【連載】早慶戦直前特集『Strikin’ Back』 第8回 大竹耕太郎

野球

 ここまでのワセダの快進撃を語るには大竹耕太郎(スポ2=熊本・済々黌)の活躍は欠かせないだろう。第1先発としてチーム最多の3勝を挙げ、防御率も現段階でリーグトップの1.08と抜群の安定感を見せつけている。今回はそんな快投を続ける大竹に今季の好調の秘訣(ひけつ)と早慶戦に対する思いを聞いた。

※この取材は5月20日に行われたものです。

「昨年の経験が自信に繋がっている」

投手陣の柱として大きく成長した大竹

――今季ここまでを振り返っていかがですか

 自分が思っていた以上にしっかりと役割を果たせているのかなと思います。

――ご自身の満足のいく投球はできていますか

 そうですね。しかし明大戦は勝ち投手になれなかったりとか、詰めが甘いところが多く見られるので、早慶戦では最後まで投げ抜きたいと思っています。

――開幕前にはチームの優勝のために頑張りたいとおっしゃっていました

 均衡している試合の中でしっかりと試合を壊さずに粘って投げられているということに関しては貢献できているかなと思います。

――ここまで3勝という数字には満足していますか

 全大学から1勝ずつというのは目標としてやってきたので。勝ちはつかなかったんですけど貢献度から言えば申し分ないかなと。

――防御率は1.08と好調です

 低めに丁寧に投げているのが良い結果として出ているかなと思います。

――好調維持の秘訣(ひけつ)は何でしょうか

 お金を出し惜しまずしっかりとケアに行くようにしていることだと思います。

――きょねんの悔しさも原動力になっているのでは

 今季はきょねんの経験が大きく生きているかなと。心の余裕であったり、打者も同じ打者がたくさんいるので、そういう意味ではきょねん9試合投げたという経験が自信にもつながっています。

――きょねんの自分に比べて成長したと思う点はどこですか

 打者の特徴をよりつかめるようになったところです。バットの振り方とかを見てこのコースや球は弱そうとかいうのを考えながら、それが当たっています。

――私生活から気を付けているともおっしゃっていましたが

 部屋の掃除をしっかりとしたりとかですね。このくらいでいいやっていう気持ちが投球において甘い球を甘いところに投げてしまったりというところに出てしまうので、日ごろから何事にも妥協をしないように、掃除を隅々までしたりとかそういうところを気を付けたりしています。

――気を付け始めたのはいつごろからですか

 もともと高校時代からそういう習慣はあったんですけど、若干ルーズになっていたので、シーズンが始まるにあたってそこはもう一度見直そうと思って始めました。

――エースとしての自覚は芽生えてきましたか

 そうですね。以前だったらただ寝ているだけとか遊びに行ったりもしていたんですけど、そういうことはせずにオフの日もしっかりトレーニングなどに時間をあてるようになったので、自覚が出てきたのかなと思います。

――第1先発として投げる責任感や重圧は感じますか

 周りからの期待とか大きいのも分かっています。しかしそれは高校時代から慣れていたものではあるので、あまりプレッシャーとかそういうものとは捉えないようにポジティブにやっています。

――ここまですべて長いイニングでの投球ですが

 今季はすべて完投を目標にやっているので。昨季は先発するというのを目標にやっていたんですけど、目標のレベルがどんどん上がってきていて、次は完封を目指してやりたいと思っています。

――完投の意義はどのようなところにあると感じていますか

 大学は1試合勝てばいいという試合ではないので、そのうしろの試合に楽に回すためにも自分ができるだけ長いイニングを投げてうしろの投手に疲れを残さないことが大事かなと感じてやっています。

――終盤疲れることもあると思いますが

 自分が投げる日は気温が低い日が多くてそういう意味でもついてるかなと思います。

――スタミナには自信がありますか

 高校のときはひとりで10試合連続とかで投げていたので。時期も時期で真夏ではないので、そういう意味では疲れは出ますが極端な疲れは出ないです。

――冬場の投げ込みの成果でもあるのでは

 そうですね。今まで以上に投げ込みに重点を置いてやってきたので、フォームが崩れたりとかは以前はあったんですが、そういうものがまったくなく最終戦まで来ているので、いいことかなと思います。

――スタミナをつける具体的な練習はどのようなことをされていますか

 やはり走ることは欠かさずにやっています。全体練習が終わってからもひとりでダッシュであったり、長距離走であったりはやるようにしました。

――体重も増えましたね

 キャンプ中も投手コーチの監視下に置かれて、いやってほど食べさせられていて。日ごろから4食くらいは食べるようにしているのでそういうところが出たかなと思います。

――マウンドを譲りたくないという気持ちも出てきたのではないでしょうか

 ここ2試合もそうなんですけど、最後の最後で打たれてしまうっていうケースが続いているので。そこはやはり詰めの甘さだと思うので、9回でも三者凡退で終わるように9回までしっかりと気持ちを切らさずにやりたいです。

