【学生コーチ対談】佐藤厚志×脇健太朗×大島俊輝

野球

 早大には髙橋広監督(昭52教卒=愛媛・西条)以外に大人の指導者がいない。監督の他に、『学生コーチ』が主体となってチームマネジメントを進めるのが早大の伝統だ。ことしの4年生で学生コーチを務めるのは佐藤厚志新人監督(スポ4=茨城)、脇健太朗投手コーチ(社4=早稲田佐賀)、大島俊輝野手コーチ(人4=栃木・大田原)の3人。それぞれが役職に就いた経緯、客観的な視点から見たチーム状況、そして、選手たちへ――。チームのために尽力する男たちの熱い思いに迫った。

※この取材は4月1日、春季オープン戦・Honda戦(○6-1)後に行われたものです。

「この学年で優勝したい、日本一になりたい」(佐藤厚)

新人監督の佐藤厚は選手と監督のパイプ役。全体を見渡しチームを統括していく

――学生コーチの3人に集まっていただきましたが、普段からよく話されるのでしょうか

 毎日練習前にミーティングをして、きょうはこういう感じでいこうなどは絶対です。前日の夜も集まりはしないにしてもそういう話はします。野手とピッチャーの兼ね合いがあるので、そういうことは大事になってきます。

大島 そうですね。メニューを考えて、毎日の練習を回していくのが役割であるので、そういう話は普段からしていますね。

佐藤厚 二人が言ってくれたことがほとんどなんですけど、チームの練習をどうやってうまく回すかが学生コーチの役割であるので、話し合いは毎日して練習が良くなるようにしています。

――それぞれに違った役割があると思うのですが、紹介していただけますか

 僕は投手コーチなので、チームの『日本一』という目標に対してピッチャーの戦力を上げることです。選手であれば自分がレベルアップすることで戦力として勝てるかどうかだと思うんですけど、自分たちは選手ではないので、選手たちをレベルアップさせる、サポートすることが自分たちの役割ですね。

大島 選手はみんなうまくなりたいという思いがあるので、その目標に対していかに障壁なく導けるかですね。客観的な視点があるとやりやすいと思うので、全選手と向き合って全員に対してアプローチをしていく。自分はトップの新人監督ではないので、個々人を同じ目線で見て、という感じです。

佐藤厚 新人監督を務めさせていただいているので、チーム全体のことを見なければいけないんですけど、その中で監督さん(髙橋監督)と選手がうまくやっていけるように、監督さんの意見を選手に伝える、逆に選手たちの意見を監督さんに伝えることをしていますね。

――各役職に就いた時期、またそのきっかけやそのときの心境について教えてください

 時期としては去年の8月で、自分が野球をしたいという思いよりもチームで大学日本一になりたいという思いの方が強くて、じゃあ自分がそのために何をするかを考えた時に選手として活躍するよりも先ほど言った役割、投手の力を高めて目標を達成することだなと考えて最終的に決断しました。このチームで勝ちたい気持ちが最終的に大きかったので。選手への未練よりもその気持ちが勝りましたね。

大島 決めたのは2年生の9月ですね。チームが勝つためにどう貢献できるかを考えた時に学生コーチという選択肢が自分の中にあって。でも、やっぱり選手でやりたい気持ちはあるじゃないですか。その時に学生コーチを決めるミーティングがあって、そのミーティングで学生コーチになってほしい人に投票するんですが、自分も「こいつが学生コーチならついてけるな」というやつに投票しました。結果はそいつが一番投票数が多くて、二番目が自分だったんですね。で、その一番票数の多かったやつが「俺は学生コーチになるんだったら野球部辞める」って言ったんです。その時に「自分には果たしてそこまでの覚悟があるのか」と言ったら、『学生コーチ』という選択がある時点でそいつの選手としての覚悟には負けてるわけじゃないですか。それで「こいつのためにやりたいな」と。裏方でもいいからやりたいなというか、気持ちが固まりましたね。自分に票を入れてくれた人のためなら学生コーチできるな、やろうかなと傾いた大きな出来事でした。未練はありましたけど、この出来事が自分の中で大きかったので、未練は案外きっぱり断ち切れましたね。

