではないでしょうか

そうですね、でももっと粘れるとは思います。外人の選手も積極的にいっているので、僕も前半から積極的にいきたいのですが、パワーも違いますし。でも、公介はスピードがしっかりあって粘りもある選手なので、公介にできているのだから自分にもできると思っています。

——ベスト更新されて、自身の成長を感じる部分はありますか

2個メは、小さい頃から毎年ベストを更新し続けている種目でもあります。4個メは一度、高速水着が終わった段階で停滞したのですが、2個メは出し続けています。しっかりことしもベストを更新したいです。やはり個人メドレーにかわりないので、200メートルも400メートルもつながっていきます。200も捨てずに、強化していかないとなとは思っています。

——いまつながっているとおっしゃっていましたが、200メートル個人メドレーはご自身の中でどのような位置づけですか

4個メと2バタが上に出ているので、そっちが自分にとっては得意、好き、勝負という感じになってしまっていて、2個メはとりあえずになっている部分も正直に言うとあるのですが。でも世界ランキングでは上位に入っている種目ではあるので、こちらもしっかり底上げできればと思っています。2バタと2個メは距離が一緒で、2個メと4個メは同じ個人メドレーで距離が倍で。2個メではスピードが強化できるので、しっかりやらなきゃとは思っています。スピードと持久力強化の練習が必要になりますね。

——スピードと持久力という課題が出ましたが、これからどのようにトレーニングされていきますか

耐乳酸トレーニングというものがあって、50メートル、100メートルを全力で泳いで、レスト(休憩)をはさみながら全力の泳ぎを長い本数繰り返して、血液を採って乳酸値の計測もするトレーニングです。先月のフラッグスタッフでの合宿でもそれを行っていて、結構良い数値も出ていたので強くなっているのではないかと思います。でもまだまだ公介に比べたら練習も弱いですし、もっと頑張らなければならないですね。強化することはたくさんあるので、地道にやっていきたいです。

——大会全体を振り返って総括をお願いします

4個メの大会2連覇と、2バタの日本新記録を出してチャドと良い勝負ができたこと、2個メもしっかりベストを出して3位に食い込めたという大会の結果はすごく自信になっています。2バタと4個メはらいねんのカザンでの世界選手権に向けて良いイメージを追われていますし、2個メの方もしっかり強化してもっと多くの選手も出場してくると思うので戦えるようにしたいなと思います。短水路の結果がよかったので、その流れを自分でももっともっと良いものにして、世界選手権でも2連覇して、しっかりオリンピックを決めたいなと思います。

——100点満点で評価すると

90点くらいですね。

——今後に向けて最も重視したい課題は

背泳ぎの強化ですかね。たくさん強化したいポイントがあるのですが、いちばんは背泳ぎです。あとは真ん中種目のバックとブレ(ブレスト:平泳ぎ)の練習中のギアを増やしたいということです。バタフライと自由形は何速かあって、泳いでる感覚とタイムが一致しているのですが、背泳ぎと平泳ぎは遅いか速いかしかなくて、その中間のギアを作っていきたいです。

——長水路では苦戦が続いていた400メートル個人メドレーでの優勝は、長水路でのレースにもつながってくるのではないでしょうか

2年前のイスタンブールの短水路世界選手権で金メダルを取って、その年の世界選手権で金メダルを取っているので、イメージは同じです。あとはやるだけですね。強化をしっかりして、そしてレースを楽しみたいです。

——短水路での強さの要因は

そうですね、W杯の影響もあると思います。連戦してレース感覚があったり、ドルフィンキックや潜ることも得意なので、そういう部分で結果が出ているのかなと思います。

——坂井聖人選手(スポ1=福岡・柳川)が以前「瀬戸選手とはターンで差を広げられてしまう」というお話をされていのですが、ご自身ではターンについてはどんな意識がありますか

