【連載】秋季リーグ戦開幕前特集『pride』第1回 吉見健太郎副将×岡大起×熊田睦

野球

 100人を超える早大野球部の部員の中で、試合に出られるのはたったの9人。四年間でベンチ入りすらかなわなかった選手も珍しくない。今回お話を伺ったのは、吉見健太郎副将(教4=東京・早実)、岡大起(社4=東京・早実)、熊田睦(教4=東京・早実)の三人。彼らもまた常に試合に出ているメンバーではないが、心に抱く思いは同じだ。「チームに貢献を」。自分の役割を理解し、それに徹することで今やチームに欠かせない存在となった。最上級生として、控えとして、そして一野球選手として。高校時代から時を同じくしてきた三人の、それぞれのかたちでのラストシーズンに迫った。

※この取材は8月29日に行われたものです。

高校時代から互いをよく知る三人

――先日、甲子園が終了しましたが早実高のOBとしてことしの高校野球はいかがでしたか

吉見 早実が甲子園出ないと楽しくないですね~。

 楽しくないですね、なんも。

吉見 母校愛、結構あるよね。

 ありますね、みんな。

吉見 ちゃんと西東京大会決勝(東海大菅生高―早実高) の負けた試合も、みんなでテレビ見てたりとかしてました。一喜一憂しながらね。和泉監督(実、早実高野球部監督)には「一喜一憂するな」って言われてたんですけど。

 常に言われてたんですけど、まああの試合はしてました(笑)。

――現地応援はされなかったのですね

吉見 こっちの試合が終わって30分後とかに試合開始とかだったんで。

――大学生になってからOBとして現地応援に行かれたことはありますか

吉見 何回かしましたね。

――ことしの早実高はいかがでしたか

熊田 頑張ったんじゃないですかね。あれだけピッチャーがいないとか言われてる中で。

吉見 早実の合宿に行って、清宮(幸太郎、3年)とか見ていましたけど。ミーティングで清宮がしゃべってる姿は本当にキャプテンらしくて、「すごいな」と思いました。しゃべっていることもすごくレベルが高いし、本当に清宮はプレーだけじゃないんだなっていうのを感じました。

――三人とも高校から一緒にプレーをされていますが、「変わったな」とお互い思ったりすることは

熊田 え?太ったってこと?

一同 (笑)。

吉見 お前がでしょ(笑)。それであと、このひげですよ。

熊田 なんだろうなあ。変わってないんじゃない?

 吉見、丸くなったよ。

熊田 あ、吉見は本当に丸くなった。

 もっと怖かったっす。

――そんなに尖っていたのですか

熊田 昔は「ジャックナイフ」って呼ばれてたもん。

一同 (笑)。

吉見 千原ジュニアじゃねーか(笑)。

 いやでも本当に丸くなった。

熊田 すぐキレてました。

吉見 いや、でも自分でも思います。

――それは副将という役職についたことも影響しているのでしょうか

吉見 まあ、3年生ぐらいからちょっと。

熊田 精神年齢が上がったんじゃないですかね。

吉見 (叩く)。

熊田 見ました?今の。すぐ殴るから。

――吉見選手が丸くなったこと以外はあまり変化はないという感じですか

 それ以外は。

熊田 むしろ岡は戻ってる、今坊主だし。

吉見 岡、変わんないよな。何にも変わんないもん。

――早実高出身組はかなり仲が良いイメージがありますが

 仲は良いです。

吉見 結束は強いですね。

熊田 自分らの代は仲良いかな。

 仲の良さが売りだったんで。

熊田 仲の良さだけでセンバツいったもんね。実力なかったのに。

 実力はなかった(笑)。

――話は少し変わりますが、三人とも学生最後の夏休みです。何か夏らしいことはされましたか

吉見 自分海行きました。3回行った、今回は。

 学年でも海行った。

吉見 幹事、熊田っす。大雨でした!

 大雨っす(笑)。自分たちらしいです(笑)。

吉見 ばかみたいに豪雨。

熊田 江ノ島だっけ。マイアミ?マイアミじゃなくて?

