緊迫の一戦を総力で制し、ついに『四冠』まであと一勝!

野球
TEAM
上武大
早 大 ×
(早)○小島-道端
◇(本塁打)丸子1号ソロ

 日本一を決める決勝の舞台を巡って再び相対することなった上武大。自慢の打線が爆発し快勝となった春とは一転、手に汗握る白熱の一戦を制したのは「一戦必勝」を誓い試合の先手を取ったワセダであった。初回に1番の重信慎之介副将(教4=東京・早実)が安打で出塁。犠打で二塁へ進めると3番・茂木栄五郎(文構4=神奈川・桐蔭学園)が即座の右前適時打で瞬く間に先制点を奪う。4回には主砲・丸子達也(スポ4=広島・広陵)の一発で追加点を挙げ、投げても先発の小島和哉(スポ1=埼玉・浦和学院)が制球に苦しみながらも要所を締める投球で相手の反撃を1点に食い止めた。決して万全とは言えないチーム状況。その中で全員の力を結集し白星をつかみとったワセダは、ついに四冠達成を決める秋の日本一へあと一勝とした。

 茂木の放った早く鋭い打球があっという間に一、二塁間を破り、二走の重信は迷うことなく三塁ベースを回って先制のホームを踏んだ。わずか6球。流れるかのように鮮やかな先制劇でワセダは試合の主導権を握った。中前打で重信が塁に出ると、2番の河原右京主将(スポ4=大阪桐蔭)が初球を犠打。同級生2人の作った好機に、茂木もファーストストライクを強打するらしい打撃で応えた。追加点が欲しい中で4回には丸子が弾丸ライナーを右翼席に突き刺し点差を2点に。結果としてわずか4安打に抑えられたものの、不振に悩まされた中軸に当たりが戻ってきている。勝負の決勝へ、強打のワセダの復活はもう目の前だ。

ソロ本塁打を放った丸子。この一発が決勝点となった

 大舞台での強さ。小島のそれを改めて思い知らされる121球であった。初回こそ三者凡退と快調な立ち上がりであったが、2回以降、直球は高く浮き変化球はワンバウンドが目立つなどなかなか制球が定まらない。それでもあと一歩を許さないのがルーキーながら先発を任されるゆえんである。2回には相手のスクイズを察知し低めの球で空振りを誘うと、5回も2死二、三塁のピンチで中前に抜けようかという強烈な打球を、自ら落ち着いて処理し反撃を阻んだ。許した得点は本塁打による1点のみ。全国大会の準決勝という大舞台で成し遂げられた大学入学後初の完投は、この1年の成長を大いに見せつけるものとなった。

大学入学後初完投での勝利となった小島

 20安打で11得点を挙げた春。約5ヶ月の時を経ての再戦はわずか4安打で2得点と、苦しんだ今季を象徴するような接戦となった。それでも「最後に1点勝ててよかった」と茂木や小島が声をそろえたように、緊迫の試合展開の中でも『一戦必勝』のスローガンがぶれることは決してなかった。東京六大学野球連盟史上初の四冠へ、残る試合はあと一つ。2本の代打本塁打で劇的な逆転勝利を挙げ、決勝に駒を進めた亜大と相見える。多くの主力の卒業で、弱いとすら評されていたことしの開幕前。悔しさを胸に幾多の苦難を乗り越え成長を遂げたチームが、90年開かれなかった扉を開くべくいざ最後の戦いにその歩を進める。

(記事 三井田雄一、写真 谷田部友香、豊田光司)

☆『初』物尽くしの一試合

打席に立つ武居

 ついに出番がやってきた。神宮の場内アナウンスと共に、電光掲示板に刻まれた一人の名前。7番中堅手・武居直宏(法4=東京・早大学院)。故障した中澤彰太(スポ3=静岡)に代わっての突然の起用であった。武居は昨年の秋季リーグ戦で初のベンチ入りを果たし、主に代走として活躍。ことしは一塁ランナーコーチも任されている。しかし、ここまで先発としての出場機会はなく、この試合が大学『初』のスタメン起用となった。そして、2回に立った今季『初』打席は、2年前の春季新人戦以来となる打席。2打席目以降には『初』犠打、そして『初』盗塁を決めるなど、得意の足を生かしたプレーも披露した。また、守備でも存在感を発揮。俊足強肩の名手・中澤がいない外野を縦横無尽に走り回り、その穴をしっかりと埋める奮闘を見せた。いよいよ次が泣いても笑っても最後の試合。常にチームを陰から支え続けていた背番号『23』が、今度は自らの手で勝利をつかみに行く。