佐藤厚 時期や決め方は大島が言ってくれた通りなんですけど、下級生の時によく自主練習をやっていた選手が自分にやってほしいと言ってくれて。こういう選手がいるこの学年で優勝したい、日本一になりたい、じゃあ自分が何で貢献できるかというと、自分を推薦してくれている人がいる学生コーチとしてやるのがいいんじゃないかと自分なりに考えました。2年生の春に日本一を経験して、その当時の4年生が輝いて見えて。自分たちもああなりたいと思えました。そうした時に、一選手としてではなく、学生コーチでやりたいという思いがありました。選手に対する未練は、2年の時に春も秋も新人戦で代打として神宮の打席に立たせていただいて、ああいう場面を経験できたことでそういう未練はなかったです。

――それでは、ここまでの実戦を振り返ってみていかがでしょうか

佐藤厚 初めての対外試合が台湾で、慣れない環境だったというのもありました。自分たちはこういうかたちで戦っていくのかなというスタイルという点では、台湾の最初の時点でみんな元気出してやってくれて、良かったと思います。そこから沖縄に来てからは社会人相手に自分たちのペースでできない、安部球場でのオープン戦も勝てない。そうなった時に、自分たちがなんとかしなきゃいけないという思いはあるので、いいことなのかなと。スター選手はいないので、総合力としてチームの和を大事にしてやっていかなけばいけないので。結果が出なくてその中でミスも出ましたけど、それであらためてそのことを再認識できたというか、勝てないことは辛かったですけど、それを選手も自分たちも感じることができたのは大きかったかなと思います。

 連戦続きというか。結構過密なスケジュールの中、きょうここまで実戦をやって6勝なんですね。負けてるってことは、取った点より取られてるってことじゃないですか。ということはほとんどの確率で責任はピッチャーですよね。そう考えると良い状態ではないのかなと思うんですけど、小島(和哉、スポ3=埼玉・浦和学院)がジャパン(ユニバーシアード大学日本代表)の選考で抜けたりと、中心選手が出られていないというのはありました。ただ、その中でもいい選手は出てきていて、リーグ戦は調子がいい順で当てていくのかなとこのオープン戦を通して感じました。小島、柳澤(一輝、スポ4=広島・広陵)が中心で、その次に清水(陸生、人4=宮崎大宮)、北濱(竣介、人4=石川・金沢桜丘)、二山(陽平、商4=東京・早実)、黒岩(佑丞、スポ4=早稲田佐賀)、新戦力の早川(隆久、スポ1=千葉・木更津総合)という感じですね。

大島 故障者が多いですね。監督さんもおっしゃるんですが、三倉(進、スポ4=愛知・東邦)はケガなんですよ。リーグ戦は故障との戦いなんで、コンディションをいかに保つかということで不安要素ではありますね。リーグ戦中にケガや故障をしては試合には出られない、故障で万全のパフォーマンスができない。それがこのオープン戦期間でやや多かったです。

――今季の投手起用についてはどのようにお考えですか

 去年までだと、どのタイミングで誰とか、中継ぎ、抑えとある程度は決まっていたと思うんですけど、ことしは良い選手からぶつけていきます。ワセダの投手の全力をぶつけて、その結果ダメだったら仕方がないと。元気がいい投手をどんどん当てていくというのが今季の起用法です。

――二枚看板の一人として期待していた大竹耕太郎投手(スポ4=熊本・済々黌)の状態をどのようにご覧になっていますか

 最近は肩を痛めていたのが治ってきていて、きのうボール投げているのを見ました。春の開幕には間に合わなかったと言っても、いい投手には変わらないので、リーグ戦の2ヶ月間でどうなるかは分からないなという感じですね。

