初回に登場するのは、徳山壮磨(スポ4=大阪桐蔭)と西垣雅矢(スポ4=兵庫・報徳学園)の早大が誇るWエース。お互いに東京六大学春季リーグ戦(春季リーグ戦)では、思うような投球ができず苦しい思いをした。対談では最後の秋に挑む両右腕に、様々な話を伺った。
※この取材は9月2日にオンラインで行われたものです。
「自分たちがしっかり投げていれば勝てた試合がたくさんある」(徳山)
安部球場での練習にて、西垣(左)と徳山
――まず、春季リーグ戦を振り返っていかがですか
徳山 春のリーグ戦は個人としてもチームとしてもふがいない結果に終わってしまって、正直自分たちの野球ができなかったし、個人的にも自分の本来の投球ができなかったというのが率直な感想です。
西垣 結果として0勝3敗で、1勝もチームに貢献できなかったというのが自分の中でありました。チームとしても、個人としても全く思うようにいかなかったシーズンでした。
――お二人から後輩含め、投手陣全体を振り返っていかがですか
徳山 自分たちがゲームをしっかりつくって、という試合が少なかったですし、リリーフ陣もそうですが、自分たちがしっかり投げていれば勝てた試合というのがたくさんあるので、自分たちの役割が果たせなかったことがチームの負けにつながったのかなと思っています。
西垣 徳山と同じで、後輩たちはあまりリーグ戦を経験していない子たちが多くて、その中で楽な場面で投げさせて、経験を積ませてあげたかったのですが、そのような場面がつくれなくて。後輩たちがどうこうというより、自分たちが結果を出せるような環境をつくれなかったかなと思います。
――春季リーグ戦が終わってからどのようなことを目標にして夏に入りましたか
徳山 自分の場合、春は本来の球を投げられなかったというのがあったので、基本のストレートを見直そうと思って、一から強い球を投げるというのを意識しました。そこに、カーブを練習して、試合で使えるようにしようとして、主にカーブとストレートを練習してきました。
――具体的にどういった練習をされてきたのですか
徳山 ピッチングでは、春は体が横回転になっていたのですが、それを縦に使うことを意識しました。カーブをしっかり縦に投げられると、ストレートもしっかり縦に使えるというのがあるので、そのカーブとストレートを主にしっかり投げていく練習をしていました。
――オープン戦は春に比べて調子が良いように見えるのですが、そういった練習が関係していますか
徳山 そうですね。そこにつながってきていると思っています。
――西垣選手は夏の間、どんなことに取り組まれましたか
西垣 この夏、自分はトレーニングを頑張りました。春のリーグ戦で不利なカウントをつくって、その後まっすぐを打たれるというのが多かったので、そういった(不利な)カウントでも力強いまっすぐを投げられるように、自分はまだ体が弱いと思ったので、トレーニングをやっていました。
――ここからは個人の質問に移らせていただきます。まずは徳山選手にお聞きします。夏季オープン戦を振り返っていかがですか
徳山 調子自体は春と比べると本当に(調子が)上がってきていて、ストレートの力も出てきました。変化球もしっかり投げることができてきたので、調子としては上向きだと思います。
――変化球でいうと先ほどカーブの話をされていましたが、他の球種についてはいかがですか
徳山 スライダー、フォークについてもしっかり練習してきましたけど、試合でカーブを使うという機会があまりありませんでした。カーブをしっかり使えるようになると幅が広がるなと思ったので、カーブをしっかり練習して、試合で最近よく使えているので、練習したことができているのかなと思います。
――昨季の法大1回戦では「普段使っていなかった球種を有効に使えることができた」という話を以前伺いました。その試合から着想を得て、ということでしょうか
徳山 あの試合も普段使っていなかったカーブを使って結果的に抑えることができました。普段から使えるともっと幅が広がるなということで取り組んできたので、この秋はしっかりカーブも使って抑えたいなと思います。
――徳山選手の持ち味であるストレートの自分の中での手応えはいかがですか
徳山 上がってきているなというのは感じています。
――他紙の報道で「しっくりくるものを掴んだ」という話を聞きました。それについて詳しく聞かせてください
