【連載】早慶戦直前特集『Strikin’ Back』 第2回 川原孝太

野球

 今シーズンの東京六大学リーグ戦(リーグ戦)、8番打者としてスタメンに定着した川原孝太(文構4=静岡・掛川西)。指定校入学から一歩ずつ階段を上り、4年目にしてレギュラーの座を獲得した。今回はそんな川原に、今シーズンの戦いぶり、そして早慶戦への思いを伺った。

※この取材は5月20日に行われたものです。

スタメンとして飛躍した今シーズン

今季から定位置をつかんだ川原

――きょうは練習をされていたのでしょうか

朝8時から練習して、3限に出て、というところですね。

――どのような練習を

ランメニューを一番最初にして、バッティングと全体で守備練習をしました。

――チーム状況はいかがですか

勢いというか、チームの雰囲気はすごく良い感じなので、この勢いのまま早慶戦に入れたらなと思います。

――雰囲気の良さを練習から感じることは

練習からというよりかは、練習はいつも通りで、どっちかというといままでやってきたことをやるという感じです。

――それではリーグ戦を振り返っていただきます。東大1回戦では開幕スタメンを逃すことになってしまいました

個人どうこうというよりチームのことを第一に考えていたので、外れたからといって気持ち的に変わることはそこまでなかったです。

――知ったのはいつごろだったのでしょうか

直前でした。

――2回戦ではスタメンでした

自分のやれることはやりたいなという気持ちと、せっかく使ってもらえるので思いっ切りやりたいという気持ちでした。

――立大1回戦では、ご自身の安打から大竹耕太郎選手(スポ2=熊本・済々黌)の本塁打で逆転しましたね

最初自分も送りバントかなとは思っていたのですが、バスターというかたちで監督(髙橋広監督、昭52教卒=愛媛・西条)がサインを出して、ああいう打球になったので(笑)。結果として点が入ったので良かったと思います。

――塁上ではいい当たりだとは分かったと思うのですが、入るとは思いましたか

入るとは思わなかったですね。それなりに大きい当たりだったのでタッチアップかな、とは思ったのですけれど、入ってしまいました(笑)。

――立大との3試合では合計5安打の固め打ちでした

投手どうこうというよりも、自分のタイミングで入れたかなという気持ちがあるので、自分の中ではいいかたちでできたかなと思います。

――法大1回戦では2打点、いい場面で打つことができたと思います

チャンスで回ってくる場面が多かったです。法政も勢いがあって、下位打線で点数が取れればチームとしても大きいなという気持ちはあったので、自分の中でもいるランナーをかたちはどうあれ自分でかえせたらという気持ちでいました。

――法大相手に2連勝できたのは大きかったのでは

相手がどこだから特別こう、というものではなくて、いままでやってきたことをやれば大丈夫だろうという雰囲気がチームにあったので。その雰囲気で法政戦に入れたのが良かったと思います。

――明大1回戦で初黒星を喫してしまいましたが、チームとして切り替えはうまくできましたか

最初は負けという事実で一瞬沈むこともありましたが、たかが1回負けただけというふうに考えて、その後ちゃんと目の前の試合という感じですぐに切り替えられたので、そこは良かったです。

――そこから2連勝で勝ち点を4まで伸ばしました

最終的に勝ち点を取れたので、目の前の一戦を戦えて良かったです。

――明大戦ではなかなか安打が出ず、苦しかったのでは

そうですね。完璧に配球というか、キャッチャーにやられたかなという感じはありますね。

――そこまでのカードと比べて配球も違ったのでしょうか

自分の中で打ちにいってしまっていたということもあるのかもしれないですけど、配球どうこうというよりかは自分の調子もあるのかなと思います。配球も他のキャッチャーと違って、他の大学と比べて坂本(誠志郎、明大)はいいリードをするなと思いました。

――狙い球をはずされた、ということですか

狙い球をはずされたというのもありますし、若いカウントから甘く入ってきたボールをとらえられなかったということもあります。

――2戦目ではプロ注目の上原健太投手(明大)との対戦でした

変にそういうことは考えないようにしていたのですが、自分の結果もあるといえばありますが、上位や他のみんなが打ってくれたので助かりました。

――データを見ると、対左が0割と苦しんでいる印象があります

左から結果として打てていないので。でも自分の中ではそこまで左が嫌いはないのですが、結果としてでているので何も言えないですけど(笑)。

――慶大戦では左投手との対戦が予想されます

とりあえず打つしかないと思っているので(笑)。どの投手だろうと安打を打ちたいですし、結果どうこうというよりかは自分のスイングをしていけたらと思います。

打席での意識

――以前お話を伺った際に、打席ではタイミングだけを意識しているとおっしゃっていました。それはリーグ戦でも変わることはないですか

それは変わらないですね。

――そこを一番意識する理由というのは

自分の中でタイミング良く入れないと、打ちにいったり、ボールに差されたりという感じになってしまって。自分のスイングをするという意味で考えると、自分のタイミングというか、投手の間合いにうまく合わせて打ちにいかないと、合わないと振りにいけないです。初球から甘いボールを思い切って振りにいくということを考えると、タイミングをしっかり取れていないと、どっちにしろうまく対応できていけるバッターではないと思うので、甘いボールをしっかり捉えるという上で、タイミングは大事にしています。