――名前が挙がりましたルーキーの早川投手についてはどのように起用することが予想されますか

 先発ではなくて、2番目、3番目で。元気な順に投げてもらいます(笑)。その内の一人ですね。

――春季オープン戦で、投手陣は社会人チーム相手に徹底的に打ち込まれる試合もありましたが

 選手によると思うんですけど、北濱なんかは初回に大量失点して、でもその後しっかり投げましたし。打たれたことは本人にとって良いことではないのかもしれませんが、「リーグ戦に向けていい経験ができた」と言っていたので、落ち込んでいる様子はありませんでしたね。やるべきことが明確になったからこそ、かなと。

――大島野手コーチは練習中頻繁にノックを打っている印象があります

大島 学生コーチは基本的にノックを打ちます。役割としてはノッカーだけじゃなくバッティングピッチャーもするんですが、厚志が全体を統括するとしたら、自分は現場で体を張るみたいな。それは自分の仕事だと思っているので、ノックなら何本でも打ちますし、バッピ(打撃投手)はちょっと限界あるんですけど(笑)、そういう気持ちです。去年も沖縄で石井さん(一成、平29スポ卒=現北海道日本ハムファイターズ)や木田さん(大貴、平29商卒=現明治安田生命)に1500本くらいは打ちました。選手がノック打ってくれと言う限りは打ちますね。

――沖縄キャンプで拝見しましたが、ノックは大変良い雰囲気の中できているのではないでしょうか

大島 選手も練習はきついので、きつい練習を乗り越えるために雰囲気良くというか。エラーしたらアメリカン(ノック)、ああいうのをやると選手もモチベーション上がりますよね。きついのはやる前から目に見えてるんで、そこはいかに選手のモチベーションを維持して主体性を持って臨ませるかが一番大切にしている部分です。雰囲気に関してはとても良かったと思っています。下級生を引っ張っていってくれているんで、4年生に感謝ですね。

――ノックを打つ際にどんな打球を打とうと心掛けていますか

大島 打球をいかに試合に近づけるかですね。バウンドの数やバウンドの距離。それから、いかに刺される打球を打つかというのは難しいですね。試合では実際にそういう打球が来るので、それを自分が再現するために練習はしましたね。基本的にはノック打ってくれと言われるんで、一人で練習することはないです。それで打った後に「今の試合で飛んでくる?」と聞いて。ない打球は打っても意味ないんで。外野ノックは、自分もともとパワーがないので、外野オーバーの打球よりはボールにドライブを掛けたりですね。あとは、試合前ノックと練習のノックは打ち分けています。試合前ノックは捕りやすいゴロ。試合にうまく入れるようにイージーしか打たないで、それで選手を乗らせます。

――話が変わりますが、よく学年の企画で幹事をされると伺いました

大島 そうですね(笑)。なんなんですかね、昔からそうなんですよ。幹事キャラというか、地元に帰っても「飲み会は俊くん(大島)に任せればいいっしょ!」みたいな。「おお、分かったよ」みたいな(笑)。野球部でもそういう感じです。自分が企画した会にみんなが来てくれて楽しんでいるのを見るとやって良かったなと思うんで、そこはあえて仲を取り持つために、というのはなくて。

「選手が主体となってやる意識が仲の良さやまとまりにつながっている」(脇)

ブルペンで投球を見守る脇。投手陣の力を最大限に発揮させたい

――ことしのチームは仲の良さ、雰囲気の良さを感じるのですが、その点についてはいかがですか

 ピッチャーを見てると本当に仲がいいですね。個性は豊かなんですけど、お互いのいいとことを見つけ合って仲良く、馴れ合いではなくやっていますね。

佐藤厚 全体的に見ても投手、野手の分け隔てなくみんな仲が良いと感じますし、個性の強い部員ばかりなんですが、何かやろうとなればみんな一生懸命やります。何事にも一生懸命やる学年だなと思いますね。ことしは練習時間も長くなって、その中で選手たちは毎日毎日グラウンドで一生懸命練習していますし、雰囲気という意味でもまとまりはあると感じますね。

