【連載】春季リーグ戦開幕前特集『勇往邁進(まいしん)』 【第4回】印出太一

野球

 「自分が仕事をしないとチームが機能しない」。正捕手という大役に加えて、打撃でも春季オープン戦から4番を任されている印出太一(スポ3=愛知・中京大中京)。攻守ともに責任は大きいものの、練習や実戦を積み重ねる中で成果を感じた部分があるようだ。東京六大学春季リーグ戦(リーグ戦)が待ち遠しいと語る印出に、これまでの収穫や今季の意気込みを伺った。

※この取材は4月7日に行われたものです。

「完璧な状態でリーグ戦に入りたい」

スローイングをする印出

――まずは冬の練習からオープン戦を経て、ここまでの感想を教えてください

 個人としては、リーグ戦に向けての調整というかスキルアップのための実戦、試合感を取り戻すといったいろいろな目的がありました。リーグ戦で結果を残すために攻守に取り組んできて、もちろん課題も挙がりましたし、冬にやってきたことが成果として現れている部分もあったので、充実したオープン戦になったかなと思います。チームとしてはまだ接戦を落としたり後半逆転されて負けたりした試合もありましたし、まだやることがあるのかなという感じです。そこは試合をする中で結集していくというか、チーム力が上がっていけばよりいい試合ができるかなという印象ですね。

――昨秋のリーグ戦時と比べて、特に伸びたと感じる部分はありますか

 現在スローイングを課題にしていて、リーグ戦や代表合宿(昨年12月の侍ジャパン代表候補強化合宿)に行かせてもらった時からそこが課題だと考えていました。それを一つこの冬のテーマにしながら練習に取り組んでいて、補殺率も上がってきましたし、自分の思い描いたイメージでスローイングができるようになってきたかなと思います。感触としては精度が少し上がってきたので、冬の練習の収穫をオープン戦で感じられていると思います。

――次は打撃についてお聞きしたいと思います。沖縄キャンプの際には「調子があまり良くない」という話がありましたが、現在はどのような状態でしょうか

 オープン戦からヒットは出ていて打率も3割5分くらい残せているのですが、リーグ戦は5カードで最低でも10試合ある中で、それでも2ヶ月間だけの短期決戦だと思います。そういう点でリーグ戦には本当に完璧な状態で入りたいですし、今の段階ではまだまだ足りないことが多いと感じています。リーグ戦は絶好調で入ってようやく3割残せるか残せないかくらいの厳しい世界ですし、相手も打たせないようにボールを放ってくるので、こちらに不安要素があると相手はそこにつけ込んでくると思います。絶対に打てるという確信を持って打席に入らないと打てないのがリーグ戦だと昨年から感じているので、一つボーダーとして掲げている3割を残すためにも、日々調整してしっかり合わせていきたいなと思います。

――城西国際大とのオープン戦後に「一つ手応えを感じた打席があった」という話がありました。それについてはいかがですか

 打席をたくさん立たせてもらっている分気付けることは多くありますし、その中であの試合では一つ「ああ、これかな」みたいなヒントというか「この感覚だなあ」というのが一つ得られた気がしました。ただ、それが一つ見つかったから全部がかみ合うわけではなくて、見つかったものから紐解いて、どんどんつながって最終的に一番いい形につながると思っています。一つ大きなヒントを見つけることはできたので、今はそれを細かく砕いて一つずつ修正し、ようやくかたちになってきているかなという段階ですね。

――昨秋は長打を一つテーマに掲げていました。今春も長打への意識はありますか

 4番を打たせてもらっているので、もちろん長打力が求められると思います。ただ全部が全部長打というわけではなくて、場面や試合展開によって、どのバッティングをするかを選択しながら戦っていくことが大事だと考えています。もちろん長打力をつけていろんなバッティングができる準備をしていくことは必要ですし、調整段階ではありますが、長打力は今季も求めていきたいですね。

