【連載】秋季早慶戦直前特集『It's SHOW TIME!』第5回 大竹耕太郎

野球

 春はエースとして早大の日本一に貢献した大竹耕太郎(スポ2=熊本・済々黌)だが、今季は夏に痛めた右膝の影響で開幕カードには間に合わず。第3週の明大戦で戦列に復帰してからも安定感を欠く投球が続いている。今回は苦しいシーズンとなっている今季の振り返り、そして早慶戦に対する意気込みを伺った。

※この取材は10月23日に行われたものです。

大学入学後初めての故障での離脱

今季序盤はケガに苦しんでいた大竹

――故障で出遅れてしまいましたが、どのような故障だったのですか

 右の膝を少し。そんなにひどいものではないんですけど、大事を取って8月いっぱいほとんど投げてないです。

――オープン戦の初戦では登板がありましたが、その後に痛めたのですか

 そこまでは普通にやっていて、そのあとです。練習で違和感があって、そこからですね。

――離脱している期間にチームメイトから何か声をかけられたりは

 焦らなくていいからしっかり治して、途中からでもいいから出てきてもらえると助かるというふうに言われました。

――練習ができなかったり、ベンチに入れていない時には焦りなどはありましたか

 やはりないと言うと嘘になりますし、今までほとんどケガをしてこなくて。練習とかを一人でやることが多かったので、孤独感とかそういったものはありました。

――逆にチームに対してはどのような思いを持っていましたか

 投手も、いざ試合で投げるというふうになったときに投げられるという投手は限られるので。オープン戦においても自分が抜けると投手陣一人一人に負担がかかるので、そこは申し訳ないなと思っていました。

――その期間はどのような練習を

 走る、投げるが基本的に出来ていなかったので、動きが少ないというか、体幹トレーニングだったり、インナーの筋トレだったり、そういう動けないからこそできることをやりました。

――故障での離脱は初めてですか

 大学に入ってからはないです。高校の2年以来ですかね。

――そのときはどこを痛めたのですか

 左の足の裏の小さい骨があるんですけど、それを疲労骨折しました。

――投球ができるようになったのはいつ頃からなのでしょうか

 東大戦のあとの空き週くらいからですかね。そこのオープン戦からなので。だいたい東大戦が終わったあとくらいから投げ始めて、という感じです。

――現在のケガの状態は

 100パーセントかと言われたら、そうとは言えないですけど、普通に試合で投げられるレベルにはなっているので、練習しながら治していくという感じです。

――マウンドでの感覚は戻ってきていますか

 やはり投げ込みができていないので、調子の波が激しいというか。明治戦があまり良くなくて、立教戦で良くなったと思ったんですけど、次のこの前(の法大戦)がダメだったので。いま投げ込みを増やして、早慶戦では万全の状態でいけるように、とは思っています。

――今回の故障を乗り越えて成長できた点はありますか

 まずは単純に、体の構造とか、何でケガしたのかというのが分かったりしたので、今後の再発防止への知識は深まったかなと思います。あとはオープン戦とか客観的に野球を見る機会が多かったので、配球とかよく考えるようになったし、純粋に野球ができていることに対する感謝の気持ちが強くなりました。

――その右膝のケガの原因というのは何だったのでしょうか

 専門的に言うと疲労の状態が続いたというのがあって、もちろんそれは春けっこう投げていてそれも貯まっていたのと、体全体を使って投げられていなくて、おしりの筋肉とかが弱かったので。そういうものが徐々についてくればなくなってくるのかなと思います。

「そう簡単にはいかない」

――今季はここまで4試合に登板して防御率は3.52ですが、振り返って

 やはり安定感という面で欠ける部分があって、結構投球にいっぱいいっぱいになってしまっていて。自分の持ち味は冷静に判断しながら投げるところなので、そこが欠けているなというふうには感じています。ただ、早慶戦に向けていましっかり調整ができているので、このままうまくいけば、先発でしっかり投げられるんじゃないかなというある程度の自信はあります。

