1年時から早大の中心として活躍してきた蛭間拓哉(スポ4=埼玉・浦和学院)のラストシーズンも、ついに残すところ最終週のみとなった。ここまで打率1割台と不調に苦しみ、自身のプレーについて「足を引っ張っているだけ」と話す。そんな蛭間に現在の打撃の状態や、最後の早慶戦に懸ける思いを伺った。
※この取材は10月26日に行われたものです。
「なんとか早慶戦では打てればいいかな」
今季はここまで期待していたパフォーマンスとは言い難い
――ドラフトから1週間たって実感は
正直まだあまり実感は沸いていないですね。
――ドラフトはどなたとご覧になっていましたか
同期ですね。結構たくさんいたので、誰とかはないですがいろいろな4年生ですね。折内だったりとか。
――早大の先輩と連絡は
そうですね。徳山さんや西垣さん、他にもいろんな先輩からたくさんのメッセージをいただきました。「率直におめでとう、これから頑張って」という言葉をもらいました。
――ドラフトの時に色紙に書かれていた『恩返し』という言葉はどんな思いで書いたのですか
4年間ずっとグローブに入れていたというのもあって、自分が大学に来られているのは親のおかげですし、色々な人が支えてくれているおかげで自分が今早稲田でこうして野球をやれています。そういうやってもらったことを1日たりとも忘れてはいけないと思っているので、そういう気持ちで。やってもらった人だったり、特に親に恩返しをするという気持ちを込めて、感謝の気持ちも込めて、恩返しという言葉を忘れないために『恩返し』と書きました。
――今季のチームの戦いぶりを振り返って
後輩たちが頑張ってくれていますね。そのおかげで勝てているので、早慶戦ではなんとか4年生がチームを勝たせられればいいなと思います。
――法大戦では2試合連続完封勝利となりましたが、振り返って
下級生がしっかり抑えてくれて、しっかり打ってくれたので勝てたと思います。
――明大戦は痛い負け方でした
それは本当に4年生の責任だと思います。打てなかったのも4年生ですし、打たれたのも4年生だったので、全て4年生の責任かなと思いますね。
――それを受けて4年生の中で何か話しましたか
特に話したというかは、もう4年生が頑張るしかないよねという。この責任は4年生にあるから、4年生がこのみっともない姿をなんとかしようという話はしましたね。
――東大戦はそこから切り替えて勝ち切りました
東大は本当に強いと思っているので、自分たちが春5位のチームと言うことを忘れずにもう一度挑戦者の気持ちでなんとか頑張ろうという気持ちで臨みました。
――立大戦は2試合とも逆転勝利でしたが、振り返って
立大戦は練習での雰囲気があまり良くなくて、正直試合前は不安だったのですが、立大戦は特にチームが本当に一つになったと思っています。4年生がなかなか結果がでない中ではあったのですが、本当に下級生が頑張ってくれて、なんとか先輩のためにという気持ちでやってくれた姿が自分はすごくうれしかったです。このチームで優勝したい、勝ちたいという気持ちがさらに増えましたね。
――見ている方は泣きそうでしたが、選手のみなさんは
いや、自分もめちゃくちゃうれしくて、感動しましたね。後輩たちがこうやって自分たちの代でも優勝したいとか勝ちたいとかいう気持ちを前面に出してやってくれていたので、本当にチームが一つになっているなというのを感じました。
――春に比べて打線につながりが生まれている印象ですが、夏の練習の効果が出ているのでしょうか
そうですね。夏の効果は間違いなく出ていると思いますね。特に自分はオランダに行ったりとチームを離れていることが多くて、練習量が少ないと思うのですが、その中でみんながやっているからこそ、こうやって結果が出ているのだと思います。
――具体的にどこが良くなったと感じますか
技術はもともとあると思うのですが、その技術を発揮できていなかったので。精神的にも、一球の大切さとかそういうものを感じながら、準備を含めてプレーができていると思います。
――ご自身の打撃について
情けない結果で、なんとかチームのためにという気持ちでやっているのですが、なかなか発揮できていないので、もっと自分を冷静に分析してしっかり取り組んでいかないといけないという反省がすごくあります。
――現時点ではどんなところが良くないのでしょうか
納得いっていないですね。打てなくても、「ここが駄目だったからこう修正する」というのがなくて、自信を持った状態で打席に入れていませんでした。「なんか打てなかったな、なんで打てないんだろう」というマインドだったので、それが良くない、しっくりきていない感じですね。今は本当に試行錯誤しながらより良くなるためにやっているところです。
――打てない時はどのような心境ですか
一番は一喜一憂しないことを意識していますね。やはり4番の自分がそういう態度を出したりするとチーム全体が不安になったり、士気が上がらなかったりするので、とにかく態度に出さないように意識しています。でも打てない時はなんで打てないのか周りにアドバイスを求めて、「今どうなっていた」と聞いたりはします。
――聞くとどんなアドバイスが返ってきますか
やっぱりタイミングと力んでいるというのがめちゃくちゃ返ってきますね。
――その中で立大戦の最後の打席で安打が出ました
力が抜けていたかなと思います。とにかく塁に出ようという気持ちがああいう結果になったので良かったです。
――その前にバントを試みたのもそれの現われですか
絶対先頭打者で出るんだという強い気持ちですね。
