【連載】秋季リーグ戦開幕特集『アゲイン』 第4回 竹内諒

野球

 慶大2回戦、9回。最終打者を抑えた竹内諒(スポ4=三重・松阪)がガッツポーズを見せた。それは、普段はこんなことをしないクールな豪腕が大学初の完投勝利を挙げた瞬間であった。3年時の不調を乗り越え、この春は5カード全てに先発。いずれも試合をつくる安定した投球を披露した。その日から3カ月余り、竹内には投手陣の柱としてチームに勝ちをもたらす投球が期待される。この日、大事なラストシーズンに挑むエースの素顔に迫った。

※この取材は8月26日に行われたものです。

万全の体制で

――きょうも暑いですね

 暑いです。

――この暑い中、ずっと練習ですか

 そうです。まあ(暑いのは)あと少しなので。

――走ってばかりですか

 そうですね。ランニングがメインで、ずっと走っているような…。

――暑い中での練習ですが、調子の方は

 全然悪くはないのですが、でも良くもないんですよね。

――「良くもない」ですか

 そうですね。良くもなく悪くもなく、まあとても悪いわけではないので、良い方だと思います。

――体のどこかが痛いということは

 全然ないです。

――では、もう万全の体制でラストシーズンへ

 そうですね。

「試合をつくれた」

復活を遂げた春の勢いそのままに秋の活躍も期待される

――東京六大学春季リーグ戦(春季リーグ戦)はかつてのように先発投手に復帰されて2勝を挙げましたが、ご自身で点数をつけるとしたら

 70点くらいですかね。

――前に同様の質問に答えられた際には50点との回答でしたが

 そんなこと言っていたんですか。

――20点ほど上がりましたね

 そうですね。5カードで先発できましたし、もう少し勝ちがつけば良かったのですが、それでも試合をつくれたという意味では点数も上がったのではないかなと。

――春は内容の割に勝ち切れない試合が多かったように思います

 良い投球をしても向こうのピッチャーも良いですし、点を取れないことはある程度分かった上で投げていて、そんな中で野手陣もなんとか得点を取ろうと頑張っているのも分かっています。意識していることはゼロで抑えること、ゼロが無理だとしても最小限の失点で乗り切ることで、それができないと勝てないかなと思いました。

――慶大2回戦での完投がやはり印象に残っています

 点を取られながらでも、しっかり粘って最終回までマウンドを守れたのは良かったなと思います。

――一番意識されている防御率はシーズンを通して2.92という数字でしたが

 悪くないとは思います。が、やはり無駄な失点が多かったかなという感じです。特に不意な一球でホームランを浴びてしまうことが多くあったので、そこを防いでいけばこの数字ももう少し小さくなるのではないかなと思っています。

――本塁打を多く浴びってしまったシーズンでしたが、この課題はどのようにして解決していきますか

 やはり狙ったところで投げ切れていないことが一番の原因で、ホームランを打たれないようにするにはコントロールを良くすることだと考えています。

――春季リーグ戦後はオランダ遠征や東京六大学オールスター戦など、ワセダ以外のチームとして投げることも多かったと思います。振り返ってみていかがですか

 結果がとても良いってことはないのですが、ある程度投げられているという感覚はありますね。ただ、まだ全然仕上がってないので、リーグ戦までの期間でやっていくことはあるかなと思います。

――春季リーグ戦が終わってからの1週間ほどはオフだったと思います。いかが過ごしていましたか

 地元の方へ帰省して、ゆっくりしていました。

――母校・松阪高の方へは立ち寄られたのですか

 そうですね。練習に顔を出しました。

――練習している後輩たちはもう竹内選手の高校時代と代の被っていない選手ばかりだと思いますが、一緒に練習はされたのですか

 そうですね。一緒に汗を流して練習をして、僕自身はあまり体が鈍らないようにという程度には動いていました。

――恩師である松葉健司監督や高校時代のチームメートには会われましたか

 そうですね。その時地元にいた何人かのチームメートには会えましたね。一緒に練習したりしました。監督さんには早慶戦での投球について「よく頑張ったな」と言ってもらえました。

――4年前のことになりますが、あらためて早大へ入られた経緯というのは

 中学時代に両親と一緒に早慶戦を見て、あの舞台で投げてみたいなと思ってそれ以来ですね。その時は斎藤佑樹さん(平23教卒=現北海道日本ハムファイターズ)が活躍されていて、ワセダも強かったので、まあ、そこから早大で野球をすることに憧れていました。

