自己ベストの3本塁打をマークするなど、ここまでの打線をけん引している吉納翼(スポ3=愛知・東邦)。今季は自身が目標に据える三冠王も狙える位置につけている。そんな吉納に好調の要因、優勝への思いを伺った。
※この取材は10月21日にオンラインで行われたものです。
「自分の勝負強さが打撃として現れている」
東大1回戦で本塁打を放った吉納
――今季は優勝争いの中で終盤戦を迎えました
早慶戦が優勝決定戦になったっていうことで、本当にもう負けられません。今までもそうだったんですけど、より一層負けられない試合です。その分やっぱりチームとしても、個人としてもすごくモチベーションが上がってきています。特に4年生を中心に毎日練習で、どんどん日を重ねるごとにチームがいい状態になっていってるなっていうふうに思います。個人としては、あまり気持ちを変えずにというか、冷静にしっかり対応できたらいいなっていうふうに思います。
――今季は打率3割8分5厘、リーグ3位と好調です。その要因はなんでしょうか
今までシーズンを重ねてきて、今までと何か変えたかって言われたら別にそうでもないですけど、今までよりも他大の投手の研究を増やしたりとか、それに合った自分のバッティングの動画を研究する時間を増やしたのは一つあるので、それが要因かなっていうふうに思います。
――今季は安打の半数が長打です。そこについてはいかがでしょうか
それに関しては、自分らしいバッティングができて自信にもなりますし、ここっていう場面で自分の勝負強さが打撃として現れているのはいいと思います。ヒットと同じ数でフォアボールも選べて、本当に相手からしたら嫌なバッターになれているんじゃないかなというふうに思います。
――長打を打つために打席の中で意識していることや練習はありますか
意識している練習はあまりないです。やっぱりフォアボールが多いっていう部分に関して、ボール球を打たないっていう本当にシンプルなことだけしか出席の中では考えていないです。
――金森栄治助監督(昭54教卒=大阪・PL学園)が「甘いボールを打って、厳しいボールを見逃す」ということを徹底されています。金森助監督の教えが生きている部分はありますか
そうですね。それはもう間違いないと思います。
――相手バッテリーから警戒されていることが四球につながっている印象もあります
そうですね。そこはもう本当に1つの自信として、まだ次のシーズンを考えるのは早いですけど、そこを自分の1つの長所として伸ばしていけたらいいなというふうに思います。
――今季は3本の本塁打を放っています。本塁打王は意識されていますか
少しだけ意識はしているんですけど、やっぱり自分は3位で、2位と1位の打者(宮崎恭輔、栗林泰三)が慶応で主軸を打っている2人っていうところも負けてられないなっていうふうに思います。早慶戦で絶対抜いてやろうっていう気持ちです。
――3本塁打の中で1番印象に残っているホームランを教えてください
東大の2本目ですね。バックスクリーンを超えたやつはすごく感触が良かったです。飛ばしたいっていう気持ちもなく、軽くではないですけども、本当に感触もいつもと同じぐらいの捉えた感覚なのに、あれぐらい飛ばせるっていうのは良かったなっていうふうに思います。
――飛距離が伸びた要因はありますか
それも金森助監督から日頃言われていることではあるんですけども、飛ばそうとしなくてもまずは自分のフォームでしっかり振ること。それが1番100パーセントの力を出せるっていうふうに研究としても出ています。飛ばしたいから力んでとかじゃなくて、まず自分のしっかりしたスイングをして好球必打というものを徹底すれば、あれぐらいの打球は自然と出るからっていうふうに言われているので、それは本当に良かったなっていうふうに思います。
――立大1回戦では初の4番に座りました
あまり考えなかったです。今まで高校の時も打ってきたんですけど、打順でっていうよりかは、例えば4番であったら、初回に回ってきたら必ずランナーを返して1点を取るっていう、それぐらいの打撃はしていくべきだなというふうに思っています。
――特にプレッシャーはありませんでしたか