一同 (笑)。

吉見 自分で決めたんだろ(笑)。そういう学年イベントは熊田がだいたいやってくれるので。

――学年会とかもやられたりするのですか

吉見 節目節目でやるよね。

 まあ今回は最後に集まっとこうっていうことで。

吉見 学年は仲良いと思いますよ。ちょくちょくバチバチやることもありますけど。

――4年生はどういう学年ですか

吉見 全員が意見を出します。この前のミーティングとかでも、しゃべる人としゃべらない人が出てくるかなと思ったらみんながきちんと思っていることを言ったりとか、そういう仲の良さとか他の代に比べたらあるとは思いますね。

――この学年の悪いところはありますか

熊田 ないない。ないない。

 熊田が自分のこと棚に上げがち。

熊田 ど、どういうこと。

――個人の悪いところになっています(笑)

 個人になっちゃいました。

「すごく悔しくて、今でも覚えています」(岡)

グラウンド内外で笑顔が印象的な岡

――それでは、あらためて東京六大学春季リーグ戦(春季リーグ戦)を振り返っていかがですか

吉見 自分はケガをしていたのでスタンドから見ていて、応援してくれている人の存在がすごく大切だと気付きましたし、プレーできていたことが幸せなことだったと思いました。応援してくれる人のためにも秋は頑張らないといけない、という思いになりました。

熊田 スタートはすごく良かった。法大に2連勝して結構いい感じでいっていたんですけど、途中から徐々に落ちていっちゃったという感じです。でもやっぱり意外とレベルの差はないのかな。最初から分かっていたことかもしれないのですが、やってみて改めて「意外にいけるんじゃない」というのはありました。

 個人的な成績は全然満足していないし、チーム的にも正直もう少しやれたかなという感じもあって。ピッチャーが抑えたときにバッターが打てないとか、バッターが打ったときにピッチャーが点を取られるとか、投打がかみ合わなかったので、今のオープン戦ではそこがしっかりできるようにやっています。ピッチャーは点を取られた分の罰走がありますし、バッターも打てなかったら試合後バッティングしていて、それがかみ合って秋に成果が出ればいいかなと思っています。

――春季リーグ戦は第7週まで優勝校の行方が読めないという混戦状態でしたが、各校の勢力をどう見ていましたか

吉見 絶対にプロに行くようなスター選手がいるわけでもなく、力の差がすごくあるわけでもないと思いますし、チームとしてやることが徹底できていたところが勝てたのかなと。一つになって戦っていたところが立大でしたし、強かったのかなと思います。

熊田 吉見の言う通りだと思います。

 混戦だったと思います。

――優勝した立大が頭一つ抜けていた、という印象は特にはなかったということですね

 ないですね。

吉見 自分も早立戦は勝てた試合でもあったと思うので、そういう差はあまり感じてないですね。

――春季リーグ戦で印象に残っている試合は

 自分はやっぱり熊田のホームラン(早立3回戦)です。

吉見 それは印象に残りました、けど(笑)。でもやっぱり慶大の優勝を止められた試合です。慶大には優勝されたくないですし、ライバル関係として目の前で胴上げを見ずに済んだのは良かったなと思います。

 あと自分は悔しかったことなんですけど、立教戦の2戦目の9回表2死三塁で打席に入った時。あそこで自分が打ってたら勝てて、たぶん立大の優勝もなかったのでそこはすごく悔しくて、今でも覚えています。

熊田 法大に勝って、明大(1回戦)で最初いっぱい点を取ったじゃないですか。あの試合は落としたんですけど、あそこで「勝ったな」という気の緩みというか、そういう感じになっていたのが良くなかったのかなと思います。

――熊田選手は立大3回戦に代打で本塁打を放ちましたが、あの試合も印象に残っているのではないですか

熊田 たまたまっす。

吉見 なに急に謙虚になってんだよ(笑)。

熊田 あの試合は負けてますからね。でもやっぱり明大の試合が悔しかったですね、結局連敗して。明大の1戦目が全てだったかなという感じです。その後の立大もありますけど、明大の1戦目、あそこで取っていたら優勝あったのかなと思います。

