【連載】新体制始動特集『継承』 最終回 丸山壮史主将×岩本久重副将

野球

 最終回に登場するのは、新たに主将、副将に就任した丸山壮史(スポ3=広島・広陵)、岩本久重(スポ3=大阪桐蔭)の2人だ。昨年の東京六大学秋季リーグ戦(秋季リーグ戦)に引き続き春季リーグ戦での連覇、そして日本一に向けて練習に励む新チーム。先頭で引っ張る2人は今、何を思うのか。
※この取材は12月15日に行われたものです。

「強い早稲田を取り戻すために魂を持って、一球に対して入り込む」(丸山)

笑顔で取材に答える丸山と岩本(左)

――昨年度のチームを振り返ってどのように感じていますか

丸山 昨年は4年生中心にチーム一丸となっていて、一致団結したチームで、本当に強かったなと思っています。

岩本 僕も一緒で、4年生が引っ張ってくださって、それは試合に出ている選手だけでなくメンバー外の4年生たちもさまざまな練習のサポートであったり、いろいろなかたちでチームに貢献してくださって、その結果が最後優勝につながったと思います。そういう意味で4年生の力で勝てたし、優勝には4年生の力が大きかったかなと思います。

――新チームの雰囲気はいかがですか

丸山 まだ始まったばかりですが、去年の優勝した雰囲気、4年生が作ってくださった勝つチームの雰囲気というのは継承しつつ、自分たちの色も出していこうかなという感じです。冬なので、みんな意識高くやっていると思います。

岩本 雰囲気自体はまだまだ詰められるというか、今年の自分たちの学年、今年のチームは『一球入魂』というスローガンを掲げています。それをどんな時もグラウンドでは体現するということを目標にやっているのですが、去年のいい雰囲気はもちろんありますが、自分たちが思っている『一球入魂』というとまだまだかなと思います。

――『一球入魂』のスローガンは具体的にどのような思いを持って決めたスローガンですか

丸山 飛田先生(穂州氏、大正2法卒)の言葉です。「この一球に魂を込める」という意味で、もう一度強い早稲田を取り戻すためにも魂を持って、一球に対して入り込む、みんながその一球に対してという意識をとにかく持っていこうと決めて、『一球入魂』のスローガンになりました。

――秋季リーグ戦が終わり、現在はどのような練習をしていますか

丸山 とにかく野手はバットを振り込んで、ピッチャーもトレーニングを積んで、基礎体力面や基本技術をもう一回見直して、練習は進んでいっています。

岩本 とにかく勝ちにこだわって、丸山が基礎体力と言ったのもそうですが、この時期は数多く振り込んだり、投げ込んだり、身体をいじめ抜いてレベルアップできるよう練習しています。

――これからどのようなチームを作っていきたいですか

丸山 理想で言えば、去年の4年生の団結力を超えるような、自分たちの学年が引っ張っていけるようなチームを作りたいです。その上で春・秋(のリーグ戦での優勝)を取らないとだめだと思うので、勝ちにこだわって、勝てるチームを春までに作っていきたいと思っています。

岩本 自分も一緒になりますが、勝てるチーム、簡単に負けないチームを目指したいです。粘り強さや、負けている時もなんとか食らいついてというようなしぶといチームを作っていきたいと思っています。そのためにはやっぱり普段の練習というか、さっきも話しましたが一球入魂の精神、雰囲気を常に持ち続けて神宮球場でもそれを発揮することが自分たちの理想かなと思います。

2人の意外な一面とは・・・

昨秋の明大2回戦で3ランを放つ丸山

――他己紹介をお願いします

丸山 岩本は野球に熱心で、でもお笑いにも熱心かなと思っています(笑)。関西出身というのもあってチームをお笑いの面でも引っ張ってくれていると思います(笑)。根は真面目なので、そこを基本にしつつも、寮の食堂とかで笑いを起こしてくれます。

岩本 丸山は影ですごく努力していて、誰よりもスイングの量とか守備とかも含めて練習量は多いです。練習の熱量がすごい伝わってきています。お笑いっていう面もあって、自分はトークで回すタイプなのですが、丸山は一発ギャグで場の雰囲気を変えることができます(笑)。

――野球以外でも一緒にいることはありますか

丸山 ご飯とかも一緒に食べていて、授業とかもスポーツ科学部で同じなので課題を一緒のタイミングでやったりしています。私生活でも一緒にいることが多いです。

岩本 オフの日とかもご飯に行ったりとかしていて、プロスピとか一緒にやっています(笑)。

――主将副将はいつ頃決まったのでしょうか

丸山 小宮山監督(悟、平2教卒=千葉・芝浦工大柏)からお話があったのは早慶戦2戦目の優勝が決まってから、神宮球場で自分と岩本が呼ばれて、監督さんの方からお前ら2人で引っ張ってくれということで初めて言われました。