(記事 杉田陵也、写真 谷田部友香)

黄字は打点付き

早大打者成績
打順 守備 名前
(右) 重信慎之介 .286 中安    左飛    三直    遊邪      
(二) 河原右京 .143 投ギ    空振    投ゴ       空振   
(三) 茂木栄五郎 .375 右安    空振    中飛       二ゴ   
(一) 丸子達也 .167 空振       右本    左飛    四球   
(遊) 石井一成 .286 左飛       四球    右安    二ゴ   
(捕) 道端俊輔 .143    空振    バ振    二飛         
(中) 武居直宏 .000    見振    投ギ    投ゴ         
(左) 川原孝太 .000    四球    空振       遊ゴ      
(投) 小島和哉 .000    見振    遊ゴ       空振      
早大投手成績
名前
小島和哉 1.00
コメント

髙橋広監督(昭52教卒=愛媛・西条)

――いいかたちで先制できました

きのう相手が逆転勝ちをしていたので、勢いがあるから、先制点の比重は高かったですね。

――丸子達也選手(スポ4=広島・広陵)の本塁打も出ましたね

3番、4番が打ってね。

――丸子選手はリーグ戦苦しんでいた印象ですが

練習では悪くなかったんですよ。前半は調子悪くて法大戦あたりで、復調はしていて、早慶戦はいけると思ったら、なんか(笑)。練習自体は悪くないんですよね。

――投げては小島和哉選手(スポ1=埼玉・浦和学院)が初完投です

リーグが違うと吉野(和也、社3=新潟・日本文理)が通用するかわからないんですよね。球威がないだけにこつこつ来るチームにはちょっとわからないですよね。小島は良くなかったですが、要所要所投げきりますからね。2死二塁、三塁の時も代えようかと思いましたが、左打者でね、1球目投手ライナーだったですけど。あそこを乗り切って本人も乗ってきたでしょうね。

――相手は春のリベンジという意気込みで向かって来て、1点差をものにできた一番の要因は

投手の小島が良かったし、選手もきのうの試合を見てますし、春のイメージは払拭されていたので、ましてああいう勝ち方で勢いがあるというのはわかっていました。投手陣も安定していて、どっちかというと道都大の方が連投で戦いやすいと思いましたが、上武の方が投手が多いですから、やっぱり左投手をもってきましたよね。ワセダの打線は前回も左打ててないですからね。そういう点で、油断はないですね。受けて立つとかなめるとかそういうのはないですね。

――油断を消すのは難しいことだと思いますが

大学生は大人ですからね。私はそういうところを心配していて、大学生はそうではないと思うんですけど、念を押してね。慎重に慎重にどの試合も相手を倒すチャレンジャーであるということが大事。

――中澤彰太選手(スポ3=静岡)の状態は

歩けるんですけどね。全力でというのはちょっとね。捻挫ですからね。そんなきつい捻挫ではないですね。武居(直宏、法4=東京・早大学院)は守備力ありますからね。そんなに心配してないです。

――六大学初の四冠への意識はありますか

四冠とかそういうのはないですね。ただ私は日本一を目指したいので、とにかく日本一取りたいですね。ここからの1勝がまた遠いですから。

――最後の1勝へのポイントはどこになりますか

結局1点を守り切るような野球でしょうね。きょうのようなロースコアの、3点取られたら負けというような感じで、それぞれ亜大、東海大ともに投手のレベルが高いですからね。きょうのような展開を想定していかないとと思いますね。