――明大戦ではそれがうまくいかなかったと

そうですね。タイミングと、あとは打ちにいく時の軸がぶれているなというのは感じました。

――その修正というのはどのようにやっているのでしょうか

試合期間中は試合が終わってこっち(東伏見)に帰ってから、(ボールを)投げてもらって、それを打ったりだとか、ティーとかで軸を確認していたのですが、それが修正できなかったというところですね。

――印象に残っている打席などはありますか

法政戦の得点できた2打席は印象に残っていますね。

――狙い通りという感じですか

1本目の中前打は狙い通りという感じがしますが、2点目のファーストの処理のミスの間に、というのも狙い通りではないですけれど、得点できたのは良かったと思います。

――現在は左翼手としての出場が続いています。もし昨年の秋に外野の練習をしていなかったら、と思うことはあるのでしょうか

外野をやらないとしたら一塁か二塁だったと考えると、丸子(達也、スポ4=広島・広陵)もすごい結果を出しているというのもあるので。最終的に自分の決断というか意志と、監督がどっちにしろ替わるので自分たちの代の学生コーチと相談してという感じだったので、結果としていま試合に出れているというのはすごい良かったと思います。

――無失策と守備も無難にこなしている印象です

でも2回危ないプレーをしているので(笑)。結果としてアウトになっているのはいいのですが、投手もヒヤッとすると思うので、もう少ししっかりできたらなと思います。

――タッチアップからのバックホームで走者を刺すプレーもありました

そうですね。風もうまいことボールが戻って、いい感じに入れたので。それ以上に遊撃手の石井(一成、スポ3=栃木・作新学院)に頭の位置につなぐというのは練習からやっていたことではあったので、それがちゃんとできたかなと思います。

――守備で参考にしている選手はいますか

中澤(彰太、スポ3=静岡)がすごいうまいので、中澤にいろいろ聞いたりしてやっています。

――打撃でも参考にする選手はいるのでしょうか

なるべく自分で考えてやっていかないと自分の中で修正できないと思うのでなるべく考えるようにはしていますが、聞くのであったら同じ右の道端(俊輔、スポ4=智弁和歌山)だったり、左でも茂木(栄五郎、文構4=神奈川・桐蔭学園)、あと自分は自主練習で一つ下の学生コーチの吉野亨(スポ3=埼玉・早大本庄)というやつに練習に付き合ってもらっているので、自分のスイングがどんな感じなのかは聞いたりしています。

――アンケートでは思い切り良くプレーができていると書いていただきました。それは常に意識していることなのでしょうか

明大戦はあんな感じだったのですが、迷って中途半端なプレーをしていたら自分の中で不満が残るというかすっきりしないですし、他の周りで出ている選手に微妙かなと思われてしまうので、元気良くやるようにしています。

――チームは打線が好調です。要因としては何が考えられますか

打撃練習ではみんな基本的に逆方向への強い当たりをしていて、監督も常におっしゃっているので、それがいい方向に出ているなと思います。

――開幕前の状況からこの好調さは予想できましたか

いや、オープン戦の段階では全然打てない感じが続いてたので、うまくいきすぎているという感じはします(笑)。

――その中でチームとしてはどのような野球を目指しているのでしょうか

最終的に1点勝つというところで、守備であったら無駄な点を与えないとか、打撃ならどんなかたちであれ1点取るという考えでみんなやっていると思うので。大差で勝つ試合もあったりはしますが、最終的にミスがあろうとなかろうと1点勝っていればいいと思っています。

――チームのイニング別得点を見ると、終盤での得点が多いですね

例えリードしていても負けていても、終盤で粘れています。終盤に強いかは分からないですけど、例え負けていても最後まで諦めずにみんなできているので、それがあのような得点劇につながっていると思います。

――野手から見て投手陣はいかがですか

先発投手がすごい頑張ってくれているのと、中継ぎで投げてくれている小島(和哉、スポ1=埼玉・浦和学院)だったり吉野(和也、社3=新潟・日本文理)だったり、自分たちからしたら下の学年の投手がすごい頑張ってくれていて。野手は逆に4年生が多いので、そういうところで投手が頑張っているから野手も頑張ろうという気持ちもすごく強いです。

――道端選手や丸子選手など、同じ4年生でレギュラーを取った選手たちの活躍はどう思っていますか

いままでチャンスがなかったというだけで力は持っている選手たちですが、リーグ戦にスタメンで出るのが初めてなのにシーズン通して結果出しているのはすごいと思います。

――その二人と3人で初レギュラーとしてやってやろうという意識はありましたか

そこまでないかなという感じですけど(笑)、でもいままで出ていなかった選手が活躍できたらそれは良い意味で計算外というのもあると思うので、チームとしても絶対プラスなので、出ていなかった三人が頑張れたらなと思います。

