【連載】秋季リーグ戦開幕前特集『復権』【第11回】中川卓也主将

野球

 チームが勝つために、時に厳しく、時に優しくナインに言葉を掛け続けている中川卓也主将(スポ4=大阪桐蔭)。「地獄のキャンプ」を経て技術的・精神的に成長した中川は本職の3番・サードに戻り、チームの安定感も増した。勝てるキャプテンとなり、有終の美を飾ることができるか。ラストシーズンへの意気込みを伺った。

※この取材は9月6日に行われたものです。

本当に収穫と課題があるいいオープン戦だった

春は自身にとってもチームにとっても悔しい結果となった

――まずチームの現状について伺います。チームとしてオープン戦を振り返っていかがですか

 勝ちに拘ってやっていく中で、15試合を戦って10勝4敗1分けでした。もっともっと勝たないといけないですが、連敗がなかったというのも大きな収穫ではあったので、本当に収穫と課題があるいいオープン戦だったかなと思っています。

――打線がつながっていますが、昨季とどこが違いますか

 相手ピッチャーに合わせて、徹底できているのが一番大きな要因かなと思っています。

――チームの雰囲気はいかがですか

 勝つことによって自信にもつながりますし、負けることによって危機感も生まれるので、本当に雰囲気とか自信もあります。もちろん課題はつぶさないといけないところもあるので、チームとしてはいい方向に進んでいるのかなと思います。

――春に5位という悔しい結果になり、チームに対してどういうアプローチをしていますか

 この代は弱いチームだよ、5位のチームだよというのは口酸っぱく言い続けてやってきたので、本当に勝っても驕ることなくやりきれたかなとは思います。

――下級生が多く、なかなかメンバーが決まらない状況ですが、チームをまとめる上で気を付けていることはありますか

 下級生には伸び伸びやらせてあげたいですし、今はスタメンが固定されていない状況なので、チャンスをもらった選手には自分のために結果を残して来いという言葉を掛けて打席に向かわせています。それぞれが自分の色というか、自分の特長を存分に出してくれているかなと思います。

――チーム作りにおいて学生コーチや副将と話し合っていることはありますか

 やっぱり驕ってはいけないというか、勝っていくにつれて自信が過信になってしまったり、そういうところもなきにしもあらずというか、あることも可能性としてはあるので、そこは勝ったときこそ反省をして、負けたときには反省を短くして練習をしようということは言っていました。

――次に個人について伺います。オープン戦が一段落して、どのように過ごしていますか

 どのように過ごしている(笑)。オープン戦からもそうですが、やっぱりリーグ戦に照準を合わせてやってきたので、本当にリーグ戦週になって、いよいよだなという感じで過ごしています。

――キャンプでは何を重点的に取り組んできましたか

 大きくバッティングフォームを変えている最中だったので、そこを完成させようと思ってキャンプを過ごしていました。

――東京六大学オールスターゲーム(オールスター)の時に左腕が上がっていると思ったのですが、そこですか

 よく見ていますね(笑)。前までよりはこっち(左腕を上げる動作)を開けてスムーズにというか、体全体を使って振るのを意識しています。

――夏のオープン戦で1日4出塁を記録するなど、安打・四球と結果が出ていると思うのですが、調子はいかがですか

 バッティングフォームを変えてから本当に飛距離自体も伸びるようになりましたし、目に関してもよくボールが見えている状態で、四球も取れたり、ヒットも打てていたりしています。でもリーグ戦は2カ月あるので、調子を落とさないように。波はあるのですが、その波をどれだけ少なくできるかというのがリーグ戦を戦っていく鍵というか、キーポイントになると思うので、そこを本当に拘ってやっていきたいと思います。

――精神的に変えた部分はありますか

 春までは打てなくてもチームが勝てばいいと思っていたのですが、本当にそれでマイナスになってしまっていました。考え方一つなのですが、自分が打てばチームが盛り上がって勝ちが近づくというように。チームが勝つために自分が打つという考え方になりました。

