【連載】春季早慶戦直前特集『矜持』【第1回】原功征副将

野球

 今回登場するのは左の中継ぎとしてチームを支える原功征副将(スポ4=滋賀・彦根東)だ。序盤は振るわなかったが、東大戦以降は立ち直り好投を続けた。また、チームとしては開幕前から懸念されていた投手陣が粘りの投球を見せている。今回は原選手にこれまでの東京六大学春季リーグ戦(リーグ戦)の振り返りと早慶戦への思いについて伺った。

※この取材は5月18日にオンラインで行われたものです。

リリーフで投げる以上、点を取られてはいけない

下級生中心の投手陣の中で経験豊富な原の存在は重要だ

――今の成績について

 リリーフで投げる以上、点を取られてはいけないと思っているので、最初の2登板が両方失点してしまったので、そこは自分の思い通りに行かなかった部分もあるのですが、その後の登板で0に抑えられているというところで、少しリーグ戦の中で修正できた部分もあってのこの数字だと思います。

――シーズン初登板となった法大2回戦で海崎雄太選手(4年)に本塁打を打たれましたが

 自分としては打たれた球は悪くないという感覚があったのですが、自分が印出(太一、スポ2=愛知・中京大中京)のサインに首を振って真っ直ぐを投げて打たれているというところで、球種の選択ミスかなというところはあります。

――明大1回戦でも苦しい投球となりました

 法大2回戦の時は自分でもコースにボールはいっていて、微妙なところで四球が出ていて、点を取られたのはダメなのですが自分の中では悪くはない投球でした。明大戦では、宗山(塁、2年)選手に適時打を打たれて自分の役割を果たせなかったなということですね。

――しかし後半戦では立ち直りましたが、何か練習を変えたなどはあったのでしょうか

 自分の中では特に変えた部分はなくて、東大戦や立大戦では自分の中で力が発揮できるいいメンタルで臨めたのかなと思います。

――立大2回戦では急きょ回またぎの登板となったように見えたのですが

 伊藤から代わる時もそうだったのですが、ベンチワークがうまくいってなくて、バタバタした投球になってしまいました。

――リーグ戦前に課題に上げていた制球力についてはどうでしょうか

 自分の目指すところは離れていると思うのですが、要所でコースに真っ直ぐを投げられたり、 ボール球の変化球を振らせたりというのは少しずつできているのかなと思います。

自分なりの準備は昨年に比べてできるようになった

東大2回戦で好投を見せた原

――チームの話に移ります。開幕前からの予想と反し投手人は健闘を続けているように見えますが、理由はあるのでしょうか

 投手陣として危機感を持ってなんとかしようとした結果が、自分たちでいうのもおかしいかもしれないですが健闘につながっているのかなと思います。

――リーグ戦前と後で練習が変わったことなどはありましたか

 別に練習が変わったわけではないのですが、いい意味で四球を恐れなくなったり、ここは出していい時という割り切りだったり、勝負する場面で開き直って自分のボールを投げられたりという部分は、オープン戦とは違う心の持ちようなのかなと思います。

――今の投手陣の様子はどのような感じでしょうか

 中々野手が思うようにいっていない中で、投手陣が踏ん張ってどうにか勝ちをという部分は共通して持っていて、チームの数値的には悪くないと思うのですが、ここ一番で踏ん張れなかったり、追加点を与えてしまったりという部分が今の課題かなと思います。

――原選手自身は何かアドバイスを送るなどはしているのでしょうか

 後輩たちばかりということもあって、東大戦の時のインタビューでも言ったのですが、後輩に苦しい場面を任せている部分もあって、うまくいかなかった時には「大丈夫、次がある」などの言葉を常にかけるようにしていて、負けが続く中でも下を向かないような声かけを心がけています。