――決まったことを受けてそれぞれどう感じましたか

丸山 自分が主将として引っ張っていくのも大事だと思うのですが、岩本と二人三脚でいいチームを作ることが大事だと思っています。副キャプテンとかではなく2人がキャプテンとしてお互いが切磋琢磨(せっさたくま)して勝つチームを作っていこうと思っています。

岩本 自分も一緒で、去年試合に出させてもらっている時から、自分たち2人でどっちがキャプテン副キャプテンでもチームをしっかり作っていこうという話をしていました。今の練習の雰囲気作りも、その思いを継続してやっています。

――例年は副将が複数いたと思いますが、今年は岩本選手だけなのは小宮山監督のお考えでしょうか

丸山 小宮山監督の考えでそのようになったと思います。

――理想の主将象や副将像はありますか

丸山 理想かはわからないですが、来年の秋のリーグ戦、神宮大会が終わった時に、同級生や下級生から「丸山がキャプテンで良かった、岩本が副キャプテンで良かった」と言われるようにしたくて、そこに至るまでの過程では嫌のことを言わないとだめですし、終わった時に評価されるのはキャプテン、副キャプテンだと思うので、評価されるようになることが理想かなと思います。

岩本 隙のないチームを作っていくには全体を見ないといけないので、チームのほころびが生まれないような目配り気配りをしながら引っ張っていくことが理想ではないかなと思います。

――ここからは個別の質問に移ります。まずは岩本選手にお伺いします。まず、秋の早慶戦後にいただいたコメントで「打つ方、守る方もまだまだ課題は見つかりました」とおっしゃっていましたが、具体的にはどんなところですか

岩本 昨シーズンは打つ方はあまりいい結果が出ずにチームに迷惑をかけてしまったというのがあるので、打率もそうですが、打点、ホームラン全てで勝ちにつながる1本というか岩本が打ったから勝ったという試合を増やしていきたいなと思っています。守備はスローイングが昨シーズンあまり安定しなくて、盗塁を多く許してしまったケースがあったので、そこをもう少し詰めて自分のスローイングは持ち味だとも思っているので、来シーズンはしっかり盗塁を阻止してチームを助けたいです。早川さんが抜けてピッチャー陣の層が薄くなってしまうので、そこを自分がうまくリードして去年と同じくらい抑える、(スコアボードに)0を刻んでいくということを目標にしたいなと思います。

――今年は4番・捕手での全試合スタメン出場でしたが、攻守共に柱だったと言える今年一年を振り返って、精神面でのプレッシャーなどは感じましたか

岩本 打つ方で、チャンスで凡退した時や打てない時、責任はすごく感じました。プレッシャーというよりか責任、自分がもっと打っていれば楽に勝てたなという試合が多かったです。その打てなかった悔しさを切り替えることはできていたので、そこは来季も変えずにやっていきたいなと思います。

――昨年の早慶戦直前特集で「大事な試合や打席はワクワク楽しむタイプ」とおっしゃっていましたが、責任の方が大きく感じられたということでしょうか

岩本 逆に言えば打ったらそれだけ貢献度も大きいですし、打たなかったら責任がある。面白いというか重要なポジションではあるので、責任をマイナスの方では捉えてはないです。

――現在の捕手としてのご自身をどのように評価していますか

岩本 スローイングにしてもキャッチングにしてもリードにしても、全てまだまだ力不足だと思っているので、この冬をしっかり鍛え抜いて、全てをレベルアップして来季に備えたいなと思っています。

――投手陣とのコミュニケーションで意識しているのはどんなところですか

岩本 普段のブルペンでどれだけ実践を意識した投球練習ができるかというところで、個人個人にあったアドバイスであったりとか、悪い時の癖やパターンを把握して、毎日のピッチャー陣の状態を把握することを今は心がけています。

――捕手から見た、来季の投手陣の印象はいかがですか

岩本 今の段階ではやっぱり去年の早川さんや今西さん、柴田さんが抜けるというのはかなり薄い状態になるとは思います。でもこの冬でどれだけ新たな選手が出てきてくれるかというのが試合に勝つには重要になってくるので、それをサポートできるように自分も全力でピッチャー陣とは切磋琢磨してやっていきたいなと思っています。

――同じ大阪桐蔭出身で慶大の主将になった福井章吾選手(3年)はライバルとしてどのように感じていますか

岩本 意識していますし、福井がいることで自分も刺激されて頑張れるというところはあります。いいライバルでもありますし、参考になる部分もたくさんあるので、これからもいいライバル関係でやっていきたいなと思っています。

