【連載】秋季リーグ戦開幕前特集『復権』【第2回】雪山幹太

野球

 第2回に登場するのは雪山幹太(教4=東京・早実)。高校時代には早実高のエースとして活躍した右腕だが、神宮のマウンドには未だに立てていない。4年間の集大成となるラストシーズン、どのような思いで臨むのか。この夏の取り組みと共にお話を伺った。

※この取材は9月2日に行われたものです。

負けない選手になれたら

ここまでリーグ戦での登板がない雪山のラストシーズンにかけるものは人一倍だろう

――最近のマイブームはありますか

 あまり思い当たるものがないですね(笑)。

――オフの日は何をされているんですか

 最近は車の免許を取りに行ってます。本来であれば高校を卒業した時に取りたかったんですけど、ちょっと取れなくて今のこの時期に取りに行っているという感じです。

――運転は楽しいですか

 楽しいのと怖いのと半々ですね(笑)。路上に出ているので、事故を起こしちゃだめだと思うと怖いです。

――試合前に聞く音楽はありますか

 特にこれっていうのはないですね(笑)。

――テンションが高めの曲を聴く方が多いですが

 結構ONEOKROCKが好きで、試合前には聞いたりするかもしれません。

――以前伊藤樹(スポ1=宮城・仙台育英)選手や伊藤大征(社3=東京・早実)選手もONEOKROCKが好きで練習中に音楽を聴いているということ伺ったんですが、野球部全体で流行っているのでしょうか

 野球部全体ではないかもしれないですけど、たしかにその二人とはたまにONEOKROCKの話をしたりしますね。

――仲のいい選手を挙げると誰になりますか

 今安部寮に住んでいるんですけど、齋藤恵太(社4=東京・早実)も同じ寮に住んでいて、やっぱり高校から一緒ということもあって一緒にいることが多いかなと思います。

――お二人で出かけたりするんですか

 特にどこかに出かけるというのはないんですけど、オフ前に一緒にご飯を食べに行ったりとか、時間があれば買い物に行ったりします。

――ここからプレーのお話をお聞きしていきます。まず自身をどのような選手だと思われていますか

 強みとして技術うんぬんではなくて、高校からピッチャーだけではなくてたくさんのポジションを経験してきたので、マウンドに立って自分の投球のこと以外にも試合の状況とか、後ろで守っている野手ともしっかりコミュニケーションをとりながら守備ができるというところが強みかなと思います。

――いろんな視点から見られるんですね

 そうですね。キャッチャーをやっていたというのが一番大きいなと思うんですけど、自分の投げたい場所に投げられればこの辺に飛ぶだろうなという予想が他の人よりはできるほうかなと思います。そういうのを察知したときは、野手に声をかけたりしています。

――雪山選手が目指している野球選手はいらっしゃいますか

 プロ野球選手で言うと、もう引退しているんですが元ソフトバンクの斎藤和巳という選手が好きです。「負けないエース」という異名を持っていた選手で、投手である以上勝たせるということももちろんそうですけど、0に抑えることで負けない投手になるということが一番役目として大きな部分かなと思います。なので齋藤選手みたいに負けない選手になれたらなと思います。

その悔しさというのは今に生きている

リリーフでの登板が中心になるか

――春季リーグは出場がありませんでしたが、チームをどのように見ていましたか

 開幕前から監督やOBの人から投手が不安だと言われ続けてきていた中で、春のリーグ戦思っていた以上の結果を残せたというのは、投手陣の中で自信になったのかなと思います。

――打撃の面では、野手陣は苦しい時期も続いたと思いますか

 自分はもともと野手をやっていたので、打撃は水物というか調子の波があるというのは分かっていて、そこをどう投手がカバーできるかというのが僕らの役目だと思います。なので分業じゃないですけど、投手は投手、野手は野手で全力を尽くすことが大事なのかなと思ったシーズンでした。

――雪山選手は出場できない中で、悔しさはありましたか

 悔しい面しかなかったというのが正直なところです。春先にケガをしたのもあってそれの調整不良で投げられなかったというのがあって、観客席で見ることしかできなかったので、その悔しさというのは今に生きているのではないかと思います。

――この夏について振り返っていただきたいと思います。この夏に重点的に取り組まれたことは

 やっぱりコントロールの向上というところですかね。球速をあげるということも投手として大事だと思うんですが、やっぱりコントールがよくなければ試合をつくることができないなというのは、この4年間を通してつくづく感じたことだったので、そこに対して重点的に取り組めたかなと思います。

――具体的な練習方法はありますか

 フォームの確立というところが一番だと思います。今までは結構力で投げていた部分があったんですけど、力ではコントロールをどうしても安定させることはできないなと思っていました。なのでしっかりフォームを確立させて力ではなくて身体の動作の中でコントロールできたらなというところでフォームを見直しをしました。

――8月のはじめから初めての合宿に行かれたと思いますが、合宿はいかがでしたか

 率直にしんどいというところが一番あったかなと思います(笑)。12泊13日というロングスケジュールの中で身体を休める日がなかったというのが一番大きくて、合宿なので身体を追い込むというところが一番の課題ではあったので、そこに関してはロングスケジュールの中で達成できたかなと思います。

――やはり合宿は普段の練習とは違いましたか

 投手と野手で二つに分かれてという練習が多かったので、投手陣の中での仲の良さというかチームワークがすごく培われたかなと思います。もちろんとも野手との結束もあったんですが、投手の中でこの試合はなんとしても投手陣で勝たせるぞというような思いが強くなった時間だったかなと思います。