――練習量が増えたというお話ですが、練習の中身として具体的にはどのあたりが増えましたか

佐藤厚 野手だったら振る量ですね。そこは本当に意識してやってきました。監督さんはよく量を確保しろとは言うんですが、新チームが始まった時にそれは言われました。

 ピッチャーに関してはこれまで午前で終わっていたんですけど、野手が「勝ちたい、これじゃダメ」だと練習を長くやってるのに、「ピッチャーは練習しました、終わりです」ではおかしいと思うんです。確かにピッチャーって野手に比べたらやることは多くないのかもしれないですけど、チームの仲間がまだまだ足りないと頑張っているのに、終わって違うことをしてるのは良くないのかなと。まずのその面で確実に練習時間は長くなりました。その中で何を取り組むかですが、全体に何か課すのではなく、個人の課題に向き合う時間を多く取るようになりました。ピッチャーにしたらただでさえ延びているんですが、野手はさらに延びているんで、その分ピッチャーもまた延ばすという感じで。かなり個人で取り組めているんで、選手が主体となってやっていこうという意識があるからこそ、さっき言ったように仲の良さやまとまりにつながっているのではないかと、いいなと思いますね。

――新チーム始動後から確保してきた練習量や、チームとしてやってきたことに対する自信というのは芽生えてきていますか

大島 他の大学を見てみたら、もっとやってるところもあると思うんです。そこを過信すると足元をすくわれるというか、確かに練習量は増えましたし去年に比べたら自信はありますけど、比較対象が去年のチームではいけないので。他の大学は引くぐらいやってるのですが、それで質を保てているかという問題は確かにあります。そこで量と質を両立していかなければならないのがうちの野球部です。

佐藤厚 自信を持てるかどうかは試合をやってみないと分からないというところはあると思うんですけど、苦しい時にそういう自信は必要になってくると思いますし、現に去年の4年生がいた時のチームとは雰囲気が明らかに変わってきています。練習をやってきたというのは少なくともあると思います。冬の間にやってきたことは決して無駄ではないというか。他のチームと比較してしまうと大島も言ったように差はまだあるのですが、そういうのはこの頃のオープン戦を見ていて感じますね。

――春季オープン戦では結果だけ見れば負けが込んでいる状況です。これについてはどう受け止めていますか

佐藤厚 勝たなきゃいけないいけないのはもちろんですが、オープン戦で勝ちが続いて「いけるぞ」という雰囲気になってしまうと、いざリーグ戦で負けた時にチームはガクンと来てしまうと思います。それよりは、出ている課題をチームとしてつぶしていく。出てきた課題というのは実戦を戦う中で起こり得ることだと思うので。もちろんワセダのユニホームを着ている以上、負けは許されませんが、勝っても負けても必要なことってあると思うんですけど、それを認識できるいい機会なのかなと自分は思っています。負け続けて悔しかったですけど、オープン戦で結果だけ追い求めても仕方ないので、そう考えるようにしています。

 時期と試合によって違うと思っていて。最優先事項は開幕戦に100パーセントの状態で持っていくことじゃないですか。時期によっては特定の選手を9イニング投げさせるのではなくて、他の選手にも投げさせてみてどうなのかと。勝ちに行くなら先発投手を引っ張るべきなのかもしれませんが、他の投手を伸ばすために代えるということはありますね。そういったことで負けた試合はいくつかありましたね。