――慶大に2季続けて勝ち点を譲ってしまったことに関しては

吉見 早慶戦は特別ですし、相手もそういう気持ちでやってきています。周りの人からも早慶戦は勝つようにと言われていますし、その中で勝てていないというのはリーグ戦の中でも一番悔しいです。相手は打つので、それを分かっていながらも抑え切れなかったというのは改善が必要かなと思います。

熊田 慶大って、めっちゃオフ長いんですよ。テスト期間もオフだし、年末年始も1カ月ぐらいオフあるんですよ。それに負けるっていうのはうざいよね。

 悔しいって言って(笑)。悔しいって書いといてください。

熊田 いや、うざいって書いて。

一同 (笑)。

 自分はリーグ戦初めてのスタメンが去年の秋の早慶戦でした。それまで下級生の時はベンチ入りもしていなかったしそこまで早慶戦が特別なものだという印象はなかったんですけど、やっぱり出てみると応援もすごくて、でもそこで打てなかったりしたのはすごく悔しくて。ことしも春に負けて・・・なんなんだろうね、悔しいね。慶大に負けるの。

熊田 うん。

吉見 特別な思いはあるよね。

 言葉じゃ表せないんですけど、なんか敵対心ありますね。

熊田 急に格好つけるじゃん。言葉で言えよ!

吉見 そういう感情もあるじゃん(笑)。

――開幕前の印象としては去年の主力の投手陣も多く残り、守備面では早大が有利のように見えました。実際に戦ってみて、どういうチームだと感じましたか

吉見 守備のメンバーは残っているから、守りの面では有利かなという考え方ももちろんありましたけど、やってみて感じたのは意外と打てたということです。攻撃で攻められたと実感していて、逆にあんまり抑えられていないよね。 抑えられていないっていうか、「ここで打たれちゃ駄目だ」っていうところで打たれちゃってるよね。

熊田 そうそうそう。

――粘り切れていなかった、という感じでしょうか

吉見 そうです。守備で決定打を打たれることが多かったというのと、戦い終えてみて打線のつながりとか、欲しいところでは打てていたので思っていたよりは攻撃面は良かったかなという感じですね。

熊田 粘り切れないという反面、チーム全体で戦えたというのはすごくあります。いいところまでいくんですよ、いつも。そこですよね。そこで気持ちの差じゃないですけど、そういうのが出ちゃったかなと。

 下級生にすごく頑張ってもらったかなという印象です。加藤(雅樹、社2=東京・早実)にしろ、福岡(高輝、スポ2=埼玉・川越東)、小藤(翼、スポ2=東京・日大三)にしろ。やっぱり4年生がもっとしっかりしなきゃいけないかなと思います。

――代打や代走など、控えの選手も多く活躍していました

吉見 選手層の厚さというのは感じています。

熊田 みんな結構同じレベルというか、そういう感じでやってるから。

吉見 ギリギリまでスタメンを争っていた人もいますし、そこはみんな分かっていることだとは思います。それを分かっている分、総力戦となることも分かっているし、だからこそちゃんと準備ができていたかなって思いますね。今ぱっと思い浮かんだ選手は福岡ですけど、しっかり早慶戦でも強く振ってタイムリーを打ったし、ああいうところで一本打ってくれたのはすごく頼もしいですし、やるべきことを分かってくれているから準備もできていたのかなと思います。

――ベンチの準備が常にできているからこそ出た選手が活躍できるということですね

吉見 監督さん(髙橋広、昭52教卒=愛媛・西条)の意思を誰かが伝えたりだとか、「誰か準備しとけよ」っていうのはきちんとみんなでコミュニケーションを取りながら、ベンチワークはしっかりできていたんじゃないかなと見ていて感じました。

――熊田選手も実際に代打要員として大事な場面で回ってくることも多かったですが、代打として出番を待つ気持ちとしては

熊田 気持ちの準備はできているんですけど、基本的に代打って出ないのがベストじゃないですか。勝ってたら出ないし。

吉見 何の話してんの?

