【連載】春季リーグ戦開幕特集『新章開幕』 第8回 竹内諒

野球

 層の厚い投手陣の中に「昨年の春秋連覇に何も貢献できていない」と、誰よりも東京六大学春季リーグ戦(春季リーグ戦)の開幕を待っている男がいる。竹内諒(スポ4=三重・松阪)、昨春の開幕投手だ。過去最低の年に終わったと言っても過言ではない昨年から本来の姿を取り戻すべく、持ち前の直球にさらに磨きをかけてきた。竹内の活躍こそがリーグ3連覇への必須条件である。復活にかける男はいま、何を思うのか。

※この取材は3月31日に行われたものです。

「点を取られない投手が良い投手」

――いまの調子はいかがですか

 悪くはないと思いますが、勝負どころでボールが高くなったり、真ん中付近にいってしまって痛打を浴びることが多いので、そのあたりを反省しながらやっていけば悪くはないと思います。

――先発投手となるための課題はそのあたりだということでしょうか

 そうですね。監督さん(髙橋広監督、昭52教卒=愛媛・西条)からもよく言われますが、「点を取られない投手が良い投手」だと思っていて、たとえどれだけ安打を打たれても出塁を許しても0点に抑えれば良いと考えているので、しっかり0点で抑えて帰ってくるということが大事だと思っています。その意味でも、勝負どころでの投球が課題ですね。

――昨年の春は開幕投手を務められましたが、今季も狙っていますか

 狙っています。ただ、あまりそこは意識せずに自分のできることをやろうと考えているので、開幕投手に任されればそれはうれしいですが、まずは目の前のことに、という気持ちでやっています。

――ラストイヤーが始まります

 きょねんの道端さん(俊輔、平28スポ卒=現明治安田生命)だったり丸子さん(達也、平28スポ卒=現JR東日本)だったりと、最終学年で活躍することですごく輝いていたように見えたので、下級生の頃から試合に出ていたとしても最終学年で活躍するということがやはり大事なのだと思います。

――昨年に比べて投球の面で成長を感じられたことはありますか

 リリースポイントをより前にするということを意識して取り組んでいたのですが、その成果が出たと思っています。捕手の吉見(健太郎、教3=東京・早実)には、「(昨年より)手元で来るようになっている」と言われていて、きょねんよりかはミットでの(ボールの)強さは強くなっているのかなと感じることがあります。

――沖縄キャンプ以前の体力づくりの時期はどのように取り組まれましたか

 特に特別なことはしていなくて、例年通りのメニューをこなしました。

――それでは、沖縄キャンプでの実戦のなかでリリースポイントの修正に取り組まれたと

 そうですね。

――沖縄キャンプを通して、手応えが多かったことだと思いますが、反対に課題は見つかりましたか

 そうですね、直球以外の球種でストライクを取れるボールを身につけることですね。投げ込みの中で、そのボールを見つけていければ投球の幅も広がるかなと思います。

――先発投手として期待されている中で、『先発』というものについてはご自身ではどのように考えられていますか

 球数が100球を超えてくると球が浮いてしまうのは自分でも分かっているので、もう少し投げ込まないとダメかなというふうに思います。

――投げ込みでスタミナを付けていくということでしょうか

 そうですね。前ほどはそこまでバテなくなったのですが、初回の投球と比べるとどうしても落ちてしまいますね。常に一定のボールを投げたいと思っているので、しっかり自分のフォームを作り上げるということが大事だと感じています。

――同じ左腕の大竹耕太郎投手(スポ3=熊本・済々黌)や小島和哉投手(スポ2=埼玉・浦和学院)も同じく先発投手の候補だと思いますが

 本当に二人ともそれぞれ特徴のある良い投手だと思います。頼もしい後輩ですし、任されたところではきっちりと役割と果たしてくれると思っています。自分は自分でまた任されたところをやるだけだと思っています。

――沖縄キャンプや普段の練習でもそうですが、オフはどのように過ごされることが多いですか

 そうですね、同期の石井(一成主将、スポ4=栃木・作新学院)とよくいることが多いですね。

――プライベートでも石井主将と過ごされることが多いと

 そうですね。よく買い物に行ったりします。

――石井主将も下級生時から試合に出ていて、いまでは主将として頼もしい存在になっていると思いますが

 そうですね。投手と野手とで違いますが、お互いに切磋琢磨(せっさたくま)してチームを勝ちに導けるようにと普段から言っているので、意識し合いながらもオフには仲の良い友達という感じで。

