【連載】春季早慶戦直前特集『覇者の矜持』 第7回 岸本朋也副将 

野球

 今季、打撃で好調を維持している岸本朋也副将(スポ4=大阪・関大北陽)。2カード目の明大戦からスタメンマスクを被り続け、打率は現在3割9分3厘で現在リーグ4位だ。早慶戦でも攻守で活躍が期待される岸本に、今シーズンを振り返りながら、早慶戦への思いを語っていただいた。

※この取材は5月24日に行われたものです。

「自分に求められているバッティングを」

自分を見失わず、チームバッティングを心掛ける

――開幕カードでスタメンを取れなかったときの正直な気持ちを教えてください

 悔しい気持ちはもちろんあったんですけど、チームが勝つことが一番だと考えていたので、試合に入ったときには自分が出てる出てない関係なく、試合には入り込みました。

――悔しさをバネに練習を増やしたりといったことはありましたか

 いや特に…リーグ戦出てないから特別にやったことっていうのはないんですけど、いつ言われても出れる準備は常にしておこうっていうことはあったので、守備練習もバッティング練習もいつもと変わらない準備はしてました。

――立大1回戦では代打で適時打を打ちましたが、その打席を振り返っていただけますか

 正直打席入るときは何も考えてなくて、とりあえず来た球を打とうっていう気持ちだけあったので、それがたまたまいいところに飛んでくれてヒットになったのかなと思います。

――そこから自分が勢いに乗った感じはありましたか

 そうですね、やっぱり1本出たのが、1本目っていうのが自分の中で結構苦しいというか、去年の秋もすごくそうだったので、1本目を初戦で出せたのは大きかったかなと思います。

――明大戦からスタメンというのはいつ言われましたか

 空き週に監督室で言われましたね。

――明大2、3回戦では守備のミスから点が入る場面がありましたが、そこはどう考えていますか

 明治戦の勝ち点を落としたのはやっぱりチームとしてのそういうミスを詰め切れてなかった、そういう甘さが出て、負けたのかなって思うので、勝ち点を取るにはチーム力っていう面で足りなかったのかなっていうのは素直にチーム全体として受け止めようと思いました。

――東大戦では連勝でしたが、なかなか1本が出ない試合でもありました

 実際苦しい状況で、ミスがなかったかというとチームバッティングとかでできてない部分もあったので、バントであったりエンドランだったりでミスがあって点が入ってなかったことは、もう一回見つめ直して法政戦に臨もうっていう話はミーティングでもありました。ただ、勝ち点を取り切れたっていうのはチームにとってプラスなことなので、そこは下向かずに前を向いていこうっていう話にはなりました。

――東大2回戦から5番を任されるようになりましたが心境の変化などはありましたか

 いや、自分的には何番打っててもあんまり変わらないって思ってるんで、とりあえず打席に立った時の状況とかを見て、自分に求められているバッティング、犠打だったら犠打をしますし、そういうバッティングをできるようにっていうのは考えてやってます。

――明大戦では「たまたま打てているだけ」とおっしゃっていましたが、その後たまたまではなくなった感覚はどこかでありましたか

 監督さん(髙橋広監督、昭52教卒=愛媛・西条)も、バッティングはいつも打てるもんじゃないっていうのはおっしゃってるので、ただその確率を上げるために練習してるだけで。明治戦は感覚はすごい良かったと言えば良かったんですけど、まあたまたまいいところに飛んでくれたというか…。基本来た球を芯で捉えることしか考えてないので、状況に応じて内野ゴロ欲しかったら狙ったりとかはしますけど、ヒットとかホームランは狙って打ってるわけではないので、そういった面でたまたまではありますね。