――調子自体はいかがですか

 きょう投げてみても、だいたい思ったところに(球が)いくようになってきるので、感覚は悪くないですね。

――事前のアンケートには「思うように投げられていない」と書いてありましたが

 ここに投げたいのに違うところにいってしまったという球が純粋に多いというのが一番ですね。

――明大2回戦で復帰のマウンドに上がったときの気持ちは

 1敗した状況の2戦目だったので、落とせない試合だなと思っていて、できるだけ長く投げようという気持ちはありましたが、打たれてしまいました。

――その次の立大1回戦では救援での登板で3回無失点でした

 リリーフとしての経験がほとんどない状態で、どのタイミングで肩を作っていいかとかもよく分からなかったのですが、しっかり気持ちを切らすことなく準備していったのが良かったのかなと思います。正直1試合目投げるとは思っていなかったので、そういうなかでもしっかりと準備できたのが、無失点という結果に繋がったのだと思います。

――翌日の2回戦でも救援で4回を完璧に抑える好投でした

 あのときは本当に感覚がよくて、春同様のピッチングといいますか。緩い球も使う余裕があって、本当に感覚が良かったですね。

――連日の試合の中でどのように修正されたのですか

 試合後にしっかりランニングして、少し下半身の動きが悪いような感覚が1回戦であったので、グラウンドの周りを走りました。

――立大2回戦は味方の逆転の直後からの登板でしたが、プレッシャーなどはありましたか

 ありました。やはり先発とはまた違うプレッシャーといいますか、責任感を感じることができたので、とてもいい経験にもなったかなと思います。

――先発と中継ぎのどういった点が違うと感じていますか

 まずはメンタル的に先発は持っていきやすいんですけど、やはり中継ぎや抑えなどは投げるかも分からないという状態で試合に入るので、試合でいざ投げるという場面への気持ちの持っていき方です。あとは、試合での登板前に投げすぎてもダメですし、投げなさすぎてもダメなので、そこら辺のさじ加減が難しいなと思います。

――やはり大竹選手としては先発で投げたいという気持ちが強いのですか

 そうですね。自分自身、そんなに三振が取れるわけではないので。やはり抑えとかで投げる投手っていうのは、ピンチで三振が取れる投手だと思います。自分は9回投げながら徐々に修正していくタイプだと思うので、長所を生かすという意味ではやはり先発したいという気持ちはあります。

――その後空き週があり、法大2回戦では先発で5回途中3失点という結果でした

 球の走り自体はあまり悪いわけではなかったんですけど・・・。ピッチャー相手に押し出ししてしまったりとか、正直野球をやっていて経験のないようなストライクが入らないなという感覚があって。多分ピッチャーをやったことのない人には分からないと思うんですけど、野球をやっていて初めての感覚でした。

――下位打線に対しての四死球が多かったですが

 別に焦っていたとか、そういう自覚はなかったです。なんなんですかね、分からないんですけど。普通に投げれていれば1失点以内で抑えられていたと思うので。チームが最終的に勝ったことがせめてもの救いだと思います。もしあれで負けていたらと考えると、やはり責任を果たせていないので重く受け止めて、その後は練習に励んでいます。

――先発を告げられるタイミングは

 基本的には試合の週の水曜日に監督さん(髙橋広監督、昭52教卒=愛媛・西条)が投手を集めて今週土曜はお前で日曜はお前でいくという風に言われます。

――法大2回戦の先発は決まっていたのですね

 そうですね、水曜に告げられていました。

――法大1回戦で試合終盤にブルペンで準備をされていましたが、翌日の試合に向けての調整だったのですか

 はい。投げる可能性は点差があったので低かったです。あれが1点差くらいになったら行くぞという風には言われていたんですけど、ほとんど調整という感じでした。

――春の四死球の数にすでに並んでしまいましたが、制球面はいかがですか

 そう簡単にはいかないなという風に思いますね。

――故障が直接の原因なのですか。それとも夏場の練習量も影響しているのでしょうか

 どっちもありますね。投げ込みの量が全体的に少ないというのはあります。やはり再現性というか、もちろんいい球もあって、決まる球もあるんですけど、それが続かないというところがやはり再現性が低いなという風に感じます。繰り返し繰り返しの練習が足りないなと投げながら感じてもいます。

――決まる球もあるということですが、今季特に有効だと感じる球種は

 スライダーですかね。スライダーは昨季ほとんど投げていないんですが、打たれる球もスライダーが多かったです。ですが今季はこの前の法大2回戦もスライダーで内野ゴロを打たせたりとか、使えるようになってきたなというのが今季の1つの収穫かなと思います。

