競泳練習に密着!

競泳

 まもなくシーズン本番を迎えようとしている水泳競技。日本トップスイマーが集い、ハイレベルな戦いが予想されるジャパンオープン2014を来月に控え、練習の強度が高まっているという競泳部門の練習に今回はお邪魔させていただいた。早大水泳部の強さの裏にあるものとは――。その秘密に迫った。

ボールを使った陸上トレーニング

 まず水中トレーニングに先立って入念な準備体操とストレッチ、そして陸上トレーニングが行われた。ボールを使った体幹を鍛えるメニューなどが主となるが、上級生と一年生は別メニュー。「1年くらいはかかる」(奥野景介監督、昭63教卒=広島・瀬戸内)と、基本となる体作りは地道で長い年月を要するという。上級生のしっかりとした体つきは何より継続した鍛錬の賜物。重りをつけながら懸垂を軽々とこなす姿は圧巻の一言だった。

ゴムチューブを腰につけての練習

 陸上トレーニングを終えると、専門種目や専門距離ごとによって割り振られた4つのチームに分かれてスイム練習が始まる。ただ決められたタイムや決められた本数を泳ぐだけではない。ゴムチューブを腰にくくりつけたり、手にパドルをつけるなど負荷をかけて泳ぐものもメニューには含まれる。奥野監督も身振り手振りで積極的に選手の指導にあたり、選手も真剣なまなざしでそれを見つめていた。林和希主将(スポ4=愛知・豊川)率いるブレスト(平泳ぎ)チームは古賀哲哉コーチの下、どのチームより長い練習に。レースを想定したスピード練習で手応えを感じたようだ。

スイムミルにて全力で泳ぐ姿も

 短距離の選手が属するスプリントチームのメニューには珍しいものも。常圧低酸素室内に設置されたスイムミルは、水流を起こすことができる大きな水槽のようなものだ。ここでは、水流の強さを調節することができ、流れに逆らって泳ぐというハードなトレーニング内容となる。各選手は自分の番を終えると息が上がっている様子だったが、そのなかでも笑いがこぼれるなど楽しみながら練習に臨む選手の姿は印象的。そのほかにはホイッスルの音に合わせた飛び込みの練習やリレーの引き継ぎ、ターンのタイミングを体に染み込ませるため、繰り返し反復練習を行う様子も見られた。

 水泳部の練習は基本的に1日で朝夕2度。この日伺った午後の練習ではミドルチームが最長6300メートルを泳いだ。距離だけでなく、練習の質が求められるため、監督やコーチ陣のメニューづくりも年間の大会スケジュールを把握し、長期的なスパンで強化計画を構想した上でのものとなっている。チーム全体としては9月の日本学生選手権(インカレ)を今季最大の目標に据えて、今後はさらに強化を図ることとなる。上を目指しての戦いはここからが勝負どころだ。

(記事 荒巻美奈、写真 谷田部友香)

★結束高める○○…!?

円陣を組んで

 水泳部では練習前に必ず行うものがある。それは『声出し』だ。全員で輪になり、その日の声出し担当がその真ん中に立ってチームに気合を注入。これがスイム練習の始まりを告げるものとなっている。この日は2年生の安田純輝(スポ2=千葉商大付)がその担当を務め、チームを盛り上げた。他にもデイリーキャプテンを設けるなど、「一人一人がもっと責任感をもってほしい」(林)という思いからの取り組みも特徴の一つ。チームに一体感を生み出し、今季のチームスローガンでもある『結束』につながっていると感じる一場面だった。

★支える立場に注目!

