【連載】春季リーグ戦開幕前特集『勇往邁進(まいしん)』 【第7回】加藤孝太郎

野球

 昨秋に最優秀防御率を獲得すると、今季からは早大の右のエースナンバーである11番を着け、看板投手として一層の活躍が期待される加藤孝太郎(人4=茨城・下妻一)。オフシーズンの取り組みから、プロ野球挑戦の実についても伺った。

※この取材は4月2日にオンラインで行われたものです。

「ボールの強さが少しずつ出てきた」

中央学院大戦に登板した加藤

――まずはオフシーズンの取り組みについて伺いたいと思います。12月にはボールの強さを出すことと体力づくりが課題とおっしゃっていました

 この期間はとにかくそこをテーマに取り組んできました。

――この二つの課題に対して、どのようにアプローチしましたか

 ボールの強さというのは、球速もそうですが、シンプルなボールのキレだと思います。球速を出そうと思って強くするというよりは、ロスなく力を伝えられるようにすることをテーマに、投球フォームからボールの強さに結びつけていくような取り組みを行ってきました。体づくりに関してはウエートと、チームの普段の練習中のメニューを丁寧に取り組んでいました。

――投球フォームはどのように変えたのでしょうか

 自分のフォームの癖として、右足が折れてしまう癖があって。沈み込むような形になってしまっていたので、そこをなるべく右膝が落ちないように粘って、前に力を伝えていけるように取り組んでいます。

――1月頭には、メディアでプロ志望の公言をされました。12月上旬には「現時点ではまだまだ」とおっしゃっていましたが、心境が変わったのはいつ頃ですか

 プロ志望というか…。(野球を)やっている以上、最終的にそこにいきたいというのはあるのですが、大学から一本でプロという感じではないです(笑)。

――必ずしも今年のプロ野球ドラフト会議を目指すわけではないということでしょうか

 もちろん行ければいいのですが、自分を客観的に見たときに、まだまだ足りないものがたくさんあります。社会人等を経て、最終的にという感じです。

――現在の調子について伺います。3月からの春季オープン戦(オープン戦)を振り返って、手応えはいかがですか

 今日を含めて4回先発で投げて、それなりにいいかたちで、冬に取り組んできた成果が出ているのではないかなと思います。

――特に成果を感じる点はどこですか

 平均の球速が少し上がったかなということと、ボールの強さが少しずつ出てきたかなと感じています。

――オープン戦では球数の少なさにも磨きがかかっているように思います

 先発という立場なので、より長い回を投げるためにも、無駄球を減らすようにしています。よく2ストライクノーボールだったら1球外に外すことがあると思うのですが、そういうことはせず、打者を見て、いけるなら3球勝負というのは意識しています。その結果が球数(の少なさ)に結びついているのではないかと思います。

――反対に、オープン戦を経て懸念はありますか

 今日は8回まで投げたのですが、オープン戦4回のうち3回(の登板で)は5回までしか投げていません。強いて言うならばそのあたりが懸念点です。

――今日久々に8回投げて、疲労等これまでと違う点はありましたか

 今はそこまで感じていませんが、明日以降そのあたりも出てくるかもしれません。

――ここまでオープン戦13試合中、4試合が雨で中止となっています。調整に支障はありませんか

 キャンプで疲れがたまったところはありますが、そこまで影響は出ていないかなと思います。

11番に「ふさわしい結果」を

――続いてチームについて伺いたいと思います。チーム全体の仕上がりはいかがですか

 遠征期間中は投手も野手もそれなりに状態良くやれていたのかなと思っていたのですが、こっちに戻ってきて、この間の社会人対抗戦と東伏見で行われたHonda戦では、少し投手の安定感がいまいちでした。そこからうまくリズムがつかめなくて、野手もあと一本が出ないという感じだったのですが、昨日今日と粘り強くはできているので、そこまで心配する必要はないと思っています。

――森田朝陽主将(社4=富山・高岡商)、熊田任洋副将(スポ4=愛知・東邦)の新体制になりましたがいかがですか

 主将の森田がみんなを引っ張ってくれているかたちです。自分たちも本当に森田についていけば大丈夫という雰囲気でやれています。熊田に関してはプレーもそうですし、その他でもチームをまとめてくれているので、すごく頼もしい2人です。

――森田朝主将がチームを引っ張っているとありましたが、どのようにけん引しているのでしょうか

 プレーもそうですし、声だとかで気持ちが全面に出ています。それを見て自分たちも「森田がやっているなら」となっています。

――中川卓也前主将(令5スポ卒=現東京ガス)の頃から変わった点はありますか

 中川さんの時は、中川さん蛭間さん(蛭間拓哉前副将、令5スポ卒=現西武ライオンズ)の2人がいて、それにみんなが(ついていく)というかたちだったのですが、今年のチームは森田、熊田を中心に、ただ2人に任せるのではなく、全員が一つになってチームづくりをやれていると思います。