熊田 代打の極意。これってそういう特集じゃないの。

一同 (笑)。

――岡選手も、いつ呼ばれてもいいように気持ち的にも準備をされていますか

 自分、高校の時からずっとそんな感じだったんで。

熊田 岡ずっとそんな感じだよな。

 チームのためになるならどこを守ってもいいので、特にこだわりはなく準備は常にしているつもりです。

――立大2回戦は三塁手として9回に出場、ファインプレーもありました

吉見 あれはすごかったよ。

熊田 あれはね、なかなか出ないですよね。

 なんでだよ(笑)!あれは、その前にファウルがあったんですけど、ブルペンの方に飛んでいったのでちょっと三塁線のところに(守備位置を)詰めていたんです。

熊田 さすが。職人。

――先ほども少し触れましたが、熊田選手はビハインドの一本欲しい場面で代打として回ってくることが多いと思います。プレッシャーなど感じたりはされますか

熊田 プレッシャーはめちゃめちゃ感じますね。感じますけど、藤田さん(恭輔、平28商卒=埼玉・早大本庄)という3連覇した時(2015年)の代打の切り札みたいな方がいたんですけど、「打てなくても自分のせいじゃないと思え」みたいなことを言っていたんです。「打ったらもうけもん」ぐらいの気持ちでいいからって。もちろんプレッシャーは掛かっているんですが、あんまり深く考えないようにしています。重く考えないようにして、ただ自分のスイングを貫くことですね。

――打席ではあまり考えないと

熊田 あんまり考えないですね、球種とかは考えますけど。そのとき監督さんに言われたことを。“Do my best”って感じです。

――その中で立大3回戦で本塁打、早慶戦の1回戦では適時打と結果を出されていますが、代打打率が上がった要因はご自身では何だと思われますか

熊田 何ですかね。なんだろう、たまたまじゃないですか?

吉見 記事にしにくい(笑)。

熊田 本当になんだろ。慣れはありますね、100パーセント。神宮ではめちゃめちゃ緊張しましたもん。そもそも高校の大会(全国高校野球選手権西東京大会)は神宮なんですけど、高3の時は1回しか(神宮で)やってないんですよ。神宮で戦って、すぐに負けちゃったので、そんなに神宮を知らなかったんです。打席に入ってどういう感じなのかとかもあんまり見てなかったので、(大学に入ってリーグ戦に)出て・・・。慣れって大きいですね、やっぱり。

――吉見選手は副将としてチームをまとめる立場ですが、佐藤晋甫主将(教4=広島・瀬戸内)との連携などはいかがでしょうか

吉見 自分はケガをしていたので、ケガをしてチーム全体を見たときに、下級生であったり練習に入れていない人とかとコミュニケーションを取れたというか。キャプテンは練習の中心にいてメンバーを主に見ているので、そういった見れないメンバー外の選手だったり下級生とかとコミュニケーションを取るように意識しています。自分たちも関わっているというのを意識してもらえるようにコミュニケーションは取れたのかなと思っています。晋甫とも普通に仲良く、関係良好です。

――春先からケガに苦しみ、試合に出られない歯がゆい思いもあったのでは

吉見 本当に、スタンドから見ていると悔しい気持ちの方が大きいし、やっている人たちがうらやましくて。勝つのはうれしいんですけどその中に自分がいられない悔しさ、もどかしさというのはすごくありますし、早く戻りたいなという気持ちになりました。さっきも言った通り、支えてくれている人たち、応援してくれる人たちの存在にも気付けたので今となってはいい経験はできたと思います。

――そういういろいろな思いがありながらも、やはり三人ともチームを盛り上げているという印象があります

 盛り上げているのはやはり吉見じゃないですかね。

熊田 基本的に自分らは黙ってるんで。

 黙ってはない(笑)けどまあ、吉見がすごいです。

熊田 やっぱり一番声出してるのは吉見ですね。

吉見 自分はプレー以外でもやっぱり声っていうのはだいたい出しますし、1年生の頃からアピールするためにずっとやっていました。それが自分のアピールポイントでもありますし、チームのためにできることっていうのを考えたとき、ずっとやってきたことではあるんですけどそうやって盛り上げたりとか、雰囲気づくりするということは今一番貢献できることだと思うので、それは絶対にやらなきゃいけないなって思います。自分の気持ちも乗りますし、いいプレーにつながっていくという思いもあるので毎日そうやって声を出すということは当たり前にもなっていて、自分のためにもなると思って意識してやっています。でもみんなも元気に出してます。