――法大1回戦では東京六大学リーグ戦(リーグ戦)初本塁打を放ちましたが、改めて振り返っていかがですか

 追加点が欲しい場面でホームランを打てたのはよかったのかなと思います。

――打った時に初本塁打だとすぐに思いましたか

 それは思いましたね。「ホームラン打ったなあ」っていうのは感じましたね。

――その後は打率が落ち気味ですが今のご自身の調子はどう捉えていますか

 正直法政戦前もあんまり状態が、振れてない感じではあって。1回戦はいいかたちでヒットが出たんですけど、2回戦3回戦になるにつれて調子が下がってきたなっていうふうに思うので、ただ早慶戦まで1週間空いて、全然調整する期間もあるので、そこでもう一回盛り返していいかたちで早慶戦を迎えられたらいいかなと思います。

――小島和哉選手(スポ4=埼玉・浦和学院)について、前半は調子が上がりませんでしたが、最近は好投が続いています。調子によってリードの仕方を変えたりはしますか

 法政戦に関しては状態がすごく良くて、真っすぐがしっかりコーナーに投げ切れてて、緩い変化球も投げ切れてたんで、すごいやりやすいっていう感じはあったんですけど。基本的に小島の場合は真っすぐがどれだけ決まるかが勝負というか、試合のカギだと思うので、その真っすぐを決めやすいように変化球を交えて、調子が悪くてもやっていければいいのかなって自分の中では意識してやっています。

――法大2回戦で久しぶりに先発のマウンドに上がった今西拓弥選手(スポ2=広島・広陵)には、どのような声を掛けましたか

 基本的には思い切って投げていけっていう。後先考えても仕方ないので、とりあえず1回1回思い切って腕振って投げてくれっていうふうに声を掛けて試合に入りました。

――負けた試合では投手が打ち込まれる場面もありましたが、捕手から見てどう思いますか

 ピッチャーが打たれてるっていうのはピッチャーだけの責任じゃ絶対になくて、自分のリード面でも甘かったところが絶対にあると思うので、そういったことはしっかり自分の中で反省して、打たれたのは明治戦なんですけど、東大戦、法政戦、って臨んできました。法政戦も何点か取られたので、そこの反省はしっかりして、早慶戦に向かいたいと思います。

「一体感は増してきている」

常にチームのことを思う姿勢がうかがえた

――髙橋監督が岸本選手に関して「リードがいいからバッティングもいい、バッティングがいいからリードもいい」ということをおっしゃっていましたが、ご自分の中でそういった感覚はありますか

 自分の中では正直あんまりないというか、そんなに意識はしてないですけど、試合をやる中で相手キャッチャーに打たすと調子づいていくっていうのはありますね。相手キャッチャーにはタイムリー打たせちゃ駄目だなっていうのは考えながらやってるので、そういった面で監督さんのおっしゃってることは合ってるというか、相乗効果になってるのかなと思いますね。

――昨春は後半2カードで打撃が失速しましたが、今季はいまだ好調を維持しているといえます。その理由は何だと思いますか

 右打ちを続けられてるからかなと思います。このあいだの法政戦でもホームラン打った後に最後ライト前が出たので。あのライト前は自分の中ですごいでかいかなって思って。基本的に引っ張るバッターじゃないので、引っ張り出すとフォームがぶれてきますし。いいかたちでライトに強い打球が行ってるのは、ここまで打ててる理由なのかなと思います。

――右方向に打つことを意識しているということでしょうか

 試合では正直あんまり意識してないんですけど、練習では基本的に監督さんも「右方向に強い打球」というのをおっしゃってるので、練習の中では本当に右打ちというのを意識してますね。ただ試合になったら来た球をその方向に打ち返すことだけを考えてやってます。

――練習の成果が出ているということですね

 そうですね、結果的に右方向に飛んでるっていうのがいい状態にあるってことかなと思いますね。

――打席に入るときに一番考えていることは何ですか

 高校からそうなんですけど、絶対にピッチャーとの気持ちの戦いというのはあると思ってて。気持ちが負けたらもう負けだと思ってるので、何としてでもピッチャーには負けんぞっていう、闘志じゃないですけど、気持ちだけは絶対負けないっていうのは思って打席に入ってます。