――オープン戦でインコースを多く打っていると感じたのですが、狙っていますか

 そういうことではないのですが、甘い球が来れば、インコースが反応できれば打つっていう感じなので。特にインコースを狙っているという訳ではなくて、アウトコースでもタイミングが合えば打ちにいきますし、インコースでもタイミングが合わなければ打ちにいかないので。そこはタイミングの問題かなと。タイミングがたまたまインコースが多く合っているので。外もタイミングが合えば打っていきたいなと思っています。

サードに戻ることによって、自分のパフォーマンスにもいい影響がある

高校時代より慣れ親しんだポジションで復調となるか

――セカンドからサードになってご自身の中で守備において心境の変化はありますか

 セカンドはやること考えることが多いので、どうしても自分のパフォーマンスにもやっぱり慣れていない分、影響が少なからずありました。サードは簡単に言えば捕って投げるだけなので。サードに戻ることによって、自分のパフォーマンスにもいい影響があるかなと思います。

――オールスターで他大学の選手と話して、影響を受けた部分はありますか

 バッティングのこととかを話したりしていて、それぞれが自分の感覚を持っていて、すごいなと思ったのと同時に、ここは見習えるかなとかここは真似できるかなと思ったことを帰ってから真似したり、似たような感覚で打ってみてどうかというのは試したりはしました。

――プロ野球ドラフト会議を1カ月半後に控えていますが、心境はいかがですか

 気にするなと言われるほうが無理なので、そのプレッシャーというか、そこをどれだけ自分の力に変えられるかというのも上の舞台に立てる人間の一つの特徴というか持っていると言われる選手の一つの特徴だと思います。この秋、爆発的な活躍がない限り、志望届を出しただけになってしまうのが正直なところなので、爆発的な活躍をしたいと思っています。

――次にリーグ戦に向けて伺います。まずピッチャー陣について、加藤孝太郎(人3=茨城・下妻第一)選手は今季も先発として投げると思いますが、どんな役割を期待していますか

 春は先発の経験がなかなかいない中で、本人としてもエースという自覚がなかったと思うのですが、秋は早稲田のエースとしてそれに見合った結果を残してほしいと思っています。

――伊藤樹(スポ1=宮城・仙台育英)選手が先発に回ると思います。期待することを教えてください

 1年生なのですが、リーグ戦に出れば1年生も4年生も関係ないので。樹がマウンドに立っているときは自分がエースだという気持ちで、チームを背負って、プレッシャーもかかるところもあると思いますが、それもしっかり力に変えて投げきってほしいなと思います。

――リリーフ陣はどう見られていますか

 決定的というか、大黒柱というか、絶対的なリリーフというのはいないのですが、いないからこそ調子が良い選手がどんどん上がって来れると思うので。逆にチャンスと捉えて、今メンバーに入っていない選手もメンバーに食い込むチャンスというのはいくらでもあると思うので、そこを泥臭く結果に拘ってリリーフはやってもらいたいなと思っています。

――印出太一(スポ2=愛知・中京大中京)選手には若き正捕手としてどんな役割を担ってもらいたいですか

 さっきの樹と同様なのですが、グラウンドに立てば1年生も2年生も4年生も関係ないので、守備の要として役割を担ってほしいと思っています。バッティングも調子がいいですし、守備も盗塁刺したり、ワンバンしっかり止めたりしたり頑張ってくれているので、東伏見でやっているようなプレーを神宮でも発揮してほしいなと思います。

――春は少ないチャンスをものにする野球を目指していましたが、秋も変わりませんか

 少ないチャンスをものにするというのは変わらずですが、大前提として守備でゼロに抑えれば負けることはないので。エラーであったり見えないミスが野球は失点につながりやすいと思っているので、そういうところをなくして、ありきたりな言葉になってしまうのですが、守備からリズムを作って攻撃に移っていくという野球を目指してやっていきたいです。

