早大野球部の運営の中核を担うマネジャー。鈴木隆太主務(教4=早稲田佐賀)、藤内裕夢副務(スポ4=大分上野丘)がその役割を務めている。マネジャーの仕事や就任した経緯、そして東京六大学秋季リーグ戦開幕を目前に控えた現在の心境を語ってくれた。
※この取材は9月2日にオンラインで行われたものです。
マネジャーの仕事とは・・・
安部球場にて、鈴木隆(左)と藤内
――まず初めに、マネジャーの主な仕事を教えてください
鈴木隆 主に広報と会計という仕事に分かれていて、自分が広報を、藤内が会計を担当しています。広報全般的には、部のホームページやSNSの更新などをして、ファンの獲得であったり野球部のPRだったりを行っています。
藤内 会計としては、予算を組んで月ごとに決算をして、また予算の中で何にお金を使うのかというところの決定をしています。年の終わりには決算報告をして、次の年に繰り越していくという流れで、野球部は長い歴史を持ちますが、お金の部分でも下の代にしっかりと引き継いでいかなくてはいけないので、そのような仕事をしています。
――仕事の中で工夫していることや意識していることは
鈴木隆 早稲田の野球部のマネジャーとして広報活動をしていて、まさにSNSやホームページというのは全世界につながっているということを考えると、僕らの更新ひとつが早稲田の野球部の発信というかたちになるので、そこについては細かいところ、例えば選手の道具の商標だったりというところまで気配りしながら運営しています。
藤内 会計としては規模がとても大きいので、周りから何を言われてもしっかりとオープンにできるような、当たり前ではありますが公正な活動を心がけています。
――昨年から引き続きコロナ禍での部の運営になりますが、難しい点は
鈴木隆 僕らが2年の時までは通常の活動をしていましたが、コロナによって春夏のキャンプだったり野球教室だったりが中止になっていく、その中止の判断をするのは楽でもありますが難しい点でした。その中で、高校生向けに行っている練習会などをどうやってやれば実現できるのかなというのを、大学のガイドラインに沿いながら試行錯誤した経験というのは、苦労したことですね。
藤内 選手は遠征やキャンプというのは楽しみにしていますが、マネジャーはとても大変なことが多く・・・。ただ中止になってしまったことで、そこで得られるはずだったマネジャーとしての経験が積めなかったことは非常に悔しい点です。
――今春のリーグ戦は幹部の代になって初めてのリーグ戦でした
藤内 神宮の舞台に選手としては立てなかったので、神宮のベンチに初めて入って試合をしてというのは楽しかったですね。また制限が多いリーグ戦だったので、何とか無事に終えることができて良かったなというふうに感じています。
――結果に関しては5位という悔しい結果に終わりました
鈴木隆 選手個々の能力も高いと思いますし、優勝できるはずのメンバーがそろっている中で、接戦で勝点を取り切れなかったというところに弱さを感じました。拮抗している六大学の中でのそういう弱さというのは、練習の中での詰めの甘さが出てしまったのかなと思います。
――マネジャーとして、選手にはどのような声掛けだったりアドバイスをしていますか
鈴木隆 技術的なところでは恐れ多くてアドバイスできる立場ではないですが、メンタル的な面で言えば、選手がどれだけ試合に対しても日常的に入れるか、普段通りの力を出せるように準備するのがマネジャーの仕事だと思っています。また、早稲田の野球部としてあるべき姿はこういうものだよね、スローガンに掲げている『一球入魂』ってこういうことだよねということを再認識させることは僕らにもできることなので、ミーティングなどで話したりしています。
選手からマネジャーへ
――お二人の経歴に関して伺います。鈴木マネジャーは早稲田佐賀高のご出身ですが、高校入学時から早稲田への憧れというのは
鈴木隆 そうですね、自分は福岡出身なんですが、大学のことを意識しながら、また甲子園出場という目標もあったので、早稲田佐賀高校への進学を決めました。当時から早稲田のユニホームへの憧れはあったと思います。
――藤内マネジャーは大分上野丘高出身ですが、早稲田を目指したきっかけなどは
藤内 レベルの高いところで野球をやりたかったといううのがありました。高校の野球部はいわゆる弱小校で、ただ野球は好きだったので大学でも野球を続けるというのは決めていて、レベルの高い六大学、その中でも早稲田のユニホームには憧れていたので入学しました。