聖人はドルフィンキックが上手いです。ただターンは(体が大きいので)どっこいしょという感じかもしれないですね(笑)。僕は小柄なので、ターンのときもささっと、というのは心がけているのでそういう部分が結果に出ているのかもしれません。

——同じ大会に出ている時は後輩の坂井選手のことも気にされていますか

そうですね、やはりチーム一緒だし可愛い後輩なので強くなって欲しいですし。負けたくはないですが、良い勝負ができたらなと思っているので、色々と教えています。でも、負けたくはないですね(笑)。

——冒頭のお話ではプールに良い印象があったとのことでしたが

W杯で高3のときに行ったことがあって、そのときにチャドに勝っているんです。その大会では1日3種目、4個メ、2バタ、2ブレ(200メートル平泳ぎ)に出場してたくさんレースがあったんです。そこで4個メを優勝、20分後に2バタでチャドに勝って優勝、さらに20分後に2ブレではマルコ・コッホというドイツの選手に勝っていて。かなりイメージが良いプールでした。

——ここまで世界短水路の際には「調子がよかった」というお話が挙がっていますが、どのようなコンディション調整をされたのですか

自分で気をつけてやっているということはあまりなくて、飛行機に乗ると変わるんです(笑)。飛行機に乗って(脚が)むくんでそれが戻ると、平泳ぎのキックがひっかかるようになったりします。賭けな部分もあるんですけど、基本上手くいきます。飛行機に乗ると自分は調子がよくなると思っているので、東京五輪のときはまずいかもしれないですね、一度飛行機に乗らないと(笑)。でも、気持ちの持ちようだと思います。風邪ももちろんひかなかったですし、自分の縁起が良いような流れを作るというか。それは見えない空気なのですけど、自分に言い聞かせたり、良いように考えたりします。

——縁起といえば、水泳選手の方は勝負水着などはあるのでしょうか

レース用の水着は試合によって支給があるので全然変わってくるのですけど、練習用の水着は2枚もらえます。レース用は期間によって変わってきます。アップのときは濡れているのが好きじゃないですし、試合後のダウンも着替える人も多いのですが、自分は着替えずにそのまま行きます。アップの水着、試合の水着というのは、貰ったときに決めます。レース水着は1発目から新しいのを着てしまうので、ぱっと目が合ったものを目印つけて決勝に残しておきます。レース前には「頼むよ!」と(笑)。

リオ五輪を見据えて

さらなる成長のカギを握る背泳ぎ

――2014年は海外でのレースが多くありましたが、海外のレースを通じて見えたものはありますか

最初がBHP(BHP5カ国対抗戦)ですね。そのときに2バタに出て良い記録(1分54秒82)だったので「ことしは2バタあるぞ」と思いました。ヨーロッパグランプリでは、種目を少なくして一本一本のレースを集中してアドレナリンを出すという練習をしていて、タイムは良い結果ではなかったんですけど、自分なりにはまあまあという感じに泳げていました。あとはパンパシフィックで、とりあえず一つだけ金(メダル)とれたのでよかったです。韓国(アジア大会)はもう場所が好きで、正直ちょっと「(少女時代の)ユナ来ないかな」と思ってて(笑)。集中してたし、金(メダル)もとれたので、いろんな面で楽しんでいました(笑)。あとはワールドカップも終わって、最後の世界短水路で良い記録で泳げました。海外はけっこう好きなので、その土地の空気とか雰囲気とか楽しんでやっているので、海外に行くことはすごく好きです。

――日本の大会と違って海外の大会で特に気を付けていることはありますか

ごはんとお水は気を付けていますね。(お水を)一回飲んでプールサイドに置いたらもう飲まないとか、頼むものも水じゃなくてオレンジジュースとか。あたりたくないので、海外ではごはん系に気をつけています。