――具体的には、加藤選手(孝太郎、人3=茨城・下妻一)の健闘ぶりは目覚ましいですが、これについて原選手はどのようにお考えですか

 元々1年生からベンチに入る投手なので力があると思っていて、それがようやくこの春に結果を結びついていて、自分としてはそこまで驚きはないかなと思います。加藤の一番の強みは両サイドへのコントロールなので、それがしっかりできたら打たれないということは投手陣全員が分かっていたので、それがうまくいっているということだと思います。

――原選手にアドバイスは送っていますか

 加藤が好投手なので(笑)。アドバイスというか、イニングの間にコミュニケーションだったり声かけだったり、途中から1戦目を先発するようになって、バッターこんな感じだったと、自分が対戦した時にどう対応していくかというコミュニケーションをとっています。

――開幕前に注目していた伊藤樹選手(スポ1=宮城・仙台育英)はどうでしょうか

 樹ならやってくれるかなと思っていたので予想通りかなと。1年生なのにマウンドでの気の強さとかは先輩から見ても頼もしいなと思います。

――それ以外にも、中森選手(光希、文構2=大阪・明星)や伊藤大征選手(社3=東京・早実)も登板機会を増やしています

 中森にしても伊藤にしても、二人ともうまくいったりいかなかったりというところがあるのですが、それを踏まえても経験だと思うので、リーグ戦が始まる前からは成長を感じますし、自分も最初はうまくいかなかったので、そういう意味では次につながるいい経験ができているのかなと思います。

――4年生では佐竹選手(洋政、商4=東京・早大学院)がリーグ戦初登板を果たしました

 人数はいるのですが、中々出てこられないという中で佐竹が東大戦を0に抑えてくれて、ブルペンで一番練習してきた期間も長いので、同期として嬉しいという気持ちもありつつ、佐竹ならもっといい投球ができると思っています。

――ブルペンワークなどはどのような感じでやっていますか

 基本的に誰を作らせたりとかの準備は横山(優斗投手コーチ、社4=東京・早実)がやってくれているので、自分は自分のことに集中して、展開を見て気持ちを入れて行ったりとか自分なりの準備は昨年に比べてできるようになったなと思います。

――今年から正捕手を務める印出選手はどうでしょうか

 最初は緊張もあってバタバタしているというか、リードが単調になるというところもあったのですが、少しずつ雰囲気にも慣れて、元々持っている力も凄い選手だと思うので、落ち着いた環境でできれば発揮できるなと思っていたので、自分たち投手陣にとっても安心感につながっていて。打撃でも調子が上がってきているので、リード面に生きているのかなと思います。

――一方で野手陣はかなり苦しい戦いとなっていますが

 神宮の舞台で力を発揮できていないなと。東伏見で試合をしている時は打てており間違いなく力のある打線なので、投手陣としてももどかしい気持ちにはなりますが、それ以上に野手のみんなが苦しんでいるので、なんとか投手陣で助けられるように。安打も出ないという状況だったのですが、立大戦ではらしい安打も出るようになったので、早慶戦ももっと打てるかなと思います。

――原選手から見て、原因は何だと思われますか

 緊張というか、気持ちが空回りしているのかなと。あれだけ試合をやっていれば緊張というのはないですが、打ってやろう打ってやろうという気持ちがボール球に手を出したり甘い球を打ち損じたり、力が入るのは仕方ないとは思うのですが、でもそこをもう少しコントロールできるようになったら打てると思います。

――特に、4年生野手が苦しんでいるように見えます

 結果が出なくて一番苦しんでいるのは、中川(卓也主将、スポ4=大阪桐蔭)や蛭間(拓哉副将、スポ4=埼玉・浦和学院)や松木(大芽、スポ4=石川・金沢泉丘)だと思うので、自分もどのように声かけすればいいかわからないですが、徐々にみんな当たりが出始めているので。特に松木に関しては途中からレギュラーで出続けているのに、中々いいところで結果が出ない中で、立大戦ではいい当たりが出て、守備でもファインプレーが出て、4年生としてもチームとしても調子が出ているので、早慶戦に期待したいですね。