大島 1軍のオープン戦あまり見れていなくて(大島野手コーチは2軍戦に帯同し、指揮を執っている)、きょう久しぶりに見ましたけど、最高の結果だったんじゃないかと。負けが続いて課題が山積みになる中で、投打がかみあって、申し分のない試合でした。リーグ戦を迎える直前でそういう勝ち方ができたのは大きいですね。過信になってはいけないんですけど、いいビジョンは見えました。脇は時期と言いましたけど、オープン戦序盤は試す期間で選手の調子の上げ方も違うので。それこそ顕著なのは長谷川(寛、社4=宮城・仙台育英)ですよね。最初は打率0割台で、「お前大丈夫か」と声をかけると「いや、俺はまだだよ」と。そこから徐々に上げていってきょうのホームランですよ。あいつは本当に自己管理ができているなと。その一言に尽きるんですけど、選手それぞれのリーグ戦の迎え方は違いますね。メンバー入りの当落線上は結果に左右されますけど。負けが込んでいることについてはそこまで問題視はしていないです。

――昨年の春季オープン戦では「いいところばかり出ていた」という声もありました。今回はリーグ戦開幕前に膿を出し切ったという表現もできるのではないですか

佐藤厚 自分も去年は結果をみて「勝ってるな。また勝った」という感じで。社会人対抗戦でも勝って。それが、いざ開幕してから東大の宮台(康平、4年)が打てなくて、そこからじゃないですかね。オープン戦でいいところが出て、リーグ戦でどういう気持ちで戦っていたかは分からないですけど、「いけるかな」という雰囲気のままいって、負けた時にズルズルといってしまったというのは顕著に表れていたと思いますね。

 八木(健太郎、スポ4=東京・早実)がおもしろいことを言っていました。「打っても不安だし、打てなくても不安だ」って。その通りなんだと思います。今打ってたら、リーグ戦に入って打てなくなるんじゃないか。逆に今打てなかったら、リーグ戦でも打てないんじゃないか。結局は不安との付き合いなんですよね。練習をいくらやっても不安があることにはあるんだと思います。そういう意味では先輩たちも不安はあったんじゃないかな。いい試合をできていても、そうじゃなくても変わらなんじゃないかと思います。

大島 1年生の春に早慶戦で連敗してますからね。有原さん(航平、平27スポ卒=現北海道日本ハムファイターズ)がホームラン打たれて負けんのかよって。※お互いに勝ち点3同士、勝ち点を取った方が優勝という条件で迎えた早慶戦でまさかの連敗。有原、中村奨吾(平27スポ卒=現千葉ロッテマリーンズ)、小野田俊介(平27社卒=現東京ガス)ら多くのスター選手を擁したチームで優勝を逃した。

――お三方から見て、成長が著しい選手を挙げるなら

佐藤厚 西岡(寿祥、教3=東京・早実)、檜村(篤史、スポ2=千葉・木更津総合)ですかね。西岡はケガできつい時期もあったと思うんですけど、そこを乗り越えて今1軍のスタメンで出ていて、1年生の時はノックもしていたので、うれしいですね。キャッチャーで言えば岸本(朋也、スポ3=大阪・関大北陽)ですね。昨年は吉見(健太郎、教4=東京・早実)、小藤(翼、スポ2=東京・日大三)がマスクを被る中で悔しい思いがあったと思うんですけど、岸本が毎日夜遅くまで練習していたのは知っているので、うれしいなと思いますね。

大島 目覚ましい成長というよりは、順調に来ているという感覚がある選手はいます。今出た西岡だったら3年になればレギュラー争いに食い込めなければならないと思っていたところで、実際ここまで来ましたし、檜村も去年スポーツ推薦で入って来た時に来年はいけるかなと。今ショートの一枚目ですし。小太刀(緒飛、スポ3=新潟・日本文理)は、出身が一緒なんで、話したり飯行くことも多くて。あいつらの代のスポーツ推薦は小島以外は鳴り物入りで入ってきたわけではなんです。エリートではなく雑草魂を持って入って来たというか、だから練習量は多いですね。寄り道はせずに確実なステップは踏んできていると思います。