――ここまでで投手陣全体の雰囲気はいかがですか

 今年は昨年よりも(東京六大学リーグ戦を)経験している新4年生が多いので、4年生を中心にいい練習がずっとできていると思います。

――加藤選手から見て、特に頑張っている4年生投手は誰ですか

 みんな頑張っているのですが、その中でも東海林(東海林碧波、スポ4=東京・早実)や大木(大木涼聖、商4=埼玉・早大本庄)、澤村(澤村栄太郎、スポ4=早稲田佐賀)、前田(前田浩太郎、スポ4=福岡工)という、リーグ戦メンバーに絡んでくるかぎりぎりのラインの選手たちがすごく頑張っているので、それに自分たちも刺激をもらえているかなと思います。

――投手陣全体で期待している選手は誰ですか

 このオープン戦の感じだと齋藤正貴(商4=千葉・佐倉)がすごく状態がいいので、注目選手ですね。昨年の途中は真っ直ぐが少し暴れてしまうような感じでしたが、今年は直球できちんとカウントが取れるので、彼の武器であるスライダーがすごく生きています。安定感が今すごくありますね。

――また、野手で期待している選手は誰ですか

 キャプテンの森田です。本当に頼もしいキャプテンなので、プレーもそうですし、ベンチでの様子とか、全部が注目ポイントです。

――4年生になり、意識の上で変わったところはありますか

 自分が投手陣を含めて引っ張っていかなければいけないので、そこは調子の有無とかを言っている立場ではないと思っています。そのあたりで自覚は出てきました。

――自覚というお話がありましたが、早大のエースナンバーである11番を着けることが決まりました。このことについてはいかがですか

 入部当初はまさか11番を着けられるとは考えてもいなかったので、すごくうれしいです。早稲田の11番は伝統のある番号で、今まですごい方々が着けられてきた番号なので、それにふさわしい結果や態度をしなくてはいけないなと思います。

「チームの勝ちに貢献できるよう」

関西大戦で登板した加藤

――ここからはリーグ戦について伺います。早大の開幕戦まであと2週間となりましたが、心境はいかがですか

 いよいよラストシーズンが開幕するなという気持ちです。

――以前、試合前には相手打者を分析するとおっしゃっていましたが、開幕2週間前の現在、すでに行っているのでしょうか

 まだ行っていないです。普段、土日に試合がある場合は木曜日に、一度自分でデータ班からもらったデータと映像を見て、前日の金曜日に印出(印出太一、スポ3=愛知・中京大中京)とすり合わせをするという流れです。

――印出選手との意見のすり合わせはどのように行っていますか

 印出は捕手なのでいろいろ考えてくれているとは思うのですが、やっぱり投げるのは自分なので、データ班のデータと、自分が投げているボールを照らし合わせて、打者がどういう反応をするかを考えた上で印出に伝えて、それから印出の意見も聞いてすり合わせて、という感じです。

――開幕の東大戦で警戒していることはありますか

 足をすごく使うチームだと思うので、そのあたりは自分がけん制などで抑える必要があると感じています。打者は別府選手(別府洸太朗、4年)あたりが嫌かなと思っています。

――東大戦での目標は何ですか

 チームとして最初の試合なので、ただ抑えるというよりは次の日やそれ以降のリーグ戦で、チームに勢いがつく投球をしたいと思っています。

――今年1年間の目標は何ですか

 チームの春秋連覇と、全日本(全日本大学選手権)と、明治神宮(明治神宮大会)の優勝です。

――今季のアピールポイントを教えてください

 自分は走者を出してからも崩れたりすることなく淡々と投げられるのが長所なので、そのあたりを見ていただけたらなと思っています。

――最後に今季の意気込みをお願いします

 チームの勝ちに貢献できるような投球をして、最終的にチームの春秋連覇を達成できればいいなと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 荒井結月、写真 田中駿祐、湊紗希)

質問に答える加藤

◆加藤孝太郎(かとう・こうたろう)

2001(平13)年11月20日生まれ。178センチ、74キロ。茨城・下妻一高出身。人間科学部4年。投手。右投右打。今オフシーズンで思い出に残っている遠征は、「毎日が新鮮だった」というロサンゼルス遠征。エンゼルスタジアムとドジャースタジアムの観光ツアーが、一番楽しかったそうです!