――合宿中はどこかに観光に行かれたりしたんでしょうか

 あまり周りにいろんなものがあるような場所ではなくて(笑)。行くとしても近くのコンビニが精一杯という感じでした。あと僕はあまり行かなかったんですけど、泊まっていた宿がスキー場のような感じで、そこがずっと草っぱらになっていたのでそこに夜空を見に行く選手はちらほらいましたね。

――雪山選手は行かなかったんでしょうか

 そうですね。疲れ切っていましたね(笑)。

――夏のオープン戦では中継ぎとして登板されていましたが、ここまでを振り返るといかかでしたか

 いい試合もあれば悪い試合もあったんですけど、全体を通してケガなくやってこれたのはよかったです。投げ切れたというところは大きかったです。

――先ほど少しお話もありましたが、現在のご自身の課題はどのようなところだと思いますか

 やはりコントロールだと思います。本当に任されるイニングは短いと思うので、どんどんストライクゾーンで押し切っていければなと思います。自分はチームの中でも球速が目立った選手ではないので、ストライクゾーンで押していくという投球スタイルでやっていけば自ずと結果もついてくるかなと思います。

最後笑って終われるように全力で駆け抜けていきたい

最後のリーグ戦まずは登板を果たしたい

――リーグ戦を迎えるにあたってご自身の完成度は

 80%~90%というところかなと思います。フォームというところはあともう少しというところまで来ているかなと思っていて、リーグ戦が始まるまでにあとの10%を詰めていければなと思います。

――チームとしての完成度は

 チームに関しては95%というくらい仕上がってきているかなと思います。中川(卓也、スポ4=大阪桐蔭)や蛭間(拓哉、スポ4=埼玉・浦和学院)だったり4年生を中心に勝つ集団としてまとまっているなと思います。ゲーム内容を見ていても、特に攻撃陣は打線がつながっているなというのを感じていて、そういういところはだいぶ仕上がってきているなと思います。

――投手陣についてはどのように見られていますか

 投手陣もかなりいいとこまで来ているかなと思います。先発投手が安定していて、リリーフも抑えられているので、そこをリーグ戦で発揮できればいいかなと思います。

――投手陣の中でアドバイスしあうということはありますか

 投手コーチの横山(優斗、社4=東京・早実)から言われていることではあるんですが、ストライクで押していくというか、ストライク先行で投げるということが抑えるということにもつながってきますし、逆に自分を助けることにもなるというアドバイスを投手陣の中で共有しています。

――野手陣とのかかわりは

 野手の練習を見ていないのでアドバイスとかはあまりないんですけど、攻撃というよりも守備という面で練習の中で連係プレーなどの練習に注力しています。守備の面で連係しあうというのも勝つために大事なことだと思います。

――再び投手陣の話にありますが、下級生の選手が増える中で、下級生の選手とのかかわり方というのは

 のびのびやってもらうのが一番かなと思います。4年生で投げているのはみんなリリーフで、先発を投げているのは下級生ばかりでいろんなプレッシャーがあると思うんですけど、のびのびやってもらうことが一番かなと思います。積極的にコミュニケーションをとって緊張をほぐせたりしたらいいかなと思います。

――チームの中で注目選手をあげるとしたら

 一人挙げるのは難しいんですけど、結局はやっぱり4年生かなと思います。今のチームの中で必ず試合に出ると言われているのは中川、蛭間だけで、他の選手は途中から出ていくことになると思います。途中から出ていく4年生がどれだけ活躍できるかというとろが大事だと思って、チームが盛り上がるのも4年生が活躍することが大きいなというのを練習試合でも感じていて。僕自身も野手も、途中から出ていく選手がしっかり結果を出すということが、秋の勝ちにつながっているかなと思います。

――チームの中でライバル視している存在は

 ピッチャーの層は厚くて、特に4年生ですね。今一軍で投げている選手が4人くらいいるんですけど、その4人のうち誰がベンチに入るか誰が投げるかというのは決まっていない状況なので。もちろん下級生のピッチャーもライバルですけど、最後は4年生で競いあって最後まであきらめない姿勢というのを見せられたらなと思います。

――他大で戦ってみたい、注目しているという選手はいますか

 慶応の抑えをやっている橋本達弥ですね。彼は小さいころから知っていて小学校のときから切磋琢磨してきて、今は日本代表に選ばれるようなすごい選手になっているんですけど、どこかで投げ合えればうれしいなと思います。

――最後のリーグ戦になりますが、そこにかける思いはどのようなものがありますか

 最後のシーズンで僕自身この秋で野球を引退するということろで、本当にラストのシーズンになると思うんですけど、集大成というか今まで支えてきてもらった方々、同期や家族に感謝をしつつ、最後恩返しをできるように戦いたいと思います。

――雪山選手個人の具体的な目標は

 まずは登板ができればなと思うんですが、登板すれば早稲田大学野球部の一代表選手として出場することになると思うので、責任もプレッシャーもあると思うんですけど、それを力に変えて全力で腕を振っていきたいなと思います。

――最後に意気込みをお願いします

 本当に泣いても笑っても最後なので、最後笑って終われるように全力で駆け抜けていきたいなと思いました。

――ありがとうございました!

(取材・編集 玉置理沙子)

◆雪山幹太(ゆきやま・かんた)

2000(平12)年5月17日生まれ。169センチ、74キロ。東京・早実高出身。教育学部4年。投手。右投げ左打ち。未登板に終わった春季リーグを「悔しさしかなかった」と振り返った雪山選手。秋季リーグではその悔しさを糧に、神宮の舞台で躍動します!