中盤までまさかの苦戦も…重信の一発で東大に辛勝/東大1回戦

野球

東大1回戦
東大
早大 ×
(早)○吉野和、小島―道端

◇(本塁打)重信1号2ラン、丸子1号ソロ(二塁打)道端

 ことしもまたこの季節がやってきた。猛暑の夏を経て、東京六大学秋季リーグ戦がついに開幕。その初戦で、昨季連敗を94で止め勝ち点奪取に燃える東大と対戦した。試合は開幕投手を任された吉野和也(社3=新潟・日本文理)と東大先発・宮台康平の投げ合いで中盤まで投手戦に。均衡が破れたのは7回、内野安打に失策が絡み先制を許してしまう。しかしその裏、同点に追い付くと重信慎之介副将(教4=東京・早実)の2点本塁打で勝ち越しに成功。このリードをなんとか守り切り、まずはリーグ戦1勝を収めた。

 開幕戦のまっさらなマウンド。そこに上ったのは、昨季エースとしての地位を確立した大竹耕太郎(スポ2=熊本・済々黌)ではなく、吉野和だった。「緊張はしましたけど、自分のペースで投げることができました」と語る通り、味方の援護がない中で6回を無失点に封じる。しかし球数が100球に近づいた7回、2つの死球などで2死一、二塁と自らピンチを招いてしまう。続く1番・長藤祥悟は遊撃ゴロに打ち取ったかに思われたが、これを遊撃手の石井一成(スポ3=栃木・作新学院)が悪送球。その間に二塁走者が一気に生還し、痛恨の先制点を与えてしまった。味方が逆転した後の8回にも、連打と犠打で1死二、三塁とされ一打同点の場面。1点こそ奪われるが同点とはさせず、8回2失点と先発としての役割を十分に果たした。9回は小島和哉(スポ1=埼玉・浦和学院)が登板。追いすがる東大打線に攻められ2死満塁とされるも、後続を断ち辛くも逃げ切った。

自身リーグ戦初となる先発を任され、好投した吉野和

 初戦ならではの緊張からか、中盤まで稲穂打線に本来の姿は見えなかった。6回までともることのない『H』のランプ、それは無安打に抑え込まれたことを表していた。しかし先制を許した直後の7回、ようやく打線が目を覚ます。この回先頭の 道端俊輔(スポ4=智弁和歌山)が二塁打で出塁すると、続く中澤彰太(スポ3=静岡)が初球から三塁線にセーフティバントを決める。中澤の快足を警戒したあまり、相手の三塁手が悪送球。その間に道端が生還し、すぐさま同点に追い付いた。2死後、走者を三塁に置いて打席には重信。カウント3-1からストライクを取りに来た甘い5球目を捉えた。「いったな」。打った瞬間そう確信した重信の放った打球は、右翼スタンドへ一直線。自身にとって5季ぶりの一発で、勝ち越しに成功する。1点差に迫られた8回にも丸子達也(スポ4=広島・広陵)がダメ押しの本塁打を放ち、勝利を手繰り寄せた。

重信が5季ぶりに放った本塁打で勝ち越しを決めた

 「6回まで無安打というのはイメージになかった」(重信)と、きょうは予想外の苦戦を強いられたことは確かだろう。結果として勝利できたものの、勝負どころで走塁死や失策が起こるなど反省点は多い。しかし、現場で戦う選手や指揮官にとっては何よりも勝てたことに意味がある。「勝ち方にはあまりこだわらない」(髙橋広監督、昭52教卒=愛媛・西条)。泥臭く1勝をもぎ取る姿勢は、春と変わらない。『四冠』達成への物語の第3章、まずは最初の1ページが刻まれた。

(記事 谷口武、写真 豊田光司、久保田有紀)

☆道端、正捕手の証『6』へ背番号を変更!

