【連載】春季リーグ戦開幕前特集『奪還』 第3回 岩本久重

野球

 第3回に登場するのは岩本久重(スポ3=大阪桐蔭)。昨年の東京六大学秋季リーグ戦(秋季リーグ戦)では当時の正捕手・小藤翼(令2スポ卒=現JR東日本)の故障で出番をつかむと、リーグ戦初本塁打や盗塁刺殺など好守で存在感を発揮。新チームでは『4番・捕手』という大役を任され、チームの核として大きな期待を寄せられている。そんな岩本に、冬の期間の取り組みや春季リーグ戦についてなどさまざまなお話を伺った。

※この取材は3月26日に行われたものです。

「(投手陣と)息が合ってきた」

質問に答える岩本

――昨年正捕手だった小藤選手が卒業され、今年は正捕手としての働きが求められると思います。ご自身ではどう考えられていますか

 去年小藤さんのけがから自分が最後マスクを被らせてもらいました。普段は全然試合に出られなかった中で試合に出させてもらって、いろいろな経験をさせてもらい、少し手ごたえもあったので、その経験を生かしながらやっていきたいです。

――小藤選手が卒業される際に何かお話されたことなどはありましたか

 いつも二人三脚というか、ミーティングであったりピッチャーの情報交換はしていたので特別なことはないのですが、励ます言葉や勇気づける言葉をかけてもらったのを覚えています。

――正捕手としての期待や重圧を感じることはありますか

 そうですね。ピッチャー陣はずっと投げている選手が多いので、自分に懸かっているというか、自分のリード一つでチームがどちらにも動くと思うので、重要なポジションだなと思います。

――春季リーグ戦開幕前ですが、今のお気持ちはいかがですか

 優勝というのを目指して新チームからやってきているので、優勝に導けるようなプレーがしたいなと思っています。

――現在のチームの調子はいかがですか

 勝てるゲームを落としたりとかが目立って、なかなか勝ち切れない試合もあったりだとか、課題が見つかったオープン戦だったなというのはあります。自分としては、多くマスクを被っていく中でキャッチャーとしての勘であったり感性の部分については手応えがあるのですが、勝ち切れないというのはすごく悔しいというか、課題かなと思います。

――正捕手として迎える開幕と控え捕手として迎える開幕では心境の違いなどはありますか

 去年でいえば「何としてもレギュラーを取ってやろう」という挑戦者の気持ちで、いろいろな意味で攻めたプレーをしていたのですが、今は自分が出るというのがだいたいわかっているので、バッテリー中心にしっかり意思の疎通やコミュニケーションを完璧な状態でやっていきたいなと思っています。

――正捕手としてやっていく中で小宮山悟監督(平2教卒=千葉・芝浦工大柏)から掛けられた言葉などはありますか

 ピッチャーとのコミュニケーションの話で、ブルペンのところでしっかり会話をするというか、一球一球に対しての声掛けとかについて(言われました)。そんなに簡単に「ナイスボール」と言わないように、厳しく接するということを監督から言われたので、ナイスボール以外の球はしっかり「ダメだ」と言うようにしています。

――この冬の期間についてですが、打撃面で意識して練習したことはありましたか

 フォームを固めるというところをすごく練習しました。どれだけミートできるかという点を意識して、素振りやティーバッティングで数を振り込んだ冬だったなと思います。

――キャッチングなどの技術面の練習もされたいと昨年末のインタビューでお伺いしていましたが、具体的に取り組んだ練習やそれを受けての手ごたえはありますか

 手ごたえというよりはまだまだ自分は下手くそだと思います。でも同期に尾﨑(拓海、スポ3=宮城・仙台育英)というキャッチャーがいるのですが、2人で練習が終わった後にピッチングマシンを入れ合って受けたりだとか、映像を撮ってチェックしたりとかをやるようにしていて、少しずつですがキャッチングの精度も上がってきているので、継続していきたいなという感じです。

――冬の練習を経て体の変化を感じる部分はありますか

 冬の期間はウエートトレーニングとかではなくて、体の使い方や力の伝え方といったところを詰めて、パワーアップというよりはスピードアップというかたちでやりました。春先から体は去年に比べてキレがあるような感覚があります。

――春季オープン戦でのご自身の打撃の調子はいかがですか

 全然自分からするとまだまだで、追い求める打撃が全然できていないなという感じです。

――理想の打撃はどのようなものですか

 アウトの内容も高いものにしたいというのと、自分は長打も打てて逆方向にも打てるというのが長所だと思うのですが、オープン戦では崩されたりだとか、長打もあまり出ていないのでそこはダメかなと思います。

――守備面で手応えがあったというお話がありましたが、守備面はいかがですか

 ピッチャーを上手くリードするという部分で、最近無失点で抑えられた時とかはピッチャーが思っている感覚と自分が思っている感覚が合ってきているなというのが感じられます。そのあたりは大分手応えというか、息が合ってきたなという感じです。

――もともとスローイングに自信があると思いますが、スローイングに関してはいかがですか

 オープン戦でけっこう刺せてはいるのですが、まだまだ捕ってからの速さだったりとか追求できるところはあるので、得意であるスローイングをもっと伸ばして売りにしていきたいなと思います。

――4番として走者を返すことも求められますが、走者のいる場面で何か意識していることはありますか

 ランナーが三塁にいたら犠牲フライを打つだとか、点を取るところで状況に合ったバッティングを心掛けてやっています。

――打撃陣全体としてエンドランを使っている印象がありますが、意識して取り組まれているのですか

 オープン戦はいろいろなことを試す場なので、けっこうアグレッシブにサインは出ていると思うのですが、リーグ戦を想定するとそういう足を使った野球をしていかないとだめだなと思うので、チームは今いろいろな攻撃パターンをやっています。