――入部したての1年生の頃の思い出、印象的な記憶は
鈴木隆 甲子園に出てヒットも打ててというところで自分を過信していたところもあったのか、周りの高いレベルに圧倒された記憶はありますね。
藤内 元々強い高校にいなかったので、こういう高いレベルの環境に身を置いて、全国で名前が知られている選手だったり、とても意識の高い選手だったりと一緒にやるというところで今までと全然違うという印象が強いです。ただ、自分が選んだ道だったので、ここで何とかレギュラーを掴んでやろうという気持ちは持っていました。
――選手からマネジャーになられた経緯を教えてください
鈴木隆 1年の夏休みくらいから、マネジャーミーティングとして学年内でマネジャーを決めようという話し合いがありました(※)。その頃から僕と藤内は結構推薦されていて、僕としても藤内としても野球がやりたいという思いがありましたし、ただその中で同期から推薦を受けたということで、どちらを優先したらいいのかなという葛藤はありましたね。最終的に自分が決断できたのは、父が大学の野球部でマネジャーをしていた(父・伸彦さんは青学大野球部でマネジャー、日本一も経験)というのもありますし、また、仲間のためにというところではなく自分のために、選手として活動していくよりもマネジャーとしての経験をしたほうが自分の人生にとってプラスになるんじゃないかなと思ったというところが大きいと思います。
※早大野球部では基本的に全員が選手として入部する。
藤内 自分も同じようなかたちです。
――マネジャーに転身してから、同期の選手が結果を出す姿を見てうらやましさというものは感じましたか
鈴木隆 すごく感じましたね。結果を出す出さないというよりは、あのユニホームを着てグラウンドでプレーしているのを見て、ただ練習しているだけでも「野球できるのっていいな」と思うことも(マネジャーになったばかりの)2年の初めごろはあって、そんな感じでとがっていたと思います。ただ、現在こういう立場になってみるといろいろな経験ができているので、マネジャーになるという決断は自分にとって良かったんじゃないかなと思いますね。
藤内 色々な複雑な思いもありましたが、「おまえの分も頑張る」と言ってくれた仲間がメンバーに入って活躍している姿を見ると、それは素直にうれしいです。
――マネジャーとして辛いことや大変なことは多いと思いますが、そこで支えになっているものは
鈴木隆 時間的制約だったり、細かい面倒な作業を要求されたり、まあ確かに「面倒くさい」という感情はあったりしますが、そういう活動ひとつひとつの原動力になっているのは、早稲田大学野球部のマネジャーとして活動するという僕にとってのプライドというか、勝ち負けではないですが他のどの大学のマネジャーにも負けたくないなという気持ちだと思います。そういったところが原動力になっています。
――早稲田大学という名前であったり、部の伝統であったりというところが原動力になっていると
鈴木隆 そうですね。部を代表するポジションであるのは間違いないと思うので、そこが一番の大きな支えになっているかなと思います。
――藤内マネジャーはいかがでしょうか
藤内 選手として入部しましたが、マネジャーになるという決断したのは自分なので、周囲からの推薦はあったものの決断した自分に責任があるので、最後まで全力でやり切ろうと思っています。同期が寮に入ってこんなに練習をしているのかというのを見せつけられた時に、自分もマネジャーとしてチームに貢献しなくちゃなと強く思いました。
天皇杯奪還、そして日本一へ
――秋季リーグ戦に向けてのお話に移りたいと思いますが、早稲田大学野球部をマネジャーとして見ての印象は
鈴木隆 先ほども申し上げた通り、一人ひとりの能力は間違いなく高いと思います。ただ去年の代もそうでしたが、チーム全体が一つになって勝つというところが大切だと思っているので、その最後の詰めの部分はまだ少し足りていないのかなと思います。
藤内 やっぱりチームの中心は4年生なので、その4年生が一体となってまとまって、その姿を下級生が見て、というのが早稲田の伝統だと思います。そこはまだ十分ではないと思うので、もうすぐリーグ戦が始まりますがまだまだやるべきことはあるのかなという印象を持っています。
――お二人から見たこの秋の注目選手は