徳山 フォームのことなのであまり詳しく話すのも難しいんですが、投げていて体が開いていたというのがあったので、そこを開かないように投げようと考える中でこれかなという部分がありました。それを信じてやってきて、球速も上がってきたのかなと思います。
――春は体が開いたフォームだったと
徳山 そうですね。
――オープン戦での9回完投を挙げた駒大戦や、5回1失点の中大戦を振り返っていかがですか
徳山 試したいことを試合でできました。インコースを使うことであったり、変化球でカウントを整えて勝負だったり。逆にストレートでカウントを整えて、変化球で抑えたりという色々なパターンを試しながら投げることができました。色々やりたいことを実践できたので良かったと思います。
――オープン戦を通じて他に収穫はありましたか
徳山 けん制練習でアウトを取ることができたというのがあったのですが、間合いを意識しながら投げたりしています。
――次は西垣選手にお伺いします。これまでのオープン戦を振り返っていかがですか
西垣 岩本(久重副将、スポ4=大阪桐蔭)と話し合って、毎試合、この試合はこれをやろうというのを決めて挑んでいます。それはできる時とできない時があるのですが、目的を持って試合に入れているので、それがいいかなと思います。
――具体的にはどんなことを岩本選手と話されているのですか
西垣 今日はファーストストライクを取ろうとか、今日はインコースをたくさん使おうとか、そういった簡単なことが多いです。
――大商大とのオープン戦では完封されていました。この試合を振り返っていかがですか
西垣 あまり調子は良くなかったのですが、ランナーが出てから要所要所で粘れたので、9回を投げることはあまりなかったのですが、その時はしっかり投げられたのが良かったと思います。
――春の早慶戦後のインタビューで、秋に向けては、勝負どころで球が甘くならないように投げ切れるようにしたいとおっしゃっていましたが、それについて、オープン戦での手応えはありますか。
西垣 そうですね、そこは1番に意識してやっているので、そういった後悔する一球を減らせるように努力しています。
――春季リーグ戦を終えて、課題を克服するために具体的にどんな練習をしてきましたか
西垣 勝負どころで球が甘くなってしまうことがあったので、ブルペンではストライクを投げる球とボール球でいいという球の練習をキャッチャーとしていました。2ストライクからだと無理してストライクゾーンに投げる必要はないですし、ボール球で三振を狙える球も必要で、これまではそういう球を練習してこなかったのですが、2ストライクから甘くならない練習、ボール球を狙って投げる練習を数多くやりました。
――オープン戦を経て新たに得たものはありますか
西垣 スライダーが良くなってきて、狙って三振を取れることが増えてきました。プレートとホームベースの間にポールを置いて、そこのラインから膨らまないようにスライダーを投げる練習をたくさんしたことで、スライダーを投げる時の意識が変わったからだと思っています。
――秋は大学最後のリーグ戦となりますが、これまでと何か違った意識はありますか
西垣 本当に最後のシーズンなので、チームが勝つのが1番なのですが、自分が後悔しないようなシーズンを送りたいと思っています。
「150が出たのは素直に嬉しかった」(西垣)
昨季の立大2回戦で力投する西垣
――次はドラフトに関する質問です。少し遡って8月7日に読売ジャイアンツ2軍とのプロアマ交流戦が行われました。実際のプロの打者と対戦していかがでしたか
徳山 自分は結果的に打たれてしまったのですが、(プロの打者は)甘い球はしっかり振ってきて打たれるということがわかりました。やっぱり直球が甘くてもファールや空振りを取れるように上げていかないといけないなという課題が見つかったり、ストライクからボールになる変化球の投げきりだったりする部分が足りないなと感じました。あの試合からはそこを特に意識してやれているので、本当に良い経験になったと思います。
西垣 一番のアマチュアとの違いだと思ったのはすごくバットを振ってくるということです。どうしても当てにくるバッターがアマチュアだと特に下位打線には多いですが、それがなく自分のスイングをしてくるなという印象でした。