――すると3点目取れなかったのが課題になりますか

セーフティスクイズなんですけど、あの3点目(を取れなかったの)は大きいですね。バント失敗して相手はバント処理ミスして、三塁までチャンスをつくれたわけですからね。向こうもスクイズを空振りしてくれたのでイーブンと言えばイーブンですが、ワセダとしてはあそこの3点目が大きいですね。

――大会前に想定していたものと2試合の試合内容で何か違う部分などありますか

秋のリーグ打ってないですから、投手陣は秋のシーズンの終わるころに良くなってきていて、春のチームとは違う陣容で私は戦っていますからね。それはそれでも試合展開はつくれてますからね。無駄な点を与えないで、負けない野球をやってくれてますからね。そういうところは力があると思いますね。

――高校の部では高松商が優勝しました

すごいですね。出場チーム中一番弱いと思っていた(笑)。何十年ぐらいの付き合いだけど、快挙やな。

茂木栄五郎(文構4=神奈川・桐蔭学園)

――きょうの試合を振り返っていかがでしたか

初めから競った試合になると思っていて本当に競った試合になったのですけれど、その中で小島がしっかり投げてくれて最後に1点勝てていたのでよかったと思います。

――春に対戦した上武大との再戦でした

上武大学さんの記事を見たら、春に(早大に)負けてからワセダを倒して日本一ということを目標に練習してきたとあるのを見て、相当な気持ちで来るのだろうなと思っていたので絶対に厳しい試合になるなと思っていたのですけれど、やはり自分たちが受けて立つようなら絶対に負けてしまうと思ったので、自分たちも一戦必勝の挑戦者の気持ちでやれたことが最後に勝てたという結果につながったのかなと思います。

――コールドで勝った春に比べるときょうは苦しい試合となりましたが、春との違いなど感じるものはありましたか

春はリーグ戦を通じて打線の状態がすごいよかったのでそのまま畳み掛けることができたのですけれど、秋は打線のつながりが悪くてワンチャンスというのをずっと練習してきたので、得点圏にランナーがいないと得点する機会というのが少なかったです。まずチャンスメイクの段階で無死や一死の中で走者が出せなかったのが苦しんだ要因かなと思います。

――相手に関してはいかがですか

悔しい気持ちというのはすごいあったと思うので、それで絶対に倒すという強い気持ちが春以上にあるのだろうと感じて自分たちも少し受身になっていた部分もあったのですけれど、最終的に挑戦者の気持ちを忘れないということで一戦必勝、目の前の試合ということを意識してやった結果が勝ちにつながったと思います。

――あっという間の先制点でしたが、どういう気持ちで打席に入られましたか

重信(慎之介副将、教4=東京・早実)がヒットで出塁して右京(河原主将、スポ4=大阪桐蔭)が送って自分という形ができていたので、リーグ戦を通じていいところで打てていなかったので何としても打ってやろうという気持ちで打席に入りました。

――適時打の場面は少し強引なようにも見えましたが、それもご自身の持ち味でしょうか

そうですね。1球目から強く振るということをテーマにやってきたので、それが打席の中で少し強引な形にはなったのですができたことはよかったと思います。ただそのあとの打席で全然自分のスイングがさせてもらえていなかったので、そこはあしたへの課題かなと思いますし、また調整したいと思います。

――あと一歩というところまで来ましたが、今の思いというのは

ずっと一戦必勝で四冠を目標にやってきてあと一歩というところで負けてしまったら本当に悔いが残ると思うので、どんな結果であれ最後に1点勝って優勝するという強い気持ちを持って最後の試合には臨みたいなと思います。

丸子達也(スポ4=広島・広陵)

――久々の一本でしたね

打った瞬間に入ると思いました。 本塁打というよりはとりあえず塁に出ることを考えていました。きょうはたまたま狙っていたボールが初球にきてくれたので、それをしっかり振れたのはよかったと思います。

