好機生かせず敗戦も、OBとの共闘が成長の糧に

野球
TEAM
全早大
全慶大 ×
(早)佐竹、●大野、小島、竹内-道端
◇(三塁打)石井(二塁打)河原

 現役の選手とOB選手が一つのチームとなって、出身校の誇りを胸に戦う全早慶戦。ことしは4年に1度のナゴヤドームでの開催年にあたり、両校とも多くの校友やファンが詰めかけた。試合は先発の佐竹功年(平18人卒=現トヨタ自動車)が3回無安打の好投を披露するも、4回に守備の乱れから先制を許す。打線もここ一番での一打が遠く、まさかの完封負け。ドームにこだまする大歓声に応えることはできなかった。

 全早大の先発は佐竹。社会人球界で長年活躍し続けてきたベテランらしい、落ち着いた投球を見せた。丁寧にコースを突き、緩急で打者のタイミングを外す。3回を投げ無安打と相手打線をしっかりと抑え込んだ。しかし代わった4回、連打を許すと打球を処理した重信慎之介副将(教4=東京・早実)の送球がそれ、その間に先制を許してしまう。8回には横尾俊建主将(全慶大)の二塁打から好機を広げられ、さらに1失点。じわじわと点差を広げられてしまった。

先発の佐竹。社会人日本代表にも選出されている実力者だ

 序盤から毎回安打を放つものの、後続がなくもどかしい展開が続く打撃陣。4回には、この回先頭の石井一成(スポ3=栃木・作新学院)の三塁打で無死三塁とするも、得点に結びつけることはできなかった。8回には2死ながら河原右京主将(スポ4=大阪桐蔭)の中前打と連続四球で反撃のムードを演出するも、あと一本が飛び出さず。安打数はともに6と、両校で差がなかっただけに、悔しさが残った。

2死満塁で三振に倒れ、肩を落とす道端俊輔(スポ4=智弁和歌山)

 「見せ場はありましたが、あと1本が出るか出ないかの差」(髙橋広監督、昭52教卒=愛媛・西条)。少ない好機を生かすことができたかどうか。その違いが両チームの勝敗を左右した。しかし試合には敗れても、佐竹をはじめとしたOB選手との共闘は、多くのものを現役部員にもたらしただろう。「考え方をいろいろと教えていただくこともできて、勉強になりました」(小島和哉、スポ1=埼玉・浦和学院)。この戦いを経て大きく成長した選手たち。今月末に控えた次なる全早慶戦の舞台・福井では、宿敵への雪辱を誓う。

(記事 芦沢仁美、写真 豊田光司、谷田部友香)

全早大打者成績
打順 守備 名前
(右) 小島宏輝 .000 空振    左飛    三ゴ       遊飛   
(左) 重信慎之介 .500 中安    二安    見振       空振   
(二) 河原右京 .667 右2    四球    遊飛       中安   
(一) 丸子達也 .000 投ゴ    空振       二ゴ    四球   
(遊) 石井一成 .333    見振    中3    三邪    四球   
(捕) 道端俊輔 .250    中安    一ゴ    左飛    見振   
(中) 中澤彰太 .000    空振    四球       中飛      
  渡辺琢也 .000                         空振
(三) 木田大貴 .000    右飛    遊飛               
  藤田恭輔 .000                   二ゴ      
  真鍋健太 .000                         空振
(指) 三倉進 .000       空振 見振       空振      
  川原孝太 .000                         空振
全早大投手成績
名前
佐竹巧年 0.00
大野健介 0.00
小島和哉 0.00
竹内諒 4.50
コメント

髙橋広監督(昭52教卒=愛媛・西条)

――敗戦となりましたが、全早慶戦はいかがでしたか

緊迫した投手戦でしたから、最初の1点は大きいですね。失策絡みでしたしね。あとは相手がタイムリーが出たか、こっちがタイムリーが出ないかという差だと思うんですよね。無死三塁、1死一、三塁で得点できなかったのが痛いですけど、勝てるチャンスはありましたからね。緊迫した試合でミスが出たらダメですよね。相手の投手は社会人でしたからね。見せ場はあったんですけど、あと1本出るか出ないかの差ですね。

