最終回には、新体制になった早大をけん引していく加藤雅樹主将(社3=東京・早実)、小藤翼副将(スポ3=東京・日大三)、檜村篤史副将(スポ3=千葉・木更津総合)が登場する。昨秋惜しくも手に届かなかった賜杯に向け、駆けだした新チーム。その中で大役を任された三人に、優勝への熱い思いを伺った。
※この取材は12月8日に行われたものです。
「試合に出られないということは気持ち的にもきつかった」(小藤)
早大捕手陣の中心となっていく小藤
――まず、今年度のチームを振り返ってみていかがでしたか
檜村 最初はなかなかうまくいかず、チームとしてまとまりがありませんでしたが、最後は早慶戦を見ると分かるようにチームが一つになって勝つことができ、とてもいいチームだったと思います。
加藤 4年生がすごい引っ張ってくれていて、自分たちは付いていくというか引っ張られて頑張ることができた、いい一年間だったと思います。
小藤 檜村、加藤と一緒で、4年生を中心にしてチームが一つになって戦っていこうという感じでした。その集大成が早慶戦で発揮されてとてもいいチームだったなと思いました。
――新チームの雰囲気はいかがでしょう
檜村 自分は結構いい感じだとは思うのですが、意見を言い合うということがまだできていないので、そこは詰めていかないといけないなと思います。
加藤 緊張感のある練習ができているのでそれはとてもいいことなのですが、まだまだおとなしいというか、もっともっとざっくばらんに何でも言い合える関係をつくっていかないと駄目かなと思います。
小藤 雰囲気はとても良くて、前よりも緊張感というか試合を想定した練習を意識してやっているのですが、もう少しできる部分はあると思うのでこれからしっかりやっていきたいです。
――ここからは個人の話をさせていただきます。まずは加藤選手にお聞きします。東京六大学秋季リーグ戦(秋季リーグ戦)の序盤は安打も出ずに苦しい状態だったと思いますが
加藤 苦しかったです。けれども、実力がないのでそれは仕方ないかなということで、その時は自分の実力を上げることをテーマにしてプレーしていました。
――その中でも終盤に向けて調子を上げてこられた要因として、フォームの変更を挙げていましたが、どなたかのアドバイスがあったのですか
加藤 監督さん(髙橋広前監督、昭52教卒)や道方さん(康友投手コーチ、昭53教卒=大阪・箕面自由学園)、佐藤助監督(孝治、昭60教卒=東京・早実)に「今のフォームでは駄目だ。(バットの軌道が)遠回りする癖を直さなければ駄目だ」と(スタメンを)外される時に言われたので、どうしたら直るかなということを自分で考えて変更しました。
――現在もバットを寝かせたフォームですか
加藤 今はもう元に戻していて、その中で遠回りしないように自分のかたちをつくっていけたらなと思っています。
――フォームを変えたことでメンタル面に変化はありましたか
加藤 フォームを変えたことでは特にないですが、外されたことで4年生とできる野球が短くなってしまいました。でもそこで悲しんでいたら終わってしまうということで、まだ4年生とできるということをモチベーションにして頑張りました。
――秋季リーグ戦開幕前に打点を増やしたい、とお話されていました。今回は打率は下がった一方で、打点は2倍以上になりました。打点が多くなった手応えはありましたか
加藤 そのことに関しては前を打つバッターが塁に出てくれて、自分は内野ゴロとか犠牲フライという泥臭いかたちでつないでいき、(味方の)好走塁などもあって打点が自分に付いてくれたので周りに感謝しています。
――打席ではどのようなことを考えていましたか
加藤 場面に応じて、点が入りそうな場面ではどのようにしたら点が入るかとか、とにかく後ろにつなぎたいという気持ちでした。
――次は小藤選手にお聞きします。今年度は出場機会が少なく捕手としての出場もリーグ戦では1回にとどまりました。苦しい一年になったと思いますが、この一年を振り返ってみていかがですか
小藤 試合に出られないということは気持ち的にもきつかったです。でもその中で試合を見ていて学ぶ部分もたくさんあったので、そういうプラスの考えでマイナスにならないように過ごしていました。
――現在の捕手としてのご自身をどう評価していますか
小藤 まだまだどの部分でも伸ばしていけることはあるので、全体的に自分自身をレベルアップするということを目標にやっています。
昨秋はクリーンアップに座り、打線をけん引した檜村
――最後に檜村選手にお聞きします。春季リーグ戦が始まる前に3割を打ちたい、とお話されていましたが、秋季リーグ戦ではそれをついに達成されました。昨秋、打撃が好調だった要因についてどう考えていますか