 藤井寛之(法2=福岡・東筑)。夏くらいまでシート打撃も含めて実戦で一度も投げてなかったんですけど、一度実戦で投げさせたらすごく良くて。また年明けて1軍の実戦で投げたら良くて。冬場も頑張って沖縄行きをつかんだんですけど、関西遠征でも近大の左打者を続けて抑えて。社会人にはさすがに打たれましたけど(笑)、一番成長していると思うし、これからも楽しみな選手ですね。

「目標は『6冠』」(大島)

大島はプレーボールの瞬間まで、自分が選手にできることに全力を注ぐ

――新人監督には練習中はもちろん、試合でもさまざまな役割があると思います

佐藤厚 ことしから新人戦がフレッシュリーグになり、リーグ戦の前の午前中に試合がある影響で、新人戦の監督を大島に任せることにしました。三塁コーチャーに関しては、声を出してチームを盛り上げて、もちろんコーチャーですから適切な指示や判断ができるように。それは選手の意見を聞きながらですね。リーグ戦で自分が選手の足を引っ張らないように、チームに貢献できるように頑張りたいと思います。

――オープン戦では新人監督のよく通る声が聞こえてきます。そのあたりの意識はいかがですか

佐藤厚 選手たちはプレーすることで精いっぱいだと思うんですが、ただ野球には流れがあって、試合やチーム全体を見るのは学生コーチとしてベンチ入りしている僕や脇がやっていかなければいけないことだと思うので。いい流れのときはさらに勢いづけるように、悪い流れで来ているときはそれを断ち切っていい流れにできるように、という声掛けは大事になってくると思います。

――投手に対しては、試合中、気持ちが乗るような声を掛けますか

 乗らせるでいうと、ブルペンの投手ですね。ブルペンで考えることってあくまで想定じゃないですか。悪い状況だと思いますし、救援は緊張する場面ではあると思うんですけど、戦う意識を持たせるように声掛けはします。

――選手に目標や意気込みを聞くと口をそろえて「リーグ優勝、日本一」という言葉が返ってきます。その目標は学生コーチの皆さんも変わらないと思いますが、そこへの思いを聞かせてください。

佐藤厚 大学2年の時に日本一を経験できたことは本当に大きかったですし、ワセダは日本一を目指せる環境にあると思って自分はこの野球部の門をたたきました。2年生の時の選手や新人監督の方々に「ここで満足しちゃいけない。自分たちの代でやってナンボだぞ」と言われて、そのことをずっと考えてやってきました。そこは選手と変わらないですね。

大島 リーグ戦に向けてはできることが限られてくると思うので、できることをやって、選手がいかにベストな状態で神宮でプレーできるかを意識してやっていきたいです。笑われるかもしれないですけど、個人的な目標として、『6冠』(春秋のリーグ戦、全日本大学選手権、明治神宮大会の4つを制する『四冠(グランドスラム)』に加え、フレッシュリーグ春秋連覇の2冠)を狙ってるんで、是非とも達成したいですね。史上初どころか、この先もおそらくないと思うので。グランドスラムを達成しても、30年以内にはまたどこかのチームがするんじゃないかと思うんですが、『6冠』はさすがに出ないっしょ、みたいな(笑)。リーグ戦のメンバーも新人戦のメンバーもそれを狙える力はあると思うので、それが今合わさっている総合力のワセダを体現できるように。妥協せずに突っ走っていきたいと思います。

 全ては日本一という目標のためにやって来たと思うんです。自分がこうして投手コーチに就いたのもそうですし、きつい練習もそうです。それに向けて一試合一試合、一球一球、僕のできることをやっていきたいという思いです。

――昨年、春季リーグ戦では5位、秋季リーグ戦でも優勝できず、その悔しい思いが新チームの原動力になっているのでしょうか

大島 春は初めて下位、Bクラスに落ちたので、それはショックでしたね。優勝に絡めないというのは・・・。

佐藤厚 早慶戦が消化試合だったのはすごく残念でした。そのときに「これじゃダメだな、悔しいな」と本当に感じましたね。それまでは早慶戦までずっと優勝に絡んできたので。来年はこんな思い絶対にしたくないと思いました。