新たな背番号『6』を背負う道端

 秋季リーグ戦開幕戦となったきょうの試合。グラウンドで声を張り上げる道端の背中には、新たな背番号があった。早大野球部では、伝統的に正捕手のみに許される番号『6』。これまで背負ってきた『27』からの背番号の変更は、名実共に正捕手として監督とチームの信頼を勝ち得たという証拠だ。「6番を付けた歴代の先輩方はすごい方ばかり。引けを取らないようにしっかりとプレーしなければ」(道端)。より強くなった責任感を胸に、より大きな信頼を背に。道端は今季も、チームを勝利へとけん引する。

黄字は打点付き

早大打者成績
打順 守備 名前
(右) 重信慎之介 .333 二ゴ    見振    四球    右本      
(二) 河原右京 .250 一ゴ    空振    投ゴ    中安      
(三) 茂木栄五郎 .000 二ゴ       四球    二ゴ 左飛      
(一) 丸子達也 .333    四球    見振    遊飛    中本   
(遊) 石井一成 .000    三ギ    空振    二ゴ    左飛   
(捕) 道端俊輔 .333    四球    一ゴ       中2 一邪   
(中) 中澤彰太 .333    四球       左飛    三安 三ゴ   
(左) 川原孝太 .000    空振       四球    投ギ      
(投) 吉野和也 .000       空振    三ギ    二ゴ      
  小島和哉 .—                           
早大投手成績
名前
吉野和也 1.13
小島和哉 0.00
コメント

髙橋広監督(昭52教卒=愛媛・西条)

――初戦を白星で飾ることができました

試合も勝てば良いですから。打線も眠ってたんですかね(笑)。でも相手の投手はコントロールも良く、早大の左打者への攻めというのは非常に良かったです。

――吉野和也投手(社3=新潟・日本文理)がここまで長い回を投げたことはなかったと思いますが

きょうも投球数も多かったのですが、最後1点取られた時に交代かなと思ったのですが、まだ勝っていたので、試練というか。今後彼は大竹がエースになってくれることに超したことはないけど、その次のエース級の投手もいるので、吉野はまだ3年生ですから、ちょっと冒険でしたが、彼が粘り切ってくれました。

――7回に死球を2つ与えてしまった場面がありましたが

あれはコントロールミスというよりも右打者に対してのものなので、悪いものではなくて攻めているから起こるもので。押し出しとかだったら大変でしたが、フォームとか調子が悪くて出たものではないので、そこまで気にしていないです。(右打者のインコースを攻められるのが)彼の真骨頂ですからね。

――失点をした直後に得点出来ました

しっかりした打撃をしてくれましたね。また(ダメ押しの)丸子(達也、スポ4=広島・広陵)の本塁打も大きいですよね。あれは1点差だったらわからなかったですね。

――また小島和哉投手(スポ1=埼玉・浦和学院)のリリーフもありましたが、監督から見て調子はどのように見えますか

悪くはないんですけど、良くもないんですよね。

――勝った試合ではありましたが、走塁や守備にミスもある試合でした

丸子の(走塁死)は三塁手がいなかったので、狙いには行ってるんですけど、隙を付かれたというところで。あってはならないアウトですけど、ぼーっとして死んだわけではないので、100パーセント悪いわけではないと。石井(一成、スポ3=栃木・作新学院)は春のシーズンあまりなかったのですが、そこはまだ硬さがあったのかなと。わざわざ1番守備の良い状態と思って、遊撃手を代えずにいるんですけどね。

――あしたの第2戦に向けて

最後1点勝てば良いので、勝ち方にはあまりこだわらない。「大差で勝て」とか「しっかりしろ」などという声も聞こえましたが、野球のことですから、そんなに簡単にはいかないです。相手も一生懸命ですからね。負けててもおかしくない試合でしたし。また一気に勝てるように頑張ります。

重信慎之介副将(教4=東京・早実)※囲み取材より抜粋

――7回はどのような気持ちで打席に入りましたか

1点は返していたのですが、それでもまだ同点だったので必ず(ランナーを)返そうという気持ちでした。特にホームランを狙っていたわけではなく、つなぐという意識で来た球にうまく反応できました。

――前の打者が吉野和投手で、自分が決めようという意識はありましたか

監督さん(髙橋広監督、昭52教卒=愛媛・西条)にも「そろそろ打てよ」と言われて背中をバンと叩かれたので、決めてやるという気持ちで打席に入りました。

――6回までノーヒットノーランをやられていましたが、その時はどんな気持ちでしたか

僕もそうですし、ベンチの雰囲気も焦りはなかったです。春の時からしびれる試合やビハインドの試合でもずっと焦らないようにとやってきたので、そういう面では春の経験が生きたかなと思います。