檜村 前までは結構(体が前に)突っ込んでしまっていたのですが、意識として右の軸足に体重を残しタメをつくるようにしたことで(重心が)後ろに残ったまま打つことができました。
――打点も自己最高の10打点を記録しましたが、その手応えはありましたか
檜村 今季はとても調子が良くて初戦の法政戦でもたくさん打つことができました。初戦からしっかり自分の波に乗れ、バッティングで自分の調子がいいということをいつも考えながらできていました。
「(加藤選手は)プライベートでは面白い一面とか恥ずかしい一面もある」(檜村)
プライベートでも三人で過ごすことがあるという
――野球部の活動以外で三人で活動することはありますか
加藤 マリパかな。最近小藤の部屋で『マリオパーティ』をします(笑)。
一同 (笑)。
――マリオパーティがお好きなのでしょうか
小藤 まあはい。好きですね(笑)。自分が最初に始めて、ちょっと人数が増えてきたところです(笑)。
――三人だけでされるのでしょうか、他の選手がいらっしゃる時もありますか
小藤 いる時もありますし、三人でやる時もあります。
――突然ですが、お互いがどういった方か教えてください。初めは加藤選手についてお願いします
檜村 そうですね、やることはしっかりやるというか。野球とか勉強にしてもやらなければいけないところをしっかりやって、すごく・・・、はい、このまんまですね。
一同 (笑)。
檜村 ちょっとプライベートでは面白い一面とか恥ずかしい一面もあるのですが・・・。
一同 (笑)。
――何か具体的なエピソードなどはありますか
加藤 いやいや、そういうのはいいです(笑)。
檜村 朝起きることが苦手だとか・・・(笑)。
加藤 いやいやいやいや(笑)。
檜村 そういう感じですね。
小藤 キャプテンに就任する前からまとめたりする力がすごくあるなと思っていて。キャプテンになってみて、さらにしっかりチームをまとめる力というのを感じました。なんか、すごい練習も熱心で、見習うところがたくさんあると思いました。
――では、檜村選手はいかがでしょうか
加藤 檜村は、練習もちゃんとやるし、感情の起伏がないんですよ。嫌なこととかがあっても愚痴を言わないし。そういう人間的な部分は素晴らしいのですが、プライベートは結構逆というか。というか、面白い。たくさん笑ったりと、すごく人間らしいです。
小藤 今加藤も言ったのですが、オンとオフがすごくはっきりしていて。やる時はすごく寡黙というか、全力でやっていて。でも普段はすごく面白い人です。
――では、小藤選手についてお願いします
加藤 小藤はね・・・なんだろうな・・・なんだろうな・・・なんだろうね(笑)。
檜村 小藤を怒らせるとちょっとたたいてくるので(笑)。
一同 (笑)。
檜村 凶暴です(笑)。
小藤 機嫌がいい時はいいのですが、悪くなるとちょっと危ないです(笑)。
一同 (笑)。
檜村 でもまあ、野球はしっかりやって。プライベートでは自分は部屋が隣なので。加藤だけ佐藤助監督が間に入りますけど。ですので、小藤の部屋に行ったりして遊んだりしています。
加藤 まあ、なんですかね。考えていないようで結構考えていますし。まあ、いいやつだと思います(笑)。
一同 (笑)。
――加藤選手は以前の対談で檜村選手を「爆弾」と紹介されていましたが、檜村選手の面白かったエピソードなどはありますか
加藤 檜村の特徴は、笑いが『ラグい』(笑いにタイムラグがあるという意味の造語)。面白いことがあった時に、みんなが静まりかけた時に、笑い出すみたいな(笑)。自分でかみ砕いて理解してから笑い出す(笑)。
一同 (笑)。
小藤 静まってからも笑います。
加藤 え、何で笑ってんの(笑)。みたいな(笑)。
――今回、主将、副将というのは話し合いで決められたのでしょうか
加藤 いや、話し合いはしていないです。少し複雑で。今までだったら選手間で1人出して、監督さんに承認をもらうというかたちだったのですか、今年は監督さんが代わる代なので、小宮山さん(悟新監督、平2教卒=千葉・芝浦工大柏)と髙橋さんと、自分たちの意見の3つのミックスで決めました。
――決まったことを受け、どのように感じましたか
加藤 そうですね、自分は早慶戦の前日に言われて、緊張感が高まりました。
小藤 自分は正直驚いたというか。まさか自分ができるとは思わなかったので。監督さんとかに選んでもらったので、素直にうれしいというか。がんばらなきゃな、というのがありました。
檜村 2年生の時から試合に出していただいていたので、そういった立場にはなるのかなと思っていました。しっかりチームを引っ張っていかなければいけないな、と思っていました。
――加藤選手は高校時代にも主将を務められていましたが、目指している主将像などはありますか