タイムを計測するマネージャー

 この日の練習ではストップウォッチを片手にテキパキと仕事をこなすマネージャー陣の姿も目を引いた。タイムを計測し記録、伝達することやより良い環境づくりをすることがマネージャーの主な仕事内容。ときには選手に対して軽いマッサージを行うなど、ケアの面でも徹底している。「毎日の練習で選手が頑張っているのを見ると私たちもやらなきゃなと思う」(志賀万里奈マネージャー、スポ3=埼玉・栄東)と選手から刺激をもらっているようだが、その存在は選手にとっても不可欠なものなはずだ。

※水泳部競泳部門の皆様、今回は練習取材に応じていただきありがとうございました!この場をお借りしてお礼を申し上げます。

コメント

奥野景介監督(昭63教卒=広島・瀬戸内)

――きょうはどんなトレーニングを予定されていますか

大きな試合に向けて2週間くらいの調整期に入るので、今週は(練習の)強度としては一番高く追い込む週となります。追い込む週の中でも月、水、土は最も高い強度でトレーニングをやるという日に定めているので、週全体としては追い込む週で、曜日としても高い強度でやるという日ですね。

――来月のジャパンオープン2014を見据えてということでしょうか

そうですね。あとジャパンオープンの週にジャパンオープンに出ない人たちもタイムトライアルの方に出場するので、全体としては同じ流れでやっていくということにしています。

――練習ではいつも陸上トレーニングを行ってからスイム練習という流れなのでしょうか

そうですね。いまは日本選手権を終えてから4、5週というところだと思うので、体力的なものをもう一度アップさせるということをやって、今週までで陸で負荷をかけるのは終わりで、次のプログラムへ移行していくことになっていきます。徐々に調整していくということですね。

――大会に近くなるにつれ陸上トレーニングの内容も変わると

いまは量的に負荷がかかっている状態ですが、試合の2週間くらい前になると、負荷は軽くなるけど動きを速くしたり、スピードやパワーに対応した内容にしていていくことになります。いまは反復回数を多めにして体力向上をやっているんですけど、時期に応じて段階的に変化を持たせるようにしています。

――陸上トレーニングが苦手な選手の方もいますか

いますね。やっぱり1年生と上級生は全然違うので、1年生はベーシックな基礎体力につながるメニューになっていて、基本的には1年生対上級生に分けています。

――1年生の基礎体力や体幹が身につくにはどれくらいの時間がかかるのでしょうか

1年くらいはかかるんじゃないでしょうか。それくらい上級生とは違います。

――スイム練習についてはどういったものを予定されていますか

中距離のミドルグループと100、200(メートル)のストロークグループ、短距離のスプリントグループ、ブレストグループの4つに分かれていますが、どのグループも質の高いものをやろうと思います。

――距離はどれくらいを泳がれるのでしょうか

きょうは一番長いミドルグループが6300メートル、ストロークグループが4800メートル、スプリントグループが3000メートル、ブレストグループが5900メートルです。先週までは距離もたくさん泳ぐようなメニューだったので8000メートルとか泳いでたんですけど、今週はスピードなどの質を高めるため若干少なめ。スプリントグループはそんなに泳がないね。

――いま監督が特に注目している選手は

注目は大也(瀬戸、スポ2=埼玉栄)、中村(克、スポ3=東京・武蔵野)、坂井(聖人、スポ1=福岡・柳川)ですね。インターの参加標準記録を切っているのがこの3人なので。あとはキャプテンの林(和希、スポ4=愛知・豊川)、加納(雅也、スポ3=県岐阜商)も結構いいかなという印象です。

――最初に挙げられた3選手は先日インターナショナル合宿に参加されていました。そこでの練習のお話は何かお聞きになってますか

かなりきつい練習をしていたようですね。坂井はインターの担当コーチが梅原コーチで大也と一緒にやっていたようなので相当な刺激を受けて帰ってきたようですね。中村に関しては塩浦(慎理、イトマン東進)とずっと一緒に練習していて、僕も1日だけ見にいけたんですけど練習中に49秒とかで泳いでたから、いい状態にあるのかなと思います。日本代表レベルの選手しかいないのでお互いに刺激し合える環境ですね。