――こんなに苦しい展開になるとは思っていましたか

簡単にいくとは思っていなかったです。ただ6回までノーヒットというのはイメージになかったです。

――7回の攻撃前にはどんなことを話し合っていましたか

とにかくもう追い付いて、いくしかないと声を掛けていました。

――5季ぶりのホームランとなりましたが、感触はいかがでしたか

2年前もきょうも打った瞬間いったなという感じだったので感触はすごく良かったです。

丸子達也(スポ4=広島・広陵)

――秋季リーグ初戦でしたがいかがでしたか

硬かったですね。今回、7回まで無安打でヒヤヒヤしました。しかも、7回で点を取られて、ここからやってやるぞという気持ちで繋がったのかなと思います。

――ベンチでの声かけなどは

個人のモチベーション次第なので、特にはしてないですね。どうやってやるかを自分で考えていこうというのをチームでも決めています。

――ホームランについては

入ると思っていなかったので、たまたまですね。普通のセンターフライかと思いました。

――打った球は

真っ直ぐですね。

――次戦に向けて

もっと早い段階で点を取れるように頑張りたいです。

道端俊輔(スポ4=智弁和歌山)

――秋のリーグ戦が開幕しましたが、どのような気持ちできょうの試合を迎えましたか

春に日本一になったからといって受け身になるのではなく、もう一度挑戦者の気持ちで臨もうとチーム全体で言っていたので、そのことは意識していましたね。

――今季から背番号が『6』に変更になりましたが、正捕手だけが付ける特別な番号を付けることについてはどのようにお考えですか

6番を付けた歴代の先輩方はすごい方ばかりなので、6番を付けるからには先輩方に引けを取らないようにしっかりとプレーしなければならないという思いがあります。責任感が生まれましたね。

――現在の投手陣の仕上がり具合はいかがですか

正直に言うと夏のオープン戦では良くなかったのですが、少しずつバッテリー間でお互いの意図が交換できていると思います

――きょうの先発はこれまでリリーフとして活躍してきた吉野投手でしたが

吉野はオープン戦では先発したこともあり、個人的に相性がいいのであまり心配することはなかったですね。コントロールもいいですし。

――その吉野投手が制球を乱すと、タイムをとって監督と一緒にマウンドに行く場面がありましたが、どのような言葉を掛けましたか

死球を出したとはいえ攻めた結果だから問題ない、切り替えて次の打者を抑えようと話しました。

――7回には逆転への口火を切る二塁打を放ちましたね

後輩のミスで失点してしまったので、その分は4年生である自分が絶対に取り返そうと思って必死に食らいつきました。

――勝利しながらも苦しい展開だったきょうの試合を踏まえてあすの試合への意気込みを聞かせてください

きょうの試合を通して簡単には勝たせてくれないということがみんな実感できたと思います。あすはできるだけ先制点をとって、粘っていけるようにしていきたいです。

吉野和也(社3=新潟・日本文理)

――開幕投手に選ばれた感想は

六大学の開幕の試合だったので、緊張感を持って投げることができました。本当にうれしかったです。

――マウンドに立った時の心境は

一番きれいなマウンドで投げることができて、初先発だったのですごい気持ちが入っていました。緊張はしましたけど自分のペースで投げることができました。

――先発へのこだわりはありましたか

ずっと先発したいという思いはあったのできょう先発できて良かったです。

――きょうの投球内容を振り返っていかがですか

苦しい展開だったのですが、野手が後半点を取ってくれると信じてやりました。

――終盤まで援護がありませんでしたが心境は

終盤取ってくれると信じて粘るだけでした。

――今季のチームでのご自身の役割は

大竹(耕太郎、スポ2=熊本・済々黌)が出遅れているので、自分が引っ張るつもりでしっかりと投げたいと思います。個人としては4年生のために全力で投げたいということと、それでチームが優勝できればと思います。

――今季の意気込みをお願いします

最終的には優勝を目指して頑張りたいと思います。まずはあしたしっかりと勝って、勝ち点を取れるように頑張りたいと思います。