そうですね。それは特になかったです。
――ここまでのリーグ戦の中で、1番良かった打席を教えてください
感触で言ったらさっきも言ったようにその本塁打(東大1回戦の2本目)なんですけど、場面的なものを見て言えば、明大1回戦の勝ち越し打です。左投手から逆方向に打ったレフトオーバーのツーベースは、春の明治戦(明大2回戦)でレフトに打ったホームランと同じような感覚でした。左打者だからって引っ張りに行くんじゃなくて、コースに逆らわずにしっかり打ち返すことができたバッティングだったので、あれは良かったなっていうふうに思います。
――昨秋も含めて秋の成績が良い印象です。秋シーズンに得意意識はありますか
それはタイミングの問題じゃないかなっていうふうに思います。秋だからっていうのはあまり考えていないです。
「打撃をシンプルに考えられるようになりつつある」
――開幕前の取材では、金森助監督に打撃について自分からアドバイスを求めたというお話をされていました。金森助監督からいただいた印象的なアドバイスはありますか
さっきも言ったんですけど、打球はとにかくしっかりとしたフォームで振れば飛ぶからっていうふうに言われたことが1番印象的です。それが顕著に現れたのが東大戦の2本のホームランであったり、立教戦のホームランもそうです。長打が増えているっていう部分ではそういうところかなっていうふうにも思います。考え方として、打撃をシンプルに考えられるようになりつつあるなっていうのはあります。
――金森助監督のアドバイスを受けて取り組んでいる練習はありますか
バッティング練習とか実践練習に関係なく、とにかくボール球を振らないっていうことだけを意識しています。
――1番大事にしている練習はありますか
振る量を減らさないっていうことはこの秋シーズンは取り組んでいます。土日に試合がない時もそうですけども、試合前日までもうとにかくバットを振る量を増やしています。よく調整とか言われるものがあると思うんですけど、やっぱりやってからこそ見えてくるものっていうものもあるなっていうふうに思います。休むことももちろん大事なので、(振る数を)減らせば減らした分だけ(調整になる)っていう考えだったんですけど、そうじゃなくて、やっぱりとにかく振り続けることで分かってくるものがたくさんあります。そこはこのシーズン意識して取り組んでいることですね。
――1日に振る数は決めていますか
スイング数は特に数えたりとかはしていないんですけども、とにかくいっぱい振りました。
――開幕前の取材で「打撃についていろいろ試しながらやっている」とおっしゃっていました。ご自身の納得のいく打撃は見つかりましたか
東大の試合で1打席目がセカンドゴロの併殺で終わった時に、打ち急いでいる感覚がありました。次の打席でホームランを打った時の感覚として、ボールを引き寄せる感覚っていうのがまだ足りてないっていうところがあったので、そこを意識はしています。めちゃくちゃ変えるっていうよりかは、本当にシーズンを通してボール球を振らないっていうことを徹底した結果だと思います。
――早慶戦の結果次第で個人タイトルが見えてくると思います。1番取りたい個人タイトルはありますか
三冠王です。
――ライバルになりそうな選手は、やはり宮崎選手と栗林選手ですか
ちょっと栗林さんがダントツで打点も打たれて厳しいかなっていうふうに思うんですけど、それでも絶対早慶戦で追い越したいので、1、2、3、4番(の打者)にいいところでまわしてくれっていうふうに思います。
――大学日本代表が現実的になってくると思いますが、意識はされていますか
そうですね。熊田さん(熊田任洋副将、スポ4=愛知・東邦)が選ばれていろいろな他大学の選手とやっている姿っていうのは、すごくうらやましかったです。やっぱり自分もああいう場所に行くだけじゃなくて、結果を出していずれはプロに入るっていう。しっかりアピールできる場面でもありますし、日本だけじゃない相手と試合をして、いろんな野球を学びたいなっていうふうにも思います。まずはシーズンにしっかり集中して、冬の合宿、そして春が終わってからジャパンに選ばれたいなっていう気持ちはもちろんあります。