――4年生について

インカレが集大成となるので、ジャパンオープンがその過程で戦う大きな試合のラストです。4年生の頑張りがインカレの総合順位とかにも大きく影響してくると思います。ジャパンオープンで大学のランキングを作っていくと自分たちの目標に達しているのかということも見えてくると思うので、そういったことも意識してやってもらえればと思います。

――逆に1年生の様子について

体力的にはまだまだですが、坂井が頑張ってるので同学年で上のレベルの人がいることがいろいろな意味で刺激を与えているんじゃないかと感じています。それが良いことだと思いますね。

林和希主将(スポ4=愛知・豊川)

――きょうの練習を終えて

ジャパンオープン(2014)まであと3週間ということで、だいぶケガも回復して、六大が終わってから体の調子も良いのでだいぶ練習も追い込めています。ジャパンオープンでは狙えるかなというタイムできていたので個人としては良い練習が出来ていると思います。スピードを出してという試合に向けての練習ができました。チームとしては練習前の声出しでワンパをやったりしていますが、それも良い雰囲気でできていますし、集合の時の話も毎回違う人を一年生も慣れてきていい練習ができているのかなと思います。

――きょうは声出しの担当が安田選手(純輝、スポ2=千葉商大付)、集合の際の担当が寺崎選手(拓海、スポ1=並木中教校)でしたが、林選手から見て何点になりますか

安田は声出し自体も良かったですし、声を出したことで自分が主役なんだという気持ちを持っていたように感じました。それで練習中もこの前の日本選手権と変わらないくらいのタイムできていてすごく良かったので、満点です。寺崎は1年生なので全然慣れてないのでまだまだですね。40点くらいですかね(笑)。赤点です(笑)。

――声出しなどの担当はどのように決めているのですか

一人一人がもっと責任感を持ってほしいなということで、僕もキャプテンとして毎回話をさせてもらうのですが、デイリーキャプテンといってその日のキャプテンを決めてその日のチーム全体を見たりだとか、前に出て喋ってもらったりだとかという役割をあいうえお順に4年生からやってもらっています。まだ少ししか効果は出ていないんですが、責任感を持ってもらうために今後も続けていきたいなと思っています。

――練習の達成度は

きょうは持久系の練習を少しやってからレーススピードで泳ぐというものを7セットやったりしました。スピード練習の時にレース仕様の水着だとかでなくても50メートルを29秒0から28秒前半などで入りたいと思っていたのですが、29秒前半くらいでした。まだスピードを上げ始めた時期なのでしょうがないかなと思いますが、今後試合に向けてスピードが出てきたら28秒前半くらいで泳げるようになったらジャパンオープンはいけるんじゃないかと思っています。動いていないなという感覚がある中ではタイムはあまり悪くなかったので、これからつなげられるなと感じています。点数にするなら70点くらいですかね(笑)。

――きょうはブレストチームは一番最後まで練習に励む姿が見られました

はい、古賀先生厳しいんですよね(笑)。

――古賀コーチからはどんなアドバイスを受けましたか

4月から古賀先生に平泳ぎは見てもらっているのですが、粘らなければいけない練習が多いですね。古賀先生はバテてきたところで、「いや、ここからでしょ!」っていうように僕たちをのせるのが上手で(笑)。基本的にはどれだけ一本一本大切に泳ぐことができるか、バテてからもどのようにしていくべきかということを言ってくれます。持久系でバテたところでもスピードを出さなければならないという時に、ここで出せればレースでも使えるよとか、一本一本で試合を想定したコメントをいただけるので、泳いでいていっぱいいっぱいの時にどうすればいいのかということが明確になるので、それはとても助かっています。

――5、6月はレースがあまりありませんが調整は難しくないでしょうか

むしろレースがないということで強化に集中できるのかなと思います。4月に合わせてきていた人は期間が足りないかなと思いますが、僕は4月までにあまり練習が取り組めなかったのである程度練習を積んでからジャパンオープンに臨むことができるという点で助かっています。試合と試合の間が近いほど、調子を維持するという点で難しいと思うので、もう一度作り直せるという意味では合わせやすいのかなと思います。ジャパンオープンはみんな好調で出てくると思うので、自分も合わせていきたいです。