1年生から4年生まで部員全員で一丸となって戦って、勝ちに拘ってやっていきたい

ラストシーズン目指す先はただ一つだ

――リーグ戦まで4日しかありませんが、チームとして取り組みたい部分はありますか

 リーグ戦始まるまでは3日4日しかないのですが、リーグ戦が終わるまでは2ヶ月あるので、そこで成長しないと優勝はないと思っています。リーグ戦期間中もただリーグ戦に勝つだけではなくて、成長するという気持ちも持たないとリーグ戦は戦い抜けないと思うので、技術とか見える力というのは本当に成長速度も遅いと思うのですが、見えない力というのは成長速度もぐんと上がるときは上がると思うので、そこを信じて残りの3日4日頑張っていきたいと思います。

――中川選手が思うキーマンはどの選手ですか

 うーん。まあ3番4番じゃないですかね。自分と蛭間じゃないかなというふうには。やっぱりそこが打てばチーム自体雰囲気的にも盛り上がりますし、得点に近づくのはやっぱり3番の安打、出塁というのが必須になってくると思うので。二人の中でもどちらも打てなければ負けるくらいのプレッシャーを背負って、そのプレッシャーを力に変えてやっていきたいと思っています。

――他の大学に負けない強みはありますか

 春が終わって夏にかけて、隙を作らないというか、一球にこだわる隙を作らないチームというのを本当に作り上げてきた自信はあります。そういうちょっとした隙も見せない、ちょっとした隙をつく野球というのはどのチームにも負けないという自信はあります。

――打順が中村将希(教3=佐賀・鳥栖)選手と入れ替わったのは監督のどんな意図がありますか

 どんな意図があってなんですかね(笑)。まあでもジグザグにしたいっていうのは考えていたとは思うんですけど。左が並ぶよりかは2番に将希を置いて、まあジグザグ…あいつ3番の方がジグザグになるのか(笑)。調子ですかね。将希自体はチャンスメイクの方が得意なバッターなので、1、2番に置いたほうがチャンスメイクして3番の自分がチャンスを広げて4番5番で返すというのが理想的なイメージですね。

――2番から3番になって、役割の部分で意識することは変わりましたか

 基本は変わらないというか、次のバッターにいい形でつなげるという意識は変わりませんが、2番の方がサインプレー、バントだったりバスターだったりエンドランというのが多いので。それよりかは3番のほうがどっしり構えて打てるので、そこの違いはあるかなと思います。

――リーグ戦を控えて、監督からどんなお話がありましたか

 これはもう常々言われていることなのですが、改めて言われたのはやれることをしっかりやろうというか、やれないことは要求しないからやれることをしっかりこなしてくれというのは言われました。

――個人的に注目してほしいポイントを教えてください

 2番と違って3番でどっしり構えて打てるので、打率、出塁率、そういった面で活躍したいですし、できる自信はあるので、その辺を見てもらえたらいいですね。

――チームの目標、個人の目標を具体的にお願いします

 チームの目標は本当に毎回言っているかもしれませんが、日本一への切符を掴むためにリーグ戦優勝をひとまず目指してやっていきたいと思っています。個人としては、何割打つとかそういうのを決めたらそればっかり拘ってしまってちょっとよくない気がするので、チームが勝てるようなチャンスでの一本だったり、チャンスメイクだったり、そういうところを意識してやっていきたいなと思っています。

――最後にリーグ戦へ向けて意気込みをお願いします

 リーグ戦までは本当に残り3日くらいしかありませんが、さっきも言った通り、見える力は大体決まっているのでその見えない力をチームでどうやって作り上げてどうやって発揮できるかというのが本当に勝負の鍵になってくると思います。25人だけではなくて、1年生から4年生まで部員全員で一丸となって戦って、勝ちに拘ってやっていきたいと思っています。

――ありがとうございました!

(取材・編集 臼井恭香)

◆中川卓也(なかがわ・たくや)

2000(平12)年7月28日生まれ。175センチ、75キロ。大阪桐蔭高出身。スポーツ科学部4年。内野手。右投左打。キャンプでバッティングフォームの改造に取り組んだ中川選手。オープン戦も好調で本人も手応えを感じている様子。あとは実力を神宮で発揮するのみ。日本一への切符を手にするために、まずはリーグ優勝へ。頼もしいキャプテンの勇姿に注目です。