――ここからは丸山選手に伺います。主将を引き継ぐということで、早川隆久主将(スポ4=千葉・木更津総合)から何か言葉を掛けられましたか

丸山 早川さんにはお前1人でやるなとは言われて、同級生の中にもいろいろな方面に長所を持っている人がいるのでそこにしっかり頼って、1人にならずにチーム全体でいいチームを作っていけとアドバイスを受けました。

――秋季リーグ戦の序盤は結果を残していましたが、終盤の特に立教戦の不振を反省されていました。何が不振の原因になってしまったと考えていますか

丸山 いいスタートは切れたなと正直思っていて、2ヶ月、3ヶ月あるシーズンを戦っていく中で、自分の調子をうまくコントロールできなかったというのが1つの原因です。後半になって、相手と戦う時に変に迷いがあったので、メンタル面でもだめだったなと思っていて、この冬(バットを)振っていこうかなと思っています。

――序盤戦の活躍によって相手からのマークが厳しくなったりしましたか

丸山 確かに終盤には配球なども変わって、縦の変化球が増えてきて、そこに苦しんだと思います。この冬は特に(縦の変化球への対応に)取り組んでいます。そこを攻略した上で春に臨めるように今練習しています。

――今重点的に練習しているものは、フィジカル的なものよりも対応力ということですか

丸山 対応力もそうなのですが、終盤は基本を見失っていたと思うので対応力もやりながら基本に近いものをやって、自分のスイングを見直しています。バッティングだけではなく、守備面も結構重点的に取り組んでいます。

――秋季リーグではファーストを守っていましたが、勝負したいポジションはあるのでしょうか

丸山 自分としてはセカンドをもう一度守りたいなという気持ちがあります。1年生の春に出させてもらって悔しい思いしかなかったですし、先輩たちに迷惑しか掛けていなかったので、4年生でもう一度セカンドのレギュラーを取って、当時の4年生とかに成長した姿を見させられたらいいかなと思っています。

切磋琢磨できるような仲間になっていかないといけない

昨秋の明大1回戦で適時打を放つ岩本

――プロ入りの懸かる1年でもありますが、プロへの思いを聞かせください

丸山 プロは小学生の野球始めた頃から目指していて、正直なりたいですし夢の舞台というかプロになって活躍したいという思いはありますが、今年はそれ以上に4年生35人と一緒に優勝したいと思っています。後輩達も一緒に強い早稲田をもう一回取り戻すというところが、プロになりたいよりも一番目標に思っています。

岩本 ドラフトまで1年を切ったということで、普段の練習の意識をプロレベルの意識に持っていかないといけないなと自分は思っています。 ドラフトで上位で指名してもらうためには、学生の意識では厳しいとは思っています。全ての照準をプロに合わせるように、意識次第でこの1年の結果はすごく変わってくると思うので、高いレベルを常に意識して、常に上を見ながら見えないライバルというかそういう相手と戦えるように強い意識でやっていきたいなと思います。

――この冬克服したい課題やそのために力を入れたい練習はどんなことですか

丸山 自分はとにかくまずは守備かなと思っていて、ピッチャーが「マル(丸山)のところに打たせたら安心だ」と信頼されるような守備力をこの冬で身に付けたいなと思っています。バッティングでは逆方向への長打を増やしていきたいです。その中で勝負強い打撃をさらに磨いていきたいと思っています。

岩本 自分の長所をもう一度伸ばしてやっていこうと思っています。自分の長所は肩の強さと長打力だと思っているので、このレベルではまだまだですが、そこにもう一度磨きをかけて自分の良さというのを、どの相手選手よりも輝けるような魅力ある選手になろうと思います。

――チームとして、この冬意識していきたいことや強化したポイントはどのようなところですか

丸山 チームとしては各選手の成長というか、切磋琢磨できるような仲間になっていかないといけないかなと思っています。勝つ集団にはまだまだ遠いので、そこはもっと自分たちで言い合って後輩たちにいい背中を見せられるようなチーム、学年にしていきたいなと思っています。

岩本 隙のないチームというか、グラウンド内に常に緊張感のあるような隙のないチームを目指しています。まだまだ今の雰囲気はそこまでいけていないので、リーグ戦までのこの冬の期間の中でチーム内の雰囲気をもう一度引き締めて、先ほども話しましたが『一球入魂』を、常にどの選手がどんな状況にいてもスローガンを常に心に持ったプレーをできるようになれば強いチームになれると思うので、そこを自分はサポートしていけたらなと思います。