熊田 まあ基本的に試合に出ないし、出なかったら声出すしかないですよね。

吉見 出てないときは声出すしかやれることがないし。準備してるとき以外は基本的にこの三人は声出してるよね。

――春季リーグ戦、優勝にあと一歩届かなかった一番の要因はどこだと思われますか

吉見 勝負強さ。

熊田 結局、大差で負けた試合はそんなないよね。そうですね、勝負強さですかね。秋もピッチャーの状況はほぼ変わらないと思うし、そういうところですね。春を通して、チーム状況もみんな分かっていると思うので。特に立大戦とか見ても、勝負強さ。それ以外ないもんね、あんまり。

 同じです。

「どうしたらチームに貢献できるか」(吉見)

副将の吉見は対談でもまとめ役を務めた

――夏季オープン戦も終盤に入りました。チームの状況は今いかがでしょうか

 結構いいんじゃないですか。オール早慶戦は別として・・・。他はほとんど負けてないですし。

吉見 勝負強さみたいなところは。

熊田 ある。

吉見 出てきてる。

 この間もサヨナラ勝ち(関学大戦)したし。

吉見 欲しいところでの一本というのが、攻撃でいえば出てきてると思います。バッテリーの中でも徹底してやっていることは試合中でも徹底してできているし、やりたいことは表現できているかなと感じます。

――野手陣から見て、投手陣の調子はいかがですか

吉見 春の課題を今ちゃんと克服しようとしていて、みんな意識はきちんとしていますし、やはり第一線で投げているピッチャーは調整ができています。あとは、リーグ戦で当たるバッターとかを頭に入れてバッテリーでどれだけ話し合えるかというのがここから大切だと思っています。

熊田 最後なんで、やってくれるんじゃないですかね。

 頑張ってもらうしかないと思います。

――チームについて伺いましたが、個人的に重点を置いて練習やオープン戦で取り組んでいることは

吉見 自分からいいですか。盛り上げることだけです。これマジです。

熊田 (笑)。

吉見 4年生になってぐらいからですけど、ちゃんとチームで置かれている立場を理解していますし、さっきも言ったんですけど「どうしたらチームに貢献できるか」というのを考えたらそこで必要とされたいなと。それが一番貢献できることなので、今は盛り上げることを念頭に置きながら基本に忠実なプレーを心掛けています。

熊田 重点を置いてやっていること・・・。

吉見 なんかないの?てか、考えてやってないの?代打のその一球で打てるようにとか。

熊田 あ。バッティングめっちゃやってる。

一同 (笑)。

吉見 もうそれでいいよ!

 試合は吉見と一緒で、吉見が盛り上げてくれるので自分はプレーの中で次に起こることを想定して声を出せればいいかなと。練習においては監督さんからいつも「右方向に打て」と言われていて、春はその部分を忘れて大きいのを狙っちゃったりしていたところもあったので、今は元に戻そうという意識でやっています。

――早大の投手陣について。自分が相手打者だったら嫌だと思う投手は誰ですか

吉見 右か左かでいうと左ピッチャーの方が得意なので、柳澤(一輝、スポ4=広島・広陵)とか。それで球も速いので、右ピッチャーだし嫌ですね。

熊田 ますけい(増田圭佑、文3=茨城・江戸川学園取手)、嫌ですね。全部クイックだからタイミング取れない。

 北濱(竣介、人4=石川・金沢桜丘)です。ちょっとボールが動くのでやっかいです。

――佐藤晋主将について、印象は

吉見 すごく気持ちは強くて、「引っ張っていこう」という意志の強い人ですし、背中で引っ張るタイプなのでしっかりしています。ただ、その中でケガとかもあって歯がゆい思いとかもあったと思うんですけど、ここまでずっと先頭で引っ張ってくれましたし、あんまり言葉で言うタイプじゃないんですけどチームのために言ってくれたりとか、チームのためにしてくれようとしているので最後はケガを治して一緒に戦いたいですね。