――昨年はかなりハードスケジュールでしたが、気を遣っていたことは

特にないですね(笑)。ごはんに気を付けているとは言ったんですけど、自分は食べたいものを食べる感じでやっています。試合前になったら炭水化物を多くするんですけど、基本食べたいものを食べるし、風邪ひいたら風邪ひいたかなっと思ってやっています(笑)。夏はあんまり風邪をひくこともないですしね。考えちゃうとストレスになっちゃうので、好きなようにやっています。

――昨年一年間、ご自身の成長をどのように振り返りますか

しっかり主要大会で金、金、金ととれているのはすごく自信になっています。正直、仁川(アジア大会)とかパンパシでは4個メでも優勝したかったですけど、良い年だったと思います。また勝っていたら調子にのって天狗になっていたりもすると思うので(笑)。らいねんに向けて、この結果があったからもっと頑張ろうと思って、しっかりタイムとかが出てきたので、またこの(世界短水路)金(メダル)をとったことで、世界水泳前と一緒だという感じで、気持ちも高ぶってきているので。ことしの世界水泳で1個金メダルをとれば(リオデジャネイロ)オリンピック出場が決まるので1種目でもいいのでことし中に決めたいなと。ことしの目標はそれです。

――昨年は3回の高地トレーニングに行かれて、初回のメキシコでは良いトレーニングが積めなかったとおっしゃっていましたが、あとの2回はいかがでしたか

完璧というか、自分の中ではすごく頑張れました。メキシコでの反省をしっかり踏まえて取り組めていたので、すごく良いトレーニングが2回ともできているんですけど、また3月にメキシコに行くので、正直ちょっと行きたくないですね(笑)。

――メキシコでの高地トレーニングはあまり相性が良くないのでしょうか

メキシコはごはんが全然駄目なんですよね。プールサイドのわきにあるカフェみたいなところで(ごはんが)出されるんですけど、ごはんもの、肉、サラダ、ベーコン系の4つくらいしかなくて…。だからもう行きたくないです(笑)。初めてメキシコに行ったときは体重がかなり減ってしまって、また戻すのも大変で調整も上手くいかず日本選手権を迎えたということで悪いイメージがついているので、また今回行ったら良いイメージにしていきたいなとは思うんですけど。あとはもういっぱいお金を使って毎晩、(プールの)前にある韓国料理屋に行く予定です(笑)。

――3月の高地トレーニングの場所にメキシコを選ばれた理由は

(費用が)安いからです。昨年はとりあえず高地に多く行く試しの年と思ってやっていて、それで良い感じに来れています。駄目なところは修正できていますし。きょうは練習がきつくて身体がなかなか動いていなかったんですけど、やっぱり山よりは楽に感じるので、効果が出ているんじゃないかなと思います。(3月に)メキシコに行ったら良いイメージにしてこようと思います。

――具体的に高地トレーニングではどのような練習をされていますか

山だと長い距離はかなりきついんですよね。なのでこの前行ってきた合宿では短い距離になるんですけど、全力のメインの練習がほとんどで、ほぼ毎日耐乳酸トレーニングが多いですね。血をとったりして、きょうは(乳酸が)何ミリ出ているかとか、というのをやって頑張っています。

――高地トレーニングで一番つらかったことは

距離が長い種目はもうきつくてきつくて、酸素が回らないので身体が動かなくなってきちゃいますね。

――海外でのカルチャーショックの経験は

ないですね、海外好きなので(笑)。でも、ホームシックではないですけど、いとこの子供シックはありました。いとこの子どもが生まれてもうすぐ一歳なんですけど、とてもかわいいんです。(12月のフラッグスタッフにいた期間は、いとこの子どもに)元旦に会えることを待ちわびていましたね(笑)。たまに犬(シック)もありますね。あと、海外に長く行っていると日本食がかなり恋しくなってきて、(日本に)帰るとそれがけっこう続くんですよ。「あー幸せだー」って(笑)。それが楽しみで頑張っています。

