【連載】秋季早慶戦直前特集『It's SHOW TIME!』第3回 小島和哉 

野球

 昨季大車輪の活躍で早大の東京六大学リーグ戦(リーグ戦)優勝、そして全日本大学選手権制覇に大きく貢献した小島和哉(スポ1=埼玉・浦和学院)。鮮烈デビューを飾った春をどう振り返り、今季を迎えたのか。そして春秋連覇の懸かった大舞台への思いとは。その胸の内を語っていただいた。

※この取材は10月24日に行われたものです。

無駄な力が取れた

唯一1年生でベンチ入りしている小島

――大活躍された春季を振り返って

 大学に入って最初のシーズンだったので、高校生とはまた違った大学生のバッターの雰囲気だとか、高校よりレベルの上がった大学の試合の中で、自分としては何も考えずに全力でやっていたというのが正直なところでした。春の大会が終わってみて、技術的なところで言ったら1年生の勢いで抑えられたかなという感じでした。なので、たまに抜けた球もあったり反省するべき点もたくさんあって。1年目というか、最初のシーズンとしては良い方だったのではないかなとは思います。

――オープン戦を含む夏の期間はいかがでしたか

 夏のオープン戦ではフォームを変えた部分があって、それもあって最初のうちは結果が出なかったのですが、いろいろ考えた末に良い方に変わりました。それは秋のリーグ戦に入ってから良くなってきたので、春の反省も生かして秋も締めくくれればと思っています。

――フォームはどのように変えられたのですか

 大学に入ってから体重も増えて、体も大きくなっているような感じはしていて、それで下半身の使い方を少し変えました。途中まではうまくいかなかったのですが、それをやり通していた時に秋のリーグ戦に入って、自分で(フォームを)つかんだ感じがありました。

――秋リーグの中盤からは第一先発としての活躍など、好調な印象がありますが、フォームの安定の他に要因はありますか

  春のリーグ戦で感じた部分や、慣れとまではいかないのですが、春に勉強した点があったので、秋は研究された部分はあったのですが、うまくいっているのかなと思います。

――秋への調整で気を付けたのはどのようなところですか

  2週目の明大戦まではリリーフだったのですが、3週目から先発で投げさせてもらって、いままで後ろのリリーフで短い1、2イニングだったのが最初から入って6回、7回投げるにあたって、朝の時間の使い方も少し早めにしたりしました。

――もともと今季はリリーフとして短いイニングでの登板予定だったのですか

  夏のオープン戦であまり調子が良くなくて、先輩方の調子が良かったので、リリーフだろうなと自分の中で思っていました。それで秋に入ったらあまり先輩方も調子が上がらない中で自分が少し良くなってきたということもあって(先発で)使ってもらえたという感じです。

――先発の方が投げやすいということはありますか

  そうですね。でも良いところもあれば悪いところもあります。でもやはりピッチャーをやるなら先発が良いなと思います。

――大竹耕太郎選手(スポ2=熊本・済々黌)の故障などもあり、昨季以上の活躍を求められたと思いますが、責任やプレッシャーを感じることはありましたか

  自分一人でできることはそれほど大きなことではないと思います。先発で投げたら後で待っているピッチャーもいますし、4年生も厳しく言ってくることはないので、そういう意味では気楽に投げさせてもらっています。

――先発投手への緊張はありますか

  それはどのような試合でも緊張はします。やってみなければ良い抑え方ができるか打たれるかはわからないので、やるまでは緊張します。でもそれがピッチャーの楽しみかなと思います。

――マウンドに立つと不安や緊張は消えると昨季おっしゃっていましたが、それは今季も変わらないのですか

  そうですね。打たれたらやばいと焦りますけど。やはり試合で緊張するというよりは、試合を楽しむという気持ちでできていて、それでまだ失敗をしていないので、失敗するまではその気持ちで良いのかなと思っています。