熊田 キャラ的に言ったら本当に主将のタイプじゃないと思うんですけど、その中でキャプテンという立場で頑張ってくれていると思います。

 同じになっちゃうんですけど。2年生ごろからずっと自主練を一緒にやっていて、今は(佐藤晋が)ケガをしていてやれていなくて話す機会も減ってしまったんですが…。多分人に弱音を言うタイプじゃなくて、バッティングの面とかチームの面とかで悩んでいるなというのは分かるんですけど、もうちょっと一人で抱えるんじゃなくて言ってほしかったですね。でもすごくチームのこと考えてるのは分かるし、バッティングとかも教えてくれるのでいい奴です。

――春のフレッシュリーグではワセダが優勝しましたが、下級生の台頭はいかがですか

吉見 自分はキャッチャーということで、ピッチャーの今西(拓弥、スポ1=広島・広陵)とかですね。フレッシュリーグでは初戦で投げていましたし、推薦で入ってきただけあってさすがの投球をしていましたし、夏のオープン戦でも結果を出しているので、頼もしい後輩がまた一人増えたなと。

熊田 福岡ですね。すごいですね、素直に。天才、福岡は天才。

――岡選手はいかがですか。下級生に慕われているイメージもあります

 仲は良いですね(笑)。

熊田 違う違う、下級生にしか友達がいないの。

 それ言うなって(笑)。山田(淳平、教2=東京・早実)ですかね。仲良いのもありますし、この間の試合でもぽっと出されて3打数3安打で。バッティングのセンスはすごいです。

――特に仲が良かったり、かわいがっている後輩は

 個人的に、ベンチに入ってるメンバーでは福岡です。あと小藤、山岡(仁実、スポ3=東京・早実)とか。

熊田 1、2年生はあんまりいないかな。3年生になるともうかわいがっているとかじゃないですもんね。ただの・・・。

吉見 友達(笑)。

熊田 いや友達とまではいかない(笑)。まあ飲みに行ったりするのは西岡(寿祥、教3=東京・早実)、山岡とか。西岡と山岡もめちゃめちゃ仲良いんで。あ、これ書いといてください(笑)。

 で、(熊田と)三人で。

熊田 よくご飯行ったりする。

吉見 自分は誰ですかね。

熊田 米田(圭佑、人2=愛媛・松山東)でしょ、どう考えても。

吉見 早川(隆久、スポ1=千葉・木更津総合)とかも気に掛けたりしますね。趣味が一緒だったりするので。

熊田 何の趣味かは聞かない方がいいですよ。超気持ち悪いんで。

吉見 いやいやいや(笑)。米田、早川とかですかね、1、2年生は。

熊田 あ、あと延命(秀太郎、人1=神奈川・桐光学園)。

吉見 小藤、岸本(朋也、スポ3=大阪・関大北陽)はキャッチャーなので同じ時間を一緒にすることは多いです。私生活だったら西岡とか、寮だったらマネジャーの高橋朋玄(人3=福島・磐城)とかよく一緒にいます。

――結構幅広く、という感じですね

熊田 人徳ですね、人徳。

吉見 うるさい(笑)。

――この夏2回行われた全早慶戦で慶大と試合をされましたが、今のところの印象は

吉見 打つ。監督さんもおっしゃっていましたが、野球をやるときのスイッチが入ってからがすごいです。戦う準備というか、気合入ってる集団になります。打ちますね、やはり。そこをどうにかしないと、という感じ。

――去年、一昨年のOBも参加されていましたが、個人的に話はされましたか

吉見 そうですね。チームのことに関してもアドバイスとか頂いたりして、自分は愛媛にしか行ってないんですけどその時は佐竹さん(功年、平18人卒=現トヨタ自動車)という社会人ナンバーワンピッチャーの方にバッテリーとしてどういうふうな攻め方をしたらいいとか、(2016年に都市対抗野球大会を)優勝したトヨタの佐竹さんがチームとしてどうやって戦ったらいいのかというようなことでアドバイスを頂いて、秋のリーグ戦前に改善点を教えて下さいました。

熊田 自分は熊本だけで、一応スタメンで出させてもらって(7番・指名打者)。3連覇した時の丸子さん(達也、平28スポ卒=現JR東日本)とか道端さん(俊輔、平28スポ卒=現明治安田生命)とか、当時スタンドで応援していた人とオーダーで並んでいるのを見て素直にうれしかったですね。

