【連載】春季早慶戦直前特集『movin’ on!』 第7回 石井一成主将

野球

 「自分が(敗因の)大半だと思います」。伝統の背番号『10』は、苦しんでいた。自身の成績と比例するように、チームは不振から抜け出せない。石井一成主将(スポ4=栃木・作新学院)は、誰よりも深刻に受け止めている。どうすればチームが勝てるのか――。早慶戦を前に、今の心境を伺った。

※この取材は5月19日に行われたものです。

「できるプレーをやれていなかった」

石井の一打が流れを変える

――5月6日、誕生日おめでとうございます

 ありがとうございます。

――当日は後輩の選手がケーキを買ってくれていたとお聞きしました

 そうですね。ジムに行って(安部寮に)帰ってきたら、(後輩たちが)部屋にいました。

――部屋というのは石井主将の部屋ですか

 はい、2階の部屋ですね。勝手に入れるので(笑)。

――部屋は安部寮内のどの辺りにあるのでしょうか

 2階の真ん中で、お手洗いの前です(笑)。

――部屋はご自身で選ばれたのでしょうか

 キャプテン部屋みたいのがあって、自分の部屋はそこにあります。

――安部寮には夜でも入れるのでしょうか

 はい、誰でも入れますね。

――あらためて22歳一年間の抱負などはありますか

 何ですかね(笑)。1歳年取っただけなので。でも、あんなに祝ってくれると思ってなかったので、ああいういい後輩のために何かしてやれたらなと。野球のことであったり、普段の生活のことであったり、世話ができることはなるべくしたいなと思います。

――それでは本題に移りたいと思います。今季のチームを振り返っていかがですか

 やはり投打のかみ合いが悪いというか、ピッチャーが抑えている時に打てないし、逆に点を取っている時に守り切れないという試合が続きました。自分たちのミスで崩してしまう試合が多々あったので、反省すべき点だと思います。

――試合後のミーティングではどういった反省点が出てきますか

 点を取られる時はフォアボールとか、自分たちのミスが原因になることが多かったので、そこをなくせばいい試合ができるんじゃないかと話しています。そして、練習で一から見直していこうというミーティングはしました。

――現在5位ということに関してはどう思われていますか

 ああいう試合をやっていたら勝てないです。

――春秋ともに優勝した昨年のチームと比べて足りないものは何ですか

 粘り強さというか、点を取ってからの守りというか。守りからリズムがつかめていないなという印象ですね。

――守りのミスが多かったということでしょうか

 そうですね。

――試合後のインタビューでは「普段できることができていない」とおっしゃっていました。それは実力があるのにそれを出せていなかったのか、それとも実力がもともと昨年と比べて劣る部分があったのか、どちらだと思いますか

 全体的に見て実力は下がりますけど、その中でもできるプレーをやれていなかったです。今まで難しいプレーはあまりなかったと思っていて。捕って投げればアウトになるプレーもありましたし、ピッチャーもいつも通り投げられていれば打たれなかったかもしれないですし。そういうところを含めて、やるべきことができていなかったと思います。

――普段できることができていなかった要因とは何だと思いますか

 練習から試合を想定することができなかったのが一番大きいかなと思います。

――リーグ戦初スタメンの選手も多い代ですが、そのことは影響していると思いますか

 試合前からそれは分かっていたことですし、試合に出たことがあって雰囲気を知っている自分たちが、そういうことを伝えられなかったというのは反省しています。

――伝えられなかったことは、リーグ戦独特の緊張感などでしょうか

 緊張感というか、厳しさを伝えられなかったです。締まった練習ができていなかったんじゃないかと思っています。

――早慶戦に向けて、現在のチームの雰囲気はいかがですか

 雰囲気は悪くないんですけど、まだまだ甘い部分があるので。自分からもそうですが、一人一人が厳しい雰囲気でやっていかなければいけないなと思います。

――それでも開幕戦となった東大1回戦では緊張する選手も多かったと思います。石井主将から他の選手に声を掛けたりはされましたか

 みんな硬くなるのは分かっていましたし、練習と違ったプレッシャーがあるので。プレーを見て、玲央(立花、人4=千葉英和)に「肩の力抜け」みたいなことはやりました。

苦しんだシーズン

――開幕戦は宮台康平投手(東大3年)に8回まで抑え込まれました。ベンチの雰囲気などはいかがでしたか

 開幕戦で苦しむなとは思っていたのですが、ベンチはちょっと大丈夫かなみたいな雰囲気はありました。でも、自分はそこまで気負いはしていなかったです。行けるんじゃないかなという感じでした。

――東大戦は連勝しましたが、犠打など細かいミスがありました。今それを振り返ってみるといかがですか

 それも同じように、バントできない球は来ていないので。できる球をしっかりと決めていかないとリズムがつくれないことは分かっているんですけど、できていませんでした。小さなミスから崩れていくというのは分かっているので、それをみんなにしっかり自覚してもらいたかったです。

――今から振り返ると、小さなミスが出ながらも勝ってしまったというふうに考えることもありますか

 (大差で)勝つ時は少しミスが出ても勝ちますけど、1点差ゲームの時はミスが出た方が負けるので。ミスを流すんじゃなくて、勝った時こそしっかりと反省して次に生かさなければいけないなと思いました。