――昨年末はことし入学する渡部香生子選手(JSS立石)ともトレーニングに行かれていたと思いますが、ワセダの話などはされましたか

(渡部選手に)「課題やって」と言われました(笑)。(ワセダが)どんなイメージかどうかもわからないと思うので、教えてあげられるところは教えてあげて、先輩面しようかなと思っています(笑)。(渡部選手が)女子を盛り上げていってくれればいいなと思います。

――渡部選手の加入で具体的に期待する部分は

女子の底上げですかね。今回のインカレで女子がメドレーリレーでメダルをとっていたので、「らいねん良い感じじゃん!」と思って。だからメドレーリレーをもっと良い順位にというのと、(ほかにも)速い子が入ってくるので、その子たちと結束して、女子のレベルが上がっていくことに期待しています。

――4月の日本選手権は世界選手権代表選考会を兼ねていますが、そこに向けてどのような練習を積んでいきたいですか

やっぱり世界水泳が大事なので、狙っている種目はしっかり代表を決めたいです。調整もすると思うんですけど、世界水泳につながるようなレースもしていきたいです。昨年はとにかくぎりぎり代表を決めるという感じだったので、余裕を持ちたいですね。でも一発勝負なのでやっぱり緊張します(笑)。一つ一つ課題を持ってレースをしたいので、苦手な種目も強化して、自信を持ってレースをしたいと思います。

――ことし何か新しく取り組みたいことはありますか

特にないですね。だいたい自分のパターンとかも決まってきているので、苦手種目を強化して個人メドレーで絶対的な強さが欲しかったんですけど、昨年は仁川とゴールドコーストで負けているので、それを取り戻したいなと思います。

――大学の中でも上級生になりますが、ワセダの水泳部ではどのような役目を担っていきたいですか

後輩も増えてくるので、しっかりとした態度をとって、盛り上げるときは盛り上げてみんなに追われるような存在、先輩になっていけたらなと思います。練習面で頑張っている姿を見せて「先輩頑張ってるわ、俺も頑張ろう」って思ってくれたらなと思います。

――ことしはリオデジャネイロ五輪の前年にあたりますがどのような一年にしたいですか

とりあえず世界水泳で金メダルをとることだけを考えてやっていきたいです。4月で代表を決めるのは最低条件なので、それが決まってから世界水泳で一つでも多く金(メダル)がとれるような方向に持っていきたいので、コーチともいろいろ相談し合って合宿とかも決めていけたらなと思います。

――ありがとうございました!!

(取材・編集 村上夕季、谷田部友香、吉田麻柚)

★大也のメダルCollection

メダルに囲まれて



今取材には瀬戸選手が昨年行われた国際大会でのメダルを持参してくださいました!テーブルに置かれた3つがアジア大会のもので、手に持っているのがパンパシでの金メダルと銅メダル、首にかけている3色のメダルが世界短水路で獲得されたものです。世界短水路のメダルについてはその形から「チーズみたいですよね」などとお話されている姿が印象的でした。ちなみに「いままでもらったメダルの中で一番のお気に入りは?」とお聞きしたところ、「それはやっぱり世界水泳の金メダル」と即答。カザンで行われることしの世界選手権でも同じ色を期待しています!



2015年はリオに向けての『準備』の年に

◆瀬戸大也(せと・だいや)

1994年(平6)5月24日生まれのA型。174センチ、72キロ。埼玉栄高出身。スポーツ科学部2年。専門種目は個人メドレー。ドーハでは坂井選手と同室だったという瀬戸選手。部屋での思い出をうかがうと、坂井選手が腐ったオレンジジュースを沸騰させたという驚きのエピソードが!くさいにおいが部屋中に充満したそうです(笑)。

世界短水路個人結果

▽男子400メートル個人メドレー

決勝 3分56秒33【優勝】※日本新記録

予選 4分03秒73【5位】

▽男子200メートル個人メドレー

決勝 1分51秒79【3位】

予選 1分53秒15【3位】

▽男子200メートルバタフライ

決勝 1分48秒92【2位】※日本新記録

予選 1分50秒82【1位】※大会新記録