 自分はそんなに野球の話はしてないんですけど、熊本に行ったときは道端さん、丸子さん、中澤さん(彰太、平29スポ卒=現JFE東日本) は現役の時からすごく良くしてもらっていたので、普段の話をすることが多くて。「社会人になってから飲み会増えるからめっちゃ太るよ」とかそういう話しかしてないです(笑)。

「ここで胴上げしなかったらもう一生しないでしょ」(熊田)

独自のキャラクターで場を盛り上げた熊田

――では、そろそろ真面目な秋季リーグ戦の話を。開幕はいきなり明大との対戦となりました

吉見 初戦は下位のチームとやることが多かったんですけど、初戦から明大と聞いて最初から一気に調子を上げていかなければいけないなと思いました。けど、最初から明大戦を取れればそこからいいかたちでそれ以降のチームに勝っていけるんじゃないかなとも思いますね。

熊田 明大、立大、法大。そこですよね。最初からフルで入らなきゃいけないっていうことに対する難しさもありますけど、そこをうまくいけたら優勝もできそうな気もします。逆にやりがいを感じるというか、最後はもう最初からガチでいけるという楽しさもありますし、緊張や怖さもありますけど面白い組み合わせだなと。明大とかの対戦も早い方が五分でやれるかなと思います。

 同じになりますけど、春は法大に連勝してその後が駄目だったので。今回も明大戦を取ったとして、その次を大事にしたいです。

――次は春の優勝校である立大との対戦となります。明大、立大と続くこの前半戦がヤマ場となるのではないでしょうか

吉見 いつかはくるんで。データが少ないっていうのはありますけど、いつかはくるしそれを倒せれば後半が楽になりますし。なので、そんなには「嫌だ」っていう感覚はないですね。

熊田 立大は新人戦から勝ってないよね。

 勝ってないよ。

熊田 勝ちたいですよね。縦じまが本当にね・・・。縦じまって強く見えるよね。あの縦じまをはぎ取ってやりたい。

 新人戦勝ってないですし、最後は勝ちたいですね。

――春の立大戦は1勝2敗。戦ってみてどんな印象でしたか

吉見 1試合目が小島(和哉、スポ3=埼玉・浦和学院)が完封して勝ったんですよね。2戦目も勝てたんだよな。

熊田 2戦目はなんだっけ、サヨナラ負け。

吉見 大東(孝輔、4年)に打たれてね。

熊田 あ、そうだ。で、3試合目は普通に負けた。

吉見 あれこそ、勝負強さが相手にあったし取られちゃいけないところで取られたと思うんだよな。相手の方が勝負強かった。

――立大の投手陣はいかがですか。1年生でアンダースローの中川颯投手(1年)もいますが

吉見 そうですね。中川と、田中誠也(2年)っていう左ピッチャーのフレッシュな二人が安定して結果出してて、それに対して攻略できなかった。すごくいいピッチャーがいるので。

――秋のキーマンは誰だと思われますか

吉見 せーので言おうぜ。

 待って、考えるから。

熊田 ガチなやつ?

――お願いします

吉見 熊田はガチじゃないところで常に生きてるんで。

熊田 吉見って言おうとしてたのに。

吉見 絶対言うの分かってた(笑)。

 (笑)。

熊田 ・・・、八木(健太郎、スポ4=東京・早実)。

吉見 せーので言おうって言ってたじゃん(笑)!

一同 (笑)。

熊田 じゃあ、せーのって言ってください。

――せーの

吉見 加藤。

熊田 八木。

 進(三倉、スポ4=愛知・東邦)。

――それぞれ理由を教えてください

 (三倉)実力がある中で春はケガしていて最初はベンチに入れなくて、後半代打で打ったりしていて、今回はオープン戦でも調子いいんで。プラスアルファであの打線に入ってくれたら、打線にもう少し粘りが出るかなと思います。

熊田 (八木)もうそろそろ3割5分打てよって(笑)。あいつが打ってたらもっと簡単だと思いますよ。結局3割乗ったことないでしょ、あいつ。

吉見 いや、3割乗せんのは難しいよ。

熊田 3割乗せてほしいですね。だってずっと出てるでしょ。言ったら一番の主軸でしょ、晋甫より先に出てるでしょ。1番だし、あいつがゲームキャプテンというか試合の中でリーダーとしてやってくれれば面白いんじゃないかと思います。

