【緊急】令和3年度春季早慶戦 注目選手特集 15 山下拓馬

野球

 

 「後ろは任せろと言える立場になっていきたい」。新体制開始直後、山下拓馬(法4=埼玉・早大本庄)はこう語っていた。徳山壮磨(スポ4=大阪桐蔭)や西垣雅矢(スポ4=兵庫・報徳学園)ら、甲子園常連校出身が揃う投手陣。昨春のリーグ戦デビュー前には、そのような同級生についても「自分よりはるか先の存在」とひそかなライバル心もあったという。しかし、現在では早大救援陣の中心核と呼べる存在にまで上り詰めた。その裏には、現状に満足しないハングリー精神と泥臭い努力があった。

 

 高校時代のポジションは投手ではなく、捕手。その選択への若干の後悔を晴らすように、早大に入学時も野球を続けることを選択した。しかし、プレッシャーから1年時にはイップスとけがで思うように投げられず、苦しむことに。それでも、強みであるストレートとチェンジアップを磨き続け、1軍として迎えた昨年。春季リーグ戦でデビューを飾り、1学年先輩だった柴田迅氏(令3社卒=東京・早大学院)とともに、早稲田のリリーフを背負った。慣れない神宮の空気に自分の投球ができず、納得がいかない試合も少なくなかった。

 

明大1回戦で救援登板した山下

 

 「防御率0.00、無失点」を常に掲げ、ひたむきに努力を重ねた山下。明大1回戦で今季初の失点を喫し、目標達成とはならなかったが、救援陣の要として申し分ない安定感を発揮してきた。小宮山悟監督(平2教卒=千葉・芝浦工大柏)も「最後の1イニングは山下」と全幅の信頼を寄せる。また、今年の早稲田は加藤孝太郎(人2=茨城・下妻一)や伊藤大征(社2=東京・早実)、原功征(スポ3=滋賀・彦根東)など、リーグ戦経験が浅いながらベンチ入りした選手が多い。そのような中、最上級生として、彼らのメンタルや調子を気にかける姿が印象的だ。特に今季開幕戦では、リーグ戦初登板となった飯塚脩人(スポ2=千葉・習志野)と原が招いたピンチで登板。見事な制球でリードを守り切った。「ここで打たれたら2人が立ち直れなくなる」。自分が守りきることで、後輩が引きずらないようにしようと考えていたと言う。チームに流れた不安を力投で振り払った。

 

 山下自身は、決して入学時から注目されていた選手ではない。それでも努力を続け、チームに安心感をもたらす早稲田の守護神として開花した。プレッシャーに屈することない強気な投球は早慶戦でも、秋季リーグ戦でもチームの勝利に欠かせないものとなるだろう。そして、『一選手』以上に『先輩』としても、実りの大きいラストイヤーになりそうだ。

(記事 吉田美結)

◆ 山下拓馬(やました ・たくま )
2000(平12)年2月29日生まれ。185センチ、93キロ。埼玉・早大本庄高出身。法学部4年。投手。右投右打。「早稲田である以上は慶応には勝たなきゃいけない」など、どの言葉にも力強さを感じられる山下選手。強気な姿勢をそのままに、早慶戦での躍動を楽しみにしています!