――スライダーというのにもたくさん種類があると思いますが、大きく横に曲がるスライダーですか。それとも小さく変化する球なのでしょうか

 両方ですね。やはり小さく曲がる球も使えていますし、大きく曲がるカーブみたいな球も使えています。

――準備期間が不十分だったなかでは粘り強くやれていると感じますか

 監督さんも1イニングに3点以上取られるとダメと言われるんですけど、それはないので。打たれながらもどうにか最少失点ではいけているかなと思います。だけどそれだけ理想が高くなってきたという意味では上を見ることができているのかなとは思います。

――いま明大が首位ですが、大竹選手は今季の六大学リーグをどう見てますか

 春と一緒のようにはいかないなという印象です。どの選手もそうだと思うんですけど。力としてはどこも変わらないと思うんですけど、ここぞというときの集中力とかで大きく差が開いたりしているのかなと思います。

――大竹選手から見て今季の早大はいかがですか

 序盤少し打てないときがあったんですけど、終盤に打つべき人が打っていて。結局2連勝が続いていま4連勝しているので、そこはさすがだなと思います。

――チームの雰囲気も良くなってきたのでは

 そうですね。やはり優勝したいという気持ちが全員強いので、他力本願になるんですけど、早慶戦で勝って終わりたいとみんな思っていると思います。

――ここまでの試合の中で最も印象に残っている試合は

 やはりこの前の試合(法大2回戦)ですかね。こういう自分もあるんだなと。投球自体は悪かったんですけど、そういう時もあるんだなと気付けたという点では、いい経験だったなと思います。まあチームが負けなかったから言えることなんですけど。

――開幕前には「春同様の試合はできないと思うので、全員が踏ん張れるかどうか」とおっしゃっていましたが

 投手もみんな調子がいいというわけではなくて、ケガ人も少し出たりしているんですけど、北濱(竣介、人2=石川・金沢桜丘)が頑張っていたりとか、全員で繋げている感じはしますね。

――その北濱選手の投球はどうご覧になっていますか

 入学した時からいい投手だなとは思っていて、私生活でも仲が良いので本当に活躍して嬉しい気持ちと、自分も同じように活躍できていないという点に関しては不甲斐なさというか、そういうものは感じています。

――今季も何度か味方の守備に助けられたと思いますが、やはり頼もしいですか

 高校時代は内野ゴロを打たせても併殺を取れないようなチームだったんですけど、やはり大学野球、特に早大の守備はすごいなと感じています。中澤さん(彰太、スポ3=静岡)とか、絶対抜けるなと思った打球を捕ってもらえるので、そういう違いは高校と比べて感じます。

「4年生のために勝ちたい」

その投球で今回もチームを頂点へ導きます

――早慶戦まであと1週間ですが仕上がりはいかがですか

 いまのところは順調できています。まだあと1週間以上あるので、これからどうなるかは分からないんですけど、最善の準備をして望むだけだと思ってます。

――このあとはどのような調整を

 あしたあさってはしっかりと投げて再現性を高めて、来週からは完全に調整ですね。追い込むというよりはキレを出したり、疲労を抜いたりそういうことを中心に考えてやっていきます。

――法大2回戦の後には監督が「大竹も2週間あれば万全にいけると思う」とおっしゃっていましたが

 すごく信頼をしていただいているなというのをひしひしと感じている部分があって。四球を連発しても変えないところとか、信頼していただいているなというのは感じているので、それに応えなきゃいけないなと思っています。それも道端さんと同じく恩返ししたいです。

――4年生にとっては最後の早慶戦となりますが、4年生に対する思いというのは

 この代になって寮に入ったこともあって、自分が1年生の時の4年生以上に思い入れが強いので、4年生のために勝ちたいという気持ちは以前よりも強くて。日頃からお世話になっている人が多いので、頑張りたいです。

――そのなかでも1年間バッテリーを組んで来た道端俊輔選手(スポ4=智弁和歌山)に対しては

 私生活でもご飯に連れていってもらったりとかあるんですけど。最後まで配球とかを学んで。かなり恩をいただいたので、最後は勝って恩返しをしたいです。

――春の慶大戦では完封勝利で優勝投手となりました

 本当に春のシーズンはゾーンに入ったように、ぽんぽんぽんと簡単に試合を進められていたんですけど、それが本来ではないというのをこの秋で感じました。

――完封勝利で早慶戦に対する気持ちの変化などはありましたか

 1年生の春と秋では両方しっかり打たれてしまって。そのイメージの中での2年の春の試合だったので、そう思えば当時よりは悪いイメージを払拭(ふっしょく)できたかなと思います。