加藤 キャプテンだからといって偉そうにするとか、そういったキャプテンには絶対になりたくないとずっと思っていて。人一倍苦しむというか、自分が頑張っているとか、声を出しているとか、気合が入っているとか、そういったことを見てもらって、感じてもらって、背中でチームを引っ張っていくことが理想かなと思います。
――副将のお二人は加藤選手が主将になるということについてどう感じられましたか
小藤 納得ですね。キャプテンになるだろうな、と思っていたので。任せられるな、と。
檜村 自分もキャプテン候補に挙がっていたのですが、自分のことは自分が良く知っていて、そういうのは無理かな、と思っていたので、加藤にはしっかりやってもらいたいな、と思います。
――小島和哉前主将(スポ4=埼玉・浦和学院)は投手ということもあり、岸本朋也前副将(スポ4=大阪・関大北陽)と黒岩駿前副将(スポ4=長野日大)を含め、『三人で主将』ということをよく話されていました。皆さんはそれぞれの役割をどうお考えでしょうか
加藤 そこについて話し合ったことはありませんが、自分は肩書きではキャプテンですが、4年生全員がキャプテンくらいのつもりで引っ張っていけることが理想なので。理想では、この三人がというわけではなくて、同期全員で引っ張っていけるようにしていければいいな、と思っています。
小藤 自分はポジション的にも試合の時には引っ張っていかなければいけないと思っているので。加藤も言っていた通り全員でということも思っているのですが、試合の時にはしっかり自覚を持ってプレーできたらと思います。
檜村 自分も(遊撃手という)ポジション的にグラウンド全体の真ん中にいるのですが、しっかりそういった面で声を回して引っ張っていけたらいいと思います。
「優勝は絶対」(加藤)
主将として主砲として、大きな期待を寄せられる加藤
――この冬、個人として練習していきたい点はありますか
檜村 バッティング面ではもっとスイングを速くすることです。かたちは良くなってきているので、そういったところを上げていきたいと思っています。守備はまだまだ動けていないと自分では感じていて、雑な部分もあったりするので、基礎を改めて練習していきたいと思います。
加藤 自分はやはり打てなければいけないと思っているので。みんなが「もうやめておきな」って言うくらい練習しないと、と思っています。
――特に力を入れて練習したいのはどのようなメニューですか
加藤 この時期だったら素振りだったりティーバッティングだったり、スイングのかたちを固めたり、どの球がきても同じスイングができるような練習を意識してやっています。
――小藤選手はこの冬どのようなポイントを練習していきたいと考えていますか
小藤 バッティングは打率をもう少し上げて、その中で長打率も上げていきたいと思っているので、この冬振り込んで力を付けたいと思っています。守備の方では、配球やスローイングがまだまだなのでしっかり伸ばして、ピッチャーとのコミュニケーションも大事にしていきたいと思っています。
――長打を増やす上でフィジカルトレーニングなどはされていらっしゃいますか
小藤 体幹を意識してやっています。
――来季は正捕手を争う立場になるかと思いますが、そこに向けてアピールしていきたい点はどのような部分ですか
小藤 自分の売りは守備だと思っているので、守備でミスをしないというのはずっと言っている大前提で、その中でバッティングでもアピールできたらと思っています。
――3月の沖縄キャンプでは捕手陣の雰囲気を「バチバチした感じはなく、意外と和気あいあいとやっている」とおっしゃっていました。今の雰囲気はいかがですか
小藤 普通に仲良くやっています。今度(捕手)全員でミーティングをやるのですが、(それくらい)仲のいい感じです。
――昨年度は「打撃が課題」と話されていましたが、この一年で成長したと感じた点はありますか
小藤 自分の中で打てるポイントやスイングの軌道がしっかりしてきたので、そこが前よりは成長した点だと思っています。
――加藤選手にお伺いします。慶大は主将が郡司裕也選手(3年)となりましたが、意識することはありますか
加藤 慶大はメンバーも残っていますし、まとまりのあるいいチームなので負けたくない思いはあります。それと高校の時は郡司に負けているので、その点で負けたくないな、やり返すぞという気持ちがあります。
――秋季リーグ戦も多くの試合で中軸を担い、来年度も4番に座ることが期待されると思います。目指している4番像はありますか
加藤 「加藤に回せば大丈夫」と思ってもらえて、球場全体がそういう雰囲気になるようなバッターになりたいです。
――具体的に理想としている選手はいらっしゃいますか
加藤 今年ではやっぱり山川選手(穂高、現埼玉西武ライオンズ)。打点を稼いでホームランも打ってチームを優勝に導いて、という意味で、あれくらい打てたらいいなと思います。
