【連載】春季早慶戦直前特集『七転八起』第4回 西垣雅矢

野球

  「全く満足いく結果ではない」。救援陣のリーグ戦経験が少ない中、Wエースとして投手陣を引っ張る西垣雅矢(スポ4=兵庫・報徳学園)。今季は4試合に先発し0勝2敗、登板した試合でチームの勝利は未だない。『チームの勝利』を第一に考える右腕は何を思っているのか。その胸中を伺った。

 

※この取材は5月18日にオンラインにて行われたものです。

「今年はストレートで押せている」

質問に答える西垣

――開幕からの投球をざっくりと振り返っていただけますか

 勝負どころで点を取られてしまったり、チームを勝利につなげられていないので、全然満足いく結果にはなっていません。

――事前のアンケートでは、良い部分についてはストレートでカウントが取れていること、悪い部分については無駄なボール球が多いことを挙げられていました

 去年までは変化球でカウントを取ることが多かったのですが、今年はストレートでしっかり押せていけたところもあるのでそのように挙げさせてもらいました。悪い点としては、初球にボール球が多かったり、無駄な死四球が多かったりということですね。

――無駄なボール球が多くなってしまう原因については

 ボール球が増えてしまう理由としては、自分は狙って投げているのですが、狙ったところにボールをコントロールできていないということです。なので、自分の安定感のなさが原因ですね。

――今後どのように改善していこうと思われていますか

 ブルペンに入れる回数は限られてくると思うので、少ない中で内容のある投球練習をしていかないといけないと思います。一球一球確認というか、意味をもって練習していきます。

――各試合の振り返りをしていきたいと思います。まず東大2回戦では8回2安打10奪三振無失点と好投されましたが、この要因は何だったと思われますか

 相手関係なく、思い切って、自分としては初戦だったので少し緊張感もあったのですが、しっかり丁寧に投げることを意識して投げられました。

――丁寧に投げるというのは、一人一人集中して打者に向かうということでしょうか

 そうですね。失投を痛打されるケースが多いので、丁寧に投げるというのは意識しています。

――試合を見ていて、フォークやスライダーで三振を取られている場面が多いと感じるのですが、ご自身ではどう思われていますか

 ストレートでカウントを取れて、低めの変化球を振らせることができてよかったと思います。

――次の立大2回戦では、初回に三者連続三振と、テンポよく相手を打ち取られました。テンポよく投げるというのは意識してやられていたのですか

 初回ということで探り探りで投げがちなのですが、最初は調子が良かったので、勢いでいければいいなと思ってテンポを意識して投げました。

――いつもは慎重にいくのですね

 初回は緊張感もあってその日の調子も投げてみないとわからないというので、いつもは探りながらいくのですが、その日は最初のバッターを打ち取って感触が良かったので、テンポよくいきました。

――初回の打者に対して良かったというのはどういったところが良かったのでしょうか

 初回は三振を3つ取ったのですが、見てのとおり無駄な球がなかったというので、しっかり自分のペースで追い込んでボール球で勝負できていたので、理想の打ち取り方をできていたと思います。 

――テンポよく投げるとやはり相手は打ちづらそうだと感じるのでしょうか

 自分が思うところに投げられている時はどんどん投げることで、自分のペースで試合ができて、打ちにくいかなと思ってやっています。

――初回の2人目を三振に打ち取った時のボールはどんなボールだったか覚えていらっしゃいますか

 ストレートで三振を取ったことを覚えています。

――かなり外から中にシュートして入ってきたボールでしたが、あそこから曲げて入れたというのは狙ってやったことなのでしょうか

 いえ、狙ってはなかったです。ストレートが少しシュート気味に入りました。

――その時のボールの球速が自己最速タイの147キロでしたが、手応えはいかがでしたか

 あの日はとてもストレートが走っていたので、そのくらい出ていたのかなという感じですね。 

――球速を早くするために何か取り組みをされたりはしていたのでしょうか

 常にフォームのこと、どうやったら効率よく投げられるかというのを考えたり、トレーニングでしっかり自分の身体を鍛えて、と投手としてはみんなこの2つのことをやっていると思います。そういった取り組みが球速という形で出たのかなと思います。