――現役の早大投手陣は良く投げていたと思いますが

投手力に関しては問題ないと思います。

――四国からの流れで名古屋に入られましたが、振り返ってこの遠征はいかがでしたか

(六大学)オールスターもやっぱり早大の選手が活躍して、点を取ったり良いプレーをしたりしていましたので、中心的な存在感はオールスターでも見せたかなと思います。きょうは早慶戦でしたからね。ただご当地というのもありますしね。そこら辺は正真正銘のガチンコ勝負とはいささか違うところがありますからね。

――ナゴヤドームでの試合はどうでしたか

気持ち良かったですね。ドームはカラーリングというか、色が非常に艶やかというかきれいですよね。また神宮とは違った、特にナイターはきれいですね。

佐竹功年(平18人卒=現トヨタ自動車)

――きょうの試合を振り返って

3年ぶりのオール早慶だったのですけれど、3年前とは雰囲気も違ってしかも先発だったので思ったよりも緊張しました。

――先発というのはいつ伝えられたのでしょうか

直前に、試合開始2時間前くらいですかね。

――先ほどお話された雰囲気が以前と違ったというのは具体的にどのような点だったのでしょうか

3年前の時はただ試合をして終わりだったのですけれど、今回はセレモニーがあったり地元ということもあってすごい大々的にやっていたので、ちょっと雰囲気が違うなと緊張しました。

――久しぶりにワセダのユニホームを着てみていかがでしたか

やはり重たいですね。

――佐竹選手は高校や社会人はもちろん補強選手などいくつものチームでプレーされていると思いますが、そんな佐竹選手にとってもワセダのユニホームやチームといった存在は特別なものなのでしょうか

そうですね、僕自身育ててもらったユニホームですし、伝統もありますし。社会人の補強の場合は相手も同じ社会人なのでそんなに気持ちの面では緊張するとかはないのですけれど、(今回は)やはり相手が大学生なので抑えて当たり前といったところもあるのでそういった面では緊張しました。

――投球に関しては、初回は若干球数を要していたように思えましたがその点に関してはいかがですか

イニングも3イニングだったので球数はあまり考えていなかったですけれど、全体的にコントロールが良くない中で何とか0点に抑えられてよかったです。

――一転して2、3回はテンポよく常に主導権を握る投球が印象的でしたが、ご自身の中での変化が何かあったのでしょうか

僕が変わったというよりかは慶大が初球からどんどん打ってくるようになったのでそこだと思います。

――きょうは初めてバッテリーを組む道端俊輔選手(スポ4=智弁和歌山)とプレーされたわけですが、その点はいかがでしたか

初めてバッテリーを組むというのは捕手も僕のことをそんな知らないでしょうし、僕も道端君のことを知らないのでやはり難しさはありましたね。

――事前にはどのようなお話をされたのでしょうか

どんどん首振るからという話はして、遠慮なくサインを出してくれと。慶大の打者のことは道端君の方が知っているので、その辺は任せてですね。

――試合や練習も含めて佐竹選手から見て今の後輩はどのように映りましたか

春も優勝して特に野手なんかはいい選手がそろっていて楽しみというか、先輩というかOBとして応援しているので、秋も連覇を目指して頑張って欲しいなと思います。

――佐竹選手はこのあとのBFAアジア選手権で日本代表に選ばれているわけですが、ご自身の今後の目標や展望というものはどのように考えていますか

僕は日本代表であったらアジア大会なのでアジア1、つまりチームが勝つことですね。トヨタでも日本選手権や都市対抗で優勝できるようにやりたいです。

――最後に後輩に向けてエールをお願いします

ワセダというところはいろいろなプレッシャーがあると思うのですけれど、それに打ち勝つくらいしっかり自分を持って練習して、是非いい結果を残して欲しいです。

丸子達也(スポ4=広島・広陵)

――長期間の遠征でしたが、振り返っていかがですか

オールスターも、きょうの試合も全く4番としての役割を果たせていなかったので、今後、調整してやっていきたいなと思いました。

――いつもと違う雰囲気はありましたか

オールスターのときは活躍している選手が出ているので、レベルの高い集団だったので、その中で相手から技術を盗み取ることが出来たのはよかったです。きょうは名古屋でオール早慶戦でしたが、2死満塁などの場面ではリーグ戦での早慶戦のように、緊迫した雰囲気でした。