「必ずケイオーに勝ち点を取る」

初めてスタメンとして伝統の一戦を迎える

――早慶戦では1勝すれば優勝が決まります

いままで4大学に勝ち点を取ってきて1勝で優勝が決まるとしても、ケイオーに勝ち点を落としたら意味がないですし、自分たちからしてもケイオーは特別な存在というか絶対に勝ち点を取らなければいけない相手だと思っているので。1勝して優勝できればいいという話ではなくて、目の前の1試合ということもあるのですが、絶対に勝ち点を取りたいと思います。

――1年時にも優勝していますが、その時はどのようなお気持ちでしたか

チームが優勝するというのはサポートする自分たちからしてもうれしいという気持ちでしたが、その時は補助が中心だったので、関わりは同じチームということですが、それでもうれしかったです。

――今回は川原選手自身も中心選手となっていて、状況が違うと思います

絡んでくるとそれなりに思うところもありますし、(試合に)出ている出ていないというのは別にして、自分が最終学年で優勝するというのはすごくうれしいのではないかと思います。

――優勝したいという気持ちも強いのでは

気持ち的にはその気持ちは強いですね。

――前回のお話の最後で、岡田稔基学生コーチ(スポ4=埼玉・川越東)や岩間貴弘主務(法4=東京都市大付)のためにも、というお話もありましたが、その気持ちもやはり強いですか

そうですね。やはりサポートしてくれているというか、岡田や岩間もそうですし、自分たちメンバーが練習できるのも普段メンバー外が練習を手伝ってくれたりだとか、いまのリーグ戦でもボールボーイも自分たち4年生の学年が率先してやってくれているので。自分たち出ている選手だけでやっているわけではないので、そういう人たちのためにも今シーズンにちゃんと優勝したいです。

――慶大投手陣の印象は

加藤は力で押してくるのと、それ以外の投手だと加嶋(宏毅)、三宮(舜)は技巧派という感じがするので、誰が先発してくるかは分からないですけど、ケイオーも立教に2連勝して勢いはありますし、2連勝したら自分たちも優勝が残るということで気合は入っていると思うので、受けて立つというよりかは自分たちが攻めていくという気持ちでやりたいと思います。

――慶大のエースとして登板が予想される加藤拓也投手の速球にはどのように対策しますか

まっすぐ中心になると思うのですが、そこで振り負けたら意味がないとは思います。かといって大振りするのではなくて、自分のスイングでスピードに振り負けずにいけたらなと思います。

――春の早慶戦はサークルの新歓もあって、大勢の観客が集まります

いままでリーグ戦に出れているので変に緊張しないとは思うのですが、やってみないと分からないですね(笑)。でも左翼手でスタメンで出るとしたら、相手チームの応援が近いので、それなりに勢いというか応援の圧がかかるのかなと思います。

――左翼手ということで三塁側に相手の応援団があると気になりますか

いや、他の大学だと内野席の応援だけなので、三塁側というよりは自分の正面の一塁側にあった方が音の圧が大きいですね。

――三塁側より一塁側の方が気になるのですね

特にチャンスになると勢いがあるので。でも早慶戦になると外野席にも応援があるので、そうなるとまた話は別なのかなと(笑)。自分の後ろに応援席があるので。

――その中でも相手や観衆は気にせずに、自分のプレーを貫くということでしょうか

そうですね。とにかくプレーには集中してやりたいです。

――早慶戦ではどのようなプレーを見せたいですか

うーん…。いままで通りですかね(笑)。何か特別なことをしたいということはあまりないので、守備では取れるアウトをしっかり取って、打撃では犠打などの小技系もしっかりやっていきたいです。

――慶大の打線で注意したい点は

中軸の3人ですね。横尾(俊建)、谷田(成吾)、沓掛(祥和)の三人と、あとは梅野(魁土)、山本(泰寛)もいい仕事をしているので、注意する打者は多いかなと思います。

――早慶戦に対して特別な思いはありますか

自分がワセダということで、ケイオーに対する意識も強いというか、伝統的なものなので、そこで負けると意味がないというか、早慶戦で負けたら悔いが残るので、どの大学にもそのような意識で臨んでいますが、その意識はより強いと思います。

――早慶戦への意気込みをお願いします

優勝がどうこうというよりも必ずケイオーに勝ち点を取るという意識で、一戦必勝で頑張っていきたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 角田望)

◆川原孝太(かわはら・こうた)

1993年(平5)9月17日生まれのO型。身長180センチ、体重72キロ。静岡・掛川西高出身。文化構想学部4年。外野手。右投右打。左翼手の守備位置からは、相手の応援は三塁側ではなく一塁側の方が気になると語った川原選手。自分との距離の近さではなく、目線に入るという理由からでした。早慶戦では相手スタンドを沈黙させるような活躍を期待したいです!