――投手陣では一緒にメニューをこなす選手はいますか

 柳澤(一輝、スポ3=広島・広陵)ですかね。よく一緒にトレーニングに行きます。

――柳澤選手といえば、威力のある直球だと思いますがあの直球には憧れますか

 やはりチームで一番速い球を投げるので。きれいなフォームをしていますしボールの回転も良いですし、すごく良い投手だと思ってます。

――沖縄キャンプでは選手たちと共に生活をしたと思いますが、チームメイトの新たな一面は見られましたか

 沖縄キャンプでは6人部屋だったのですが、自分一人が4年であとはみんな後輩だったので、いままで話す機会もなかった後輩とコミュニケーションを取ることができたと思いました。

――投手、野手に関わらず、期待している後輩はいますか

 やっぱり柳澤ですね。持っている力はすごいと思っていますし、個人的にも一緒に練習することも多いので。きょねんはケガでメンバーに入ることもなかなかなかったですが、ことしはなんとかメンバーになってほしいなと思っています。

チームを勝たせる投球

自慢の速球を武器に相手をねじ伏せる

――高校野球やプロ野球など、何か大学野球以外からの野球からも刺激を受けるのではないでしょうか

 高校野球もプロ野球もよくニュースで見るのですが、プロ野球で自分と同世代の人たちの活躍や自分とついこの間まで一緒にやられていた重信さん(慎之介、平28教卒=現読売ジャイアンツ)であったり茂木さん(栄五郎、平28文構卒=現東北楽天ゴールデンイーグルス)であったりの活躍を見ると刺激を受けます。自分も頑張ろうと思いますね。

――早大OBの方々の活躍はうれしいものですね

 そうですね。この前まで一緒にプレーしていた方がプロで、それも1軍で活躍されているのを見るとやはりすごいなと思いますね。

――昨年は春秋連覇を果たした早大ですが、今季は3連覇が懸かっています

 自分はきょねんチームに貢献できていないので、この春はチームを勝たせる投球をすることしか考えていないですね。きょねん自分が何をしたってわけでもないので。きょねんのうまくいかなかったところを見直してこの冬は取り組んできて、この春は同じことを繰り返さないようにとやってきたので、チームを勝たせる投球をすることを一番に考えています。

――他大で警戒している打者は

 やはり立大の佐藤拓也選手(4年)ですかね。きょねんも打たれていますし、ことしはしっかり抑えたいと思います。

――他大で注意している、または良いなと思う投手は

 右左は違うのですが、柳投手(裕也、明大4年)ですね。試合のつくり方であったり、フォームの面でもしっかり間が取れていてコントロールが良いので参考にしています。

――先発投手という意味でも、試合を上手に作る柳投手が良いお手本だということでしょうか

 そうですね。コントロールが良い点もすごいなと思っています。

――春季リーグ戦の開幕を迎えるにあたって、チームの雰囲気はいかがですか

 良いと思います。ムードが良く、オープン戦で負けてもみんなで課題を持ってすぐ次に向かっていると思います。

――最後に春季リーグ戦に向けての意気込みをお願いします

 なんとか先発投手としてリーグ戦で投げていけるように、チームを勝ちに導けるように頑張っていこうと思います。

――具体的な数字の目標はありますか

 毎年同じ目標なのですが、最優秀防御率のタイトルですね。なかなかそう簡単に取れるものではないですけど。それと、夏場にある日本代表の合宿のメンバーに選ばれることも目標です。

――最優秀防御率という目標はやはり「点を取られない投手が良い投手」ということでしょうか

 はい、そうです。僕の投球の理想ですね。

――ありがとうございました!

(取材・編集 菖蒲貴司)

今季の竹内選手はチームの『勝』ちにこだわる

◆竹内諒(たけうち・りょう)

1994(平6)年7月2日生まれ。180センチ。84キロ。三重・松阪高出身。スポーツ科学部4年。投手。左投左打。約3週間の沖縄キャンプの部屋割りは、6人部屋で自分以外はみんな後輩の投手。タイプも学年も様々の後輩に囲まれ、自身の投球課題にも取り組めた充実の日々だったそうです。1年時から神宮のマウンドに登る竹内選手もついに最終学年に。最後に大車輪の活躍を期待しています。