鈴木隆 投手と野手で二人言ってもいいですか(笑)。投手はなんだかんだで徳山(壮磨、スポ4=大阪桐蔭)、やっぱりエース番号11を背負っていますし、春に悔しい思いもしています。またそれ以上にチームで一番努力をしている姿を同期として見てきたので、最後エースとして躍動する姿というのに注目してもらいたいかなと思います。野手は今井脩斗(スポ4=埼玉・早大本庄)というバッティング大臣が(笑)、ちょっと守備には難がありますけど、シーズンを通して出たときにどれくらいの成績と飛距離というのを見せてくれるのかなという、少しファン目線として期待してしまいます。
藤内 4年生全員に注目してほしいですね。どうしても徳山や西垣(雅矢、スポ4=兵庫・報徳学園)、岩本(久重副将、スポ4=大阪桐蔭)に注目が集まると思いますが、背番号50を背負っている新人監督の占部(晃太朗、教4=早稲田佐賀)や投手コーチの須永(賢也、スポ4=群馬・前橋)だったりを見てほしいと思います。彼らも途中で選手から学生コーチという身に転じて、選手にはない苦労というのをたくさんしてきたので、彼らの思いも背負って選手たちはプレーしてくれると思いますし、彼ら以外にも選手を退いた部員が何人かいるので、表舞台にはなかなか出てこないと思いますが、ぜひ注目していただけたらなと思います。
――下級生で期待している選手、見てほしい選手は
鈴木隆 自分はユエン(賢、国教2=セントジョセフ)っていうピッチャーですかね。この夏に出始めて、カナダ出身というところでいろいろな文化の違いというのは感じている中で、日本の野球というのに対応してきています。その中で彼らしさ、メンタリティーの強さという彼の良さを出せているところは凄いなと感じています。彼個人にも注目してほしいですし、早稲田の歴史としても、第1回アメリカ遠征でバントだったりの技術を持ち帰ったということがあります。そういった国際交流の面からしても国際教養学部から入部してくれたというのは嬉しいですし、1イニングでもいいから神宮で投げてほしい、ぜひそれを見ていただきたいなと思っています。
藤内 自分は中川卓也(スポ3=大阪桐蔭)ですね。1年春から試合に出て、結果が出ずに苦しい思いもしてきたと思うんですが、昨年末くらいから目の色を変えてバットを振り込んできたのを見ていますし、来年は自分がチームを引っ張らないといけないんだという自覚も見えてきました。チームからの信頼は絶大なものがあると思うので、そこが結果に結びついてくれればなと思っています。
――野球部の引退まで残り約2か月となりましたが・・・、失礼しました。明治神宮大会があるので残り3か月ですね
鈴木隆 そうです!3か月です!
一同 (笑)。
――残りわずかとなった野球部の活動ですが、ここまで一生にやってきた同期への思いというのは
藤内 4年生への思いになりますが、1年の頃から苦労を重ねてきて、新チームになる前から日本一という目標を立ててやってきているので、最後勝って日本一というのを掴みたいと思いますし、そういう姿を後輩たちに見せることで、『強いワセダ』、これから常勝軍団として何年も勝ち続けていくチームの礎を作っていきたいと思っているので、短い期間ではありますがやり切ってほしいという思いがあります。
鈴木隆 僕もそういった意味では同じ思いです。あとはこの期間で僕が残せるのは、早稲田大学野球部としてのプライドだったり、早稲田大学野球部とはどういうところなのか、どういうことをしないといけないのか、そういったある意味考えると幅広いものなのかもしれないですが、そういうことを後輩に伝えて、そのまた後輩にも伝えてもらえるように、僕は最後まで同期、後輩に伝えて続けていきたいなと思っています。
――最後に開幕が週末に迫った秋季リーグ戦への抱負、意気込みをお願いします
鈴木隆 チームの目標は六大学リーグ戦で優勝して天皇杯を奪還すること、そしてその先に日本一になることということで変わりはないんですが、個人としては選手たちが試合に至るまでの準備の部分というのを確実に100パーセントで行って、あとは選手を信じて、ベンチやその他の場所から応援したいなと思っています。
藤内 それぞれの役割があると思うので、それを全うし、目標にしている日本一に必ずなりたいと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 山崎航平)
インタビューに答える鈴木隆(左)と藤内
◆鈴木隆太(すずき・りゅうた)
1999(平11)年11月1日生まれ。174センチ。早稲田佐賀高出身。教育学部4年。主務。
◆藤内裕夢(とうない・ひろむ)
1998(平11)年7月26日生まれ。177センチ。大分上野丘高出身。スポーツ科学部4年。副務。