大島 逆にいい経験にはなりましたね。先輩たちには申し訳ないですけど、反面教師というか。あのメンツで勝てないのはなぜなのか、どうして投打がかみ合わないのか。春はピッチャーがいいときにバッターが打てない、秋はバッターが振れていて大量得点取れているのに、ピッチャーが踏ん張れない。結果としては情けなくて悔しかったですけどマイナスにはとらえてなくて、これを踏み台にして自分らの代でもう一度飛躍してやる、という感じです。

 僕は少し違う捉え方があると思っていて。1位の時の喜びが大きすぎて、1年の時の2位も、去年の5位の経験も考えると、1位以外は変わらないと思います。だから、それだけ1位にはこだわって戦いたいです。

――最終学年で臨むリーグ戦にはこれまでとは違う、特別な思いがあるのではないでしょうか

佐藤厚 こうしてワセダの野球部で新人監督を務めさせていただけること自体、いろんな人に感謝しなければいけないです。ただやってるからではなくて、最後に『リーグ優勝、日本一』という結果を残して最後に笑って終われるように、最後結果が良ければいいと思うので。まずは春のリーグ戦、ベストな状態で入っていけるようにしたいです。

大島 優勝するチャンスがあと2回しかないので。今までの四年間を振り返ったらまあいろんな人に迷惑をかけたと思うので、「頑張って来たんだよ」というのを示すには結果しかないと思うので、今までの三年間とは比べて優勝したいという思いは強いです。

 今までももちろん優勝したいという思いはあったんですけど、やはり違いますよね。緊張も伴って、そういうのは感じますね。

――それでは、最後にこれからリーグ戦を戦う選手たちにメッセージをお願いします

佐藤厚 新チームが始まってからいろいろなことがあったと思いますが、僕が新人監督としてチームに携わっていけるのはも選手がいてこそのことです。リーグ戦は特に4年生にとって、出るメンバーもスタンドで応援するメンバーも春のリーグ戦は最後になるので、一試合一試合を全力で戦ってほしいなと。あとは楽しんでほしいと思います。

大島 さっき話に出ましたけど、同期と優勝したらその雰囲気で飲みに行けると思うので(笑)。自分は試合が始まったら祈ることしかできないので、試合が始まる前に何かしら自分にできることをやりたいと思います。選手には「頼む」って感じですね。頼むから打ってくれ、頼むから守ってくれ。そこまでの過程はできることやるんで。勝って飲み行こうぜ!

 日本一になるためにやって来たと思うので、絶対に日本一になろう。それだけですね。

――ありがとうございました!

(取材・編集 郡司幸耀)

この春チームの注目してほしいところです!

◆大島俊輝(おおしま・としき)(※写真左)

1995(平7)年5月11日生まれ。170センチ、67キロ。栃木・大田原高出身。人間科学部4年。野手コーチ。右投右打。通例では書いていただいた色紙は取材・編集を担当した者が預かりますが、大島野手コーチは色紙を妹さんに見せてあげたいということで、持ち帰られました。妹思いの優しいお兄さんなんですね!

◆佐藤厚志(さとう・あつし)(※写真中央)

1995(平7)年11月7日生まれ。183センチ、89キロ。茨城高出身。スポーツ科学部4年。新人監督。右投右打。初めは色紙に書いた『和』が脇投手コーチと被ってしまいました。結局言葉は譲ってもらいましたが、二人が同じ言葉を思い浮かべるほど、ことしの早大はまとまりが良いチームです!

◆脇健太朗(わき・けんたろう)(※写真右)

1995(平7)年4月21日生まれ。186センチ、80キロ。早稲田佐賀高出身。社会科学部4年。投手コーチ。右投右打。伝えたい微妙なニュアンスをうまく言葉にできない場面もあった脇投手コーチ。取材中は「これ編集するよね?」と何度も気に掛けてくださいました。ご安心ください!