――檜村選手にお伺いします。先日(12月1~3日)まで侍ジャパン大学代表候補強化合宿に参加されていましたが、新たに得た経験などはありましたか
檜村 他のリーグの選手もたくさんいたのですが、みんなレベルが高くてまだまだ自分は下手くそだなと思ったので、もっともっと頑張らなければいけないと感じました。
――特に印象に残っている選手は誰でしたか
檜村 ショートは2年生が多くいたんですけれども、みんな守備がうまくて、2年生でもこれだけできるんだというのを見て刺激を受けました。中央大学の内山(京祐、2年)という選手も、全打席ヒットを打っていてすごいなと感じました。
――対戦された中で印象に残っている投手はいらっしゃいますか
檜村 早大の早川(隆久、スポ2=千葉・木更津総合)です(笑)。対戦したのですが、その試合は2イニング投げて6人中5人三振だったので。
――皆さんにお伺いします。主将、副将として、来年度期待したい選手を教えてください
小藤 加藤ですかね。キャプテンで、多分4番を打つことになると思うので、今まで以上の成績を残してほしいという思いはあります。
加藤 自分は早川。小島さんがチームから抜けて、エースと呼ばれる立場にならなければいけないと思うので。今までは実力を出し切れていないと思っていて、出し切ればすごいピッチャーになると思うので、そろそろ出し切ってほしいなと思いますね。
檜村 自分は小藤ですね。キャッチャーというのはとても重要なポジションなので、しっかりチームを引っ張ってほしいと思っています。
――小藤選手にお伺いします。捕手から見た、来季の投手陣の印象はいかがですか
小藤 一人一人タイプが違うピッチャーがそろっていると思うので、それぞれ個性を出し切ってほしいと思います。
――髙橋前監督から言い残されたことはありますか
檜村 前のことなのですが、練習中に自分がグラブを垂らして走っていたら、「プロになるんだったら練習中の立ち姿もちゃんとするように。スカウトはそういうところも見ているんだぞ」と言われて、今は胸にグラブを付けて走るようにしています。
――小宮山新監督が新しく就任されますが、会話の中で印象に残っていることはありますか
加藤 一日一日の積み上げというか、無駄な時間を過ごさないように意識して、どうやったら課題を克服できるか考えろということはよく言われるので、それが頭に焼き付いています。
――最後の質問になります。来季に向けての意気込みをお願いします
小藤 チームのスローガンとして『ONE』を掲げているので、チームで一つにまとまって。3年間優勝できていないので、リーグ優勝して日本一になるという目標に向かって、やっていきたいと思います。
加藤 優勝は絶対なのですが、そのために自分が無駄な打席をつくらないように、一打席一打席必死に食らい付いていきたいと思います。
檜村 自分はプロ野球選手を目指しているので、そのためにも優勝はしなければいけないと思っています。そこに貢献するために、チームとしても個人としてもやっていきたいと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 望月優樹、金澤麻由、久保茉里奈)
チームの命運を託された三人に大きな期待がかかります!
◆加藤雅樹(かとう・まさき)(※写真中央)
1997年(平9)5月19日生まれ。185センチ、88キロ。東京・早実高出身。社会科学部3年。外野手。右投左打。慶大の郡司選手に「高校時代負けている」と話した加藤選手。2015年夏の甲子園では、準決勝で加藤選手率いる早実高が、郡司選手擁する仙台育英高に敗北を喫しています。かねてからしのぎを削ってきたスター二人もいよいよドラフトイヤー。今まで以上に神宮球場を熱く盛り上げます!
◆小藤翼(こふじ・つばさ)(※写真左)
1997年(平9)8月6日生まれ。181センチ、86キロ。東京・日大三高出身。スポーツ科学部3年。捕手。右投左打。今年は正捕手の座を狙う小藤選手。色紙に書く背番号についての話になった時、「背番号『6』はそんなに簡単に書ける番号ではない」と話されていました。早大で背番号『6』というのは正捕手に与えられる伝統の番号です。いつの日か『6』をつけ、早大の歴史に名を刻んでもらいたいですね。
◆檜村篤史(ひむら・あつし)
1997年(平9)11月6日生まれ。182センチ、83キロ。千葉・木更津総合高出身。スポーツ科学部3年。内野手。右投右打。すらすらとペンを走らせる加藤選手の横で、「こういうのすごい時間がかかる」と色紙に苦戦していた檜村選手。迎えるラストイヤー、さらなる成長を願い『レベルアップ』としたためてくださいました。打撃も守備も好調だった昨秋を超える、飛躍の一年になることを期待しています!