――1点差などの緊迫した試合で投げる心理とはどのようなものですか

 5対0とかのような楽な試合とは違って、投げながら緊張感もあるんですけど、そういう試合で勝てるのが1戦目を投げる投手だと思うので。オープン戦からそういう均衡したロースコアの試合を意識してやってきました。

――髙橋広監督(昭52教卒=愛媛・西条)からの信頼も厚くなってきていると思いますが、試合前に何かお話をされたりはしますか

 前の監督はあったんですけど、いまの監督はブルペンに見に来ることがまったくなくて、ほとんど自分と捕手に任せるような感じです。試合中に多少の助言であったり、そういうものはありますけど、あまり干渉はされないです。

――開幕前には走者を置いた場面での投球に注目して欲しいとおっしゃっていました

 今季は打たれていますが、明治戦は走者一塁の場面で打者に集中して投げることができていたと思います。立教戦で本塁打を打たれたような投球が自分の短所であると思うので、そういうところを早慶戦では気を付けてやりたいと思います。

――ここまで緩い球が有効的な印象ですが、決め球は何なのですか

 その日の調子によって決め球も変えていってるので、これというのは言えないんですけど、どの球種でも決め球に成り得るというのがいまの現状です。そういう意味では調子の良し悪し、その日その日で良い球種と悪い球種があるので、そういうのを見極めながらやっています。

――そういう意味でも道端俊輔選手(スポ4=智弁和歌山)のリードも好投の要因なのでは

 人が変わったように今季からすごい捕手になったと思います。試合前からしっかりと話すというか、作戦を立てるというか。どういう攻め方をするという打ち合わせはしているので。私生活から仲がいいというのも生きているかなと思います。寮も一緒ですし、投手陣みんな仲良いので、そういうところがいいところなのかなと。

――同じ左腕の小島和哉選手(スポ1=埼玉・浦和学院)はどのような存在ですか

 個人的には同じ左ですし、刺激し合えるというか。良い意味でライバル心を持ってやれているので、自分には必要不可欠な存在だと思います。チームにとっても立大戦の引き分けであったりとか、あそこで投げていなかったらもしかしたら負けていたかもしれないのでそういう意味では1年生なんですけどすごいなと思います。

低めに投げる意識

エースとしての座を確かなものとした

――立大1回戦では9回2失点で初めての完投勝利でした

 9回を投げ抜いたことは大学に来てからなくて、多少は不安があったんですけど、うしろに良い投手がいっぱいいるので、そういう意味では投げやすかったです。打たれても次に抑えることのできる投手がいるという心の持ちようが完投につながったかなと思います。

――ご自身の逆転本塁打を振り返って

 芯で捉えたんですけど、まさか入るとは思いませんでした。

――打った相手が澤田圭佑選手だったので喜びも大きかったのでは

 高校のときに本塁打を打たれて負けてしまっていたので、そういう意味では個人的な思いにはなるんですけど、リベンジできたかなと思います。

――この試合からいい流れができたのでは

 均衡した試合をやればやるほどチームとして成長すると思うので。明治は3試合ともそうですけど、そういう試合をやっていく中で選手として成長していけるかなと感じています。

――法大1回戦でも完投勝利を挙げました

 東大戦からどの試合でも低めに投げることだけを意識しているので、それを継続してやれたことの結果かなと思います。

――初めての敗戦を喫した明大1回戦はやはり悔しさなどはありましたか

 そうですね。同点に追いついてもらった直後だったので、やはり気持ちの甘さが出たかなと思います。それを意識して3回戦では投げました。

――打線の援護がない中でのもどかしさなどはありますか

 自分が投げたここ2試合はなかなか(打線が)点を取ってくれなかったんですけど、本来こういうものだと思っていたので。ここまでうまくできすぎているなとは感じてしましたし、高校のときも打線が良いチームではなくて0対0で続くような試合が多かったんですけど、そこで気持ちを切らさずに。守備の時間を短くして攻撃にいいテンポで繋げてあげるというのが役割だと思うので、そういったところは意識しています。

――明大3回戦では勝ちこそはつきませんでしたが、9回途中1失点の好投でした

 自分としてもやはり疲れていましたし、5回くらい持てばいいかなと思ったんですけど、楽に軽く投げたことでより自分の良さが出たかなと思います。今後それくらい楽に投げることができれば2試合目になっても楽に疲れがない状態で投げられると思うので、慶應戦でも3回戦でやったような投球を意識してやりたいと思います。