――そして早大に入られたわけですが、入部当時の部の練習はいかがでしたか

 入って2カ月か3カ月はつらかったですね。1年生は最初、かなりのトレーニングをするので、つらかったです。

――ただ、そのあとすぐ1年の秋には神宮での登板を果たします

 あれは、まあ、たまたまです(笑)。

――周囲からの期待が大きかったのではないでしょうか

 そうなんですかね…(笑)。

――続く2年春のシーズンでは初勝利を挙げます

 うれしかったですね。この年は秋も結果が残せたので良い感じにできているなという実感はありました。

――ただ、3年目は苦しんだと思います。やはりつらかったですか

 そうですね。やはり投げられない悔しさはあって、悔しい思いをしたこの時期があったのでその分4年生になってこの悔しさをもう味わいたくないという気持ちが強くなりましたね。

――それで今につながるわけですが、下級生時に特にお世話になった先輩方はいますか

 ほとんどの方にお世話になったので誰かを挙げるのは難しいですが、やはり有原さん(航平、平27スポ卒=現北海道日本ハムファイターズ)ですかね。野球のことももちろんですが、私生活のことも含めて様々なことを教わったので、プロになられた今でも投手としてお手本にしている部分も多いですし、在学中はお世話になりました。

『最優秀防御率』を目指して

――春を終えて何か取り組んでらっしゃるトレーニングはありますか

 (春から)特に変えてないですね。

――今のままで良い状態を維持すると

 そうですね。良いボールを増やすことを常に意識していつも通りのトレーニングをしていますね。良いボールだとしても真ん中に入ってしまったら意味がなく、またコースを突いても力のないボールだと打たれてしまうので、力とコントロールのバランスを大事にしています。

――球速にはこだわりはありますか

 いえ、ないですね。結果として(球速が)出ていればいいかなって。

――では、直球で一番意識されていることは

 うーん。強いボールを低めに…。強いボールですね。

――強いとは

 しっかりと指のかかったボールを、ミットに。腕を振り切ることを意識していますね。体がどう動いてだとか考えると自分はダメなので。

――考えずに投げる

 考えるのは練習する時だけで、試合ではあまり考えずにいこうかなと思っています。春は少し考え過ぎたところがあったので。

――やはり直球主体の投球で秋も

 それが理想ですね。ただ、真っすぐが走らない時もあると思うので、その時は他に調子の良い球種があればそれで抑えることもできればいいかなと思います。

――最近では緩急を交えて打者を打ち取る場面もありますが

 そうですね。緩いボールは打者からしても初球からはなかなか振れないと思いますし、そこで自分が思い切って緩いボール投げることができればカウントを稼ぐこともできるなと。その点緩急をつけて投球の幅を広げようかなと考えています。

――4年のシーズンを終えたら次のステージに進むことになりますが

 プロになりたいという夢があってそれになれるかは分かりませんが、少しでもそこに近づけるように自分のやるべきことをやるだけかなと思っています。

――同期や他大の4年生の去就については気になりますか

 気になるというよりも、オランダ遠征や六大学オールスター戦で一緒にやったメンバーの中に良い投手がたくさんいるなと感じたので刺激にはなっています。自分より上だなと思う投手がたくさんいたので、そういう人たちに追いついて追い越せるようにやっていこうと強く思いました。

――秋季リーグ戦ではどんな投球がしたいですか

 理想は点を取られずに9回まで投げ切ることなのですが、まあそううまくいかないので。点を取られても最少失点で、その後はリズム良くいきたいです。

――やはり第一先発がいいですか

 そうですね。先発するなら1戦目がいいです。

――チームの優勝に向けてはどのように貢献していきたいとお考えですか

 自分が投げた試合は勝てるように。やはりチームを勝たせるような投球をすることが自分の役割だと思っています。最後、やっぱり優勝したいですね。

――個人的な目標はありますか

 『最優秀防御率』で。毎度同じことを言っている気がしますが大丈夫ですか?(笑)。

――大丈夫ですよ。それが竹内投手のポリシーですもんね

< そうですね。ただ、これも毎度言っていますが、個人的なことはあとからついてくればいいと思っているので、やはり一番は優勝です。

――ありがとうございました!

(取材・編集 菖蒲貴司)

『気持ち』を全面に押し出した投球で相手を抑え込む

◆竹内諒(たけうち・りょう)

1994年(平6)7月2日生まれ。180センチ、84キロ。三重・松阪高出身。スポーツ科学部4年。投手。左投左打。取材前にはダッシュで走る練習が何本もあったそうで、汗だくで駆けつけてくださった竹内投手。取材陣がカメラを構えると、「汗、やばいですかね」と、編集するこちら側よりも早く写り映えを心配されていました。時間にもゆとりがあったので顔を洗ってもらい、5分後にインタビューを再開。さっぱりした表情はいつもにも増してイケメンでした!