――同じ外野手の中で意識している選手はいますか
青山学院の西川(西川史礁)くんは今年からジャパンの4番を打っていて、来年のドラフトでも上位候補って言われています。右打者ではあるんですけども、やっぱりあれだけ上の舞台で活躍しているところはすごく刺激的でもありますし、その分負けてられないなっていう気持ちもあります。
「自分のプレーを見て感謝の気持ちが伝われば」
明大1回戦で決勝の二塁打を放つ吉納
―― 明大に勝ち点を落とした後、4連勝で早慶戦を迎えました
(明大に)勝ち点は取られたんですけども、それこそ土曜日に1勝して、本当に他力ではあるんですけども優勝する可能性が残されていました。その中で立教、法政と本当に落とせない中で4連勝して、先週の試合で慶応が明治から勝ち点取ってっていう、本当に優勝への流れというものが早稲田に近づいてきてるなっていうふうに感じます。そこは立教と法政に4連勝したことが、本当に今生きてるなっていうふうに思います。
――早慶戦についてお聞きします。今季は優勝が懸かる早慶戦となりましたが、現在の心境を教えてください
初めて(早慶戦が)優勝決定戦っていうかたちで。自分が入学する前に今の4年生たちが1年生だった時の優勝決定戦を見ていて、本当に憧れていた試合でもありました。自分が今度はプレーする側になってこの伝統ある試合を勝って、そして優勝できたらなっていうふうに本当に思います。それこそ本当に今の4年生たちと優勝したいですし、そこは本当に強く意識していきたいです。
――早慶戦との相性はいかがですか
相性で言ったらめちゃくちゃいいっていうのはないですけど、やっぱり早慶戦となれば観客数も本当にいつもの倍になります。あの独特の雰囲気っていうものはすごいものだなっていうふうに感じて、ここまで試合を送ってきています。
――昨季の早慶戦前には、蛭間拓哉選手(令5スポ卒=西武ライオンズ)に次いで「早慶戦男になりたい」とおっしゃっていました。早慶戦男のライバルになりそうなチームメートはいますか
自分がチームでこのシーズンで言ったら1番いい成績を残しているので、そこは自信を持って、もうとにかく自分との戦いだなっていうふうに思います。
――早慶戦は4年生と一緒に戦う最後の試合になりますが、 4年生に伝えたい思いはありますか
やっぱり本当に最後4年生を笑って送り出したいです。もちろん感謝している部分はたくさんあるんですけど、あまり口で伝えるのが得意な方ではないので、自分のプレーを見て感謝の気持ちが伝わればいいなというふうに思います。
――早慶戦のキープレーヤーを教えてください
僕です!
――対戦したい投手を教えてください
非常にロースコアで抑えている慶応の外丸(外丸東眞)選手は去年の春、自分が出るようになってからずっと投げている投手です。抑えられたり打ったりっていうのはあるんですけど、やっぱりこうやって優勝が懸かっている以上はもう絶対に打ってやろうっていう気持ちです。
――早慶戦で具体的な目標はありますか
個人としてはもう自然とついてくるものなので、とにかく優勝っていうものにこだわりたいなというふうに思います。
――開幕前に、チームに対して自分の意見を発信してきたというお話がありました。リーグ戦の中で自分から発信したことはありますか
そこは4年生がうまく引っ張ってくださったので、 チームがそもそもいい状態である以上は、そういういうことが少なくなってくるのが自然だと思います。 あまり言わなかったってことは、やっぱりチームとしていい状態でリーグ戦に挑めているのかなって思います。
――最後に、早慶戦に向けて意気込みをお願いします
優勝の懸かった早慶戦で自分の打撃で優勝を決めて、4年生を送り出せるように頑張ります。
――ありがとうございました!
(取材・編集 矢彦沢壮真)
◆吉納翼(よしのう・つばさ)
2002(平14)年8月16日生まれ。180センチ、87キロ。愛知・東邦高出身。スポーツ科学部3年。外野手。早慶戦のキープレーヤーは「僕です!」と答えてくださった吉納選手。昨秋から5試合連続安打中の早慶戦で、自身初の本塁打を狙います。勝負強い打撃で早大を6季ぶりの優勝に導いてくれるでしょう!