――試合前にする緊張をほぐす方法はありますか

  特にはないですね。でも先発する日は一人でいる時間を多くしています。集中する部分もあったりとかするので。

――昨季は試合前にはブルーベリージュースとどら焼きを食べるというお話がありましたが今季もそれは継続していますか

  それは続いていますね。

――今季のリーグ戦で印象的だった試合、打者はいますか

  どの試合というよりも、各大学の上位の人ですね。明大なら髙山さん(俊)、だったり、立大の時は(高校の)先輩の佐藤さん(拓也)がバッターとして打席に立つときは、やはりオーラというか周りの人とは違うなという感じがします。そういうバッターに投げられたのも良い経験になっていると思います。4年生の髙山さんとはもう勝負することはできないので、そういう面では良い勉強をさせてもらいました。

――昨季の振り返りでもその二人の選手の名前が挙がっていましたが、やはり特別な選手なのですか

  そうですね。やはり意識はします。

――以前春から成長した点としてストレートを上げていましたが、具体的にどのように成長したのでしょうか

 春と変わったというよりは、春の調子があまり良くなかったです。なので、戻ってきたという方がしっくりくるかなという感じです。春はどちらかというと全力で投げていたので。自分の持ち味は軽く投げてスッといくような、キレを意識した投球なので、春は力で投げていた部分がありました。秋はそういう無駄な力が取れて投げられているのかなとは思います。

――今季は昨季に比べ三振数が減っています。春は三振を取ることは意識していないとおっしゃっていましたが、今季はいかがでしょうか

  そうですね。あまり意識はしていないです。春は短いイニングだったということもあり、全力で投げていた分多少球が荒れていても振ってくれていたという部分があると思います。秋は良い風に力を抜いて投げられています。自分の持ち味は三振よりも、つまらせたり、内野ゴロとか外野フライに打ち取るところだと思っているので、その部分では(調子が)戻ってきたかなと。

――三振が少ないということはそれだけ打たせて取ることができているとも言えますね

  そうですね。自分はそう解釈しようかなと思っています。

――以前、野手に良いリズムを与える投球がまだできていないというお話がありました。その投球をするためには打たせて取る投球が必要なのでしょうか

  そうですね。打たせて取るピッチングで欲を言えば勝負所でピンチの時には三振を取れるというのが一番理想的だと思っています。

――昨季は2死、あるいは2ストライクを取ってから打たれてしまうことが課題とおっしゃっていました。その点今季はいかがでしょう

  法大戦は良い感じだったかなと思います。3人で抑えられたのもあったので。一番は失点しないことが軸で、どれだけランナーを背負っても点を取られなければ良いという考えで、そこから一歩ステップアップするとやはり3人でリズムよく抑えられるというところがあるのですが、そこはまだ確立できていないと思います。いまは追い込んでからの球がどうしても甘くなってしまうので。でもそこはいまは気にしすぎずらいねん以降の課題にして、いまはいまできることしかできないのでそれを出せるようにしようかなと思っています。

――今季はチームで唯一規定投球回数に乗っています。その点で投手陣を引っ張っていくという自覚はありますか

  いや、引っ張るとは思っていないです。まだそこまでではないので。やはり下級生なのでそこまでプレッシャーがかからずにできているので、自分に与えられている仕事を全うしようと思っています。その期待がイニング数に表れていると思えば少しうれしい気持ちがします。

技術ではなく気持ちで勝負

早慶戦でも大活躍が期待される

――今季の慶大打線は非常に好調ですが、小島選手から見た印象はいかがでしょうか

  やはり一発があるのでそこが一番注意しなくてはいけないかなと思っています。一発がある中できちんとつなぐバッターもちゃんといるので、そういう面ではよりいっそう投げミスをしていたら打たれてしまうので、そこは注意しないとなと思っています。ソロホームランなら仕方ないなと思うのですが、その前にどうしても足の速い梅野さん(魁土)とかを出してしまうと走られてチャンスを広げられてしまい、ソロホームランより大量失点すると思います。もちろん3、4番を一番注意しなければいけませんがその前に重要なのは1、2番かなと思います。