――プロから本塁打を放つなど、オープン戦好調の要因は

たまたまですね(笑)。

――オープン戦での目標や課題などはありますか

数値的な目標は、本塁打数を増やしたいなと思っています。それで、大きいのを狙うと空振りやアウトになる確率は高くなるのですが、今まで通りのかたちで本塁打数を増やしていきたいです。

石井一成(スポ3=栃木・作新学院)

――きょうの試合を振り返っていかがですか

あと一本が出なかったので後味は悪いですが、打線はつながってきているのでいい感じになってきたかなと思います。

――失策から先制点を取られてしまいましたが、その時内野、チームの雰囲気はいかがでしたか

(点の)取られ方は良くありませんでしたが、そこまで下がることなく攻撃にいけたと思います。

――石井選手ご自身は先日の東京六大学オールスター戦、そしてきょうも長打を放ちました。徐々に調子が上がってきているという実感はありますか

自分としてはあまり実感はありませんが、たまたまヒットゾーンに(打球が)行ってくれているので、確実にそういう打球を増やせていければいいかなと思ってます。

――きょうはいつもとは違うナゴヤドームでの一戦。そして、髙橋監督が最も意識する慶大との特別な試合でしたが、試合前はどのような話がありましたか

たくさんの応援してくれる方に来ていただいていますし、ワセダらしい野球をしていこうということで(試合に)臨みました。

――8回の好機ではスタンドから大きな歓声が上がっていましたが、そこはいつもの神宮球場と違うものがありましたか

ドームだったのでとても音が響いていて、すごく後押しされました。

――夏季オープン戦、そして今回の遠征と立て続けに試合を行っていますが、体調面での調子はいかがですか

リーグ戦中もこのような疲れの中でやるので、この疲れを次に生かせるように、自己管理が課題だと思うのでそこをしっかりとこれからもやっていきたいですね。

――秋季リーグ戦までまだオール早慶戦、夏季オープン戦が続きますが、そこでの目標を教えてください

一試合一試合、自分の納得いくようなバッティングや試合運びができるように、自分自身もそうですがチーム全体としてリーグ戦にいい流れで入れるように、しっかりとこなしていきたいです。

中澤彰太(スポ3=静岡)

――5回裏に好守がありましたが、あの場面を振り返っていかがでしたか

1点差だったら(捕りに行こう)というのがあり、捕りたいなと思っていたので、(グラブに)入って良かったです。

――打撃面では、4回の好機の場面で四球を選ばれましたが

1球ファウルにしましたが、あの球を一発で仕留められていたら展開も変わっていたと思うので、リーグ戦までにそういうところは突き詰めていきたいです。

――四国、名古屋、東京、福井と遠征が続きますが、疲れなどはありますか

いや、自分は疲れるタイプの人間ではないので(笑)。そこは大丈夫です。

――この遠征で得られたものはありますか

(東京六大学)オールスター中に、他の大学の選手を見ていてつかんだものもあったので、それを東京に帰ってからも試しながらリーグ戦で出していきたいです。

――リーグ戦開幕まで2週間ほどとなりましたが、意気込みをお願いします

春のリーグ戦みたいに秋はうまくは行かないと思うので、きょうみたいな(ロースコアの)試合展開でも勝ち切れるようにしていきたいです。

小島和哉(スポ1=埼玉・浦和学院)

――初の東京六大学オールスター、オール早慶野球戦を振り返って

初めての経験だったので、応援も思っていた以上にすごく多くて緊張しました。

――普段と違う雰囲気の中での試合だったと思いますが、その雰囲気は楽しめましたか

そうですね。1イニングだけでしたが自分の持っているものを出し切れたと思います。

――他大の選手やOBとの合同チームでしたが刺激を受ける部分はありましたか

社会人の人の中に混ざって試合ができて、レベルの高さを感じましたし、考え方をいろいろと教えていただくこともできて勉強になりました。

――きょうは相手クリーンアップを三者凡退に抑える好投でしたが、きょう投球を振り返って

真っ直ぐがあまり走っていなかったので、変化球が多かったのですが、その中でつかめた部分がいろいろとあったので、それを生かして秋のリーグ戦に臨めたらと思います。