――先日読売ジャイアンツ2軍、3軍とのオープン戦がありましたが、プロの選手と対戦していかがでしたか

 自分はマスクを被っていて、プロ野球選手のスイングは力強くて、アマチュアのバッターとは違うな、怖いバッターが多いなというのは感じました。

――投手陣が1イニングに大量失点する場面がこのオープン戦何回かあったと思うのですが、そのあたりの原因などはどう感じられていますか

 点を取られることは仕方ないと思うのですが、そこで大量に取られてしまうと試合が決まってしまうので、何としても最小失点で抑えるというのは常々ピッチャーに言っています。一つの原因としては、同じテンポや同じ間で投げたりとか工夫が見られないところがあって、悪循環に陥って自分の世界に入ってしまうというパターンがあるので、自分ができることとしてはしっかり間を取ってマウンドに行ってピッチャーと会話したりとか、少し気持ちを変えられればいいのかなと思っています。

――今年も早川隆久選手(スポ4=千葉・木更津総合)と徳山壮磨選手(スポ3=大阪桐蔭)が先発をされると思いますが、ここまでの春季オープン戦の投球はいかがですか

 持っているものは素晴らしいものがあると思うのですが、まだまだいけるかなというか。今は結果的に抑えられているのですが、手応えとしてはいまひとつというか、まだまだ自分はいけるのではないかと思います。

――特にどういった部分でそれを感じられますか

 2人に共通することは、コントロールミス(を減らすこと)がまだまだ詰められるところかなと思うので、そのあたりの精度が仕上がってくればリーグ戦でも大丈夫かなという感じです。

――救援陣では山下拓馬選手(法3=埼玉・早大本庄)や原功征選手(スポ2=滋賀・彦根東)など今年から1軍で投げ始めた投手がいらっしゃいますが、見ていていかがですか

 けっこう抑えている場面が見受けられるので、それは自分たちキャッチャーからしたらすごく助かります。でもまだリーグ戦で投げたことはないので、神宮の雰囲気(の中でいつも通り投げられるか)とかそういった面で自分はけっこう心配しています。そのために、ただオープン戦だと思ってやるのではなく、しっかりと神宮を想定したピッチングをするようにプレッシャーをかけてやっていて、リリーフ陣はけっこう安定はしているので楽しみかなと思います。

――今年特に期待している投手は誰でしょうか

 やっぱり早川さんがキャプテンになって最後の年ということで、早川さんに助けられたことも何度もありますし、自分としても優勝投手にしたいなと思っているので、最後はエースに期待したいと思います。

――今年の野手の守備については見ていてどう感じられますか

 オープン戦ではミスが目立っていて、けっこう多いと思うのでもっともっと詰められるかなと思います。

――野手全体で意識して取り組んでいることなどはありますか

 今はスローイングの精度がけっこう鍵になってくるかなと思っています。捕球はできてもダブルプレーが取りきれなかったり、タッチアップをアウトにしきれなかったりというところがあるので、スローイングをもっと安定させればもっと変わってくるのかなと思います。

「チームもピッチャーも引っ張っていきたい」

昨秋の慶大3回戦でリーグ戦初本塁打を放つ岩本

――捕手として目標にしている選手や、選手像はありますか

 打てるキャッチャーというのは今の時代少ないですし、バッティングと守備を両立したキャッチャーというのを自分は目指しているので、そうなれるようにしたいなという感じです。

――今年から上級生ですが、心境の変化などはありますか

 そうですね。正捕手としてマスクを被らせてもらって4番を打たせてもらっているという中で、責任感が去年とは全然違いますし、それなりのプレッシャーは感じますね。

――昨年末のインタビューで「タイトルや数字にこだわってやっていきたい」とおっしゃっていましたが、具体的にはどの数字にこだわりたいですか

 やっぱり打率は見られると思うので、打率にはこだわりながら、盗塁の阻止率も並行して、自分はスローイングを売りにしていきたいので、盗塁阻止率と打率を意識しながらやりたいです。

――何割くらいを目標にされますか

 バッティングはまず3割は打つことがノルマで、首位打者を取れるように頑張りたいなというところです。

――他大学の投手で対戦を楽しみにしている選手はいらっしゃいますか

 去年早慶戦で木澤投手(尚文)に抑え込まれたので、いいピッチャーでなかなか簡単には打てないと思いますが、ここ一番という場面で打ちたいと思います。

――捕手として他大学で警戒している打者やチームはいらっしゃいますか

 いつも打たれるケースで言えば、自滅や失投で打たれることが多いので、相手というよりは自分たちがどれだけ力を発揮できるかだと思います。相手はどの大学にもいいバッターはいると思うので、その中で自分たちのピッチングやリードができればいいのかなと思います。

――他大学の捕手に「ここは負けないぞ」という部分はどこですか

 やっぱりスローイングは負けたくないと思います。またどの捕手よりも打って、結果的にベストナインを取れるようにやりたいなと思います。

――最後に意気込みをお願いします

 日本一になるためにはまずリーグ戦を取らないといけないので、そのために開幕戦は何としても取るというのを考えながら、チームもピッチャーも引っ張っていきたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 池田有輝、芦澤りさ)

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◆岩本久重(いわもと・ひさしげ)

1999年(平11)4月21日生まれ。181センチ、88キロ。大阪桐蔭高出身。スポーツ科学部3年。捕手。右投右打。攻守で重要な役割を担う岩本選手。ベストナインを取るような活躍ができれば、おのずとチームも勝利を積み重ねられるはずです!