――その慶大打線を抑えるカギは何でしょうか

  やはり真っ直ぐが内も外もコントロールできないと話にならないと思うので、一番そこが重要かなと自分は思っています。

――今季ここまでその投球はできていると思いますか

  道端さん(俊輔、スポ4=智弁和歌山)の配球とかも春秋と一緒にやらせてもらって勉強になった部分もあります。外でカウントを稼いで内の一球で仕留める球という使い方がいまはできているのではないかなと思います。早慶戦でもできるかできないかはその日にならないとわからないのですが。

――変化球の調子はいかがでしょうか

  以前明大の柳さん(裕也)のカーブを見てつかんだというかしっくりくるものがあって。明大戦の時にその変化球を使い始めてからしっくり来ていますね。いまは真っ直ぐとその変化球とチェンジアップを使っています。

――それはどのような変化をするのですか

  ポーンっていう感じなんですけど、カウントを稼ぐというか。イメージとしては、スライダーとかは速さを意識しているのですがカーブに近いスライダーという感じですね。

――他の投手から影響を受けることは多いのですか

  結構自分は動画とかを見るのが好きなので。いろいろなピッチャーを見て、投げ方を真似することはあまりないですけど、握り方だったり軌道のイメージだったりを見て気になったら実践ですぐ試してみる派です。

――早大の投手で参考にした人はいますか

  最初は大竹さんのスローボールを練習をしていたのですが、最近難しくなってきてしまって。その時に柳さんのカーブを見て。柳さんとはオールスター(東京六大学オールスターゲーム)の時に仲良くさせてもらって、それから投球を見た時に変化球が気になって、明大戦で使ったら感じが良かったんです。

――早慶戦ではご自分の投球のどのような部分に注目してほしいですか

  自分の持ち味はやはり真っ直ぐだと思っているので、しっかりどんどん攻めるピッチングができればなと思っています。良いバッターだからといって逃げていたら打たれてしまうと思うので、打たれたら仕方ないと思ってどんどんインコースを攻めていければなと思います。

――小島選手は打たれてもすぐに気持ちの切り替えができるのですか

  マウンドでは気にしないのですが、ベンチに戻ってからは「あー」と思います。自分は1イニング1イニング毎に区切って、長い目で見ないで考えているので、マウンドの上では集中して、ベンチに戻ってまたマウンドに行く際に一人で時間をつくって、「よし」という感じで行っています。/p>

――昨季初めて選手として戦った早慶戦はいかがでしたか

  まだ自分の中では大学生のピッチャーとしての投球があまりできていない気がします。まだ高校生という感じがあったので。高校3年生の時に見た光景とは違うのですが、やはり4年生が最後のシーズンなので、最後の試合に懸ける思いというのは、(観客として)見ていた時よりもより伝わってきます。自分にできることをやることしか自分にはできないので、まずそこは集中して、4年生に良い思いをさせて感謝の思いを表せたらと思います。

――4年生にはどういった思いをお持ちですか

  やはりワセダに来て、最初から優しく話しかけてくださったり、寮とかも1年生は自分一人なのですごく話しかけてくださって。先輩だからってあまり気を遣わなくていいと言ってくださって、そういうところで本当に自分にやりやすいようにやらせてもらってそれを恩返しできるのはもう早慶戦しかないので、そこで成長した姿を見せたいと思います。

――早慶戦への意気込みをお願いします

  投げる試合は1点も取られないことを目標に、チームが勝つということを一番に考えて何点取られても次の点はやらないという、技術ではなく気持ちで勝負するようにしていけたらと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 藤川友実子)

早慶戦で注目して欲しいところを書いていただきました!

◆小島和哉(おじま・かずや)

1996(平8)年7月7日生まれ。177センチ、77キロ。埼玉・浦和学院高出身。スポーツ科学部1年。投手。左投左打。早慶戦で注目してほしいところを色紙に書いていただく際、何をどう書くか迷っていた小島選手。予備の色紙があるので失敗しても大丈夫ですとお伝えすると「いえ、失敗したらダメなんです!」と一発勝負にこだわっていました。