好調投手陣が鍵か 賜杯奪還へ好スタートを/東大戦展望

野球

 4月8日に開幕した東京六大学野球春季リーグ戦(春季リーグ戦)。第1週に試合がなかった早大は15日に初戦を迎える。対するは50季連続6位からの脱出を目指す東大。一昨年は辛勝した1勝と1分、昨年は4戦目までもつれるなど、過去2年間、春季リーグ戦での対戦で早大は苦戦を強いられている。先週の第1節で、昨年春秋連覇を果たした明大に善戦した勢いもあり、今季も簡単に勝ち点を取れる相手ではない。しかし、5季ぶりの優勝を狙う早大にとっては2連勝して勢いをつけたいところ。充実したキャンプ、オープン戦の成果を発揮したい。

先発、中継ぎとフル回転での起用が予想される松岡

 長きにわたってチームを支えた井澤駿介(現NTT西日本)、松岡泰希(現明治安田生命)、宮崎湧(現日本通運)らが卒業し、開幕前の前評判は決して高くなかった東大。しかし、優勝候補の最右翼とされていた明大を相手に1回戦では8回にリードを奪い、直後に追いつかれた後も踏ん張り延長戦に持ち込むと、2回戦では同点で9回を迎える接戦を演じ、一躍今季のダークホースと目されるようになった。そんな明大戦の善戦の立役者となったのが鈴木健(4年)と松岡由機(4年)の両先発だ。2年次からリーグ戦登板を重ねる経験豊富なエース・鈴木健は制球力が持ち味の左腕だ。明大1回戦では直球は130キロ台がほとんどながら、キレのあるカットボールと組み合わせてコーナーに投げ分け、明大の強力打線から凡打を量産。7回を88球でまとめ、7安打1失点の力投を見せた。高校時代は軟式野球の名門・駒場東邦高で腕を磨き、大学から硬式に転向した異色の右腕・松岡は最速145キロを誇る東大のスピードキング。勢いのある直球にカーブやチェンジアップを織り交ぜる緩急のついた投球で、2試合合計で7回3失点と粘投した。井澤から背番号11を引き継いだ平田康二郎(3年)、投打二刀流で活躍する鈴木太陽(3年)は140キロを超える力強い直球を投げ込み、変則右腕の渡辺向輝(2年)も控えるなど救援陣も充実。さらに投手陣の好投を野手陣が2試合で1失策と堅守ぶりで支え、今年の東大のディフェンス力は一味違うと言える。

 迎え撃つ早大打線は大量得点こそないものの、少ない好機をモノにする粘りの野球を春季オープン戦で見せている。その中でも注目は好調を維持する中村将希(教4=佐賀・鳥栖)と野村健太(スポ4=山梨学院)だ。全試合で3番を務めた中村将と慶大1回戦では4番に座った野村という、昨春大きな期待を背負っていた2人。しかし、ともに思うような結果を残せず、秋はベンチを温めることも多かった。逆襲を期す今季はオープン戦から長打を量産。中村将はチャンスメーカーとして、野村はポイントゲッターとして躍動している。それぞれの前を打つことが予想される森田朝陽主将(社4=富山・高岡商)、吉納翼(スポ3=愛知・東邦)も調子を上げているだけに、この4人に熊田任洋副将(スポ4=愛知・東邦)と印出太一(スポ3=愛知・中京大中京)の侍ジャパン大学日本代表候補の2人を加えた上位打線で得点を奪い、主導権を握りたい。

リードオフマンを務める酒井捷

 対する東大打線の要となってくるのは、最終学年を迎えた『東大野球部12年ぶりの甲子園球児コンビ』、別府洸太朗(4年)と主将・梅林浩大(4年)だろう。チーム屈指の長打力を持ち、3、4番を組む2人は明大戦こそ無安打だったものの、目覚めさせると一気に大量失点のリスクとなる。明大投手陣が見せたように、東大打線を封じるためには、まずはこの2人をしっかりと抑えなくてはならないだろう。さらに要警戒なのがリードオフマンを務める超新星・酒井捷(2年)だ。明大2回戦では2点適時打を放つなど絶好調。選球眼にも優れ、出塁率は5割に達する。別府、梅林に仕事をさせないためにはまず酒井捷を確実に打ち取りたいところだ。

エース・加藤の好投に期待だ

 勝ち点獲得の鍵を握る早大投手陣を支えるのは、今季から右投手のエースナンバーを背負う加藤孝太郎(人4=茨城・下妻一)だ。昨季最優秀防御率を戴冠した右腕はさらに安定感を増し、春季オープン戦では圧倒的な投球を続けている。東大からは昨年2完封を記録するなど相性も良く、3季連続となる完封勝利に期待がかかる。2戦目の先発には伸び盛りの右腕・鹿田泰生(商3=東京・早実)が予想される。昨秋はリリーフで2勝を挙げ、ブレークしたものの、2試合の先発登板では勝利を挙げられず。加藤が作った勢いに乗り、待望の先発初勝利を挙げたい。昨年、新人離れしたパフォーマンスを見せた伊藤樹(スポ2=宮城・仙台育英)は今季もクローザーでの起用が濃厚。中森光希(文構3=大阪・明星)、齋藤正貴(商4=千葉・佐倉)らとともに鉄壁の救援陣を形成する。

 また、早大ベンチには田和廉(教2=東京・早実)、ユエン賢(国教4=カナダ・セントジョセフ)や島川叶夢(スポ4=熊本・済々黌)など投打で猛アピールを見せる選手が控える。投手交代や代打起用など、小宮山悟監督(平2教卒=千葉・芝浦工大柏)がどのような交代カードを切るにも注目が集まる。

 昨季2位の原動力となった投手陣の大半が残る早大と、宗山塁(3年)、上田希由翔(4年)らを擁する明大打線相手に投手陣が健闘した東大が相まみえるこのカードは投手戦が予想される。春季オープン戦で見せた粘りの野球を神宮でも展開し、4季ぶりの優勝、さらにはその先の日本一に向け、好スタートを切りたい。

(記事 星野有哉、写真 田中駿祐、湊紗希)