「ビッグイニングをつくることが必要」

――次は守備についてお聞きしたいと思います。先程スローイング練習の話がありましたが、具体的に何を意識して取り組んでいるのでしょうか

 基礎練習を反復して、まずは自分の形というか、バッティングと一緒でフォームを固めるための練習をして土台を作る感じですね。いろんなボールが来ても同じ投げ方ができれば同じようなボールがいきますし、そこがスローイングの一番大事であり難しいところだと思います。内野手などもそうですが、イレギュラーの打球が来てもそれなりに対応して、最後は自分の形で投げるというところに持っていくことが、一番スローイングに関しては大事だと考えています。ピッチャーのボールに対して自分の体がブレると握り替えがうまくいかなかったり、リリースポイントが少しずれて、長い距離を投げたときに大きなズレにつながったりしてしまいます。そういう点から基礎をとにかく固めて自分の形を作り、ピッチャーの球がどこに来ても最後は同じ投げ方になるようにすることを冬から大事にしてきました。

――沖縄キャンプの際に「配球の引き出しを増やした」という話がありました。それはどのように行われたのでしょうか

  ピッチャーと相談するというか、僕はピッチャーの方を向いて、反対にピッチャーはバッターの方を向いて守っているので、たまに感じることに違いが生じることがあります。「俺はここでこういうふうに感じてた」といった各々の考え方を共有して、互いに話をしながら進める感じです。ただ、ピッチャーに関してはバッターの心理や打ち方の弱点、「この打ち方でここに体重が乗っているから多分こういうボールを待っているな」というのを投げながら感じ取ることは難しいと思います。基本的に僕は試合中ピッチャーの球を見てはいますが、ピッチャーとバッターをそれぞれ片目で見るような感覚で、バッター反応を見ながら守っています。半分実験的なことなのですが、反応を見ていて「こういうボールがいったらどうなるんだろう」と感じたらとりあえず投げさせてみて、ボールへの対応を見ていますね。それがキャッチャーの面白みだと感じていますし、僕は結構それが好きなのでやることが多いです。そういう実践みたいなことが、引き出しを増やすために今回取り組んだことです。

――オープン戦では新3年生の選手たちがよく声を出している印象です。新チームになったことでの意識の変化はありますか

 去年まで2年生で上級生に引っ張ってもらっていた存在ですし、今年から投手も野手もベンチ入りする3年生が増えたと思います。上級生としては3年生が下と上の連携というか、つなぎ役になる必要があると考えています。下級生には去年自分たちがやらせてもらったように、自分のプレーに集中できる余裕を与えてあげたいですし、そのためには上が頑張らないといけないと思います。その点3年生は1、2年を引っ張りつつ4年生を支えなければいけないのですが、僕も他のみんなも、今年からしっかりと取り組んでいかなければと感じている雰囲気ですね。

――オープン戦では敗れた試合もあったと思います。現時点でチームの課題は何だと考えていますか

 ビッグイニングをつくることですかね。試合はもちろん1点の積み重ねなのですが、チャンスで畳み掛けることができれば2点、3点…と積み重ねられて、その分だけ相手はダメージが大きくなります。ビッグイニングをつくられると流れを引き戻しにくいので、だいぶ有利に試合を進められるようになると思います。チャンスでの一本をつないでいくことが、ビッグイニングをつくって勝ちにつなげるために必要だと感じていますし、オープン戦を通してもまず1点、イニングが空いてまた1点のような、1点ずつ得点する展開が多かった印象です。勝った試合でも割とそのような流れが多いので、そこを2点3点取れるような打力や走力、あとは大事なところで決め切る決定力みたいなものが大事なのかなと思っています。

「重圧にビビっている場合ではない」

城西国際大戦で安打を放った印出

――ではリーグ戦についてお聞きしたいと思います。開幕が迫っている中で、現在はどのような心境でしょうか

 楽しみな気持ちがやっぱり強いですね。リーグ戦は他の試合とは違いますし、オープン戦も負けたらもちろん悔しいのですが、ああいう観客が入った神宮球場で野球ができることは、プレッシャーや緊張を感じるというよりも僕は楽しみです。絶対に負けられないので神経を使って疲れるのですが、それも含めてレベルの高い試合ができていることに楽しさを感じる部分があるので、それがようやく始まるなという気持ちで結構待ち遠しいです。

――打撃において試行錯誤を重ねる中でも、不安より楽しみな気持ちが勝るのでしょうか

  もちろん「結果を残せるかな」とか、去年ベストナインを獲って3割近い数字を春秋と残してきたことで「今年も打たなきゃ」とか、不安のようなものを感じるときもあります。ですが、それを考えたところで何も変わるものはないので。最善の準備をしっかりとすればあとはもう実力勝負なので、不安に思うくらいなら相手のピッチャーとの真剣勝負を楽しむつもりで準備しています。打てるかなとか不安もありますけど、打てなかったら「力が足りねえ」と(笑)。不安なら今やるしかないですし、リーグ戦に入ってからどうこうしても何も変わらないので。今は不安に思うことはあっても、やれることをやって本番に入るだけという感じです。