――西垣選手はその試合で自己最速の150キロを計測されたとお聞きしました
西垣 そうですね。単純に球が速くなかったので、150が出たのは素直に嬉しかったです。
――ドラフトまで約1ヶ月となりましたがお二人のプロへの思いを聞かせてください
徳山 本当に目標として目指してきたところなので、目指すのは変わらないです。そこは相手が評価することなので、自分たちは目の前の試合を一生懸命投げるだけだと思っています。そこで評価してもらえたらありがたいことですし、されなかったらまた次のステージで頑張ればいいというだけなので、そこを考えるというよりかはチームのために(開幕の)法大戦に向けて準備していきたいという気持ちの方が今は強いです。
西垣 自分も全く気にならないかといったらそうではないですが、自分が今どうこうしても仕方がないことなので、しっかりチームを勝たせる投球をして、その上で評価してもらってプロに行ければいいなと思います。
悔いのないように
昨季の明大1回戦で先発登板した徳山
――秋季リーグ戦の話に移ります。現在のチームの雰囲気を教えてください
徳山 (この夏のオープン戦では)勝ったり負けたりと色々ありましたが、(今は)4年生を中心にしっかり勝っていこうという雰囲気をつくれているので、みんなやる気が入っていて頑張ろうという雰囲気になっています。
西垣 (オープン戦は)前半勝てていて良かったんですが、ここ何試合かは落としていて苦しい時期です。それでも4年生中心になんとかしてやろうという雰囲気はあります。みんな考えながらやっているのでチームは一つになりかけていると思います。
――開幕まで約10日となりました。チームとしてはどのような練習をされていますか
徳山 守備の連携プレーの練習であったり、あとは実戦での打撃練習ですね。
西垣 強化練習が終わって今は実戦中心の練習です。
――4年生となり最後のリーグ戦になりますが、何か特別な思いはありますか
徳山 そうですね、特別な思いというのは全員あると思うので、勝つために悔いだけはないように一球一球に力を込めて全部の試合で納得できたという投球をしたいですし、そういう試合をしたいです。
西垣 自分も悔いだけは残したくなくて、春もたくさん悔いの残った試合、悔いの残った一球があったので、もし秋打たれても根拠を持った失敗というものをできるように練習しているので、最後は悔いが残らないようにリーグ戦を戦いたいなと思います
――オンライン取材のためお願いできませんが、写真撮影用の色紙が今あればどのような言葉を書きますか
徳山 自分は『見返す』という言葉を書きます。春の結果があってチームとしても個人としてもそういう目で見られてると思うので、見返して全部跳ね返したいなと思います。
西垣 自分は『克己心』という言葉です。毎回同じですが、自分に勝つという言葉があるのでどのような状況でも相手ではなく自分に打ち勝つということをテーマにしているので、その言葉を書きます。
――秋季リーグ戦への意気込みをお願いします
徳山 春5位という結果で終わったので、とにかく他の五大学を見返す気持ちで、一戦必勝でやって優勝して、次の明治神宮大会という舞台に臨めるように頑張りたいなと思います。
西垣 春5位で終わって、周りは「早稲田なら大丈夫だろう」という気持ちで試合に挑んでくると思うので、それを跳ね返すくらいの勢いで戦ってリーグ戦優勝して、日本一というチームの目標を達成できるように頑張っていきたいと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 荻原亮、倉持七海)
◆徳山壮磨(とくやま・そうま)
1999(平11)年6月6日生まれ。183センチ、82キロ。大阪桐蔭高出身。スポーツ科学部4年。 投手。右投右打。「写真撮影用の色紙があれば何を書くのか」という質問に選んだ言葉は『見返す』。秋季リーグ戦ではその言葉通り、他の五大学を見返す圧倒的な投球に期待です!
◆西垣雅矢(にしがき・まさや)
1999(平11)年6月21日生まれ。184センチ、85キロ。兵庫・報徳学園高出身。スポーツ科学部4年。投手。右投左打。「春のように悔いは残さない」と強い決意を語ってくれた西垣選手。1年時から立ち続けてきた神宮のマウンドで、必ず圧巻の投球を見せてくれるでしょう!