――その安打が今後につながりそうな感じはありますか
気持ち的に楽になりましたし、ああいう感じでいけばいいんだというのは分かったので、それを意識しながら今は練習しているので、なんとか早慶戦では打てればいいかなと思います。
「9割くらいつらいことでした。もう全部つらかったです」
チームを勝たせる一打を放てるか
――いつも強みや注目してもらいたい点として「全力プレー」を挙げられますが、その原点は
高校の時ですかね。常に全力でやるというか、「ルーズボールを支配しろ」とめちゃくちゃ言われていたので、それを含めて全力プレーというのは意識していました。特に大学に入って、徳武(定祐氏、昭36商卒=東京・早実)コーチから行き帰りの全力ダッシュとか、次の塁を狙うとか、常に全力でプレーしろというのは1年生の時からずっと言われていたので、それを意識した結果が今につながっているのかなと思います。
――アンケートには「副主将力」を見て欲しいと書かれていましたが、蛭間さんが思う副主将力とは
主将がやらないことをやるというか。主将がチームをまとめてきついことを言うのですが、それを支えながら周りをしっかり見るという役割が副主将力ですね。
――4年間、不調の時期やケガも多かったと思いますが、その中でもつらかったことは
ほぼほぼつらいことばかりだったので。いろいろありすぎて、つらいことが。9割くらいつらいことでした。もう全部つらかったです。
――特に副将として悩んだことは
チームがまとまっていない時ですかね。春は多分自分のことばかりになっていて、「自分が自分が」というふうに一人一人がなっていて、結局まとまりがなかったので。そういう部分ではチームをまとめる大変さはいろいろありました。
――まとまっていないチームに対してどんなアプローチをしていましたか
とにかく一人一人と話して、コミュニケーションをとって、どう考えているのかというのを聞いたりしました。
――つらいこと、大変なことをどうやって頑張ってきたのですか
勝ちたいとか、プロになりたいとか、そういう思いですかね。大学に来ているのも親のおかげなので、親のためにも頑張ろうという気持ちでやっていました。
――だれかのためにというのは常に意識していることですか
そうですね。自分のためというよりかはみんなのために頑張った方が結果が出ると思うので。
――高卒でプロに行かずに早大に入るという選択について、早大に入って良かったと思いますか
思います、めちゃくちゃ。実力も伸びたので。どこが伸びたとかはあまりないと思いますが、取り組み方や考え方も含めて知識が増えたと思います。
――特に大切にしている考え方などはありますか
自分を冷静に分析することですかね。そこがなくなってしまったらどんどん悪い方向に行ってしまうと思うので、それはすごく大切にしています。
「悔いの残らないように全力プレーで必ず勝てるように」
プロ入り前最後に有終の美を飾れるか
――ここまでのチームの戦いぶりに点数をつけるとしたら何点ですか
80点くらいですかね。20点は明大戦で負けたところだと思います。あそこで負けていなければ100点なのですが。でも他は勝っているので80点くらいにしておきます。
――ご自身のプレーに点数をつけるとしたら
1点でお願いします。立大2回戦で出塁したり、ある程度そういうのはあって、他の試合でもちょくちょく仕事はしたので1点です。とりあえず1点はあげてください(笑)。
――厳しいのでは
自分に厳しいので(笑)。もうダメダメです。最悪です。足を引っ張っているだけです。
――早慶戦に向けて、現在の心境は
最後の早慶戦なので、早稲田でこの仲間とやるのも最後なので、悔いの残らないようになんとか全員で頑張って、そして監督さんを胴上げしたいなと思います。
――今はどんな調整をしていますか
今はいろいろなことに取り組んでいます。自分が良くなるためにいろいろ試行錯誤しているところなので、それを毎日毎日やっています。
――何か変えたことはありますか
いや、変えたというよりは、良かった時のものをイメージしながらやっています。
――左投手が苦手ということですが、先発しそうな増居翔太投手(慶大)に対する対策はしていますか
特に特別なことはしていないですが、普通にデータを見たり、増居が投げている動画を見てイメージしたりはしています。
――現在のチームの雰囲気はいかがですか
いいと思います。なんとか勝とうという気持ちでやっているので、悪くはないです。
――今年の慶大の印象は
バッティングがもう、めちゃくちゃいいですね。そういうイメージです。
――逆に早大の特徴は
他のチームに比べて力はないので。そういう意味では挑戦者の気持ちで「勝つんだ」という気持ちはあると思います。
――早慶戦に向けて意気込みをお願いします
学生生活最後の早慶戦になるので、本当に悔いの残らないように全力プレーで必ず勝てるように。自分の役割を果たして、監督を胴上げしたいと思うので、頑張りたいと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 是津直子)
◆蛭間拓哉(ひるま・たくや)
2000(平12)年9月8日生まれ。176センチ。埼玉・浦和学院高出身。スポーツ科学部4年。小さいころの将来の夢は「消防士」だったという蛭間選手。小学2年時にプロ野球を観戦してからは、「プロ野球選手」を目指すようになったそうです。その夢を実現させた今、持ち味の打力と全力プレーで宿敵撃破へと導いてくれるでしょう!