――攻守ともに責任が大きいと思いますが、今年一年のご自身の役割をどのように考えていますか

 打順が4番ということとキャッチャーをやらせてもらっている点で、攻守ともにしっかりと自分が仕事しないと、チームが機能しないということは十分理解しています。オープン戦でも「あそこで自分が打っていればもっと楽に勝てたな」と感じる試合がありましたし、それほど重要なポジションを3年の時点で任せていただいてることは、ありがたいことだと思います。重圧やプレッシャーにビビっている場合ではないので、今は結果を残すために、できることをしっかりやるという意識です。ポジション的に4番もキャッチャーも野球においてかなり大事なところだと考えていますし、僕が結果を残せばチームもいい方向にいくと思います。自分が勝たせるくらいのつもりで、リーグ戦に入っていけるように準備したいですね。

――現時点での投手陣の調子はいかがですか

 ようやくリーグ戦が近づいて、オープン戦でも本番を想定した継投になってきています。調子としては悪くないと思いますし、あとは神宮のマウンドに立った時に自分のピッチングができるかというところですね。僕はそれをさせられるようにリードしていく必要がありますが、データなどを含めてしっかりと準備していけば、投手陣に関しては試合を作れるのではないかなと思います。

――他大学で意識するチームはありますか

 やっぱり明治大学ですかね。去年試合に出ていたほとんどの選手が残っていますし、昨秋は明治に負けたのが原因で優勝できませんでした。今年は明治をしっかり倒し、明治から勝ち点を挙げて優勝するということをチームでも森田朝陽主将(社4=富山・高岡商)や肥田尚弥学生コーチ(スポ4=大阪・早稲田摂陵)などが口酸っぱく言っているので、明治はチーム全体で一つ意識しているチームかなと思います。

――チームは現在どのような雰囲気なのでしょうか

 とにかく開幕試合が一番難しくて、個人的に今まで野球を経験してきた中でも初戦が一番やりにくいと感じます。リーグ戦でも最初の入り方によって、その後の試合でトントンと流れ良くいけるか、足踏みになるかが決まるような部分があると思います。1試合目の入りはチームでも大事にしていますし、それ以降自分らしい野球ができるように「こういう準備をしよう」とチームでは話をしています。自分たちの野球が初戦からできるように、残りの1週間しっかり調整していこうという感じですね。

――チームの目標はもちろん優勝だと思いますが、個人的な目標は何でしょうか

 個人的には去年ベストナインを獲ることができたのですが、満票ではなくてすごく僅差で割れてのベストナインでした。今回は誰が見ても「こいつがベストナインだ」と思ってもらえるような結果を残したいですし、「一回獲っただけで終わっちゃったね」というのが一番格好悪いと思っています。ここから今季に限らずベストナインを獲り続けられるように安定した成績を残したいですし、昨秋打率がギリギリ3割に乗らなかった(2割9分7厘)ので、また一つ3割を意識してリーグ戦に臨みたいです。首位打者を狙えるくらい、初戦の東大のカードから打ちまくっていけるようにしたいなと思います。

――では最後に、リーグ戦への意気込みをお願いします!

 チームの目標はもちろんリーグ戦優勝ですが、それを達成するためには自分の打撃、守備双方の活躍が必要だと思います。捕手としては投手を引っ張り、バットでは打線を引っ張って、しっかりとチームを勝利に導けるように、とにかく結果にこだわっていきたいと考えています。応援よろしくお願いします!

――ありがとうございました!

(取材・編集 湊紗希、写真 荒井結月、田中駿祐)

笑顔で質問に答える印出

◆印出太一(いんで・たいち)

2002(平14)年5月15日生まれ。185センチ、91キロ。捕手。愛知・中京大中京高出身。スポーツ科学部3年。他大の特に意識する選手に、立大の池田陽佑投手(4年)を挙げた印出選手。代表合宿の際にたくさん話しかけていただいたそうですが、取材では「割といじられたので、リーグ戦ではやり返したいです(笑)」と笑顔で語ってくれました!