いよいよ4月8日から東京六大学野球春季リーグ戦(リーグ戦)が始まる。昨年までの主力が抜けたが、中川卓也主将(スポ4=大阪桐蔭)を中心にチームを立て直した。開幕カードは昨秋5位に沈んだ法大。しかし、投打に強力な布陣を擁し、決して侮れない相手だ。厳しい戦いが予想されるが、今後に勢いをつけるべく、『一球入魂』の精神を胸に戦う。また、今年は3年ぶりに勝ち点制が復活。一昨年や昨年とは異なる戦い方にも注目が集まる。
投手陣は両チームともに様変わりした。法大は三浦銀二(DeNA)や山下輝(ヤクルト)など、昨年までの投手陣を支えたメンバーが卒業。その代わりを担うのは、冬の間に急成長を遂げた扇谷莉(4年)と、昨秋にルーキーながら3試合に登板し、さらに東大2回戦で初先発を経験した篠木健太郎(2年)だ。特に篠木は高校時代からドラフト候補と騒がれた逸材で、最速155キロを誇る。昨秋の早大2回戦にも登板し、稲穂打線から2三振を奪った。さらにリリーフには、通算9試合に登板している尾崎完太(3年)やリーグ戦登板経験がある石田旭昇(4年)、武富陸(3年)が控える。エース級の投手たちが抜けたとはいえ、昨年同様、攻略するのは難しい。
今季注目はなんといっても主将の中川卓だろう
早大の投手陣からは先発を担った徳山壮磨(令4スポ卒=現横浜DeNAベイスターズ)と西垣雅矢(令4スポ卒=現東北楽天ゴールデンイーグルス)に加え、クローザーを務めていた山下拓馬(令4法卒=現HONDA)などが抜け、選手層が一気に薄くなった。そんな中で先発が予想されるのは加藤孝太郎(人3=茨城・下妻一)、齋藤正貴(商3=千葉・佐倉)だ。加藤は昨春のリーグ戦からリリーフとして登板を重ね、チーム最多の通算7イニングを投げた。また、齋藤正も昨秋にデビューすると2回2/3を投げ5奪三振を記録、さらに早大投手陣で唯一白星をマークしている。しかし経験不足が否めず、昨年以上にリリーフ陣が重要になってくるだろう。中でも注目は原功征(スポ4=滋賀・彦根東)だ。通算6試合に登板し未だに失点がない変則左腕が、チームの窮地を救うべく大車輪の活躍を見せたい。
勝ち点を得るためには野手陣の奮起が不可欠だろう。三冠王今井脩斗(令4スポ卒=現トヨタ自動車)や2年近くに渡り4番を張った岩本久重(令4スポ卒=現HONDA)らが抜けた。しかし、プロ注目のスラッガー蛭間拓哉(スポ4=埼玉・浦和学院)が4番に座り穴埋めが進んでいる。中でも、吉納翼(スポ2=愛知・東邦)は春季オープン戦で3本のアーチを描くなど好調を維持。右翼のレギュラーを掴もうとしている。リーグ戦でも猛打を奮い、打線にアクセントを加える。また、グラウンドの司令塔たる捕手も岩本らが抜けてリーグ戦でマスクを被ったことがある現役部員はいない。スタメンマスクが予想される印出太一(スポ2=愛知・中京大中京)ら捕手たちが、投手陣の良さを引き出すことができるか
一方の法大打線は、齋藤大輝(4年)が今年も要警戒だ。昨春に打率0.342、3本塁打をマークした強打の二塁手は、昨秋も打率0.438をマークし2季連続のベストナインを獲得した。早大は、昨春に試合を決定づける3ランを浴び、昨秋も2試合で3安打を打ち込まれるなど苦手としている。法大打線の要でもある斎藤を抑えられるかが勝利のカギとなる。それ以外にも、今年から4番に座る見込みの浦和博(3年)、昨秋ルーキーながら全試合に出場した西村友哉(2年)など選手層が厚い。
先発に回った齋藤正の投球にも注目だ
また、勝ち点制が順位争いにどのように影響を及ぼすかも気になるところだ。連勝、あるいは3試合で2勝できた方に勝ち点が与えられるため、敗北の重みが大きくなる。同時に、3試合行われる場合の投手起用も法大戦、ひいてはリーグ戦を通じて課題となる。小宮山悟監督(平2教卒=千葉・芝浦工大柏)が、どのような用兵をし、そして勝利に導くのか、その手腕が改めて問われている。
早大野球部は今シーズンのスローガンを設けなかった。ただ、現代に至るまで受け継がれてきた『一球入魂』の精神は変わることはない。増してや、これまで早大を背負ってきた選手たちが抜けた今シーズンは、その精神が改めて問われることになる。中川主将のもと、昨年の忘れ物を取りにいくべく、いざ神宮に乗り込む。
(記事 芦沢拓海、写真 佐藤桃子氏、玉置理沙子)