――新たな投球スタイルが見つかったということですか

 はい、そうですね。

――明大戦は2試合とも勝利投手になりそうでなれない試合でしたが、チームを勝たせることのできなかった悔しさはありますか

 監督もよく最後に勝っていればいいとおっしゃるんですが、個人的な勝利がつくとかつかないとかはあまりどうでもいいことです。初戦に関しては結果的に負けてしまったので、そういうところではやはり責任は感じていますし、逆に3回戦は最後にああやって勝てたので良かったと思います。

――事前のアンケートには打撃に注目して欲しいと書いてありましたが、打撃は好きですか

 そうですね、好きです。

――ここまでのご自身の打撃を振り返って

 やはり序盤は投手ということで簡単に投げてこられたので、打つのが簡単だったんですけど、法政戦くらいから普通の打者と同じように投げられたのでなかなか打てなくなってます。そういう中でも明治戦で1本ヒットを打てたので、それくらい粘り強く逆方向に打てればいいかなと思います。

――打席ではどのようなことを考えていますか

 まずはケガをしたくないので、死球だけには常に気を付けています。

――その前のネクストバッターズサークルではどのようなことを考えていますか

 次の打席回ってくることを想定して、この打者が三振だったらとか、送りバントで送れたらとかそういうことや、次の状況を考えて配球とかを考えたりしています。

――打撃やバントの練習はされていますか

 リーグ戦直前から期間中は投手でも打撃練習に入るので、そこでバントも打撃もやっています。

「1勝勝ち取って優勝したい」

――優勝まであと1勝、やはり意識はしますか

 監督がよく目の前の一戦を勝ち取ること、『一戦一勝』とおっしゃっているんですけど、やはりそうはいえどもさすがに意識はするので、初戦でどうにか勝ちたいという気持ちはありますね。

――やはりご自身の手で優勝を決めたいですか

 そうですね。

――チームの雰囲気はいかがですか

 雰囲気としては新チーム発足以来とても良い雰囲気で継続してやれていると思うので、その今のチームの雰囲気に監督さんの性格であったり方針であったりがうまく合致しているかなという印象です。

――対戦するときに気を付けたい打者は誰ですか

 やはり3番(横尾俊建主将)と4番(谷田成吾)の2人ですね。

――過去の早慶戦を振り返って

 3試合投げたんですけど、どの試合も自分の本来の投球ができていなくて。今季は大丈夫という自信もあるので、自分の長所を生かした投球をしたいと思います。

――きょねんの早慶2回戦では涙も見られました

 きょねんは体力もなくてけっこう満身創痍で投げていて。2戦連続の先発だったので打たれても仕方がないという甘い気持ちがあって、ことしはやはりそういうものは抜きに、どういう状況であっても疲労があっても、点を与えない投球をしたいです。

――早慶戦に対しては強い気持ちがあるのでは

 やはり早慶戦に憧れて入学してきたので、やはりその早慶戦という1戦に強い気持ちはもちろんあります。

――ご自身にとって早慶戦とは

 リーグ戦の醍醐味ですかね。注目も集めるので、そういうなかで自分の力を発表する場だと思います。

――早慶戦で注目して欲しいところはありますか

 普段通りに緊張せずに投げているところに注目して欲しいです。

――慶應打線に苦手意識などはありますか

 あまりここの大学の打線が苦手とかそういうのはないです。

――投げ合うことが予想される加藤拓也投手と三宮舜投手の印象は

 ふたりは正反対のタイプの投手で、なかなか打つのは難しいだろうなと思います。

――いまの自分の投球であれば抑えられるという自信はありますか

 大観衆の中でも自分を見失わずに、低めを丁寧につくことができればそんなに大崩れすることはないかなと思います。

――最優秀防御率、最多勝のタイトルは意識していますか

 あまり意識はしていないです。とりあえずチームが勝てればいいので。その結果としてそういうものがついてくる分には嬉しいですけど、それを狙いにいくとかそういう考えはないです。

――最後に早慶戦に向けての意気込みをお願いします

 きょねんの春と秋、連続で優勝決定戦で落としてしまっているので、どうしてでもこの春は1勝勝ち取って優勝したいです。

――ありがとうございました!

(取材・編集 芝原健輔)

◆大竹耕太郎(おおたけ・こうたろう)

1995年(平7)6月29日生まれ。182センチ。77キロ。熊本・済々黌高出身。スポーツ科学部2年。サインを書く前に練習するための紙を取りに行った大竹選手は、練習用紙と共にケーキとジュースを持ってきてくださいました。ジュースは地元である熊本県から箱で送られてきたという熊本産のみかんジュース。好調の裏側には大好きな地元パワーもあるのかもしれません!