――ところで、副将にはもう一人折内選手(健太郎、文構4=福島・磐城)がいますが、折内選手の働きぶりはどうでしょうか

 やっぱり一番は声の部分だったり、ベンチに入ったりするとベンチワークを仕切る人間としての役割が大きくて、やっぱり折内がいるとチームが活気付きますし、誰よりも一生懸命練習だったりに対してやる選手なので、チームになくてはならない存在ですね。

慶應には絶対に負けたくない

破壊力のある慶大打線を抑えるには原の活躍は欠かせない

――早慶戦が近いですが、どのような早慶戦にしていきたいですか

 リーグ戦を通して調子を上げて早慶戦に臨めると思っているのですが、優勝が懸かっていない試合になってしまうので、慶大に勝つ対抗戦の意味合いは大きいのですが、早慶戦で試せるもの、次につながるものを早慶戦で見せていきたいなと思います。

――早慶戦に向けて感じることはありますか

 本番にならないと感じないのかなと。同期の朝日(晴人、4年)が首位打者争いをしているので、いつにも増して対戦したいなと思っています。

――小宮山悟監督(平2教卒=千葉・芝浦工大柏)からは早慶戦の話はありますか

 まだ早慶戦の話はないですね。口数が多くない監督なので。ただ人一倍慶應に対する気持ちは強い監督なので、「お前ら分かっているよな?」ということなのだと思います。

――原選手が早慶戦にかける思いはありますか

 チームとしてもそうですし、自分は個人的に慶應には絶対に負けたくないと思うので。自分が大学に入るのも慶應の存在があったので、春は早慶戦を経験したのですが、それ以上の投球ができればなと。

――今年の慶大の印象はどうでしょうか

 よく打つなと。本塁打が13本、とんでもないなと。うち2本なんで(笑)。萩尾選手や廣瀬選手は長打力がすごい選手なので、そこに打たせてはいけないなと。明大戦は練習が終わってテレビで見ていたのですが、すごい粘りだなと。9点差ついても何とか返して追いついてやろうという打者陣、チームの気迫が慶應の強さかなと。

――ライバルを聞くと、おそらく増居選手(翔太、4年)と朝日選手になると思うので、それ以外で意識している選手はいますか

 自分はどうしても左打者相手に出てくるのがメインとなってくるので下山(悠介、4年)、山本(晃大、4年)というところはいいところで打つなど勝負強いので、そういうところがピンチで出てきても抑えられるように準備がしたいなと思います。

――一方、早大で勝利のキーパーソンはいますか

 間違いなく加藤の出来が外せない部分だと思うのですが、4年がどれだけ頑張れるかと。春からずっとキーパーソンは4年生だと言い続けているのですが、自分も含め何とかしてやりたいという気持ちを持っている学年だと思うので、スタメン野手3人以外で三宅(隆二郎、人4=大阪・明正)などがいいところで出ればチームが盛り上がりますし、勝ちにつながるのかなと思います。

――早慶戦の目標ありますか

 優勝がなくなった以上、慶應を倒す、その気持ちが一番で、その中でもあまり自分がやることは変わらないので、意識しすぎることなく自分の投球ができればと思います。

――最後に意気込みをお願いします

 去年だったら慶應倒して優勝しますと言えるのですが(笑)。どれだけ苦しくても諦めずに慶應に立ち向かうというところが早慶戦だけでなく秋のリーグ戦にもつながると思うので、カッコつけずに泥臭く、何が何でも勝つという気持ちがある方が早慶戦の勝ちについてくると思うので、その気持ちだけは絶対に負けずに、最後は何とか勝ち点を取ってリーグ戦を終えられるようにしたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 芦沢拓海)

◆原功征(はら・こうせい)

2000(平12)年12月18日生まれ。169センチ。滋賀・彦根東高出身。スポーツ科学部4年。自主練の際には伊藤大選手と伊藤樹選手と練習することが多い原選手。二人が好きな「ONE OK ROCK」の曲がブルペンで流れているそうです!