吉見 (加藤)春の首位打者で、マークが厳しくなると思うのでその中でどれだけ結果を残してくれるかなと。あいつが打つと勝つ確率も上がってくると思うので。

――三人ともこの秋が学生野球最後のシーズンとなると思いますが、やはり特別な思いはありますか

吉見 三人ともこれで野球をやめるので、もう本当に有終の美というか個人的にも「やり切った」と思いたいですし、チームとしても優勝してうれし涙で終わらせたいです。やってきたことを全て出し切って、いいかたちで終わりたい。違うんか(笑)?

熊田 いや、いいこと言うなあと思って。

 やっぱ吉見泣かせたいですね。うれしいと泣いちゃうんで。

吉見 自分絶対泣きますね。

熊田 胴上げしたい。胴上げしたことないんです、人生で。ある?

 ない。

吉見 自分は3連覇した時やりました。一番最初にダッシュしました(笑)。確かにあのダッシュしたいな、もう一回。

熊田 胴上げしたくて。だってここで胴上げしなかったらもう一生しないでしょ。どうせ野球やったんならね、胴上げしてみたいなというのはありますね。

 同じですね。優勝したいっていうのと、今まで応援してくれてた人たちにいいプレー見せたいってのもあります。

吉見 確かにそれもあるな。

熊田 いいこと言おうしなくていいから。

吉見 いやあるでしょそれは(笑)。

 じゃあ、いいプレー見せて優勝したい、で(笑)!

――最後に、秋に向けて一言意気込みをお願いします

吉見 ベンチ入りして、チームの一員として戦って優勝したいです。

熊田 優勝したい。個人の結果なんてどうでもいいから優勝したいです。

 自分も勝ちたいです。

吉見 あれがいいな、完全優勝。目標は高くいかないと(笑)! 三人とも完全優勝で。

熊田 完全優勝、完全優勝、完全燃焼にしたら誰か気付くかな。

 それ絶対面白くないから。

――ありがとうございました!

(取材・編集 三浦遥)

◆吉見健太郎(よしみ・けんたろう)(※写真中央)

1995(平7)年6月12日生まれ。175センチ、75キロ。東京・早実高出身。教育学部4年。捕手。右投右打。春はケガに苦しめられながらも、決して後ろ向きな姿を見せず副将としてチームを支え続けました。「チームに貢献したい」と語る吉見選手の切実な思いはきっと報われるはずです。対談でも熊田選手たちに素早くツッコミを入れるなど早実高組の絶妙なコンビネーションを披露してもらいました。話が横道にそれそうになるとすぐに回収してうまく進めて下さるので、取材側としても本当にありがたい存在です・・・。

◆岡大起(おか・だいき)(※写真右)

1995(平7)年9月29日生まれ。173センチ、75キロ。東京・早実高出身。社会科学部4年。内野手。右投右打。試合ではどんな場面でも明るくメンバーを励ます姿が印象的です。実際にお話ししてみてもそのイメージは変わらず、チームみんなに愛される存在だと感じました。対談中、一区切りしたところで「え、これで(取材)終わり?」と聞いてきた岡選手たちに「まだたくさん質問が残っています」とお答えすると、「まだ話せる~」と喜ぶ無邪気な一面も。秋の神宮では最後の野球を自分らしく、全力で楽しんでいる岡選手の姿が見られるでしょう。

◆熊田睦(くまた・むつみ)(※写真左)

1995(平7)年8月24日生まれ。173センチ、90キロ。東京・早実高出身。教育学部4年。外野手。右投左打。代打の切り札として重宝される一方、チームの元気印でもある熊田選手。対談でも独特の受け答えや、ここには書けないような暴露話で他の対談組も巻き込んで笑いを取っていました。色紙の『雲外蒼天』は「困難を乗り越え、努力して克服すれば快い青空が望める」という意味。熊田選手にぴったりの言葉です。リーグ戦ではチームを勢いづける豪快な一本を期待しています!