――技術的に重点を置いているところは

課題だった肩甲骨の動きとストリームラインが取れていなくてがむしゃらにかいているだけで体が立っている状態になっていたので、肩甲骨に加えてしっかり伸びるようにテンポを上げた時でもしっかり(体全体が)真っ直ぐになる状態をつくるということを心がけるためにいろいろなことをやっています。きょうもレーススピードやったときにレースとあまり変わらないくらいのストローク数でこれていたので、効果は出てきているかなと。一回真っ直ぐになったら一回で進む距離は増えるので、そこを意識しています。

――ジャパンオープン2014に向けて

疲れを取りながら、自分はパワーで水を押していくタイプなので、疲れが抜けた時にどれだけスピードを出せるか。いかに水に柔らかくパワーを伝えて、スピードを出せるかが勝負どころですね。

――個人の目標と意気込みは

インカレ前の中でもジャパンオープンは大きな勝負になってくると思うので、まずは表彰台を狙ってより多くの人にアピールして、大学としてもインカレに向けて戦力になれるようにしっかりと上位を狙っていきたいです。

――一年生もチームに慣れつつあるようでしょうか

だいぶ慣れてきた印象がありますね。ことしの一年生はすごく真面目で、真面目なわりにすごく堅いわけではなく、すごくフレンドリーに話しかけてくれます。4年生と1年生ではすごく年の差もありますし、話しかけにくいかなと思うんですが(笑)。特に坂井とかは1年生なのに見本になれる部分もあって、競技だけでなくチーム作りという面でも期待できますね。

志賀万里奈マネージャー(スポ3=埼玉・栄東)

――きょうの練習を見て、選手の動きはいかがでしたか

今週からアナロビックという強度の高い練習に移って、その一発目のメイン練習でみんなきつい練習だったと思うのですが、どのチームも粘り強くやっていて、私たちマネージャーも見ていて、もっとちゃんとサポートしなければと思わされました。

――練習の中でポイントとなることは

きょうはメイン練習の日なので、メインの練習が大事なのですが、それぞれ選手もどのようにメインの練習に取り組めばいいかを考えてやれていたと思います。

――マネージャーの仕事にはどのようなものがありますか

一番多いのが、タイムを測ったり、環境を整えたり選手が過ごしやすいようにすることです。試合に行った時もあまりやることは変わりませんが、場所が変わっても選手が快適に過ごせるように移動の手配やケアを滞りなく行えるように先回りして準備することが多いです。

――マッサージもされていましたが、それは日常的にされることなのですか

選手がケガ予防にストレッチとかをやるようにするということで、そのケアから始まり、できることは限られていますが、軽いマッサージなども行っています。

――どうして水泳部のマネージャーになろうと思ったのですか

私は高校まで水泳をやっていて、すごく水泳が好きなので、自分で競技をやらなくても水泳の近くにいたいなと思ったのと、みんな一流の選手ばかりで、トップアスリートがたくさんいるなかでそのサポートができたら、新しい世界が広がるかなと思いました。

――どのような部分にやりがいを感じますか

毎日の練習で選手が頑張っているのを見ると私たちもやらなきゃなと思うので、試合で結果を出してくれるのを陰ながらサポートできるように、レースでいい結果が出ると私たちもうれしいと思うので、その気持ちを忘れずにやっています。

――特に気を遣っていることは

マネージャーなので、泳いでいないというのがあって、あまり偉そうなことばかりは言えないのですが、それでも選手がやる気のない時は声をかけて、やる気を出してもらったりしたり、なにか悩んでいることがあったらさりげなく聞いてみたりとかして、水泳の練習や試合でのサポートだけではなく、心の面でのサポートもできたらいいと思ってやっています。