――現在の練習内容やメニューは学生主体で決めているのでしょうか、それとも小宮山監督がある程度練習の方向性は決めているのでしょうか

丸山 学生コーチの占部(晃太朗、教3=早稲田佐賀)を中心に、監督さんやコーチの方々とコミュニケーションを取ってより良い練習ができるように春勝つために、いろいろ考えてメニューを組んでやっています。

――キーマンとなる選手や期待したい選手は誰ですか

丸山 自分は岩本に期待しています。去年4番も正捕手も務めて、早川さんのキャッチャーとしてプレッシャーもある中でいろいろもがいてきて、その姿も見てきました。悩みながら打開策を見つけて、自主練習をやってきた姿を見てきたので、最後の年に爆発すると思っています。そしてそれがチームにいい影響を与えると思っているので、キーマンは岩本にしました。

岩本 自分はキャッチャーなので、徳山(壮磨、スポ3=大阪桐蔭)に期待をしています。自分は高校からずっとバッテリーを組ませてもらっていて、去年早川さんというものすごくいいお手本がいたと思うので、早川さんを超えるようなピッチングをしてもらいたいですし、それを自分は最大限にサポートしたいと思っています。徳山がしっかり早川さん以上の活躍をしてくれれば間違いなく連覇できると思うので、キーマンは徳山です。

――個人的にライバルだと感じている他大学の選手はいらっしゃいますか

丸山 自分も慶應のキャプテンである福井は早慶として意識していますし、高校の時同期だった法政の平元銀次郎(3年)とも対戦が楽しみです。自分たちが甲子園にいけたのも平元のピッチングがあったので、それをしっかり打って自分たちが、早稲田が勝てるようにという意味でも、銀次郎を意識しています。

岩本 自分はやっぱり慶應の福井がライバルだなと思っていて、早慶だからこそ余計その思いは強いです。高校からの仲間であったということもありますし、なんとか自分たちの代で早慶戦に勝って、同じキャッチャーとして負けたくないと思っています。刺激しあってというか、いい関係を築きながらお互い切磋琢磨できたらなと思います。

――今年の結果を見ても、来季の戦力的に見てもやはり慶應は大きなライバルになると思います。また慶應以外でも来季も戦力は拮抗(きっこう)したリーグ戦になると思いますが、そこに関してどう考えていらっしゃいますか

丸山 正直どこが優勝してもおかしくないと思いますし、それくらいレベルが高いと思っています。どれだけ自分たちの野球ができるか、それが多分優勝に近づく要因になってくると思うので、自分たちの野球のレベルをしっかりこの冬鍛え直して、チームがレベルアップした状態でいけるようにやっていこうと思っています。

岩本 丸山と一緒になりますが、どこが勝ってもおかしくない、どの大学も拮抗した力だと分かっているので、それに合わせてではないですが、どれだけ自分たちがいい準備をできるかというのが全てだと思います。試合に100%で挑めないと勝てないと思っているので、最善の準備をどれだけできるか、それは今からの準備もありますし試合直近の準備もそうです。最善の状態、自分たちが100%の状態で試合をするということが大事かなと思います。

――来季の目標や意気込みをお願いします

丸山 リーグ優勝が一番の目標ですし、そのために個人ではチームに勢いをつけられるような打撃であったり、チームを救える一言であったり、勝負強さというのを神宮の舞台で発揮してリーグ優勝、全日本大学選手権で日本一を取るのが春の目標です。

岩本 日本一という目標しか見えていなくて、そのために自分たちは何をするべきかというのを常々考えています。目の前の相手を倒すのが一番ですがやっぱり日本一にはこだわって、自分が打って走って守ってチームを引っ張ってというのをしないといけないと思っています。そのためにしっかりいい準備をしていきたいなと思っています。

――ありがとうございました!

(取材・編集 佐藤桃子、永田悠人)

◆丸山壮史(まるやま・まさし)

1999(平11)年6月8日生まれ。179センチ、84キロ。広島・広陵高出身。スポーツ科学部3年。内野手。右投左打。オフシーズンでは基本を見直しているという丸山選手。同期と一緒に優勝して『強い早稲田』を復活させたいという話が印象的でした。丸山選手の攻守での活躍に期待しましょう!

◆岩本久重(いわもと・ひさしげ)

1999(平11)年4月21日生まれ。181センチ、92キロ。大阪桐蔭高出身。スポーツ科学部3年。捕手。右投右打。昨年から攻守ともに柱であった岩本選手。zoomでの対談でしたが野球への強い気持ちを語ってくださいました。副将という責任も増える今年、どのような活躍を見せてくれるのか期待が高まります!