――フォームのお話が出ましたが、具体的にはどういったことをされているのでしょうか

 バランスよく投げることを意識しています。

――バランスよくとは具体的にはどういったことでしょうか  

 タイミングが早すぎてはいけないですし、自分の一番力が入るところで効率よくボールに力を伝える、そういった投げ方ですね。

――立大2回戦の4回、宮﨑選手に逆転の3ランを許してしまいました。その投球を振り返っていただけますか

 インコースの変化球で詰まらせたかったのですが、甘く入ってしまい、ホームランにされてしまいました。

――今季先発される中で、二巡目から被安打が増え、苦しむ場面が多いと感じたのですが、2巡目からの投球の手応えはどうでしょうか?

 そのとおりだと思っています。あとは早慶戦しかないですが、改善できればと思います。

――どういったことが要因だと考えられていますか

 ボールが少し弱くなっているのかなと思います。1巡目はしっかり投げられているのですが、まだ体力がないのかなと思います。

――体力について、事前のアンケートでも「まだ不安です」と書かれていました。6、7回くらいから疲れが出てくるというような感じなのでしょうか

 そうですね。6、7回くらいからだと思います。

――法大2回戦では雨が降っていましたが、ぬかるみへの対応は問題ありませんでしたか

 マウンドが変わって、スパイクに土がつくのですが、それもしっかり事前に聞いていたので、動揺することなく投げられました。

――7回に勝ち越しを許した場面を振り返っていただけますか

 甘い球を投げてはいけない場面だったので、外のストレートでカウントを取りたかったのですが、それを弾き返されてしまったので、自分のボールはまだまだなのかなと思いました。

――明大戦を振り返っていただけますか

 点を取られてはいけない場面で点を取られたり、少ないチャンスの中、打線が援護をしてくれていたのに勝負どころを抑えきれなくて申し訳なかったと思っています。

――報徳学園高時代のバッテリー、篠原選手との対戦もありました

 初めて対戦する打者で、いい打者だったので警戒して勝負しました。

「自分に勝つ」

東大戦で好投した西垣

――去年の秋、好調な時に、落ち着いてバッターを見て投げられていることが抑えられる一番の要因、とおっしゃっていましたが、今はどうでしょうか

 もう4年生なのでマウンドであたふたすることはなく、投球はできているかなと思います。

――座右の銘は「克己心」ということですが、この言葉は誰かからもらった言葉なのでしょうか

 いえ、誰かからというわけではないです。高校時代に知って、それから大切にしている言葉です。

――克己心と言う言葉もそうですが、いつも西垣選手は○○選手や、どこのチームに勝ちたい、というのではなく、自分との戦い、という表現をされていることが多いと思います。西垣選手の中で自分に勝つ、というのはどういう意味なのでしょうか

 絶対、自分の中に理想とするものがあると思うので、それを目指す中で、まずは妥協しないという面で、妥協というのは、誰かに負けるというわけではなくて、自分に負けることだと思っています。練習の中で妥協との闘い、どうしたら理想の投球ができるかというのを考えてやっているつもりなので、そういう中で誰と、というのではなく、自分と戦う、自分の弱い部分と戦うっていうことが自分に勝つということなのではないかと思っています。

――妥協というのは、あと1人この打者を打ち取れていれば、というものなのか、練習に対する姿勢の面でなのか、具体的にはどういったものでしょうか

 試合が始まってしまえばもうあまり考えていないので、練習している時にもっと突き詰めてやれることはないのか、というのを自問自答して、もっとできるというところでやめてしまえば、それは妥協しているということになると思います。なので、しっかり自分に問いかけながらやることを意識しています。