――早慶戦といえば応援ですが、応援される気分というのは

 チームが勝っていたら気持ちいいんですけど、それが負けて観客が湧いている状態だと、気にしないようにしていてもちょっと力みが入ったりとか、どこかに支障が出たりすることはこれだけやっていてもあるかなと思いますね。

――今季の慶大のイメージは

 やはり『打』のイメージですね。純粋にホームランの量が多いというのと、監督さんがいつも言っているんですけど、一発を浴びるということは守備としてダメージが大きいので。自分の考えとしては、横尾さん(俊建主将)とかに一発を打たれないようにということを気を付けて投げていこうかなと考えています。

――一発を打たれない投球というのは

 リスク管理と言いますか、容易にインコース高めに投げないとか、無駄なところで甘いところに投げないこととかですね。

――下位打線にも注意が必要です

 特に下位打線とかは特徴が出やすいので。早慶戦ということで全4カードの相手の打撃が見られるので、リーグ戦に比べたらそれだけ準備ができるので、いまからしっかりと準備をしていこうかなと思っています。

――警戒する選手は誰ですか

 やはりプロ志望届を出した3人(山本泰寛、横尾俊建主将、谷田成吾)ですかね。そこら辺に打たれると勢いに乗ってくると思うので。そこを春と同様に封じ込められれば流れは相手にいかないかなと思います。

――今季の慶大は代打の選手もよく打っていますが、代打の選手が出てきた時に気を付けることはありますか

 代打はやはり打ちたいという気持ちが強く入ってくるので、容易にストライクを取りにいかないということは常に言われています。

――早慶戦のカギとなるのは

 投手陣かなと思います。強力打線で、一度捕まったら抜け出せないほどの力を持っているので、そこをうまくかわしていければ、連勝できると思います。

――早慶戦での自分の役割は何だと考えていますか

 まだ先発なのかどうかも決まっていないんですけど、与えられた仕事をしっかりと果たして後ろにつなげるというのが自分の仕事かなと思います。

――事前のアンケートで、『スローボール』に注目して欲しいと書かれていましたが

 最近は160キロとか投げるピッチャーがいて「わー」ってなることはあると思うんですけど、自分は逆に遅い球を投げて「わー」って言ってもらいたいという気持ちがあるので、そこに注目して欲しいです。

――スローボールというのは、スローカーブとはまた違うのですか

 はい。スローカーブとは別のスローボールがあります。それを見ていてほしいですね(笑)。

――今季はそのスローボールは投げられていますか

 結構投げていますね。立大2回戦では特に多投していました。

――春よりさらに大きな期待がかかると思いますが、自信はありますか

 今までの結果を見ると自信があるとは言えないんですけど、自分のやるべき投球ができれば抑えられるかなとは思いますね。あとはやはり相手がどうというよりは、自分が自分の本来の力をしっかりと発揮できれば、というところだと思います。

――早慶戦を復活の試合としたい気持ちはありますか

 まだ2年生で半分以上シーズンが残っているので、今後につなげるためにも最後いい形で終わって、冬季の練習に入りたいという気持ちは強いです。今度の一試合が今後を大きく左右するかなと思うので、それ相応の準備と気持ちを持って挑みたいと思います。

――最後に早慶戦に対する意気込みをお願いします

 やはり4年生が最後ということで、しっかりと勝って送り出したいので、自分の役割をまっとうして2連勝して終わりたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 芝原健輔)

早慶戦で注目して欲しいところを書いていただきました

◆大竹耕太郎(おおたけ・こうたろう)

1995年(平7)6月29日生まれ。183センチ。75キロ。熊本・済々黌高出身。スポーツ科学部2年。春に使用していた黄色いグローブから少しえんじ色の入ったものに変えたという大竹選手。グローブには座右の銘である四字熟語、『泰然自若』という文字の刺しゅうが入っているそうです。早慶戦でも座右の銘通り、落ち着いたマウンド捌きで慶大打線を封じ込めにかかります!