――岸本選手について「捕手としての表現力が増した」と髙橋監督がおっしゃっていましたが、ご自分ではどう思いますか

 監督さんに、ピッチャーにしっかり伝えていかないと駄目っていうのは言われたんですけど、そのことで、後輩もいるのでどこまで言っていいのかっていうのは迷ってるところもあって。1年生の時の4年生だった道端さん(俊輔、平28スポ卒=現明治安田生命)に相談させてもらったりして、その中で「思ってることを素直に伝えるのが一番大事だ」って言ってもらいました。そこから思ったことをピッチャーには言うようにして、ピッチャーが納得してても自分がちょっと違うなって思ったら素直に「いや今のは違う」って伝えて、理由とかも伝えてしっかり話し合うっていうことを最近はすごい意識的にやるようにしてます。

――練習しながらそういうやり取りをするのでしょうか

 ブルペンとかでピッチングを受けたり、シートバッティングとかで球を受けて、ちょっと今のは違うなって思ったら、練習終わってから「あの球は俺的にはこういう球を放ってほしかったんだよ」って伝えて、「そういうことなんですね」ってやったり、逆に聞かれたらすぐに答えられるようにっていうのは常に考えてやってます。

――ベンチの雰囲気が悪いときにどういう声を掛けるか、具体的にありますか

 自分の中ではポジティブな発言っていうか、別にこれっていうのはないんですけど、ポジティブな発言をしようって思ってます。でもベンチにいる4年生も雰囲気悪いって思ったらすぐにめっちゃ声出してくれるので、そういった面ではすごくやりやすい状況にはなってますね。

――昨秋について、「ケイオーに一体感で負けていた」とおっしゃっていましたが、今はいかがですか

 リーグ戦やるにつれてだんだん一体感は増してきてるかなって思うので、ケイオーと比べた時に、基準が分からないので何とも言えないんですけど、一体感はすごい出てきてるかなって思いますね。

――チームが勝つことが一番大事、という思いは4年生になったから生まれたのでしょうか

 下級生の時から思ってたは思ってたんですけど、4年生になるとより強くなったなっていうのは自分の中でありますね。

――早慶戦に対して特別な思いはありますか

 やっぱりケイオーには去年目の前で胴上げされて、悔しい思いをしてるので、絶対自分たちの前で胴上げはさせないっていう強い気持ちはありますね。

――早慶戦へ向けて特に取り組んでいることはありますか

 いや特別にっていうのはないんですけど、今まで通り、試合で出た反省を、昨日からまた練習始まったんですけど、その中でミスを確認して、こういうことはなくして早慶戦に臨めるようにしようっていう話はして、その課題を克服するためにチームで取り組んでいこうっていう感じでやってます。

――慶大の投手陣は盤石ですが、どう打ち崩しますか

 やることは一緒だと思って。監督さんがよくおっしゃるのは、「ボールを芯で強く捉えるっていうことをバッターは一番やれ」ってことなので、それを一人一人が的確にやっていって、その中でバントだったりエンドランだったりバスターだったり、そういう細かいことを的確に決めていけると、点が取れないこともないのかなと思います。

――強力な慶大打線を抑えるためにはどうしたらいいと思いますか

 相手打線を見たときに、キャプテンの河合(大樹、4年)を出すとチームが乗ってるなという感じがあるので、チームが勢いづく選手を打たせないっていうのを意識してやっていけばうまく抑えられるんじゃないかなとは考えてます。

――開幕前にベストナインが目標とおっしゃっていましたが

 正直ちょっと厳しいですね(笑)。キャッチャーは優勝しないと、毎年大体優勝したところなので。けどベストナインが一番の目標なので、それは変わらないですね。

――ありがとうございました!

(取材・編集 村田華乃)

執念で去年のリベンジを果たしてください!

◆岸本朋也(きしもと・ともや)

1996年(平8)9月11日生まれ。172センチ、81キロ。大阪・関大北陽高出身。スポーツ科学部4年。捕手。右投右打。どちらかといえば勢いに乗って調子を上げるタイプだという岸本選手。このままの勢いで早慶戦でも大車輪の活躍を見せてくれることでしょう!