――前におっしゃっていた、データを見たり、身体の準備などをすることも妥協しないことに入ってくるのでしょうか

 そういった準備も試合のための準備なので、準備も妥協しないでしっかりやるというのは自分に勝つということにつながるのかもしれないですね。

――1年生の春から六大学で投げ続けてきた西垣選手ですが、3年生までと比べて4年生になってから、心境の変化や戦い方など、何か変わったと思うことはありますか

 4年生になり、データの収集などをしてくれるのが先輩だったのが同級生になったり、メンバーに入っていない4年生が自分たちのために尽くしてくれているというのがあるので、同級生のためにもという気持ちがより一層4年生になって芽生えました。

――同級のチームメイトや自身の投球に対して、より気持ちが入っているという感じでしょうか

 4年生でもあるので、自分の投球が勝利に直接左右すると思うので、そういう面でとても責任感は4年生になってより一層出てきたかなと感じています。

――常に現状に満足せず、いつも成長したいと口にする西垣選手ですが、大学に入学してから自分の投球に満足したことはあるのでしょうか

 大学に来てから上手く投げられたことがないので、あまり自分の中で自信になったというような場面はないですね。

――西垣選手が目指すベストな投球というのはどういったものでしょうか

 やっぱり自分が思ったところにボールをコントロールできて、バッターを手玉に取るではないですが、無駄球なく追い込める、そんなものが理想ですね。それができたら思い通りに試合を運べると思うので、そんな投球をしたいです。

――リリーフ陣も今季なかなか苦しい投球を強いられていると思います。以前リリーフをされていた西垣選手から見て足りないものは何だとお考えですか

 足りていないところというのは、自分も含めてですが、ボールのコントロール、自分の思ったところに投げられていないことだと思います。カウントを悪くしてしまって打たれてしまう、これは投手陣全体で改善していかなければ厳しいかなと思います。コントロールが全てだと思います。

「秋につなげられるように良い試合をしたい」

法大2回戦でガッツポーズを見せる西垣

――現在の調子はいかがでしょうか

 チームも勝っていないですし、個人的にも上手くいっていないので、苦しいですが、慶応を簡単に優勝させてはいけないので、そういうことを考えながら練習しています。

――「秋につなげられるように良い試合をしたい」とおっしゃっていましたが、どんなことが必要でしょうか

 今年のチームの勝ち方はこれだ、というものがあると思うのですが、それをこれまでリーグ戦をやってきて、これだと思う試合がなかったと思うので、しっかり早慶戦で自分たちはこういう野球をしたら勝てるんだ、というのをしっかり見つけられれば、秋につなげられると思っています。

――勝負強い慶大打線ですが、どのように抑えていきますか

 データ係が相手の苦手なコースを分析してくれると思うので、しっかり入念にバッテリーで話し合って、あとは自分が(そのコースに)投げきれるかだと思っています。

――早慶戦で活かしたいご自身の強みはありますか

 いろんなボールがいろんなカウントで投げられることが自分の強みだと思うので、今季はなかなかそれが上手く出せていないですが、早慶戦ではそういった投球ができればと思っています。

――早慶戦にはどのような気持ちで向かっていきたいですか

 対校戦なので、リーグ戦というよりも、対慶応と考えて、慶応に2勝します。

――早慶戦への意気込みをお願いします

 早稲田はもう優勝はないですが、慶応には絶対に負けられないので、いい試合、いい戦いができるようにしっかり準備していきたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 倉持七海)

◆西垣雅矢(にしがき・まさや)

1999(平11)年6月21日生まれ。184センチ、85キロ。兵庫・報徳学園高出身。スポーツ科学部4年。投手。右投左打。座右の銘は「克己心」。日々の練習やマウンド上では「他の誰かではない、自分に打ち勝つこと」を大切にしているそう。入念な準備でプレッシャーに打ち勝ち、慶大打線を封じます!