――打った球は

甘めのインコースですね。捕手の配球が真っ直ぐが多くて、その前の打席の感じからして真っすぐだなと思いました。読みが当たりました。

――一本出てホッとしましたか

そうですね。明日の投手も良いので、しっかりと対策をしていかないといけないなと思います。

――本塁打への意識は

そうですね、長打を打つことに越したことはないのですが、そんな簡単に投手は打たせてくれないので、そこを対応できるようにしていきたいです。

――好調の兆しは感じましたか

きょうの本塁打でそのあとのフォームが変わったし、気持ちの面でもそんなに考え込まなくてもよいと思えるようになりました。それは明日につながると思います。

――リーグ戦が終わってから今大会に臨むにあたって

チャンスで必ず一本を打てるようにと考えていたのは変わらないのですが、1回戦の1打席目はチャンスで打てなかったので少し考え込んでしまいましたね。きょうは試合自体を楽しくやろうという気持ちで取り組みました。

――四冠という大きな目標があると思いますが

自分たちが新チームになった時から、四冠を絶対にやってやるぞということを言い続けていました。あと残り1試合ですが、今まで通り一戦必勝で、1点でも多くとって、1点でも多く守って勝てればいいかなと思います。

――明日に向けて

泣いても笑っても明日が最後の試合なので、最後は笑って終わりたいですね。勝ちたいです。

小島和哉(スポ1=埼玉・浦和学院)※囲み取材より抜粋

――きょうは自分の投球ができましたか

最後に勝てたので良かったです。

――上武大は粘り強いイメージがありましたか

きのうの上武大の試合を見ていて、最終回の粘りだったり機動力があると思いましたが、あまり意識しすぎずに投げました。

――調子はいかがでしたか

前半は球が荒れていたのですが、後半はつかまりだして(ひっかかり始めて)きました。

――相手は春のリベンジに燃えていたと思いますが

そうですね。粘り強さやしぶとさをすごく感じたので、投げていて大変でした。

――もう少し打線の援護が欲しかったのではないですか

これまでも終盤に自分が打たれることはありましたし、それはあまり気にしていませんでした。試合が終わって1点でも多ければ勝ちだと髙橋さん(広監督、昭52教卒=愛媛・西条)に言われていたので、点差が1点でもたとえ5点でも、同じ気持ちで投げることはできたのではないかなと思います。

――最も警戒していたのは9回だと思いますが、どのような投球をしようと思っていましたか

いままでも終盤にホームランを打たれたりフォアボールで無駄なランナーを出していたりしたので、1球1球低めに投げることを意識して投げました。

――これまでに2度完投を目前に被弾しましたが、今回9回のマウンドへ向かった時の気持ちはどのようなものでしたか

もうそれしかよぎっていませんでした。打たれた時のイメージがよぎっていたのですが、その分、前打たれたときは高めに浮いたチェンジアップと真ん中に寄った真っ直ぐだったので、チェンジアップは浮かないように、真っ直ぐは真ん中に行かないように気をつけて投げられたので、経験が生きたかなと思います。

――初完投についてはいかがですか

最後まで投げ切れたのは良かったのですが途中はフォアボールが多かったかなと思います。あとは2アウトからランナーを出したりしたので、完投は1つの目安なので、これに満足しないでまた頑張りたいと思います。

――スクイズを外す場面もありましたが読んでいましたか

カウントからしてここだろうなとは思っていました。外せという要求ではなかったのですが、低めに投げようとは思いました。

――きょうは緊張はありましたか

初回から緊張しました。

――4冠への意識はチーム内に浸透していますか

そうですね。特に4年生はすごく意識が高くて頼りになるので自分たち後輩もついていっています。ですが4冠4冠と言っても一歩一歩勝ち進むしかないので、4冠は頭にあっても目の前の試合に集中しようと言っています。

――早慶戦後はどのような調整をしましたか

体の治療をしに行ったのと、早慶戦の後半が良くなかったので知り合いの方に相談しに行ってアドバイスをもらったりしていました。

――最後の打者を打ち取ったときはどう思いましたか

ホームランを打たれた中さんだったので、チェンジアップの要求が出ていたのですが抜けた時に怖かったのでそれなら外の方が良いと思って投げました。打球が上がった瞬間は打球は見れなかったです。重信さん(慎之介副将、教4=東京・早実)も足を止めていたので、「やばい」と思って。