――立大、法大と勝ち点を落としてしまいました。敗因についてはどうお考えですか

 まず4番が打てないと勝てないですし、その中で守備のミスも出て、ピッチャーも安定していなくて。それだとどんな相手にも勝てないですね。

――ご自身が敗戦の要因の一つになってしまったということでしょうか

 自分が(敗因の)大半だと思います。自分が打った試合はみんなもリズムよく打ってくれていますし、自分がもっと打っていれば分からなかったですね。

――自分の成績が、良い意味でも悪い意味でもチームに影響してしまうことは感じましたか

 そうですね、感じました。

――明大戦後のインタビューで「士気が下がっていた」と話していましたが、その士気が下がってしまったどん底というのはいつでしたか

 立大に連敗した後ですね。

――いつもとどういう違いがありましたか

 いつもより暗かったですね。4年生が責任感じて暗かったですし、下級生も試合に出ているメンバーがいるので、下級生も同じような感じでした。

――その時に主将としてやったことなどはありますか

 やはり(試合では)できること、簡単なことができていなかったので、練習から一球一球丁寧に、雑にならないようにはやっていました。

――その時に石井主将と一緒になってチームを盛り上げようとしてくれた人はいましたか

 吉野(亨新人監督、スポ4=埼玉・早大本庄)が一緒になってやってくれました。いつも練習をよく見てくれているので、そういうことは感じていましたし、自分もやらなきゃなという思いになりました。

――そういう難しい場面もある中で、主将という立場に対してどうお考えですか

 実力がないと務まらないというのが率直な思いで、実力を持った中でチームをまとめる力が必要だなと感じています。

――『背中で見せる主将』として、実力以外に必要なものは何だとお考えですか

 野球に対して本気じゃないと後ろも付いて来ないと思うので、練習や試合のプレーで本気なんだなというところを見せていかなければいけないなと思います。

――チームが負けている状況だからこそ、できることというのはありますか

 優勝したはなくなりましたけど、まだリーグ戦は残っていますし、応援してくれる方々にああいう試合はもう見せられないので、早慶戦に向けてやっていくだけですね。

――このチームが伸びていくためにはどうするべきだとお考えですか

 やはり個々人がしっかりやっていくだけだと思います。難しいことはできないので、簡単なことを丁寧に一つ一つやっていくだけですね。

――伸びる可能性があるという考えはお持ちですか

 もちろん、伸びると思っています。

「まだまだこんなもんじゃない」

――ご自身の成績に関してはどう思われていますか

 ひどいですね。打てる試合と打てない試合がはっきりしていて、もちろん大事な場面でも打てていないですし、今のチーム状況が自分の成績に比例しているなと思います。

――今季の11本の安打のうち9本が長打ということに関してはどう捉えていますか

 そこらへんはあまり気にしていないですけど、しっかりとボールをたたければいいコースに飛んでくれるので、それを心掛けたいです。

――冬のウエートトレーニングの効果は感じますか

 そうですね、多少は感じています。

――バットの重さや構えなどで変えたところはありますか

 特にはないですね。去年と同じかたちでやっています。

――よく「シンプルに考える」と話していますが、具体的にはどういうことですか

 打撃に関しては、やはりショートの頭の上を狙っていくことですね。

――守備に関しては意識するところはありますか

 スタートは意識してやっていますね。打球に対して一歩目がしっかり切れれば、あとは打球に合わせるだけっていう勝手な考えです(笑)。

――今季は試合ごとに波がありますが、シンプルに考え切れなくなってしまうところはあるのでしょうか

 ランナーをかえそうとするとどっちの方向に打とうかと考えてしまって。それが必要な時もあるんですけど、基本はショートの頭ということを念頭に置かないと、バットが外回りしたりしてしまったりします。そういう余計なことを打席で考えてしまって、だんだんはまっていって、抜け出せなくなってしまうことが今季は多かったですね。

――今季なかなか結果を出せないことの要因として、チームに対し責任を感じているからということは挙げられますか

 責任感に逃げてしまったらダメだと思いますし、それを乗り越えないといけない立場なので。そこは言い訳にはしたくないですし、考えていません。

――責任感を乗り越えて結果を出すということですね

 そうですね、それだけです。

――早慶戦に向けて調整していきたいところは何ですか

 チームに関しては投打をしっかりとかみ合わせて、守るべきところはしっかり守って、リズムをつくっていく。それを意識してこれからやっていきたいです。

――この早慶戦は、夏・秋と続くチームにとって重要なものになってくると思います

 春の沖縄キャンプなどもしっかりやってきたつもりですし、まだまだこんなもんじゃないと思うので、まずは自分が打ってチームを引っ張っていって、慶大に連勝したいですね。

――最後に早慶戦に向けての抱負をお願いします

 ふがいない試合が続いていますが、最後に強いワセダ、本来のワセダを見せたいなと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 杉田陵也)

『粘り強く』、1点を守り切る野球でライバルを倒す

◆石井一成(いしい・かずなり)

1994(平6)年5月6日生まれ。180センチ、78キロ。栃木・作新学院高出身。スポーツ科学部4年。内野手。右投左打。卒業まであと1年を切った石井主将。残る単位を春学期で取り切ることが勉強面での目標だそうです。ゼミでは動作解析の研究をし、秋学期は卒論に集中的に取り組むとも話していました!