【連載】『NEW ERA』 第1回 大竹耕太郎×北濱竣介×柳澤一輝

野球

 絶対的エース有原航平(スポ4=広島・広陵)が抜けた穴を埋めるには、この男たちの活躍が不可欠だ。秋季リーグ戦で第一先発として大車輪の働きを見せた大竹耕太郎(スポ1=熊本・済々黌)、指定校推薦入学ながら神宮球場での登板機会を得た北濱竣介(人1=石川・金沢桜丘)、守護神候補に躍り出た最速150キロ右腕・柳澤一輝(スポ1=広島・広陵)。プライベートでも仲の良いルーキートリオにことしの振り返り、日頃の生活について語っていただいた。

※この取材は12月20日に行われたものです。

激動のルーキーイヤー

1年生ながら先発として活躍した大竹

――まず、入学してからここまでどんな一年間でしたか

柳澤 ことし一年間を振り返って、春は自分の実力不足で(ベンチに)入れなくて悔しい思いをして、その分夏に結果を出して秋に入れました。でも入れたのですが、秋もなんだかんだ結果自体は出ずにそのまま終わってしまいました。この冬課題がいっぱい見つかったので来年の春はその課題を克服して、春にいい成績を残せるようにやっていきたいなと思います。

大竹 熊本という田舎の方から出てきたので、こちらの環境に慣れるということに時間がかかって、最初は野球だけではない厳しい面が多くあったので、朝早く起きるなどといったことに慣れるということに精一杯で練習についていくのがやっとでした。そしてその流れで春はほとんど試合にも出られずに、早慶戦だけ少し投げたのですが、そこでも思うように投げられなくて。夏から野球に集中して取り組めるようになったので、それが秋にいいかたちに出たのかなと思います。最後ああいうかたちで負けてしまったのは少なからず自分のせいなので、それを忘れずに自覚を持って次の春に臨んでいきたいなと思います。

北濱 自分は柳澤や大竹とは違ってスポーツ推薦ではなく指定校推薦で入学したので、正直一年目からベンチに入れるとは全く考えてもいなくて、そういう面では一年目から数試合ですが秋に使ってもらったことは本当に感謝しています。そして、使ってもらったのはいいのですが、そこで結果が残せなかったというのは自分が一番悔しいと思っていることですね。次の春は下の学年もいい選手がいっぱい入ってきて競争率が高くなると思うのですが、そういった中でもちゃんと結果を出してベンチ入りをして、なおかつ試合でも結果を出せるように冬のトレーニングをしっかりとしたいと思います。

――大竹選手は春季リーグ戦、北濱選手、柳澤選手は秋季リーグ戦に初登板されましたが、初登板の時を振り返っていかがですか

柳澤 自分はいつも通りの感じで普通にマウンドに行って普通に投げられたので、そこまで緊張感はなかったですね。いつも通りのピッチングをすれば抑えられるだろうと思っていたので。そこは、最初はちょっとできなかったのですが、(法大)2回戦はしっかりそういうところができたので抑えられたのかなと思います。

大竹 自分は優勝の懸かった満員の早慶戦で、1アウト満塁から登板して、あまり緊張するような性格でもないのですが、さすがに思うように球が行かなくてそういう意味でとても緊張しましたし、それに加えてそういう場面で投げさせてもらえるということでそれだけ信頼されているんだなと感じた試合でもありました。

北濱 自分も初登板は2アウト満塁というとこから投げたのですが、それほど緊張しなかったと思います。そのおかげもあって初登板はしっかりと抑えることができたのでそれは良かったと思います。

――三選手ともあまり緊張はしないとのことですが、試合前に緊張をほぐすようなことはせずそのまま自然体で入れるということでしょうか

大竹 そうですね。試合前にいろいろルーティンがあるので、それをこなせば大丈夫だなという自信につながります。

――試合前のルーティンとはどんなものですか

大竹 まずは起床時間も大体決まっていて、試合前に絶対うどんを食べるんですけどそれはネギ多めで、それを食べてトレーナーの人にストレッチをしてもらって、ポール間を何本走るというのも決めて、球数も大体試合前にこのぐらい投げるというのも決めているので、それをしっかりこなしています。

――北濱選手、柳澤選手は試合前のルーティンはありますか

北濱 自分は早く寝ることぐらいです(笑)。起きてからはそんなに…。自分は(ルーティンが)できなかった時に「あーできなかったから駄目だな」と考えるのが嫌なので、そういうのはあまり考えないようにしています。

柳澤 寝る前に自分の好きな曲を聴くぐらいですかね。

――入学前から早慶戦が盛んだということは知っていましたか

大竹・北濱・柳澤 はい。

――大竹選手は満員の早慶戦で実際に投げてみていかがでしたか

大竹 甲子園にも独特の雰囲気があるのですが、それとは違った雰囲気があります。なかなか言葉では表現できないのですが、春も秋も楽しみながら投げることができました。

――柳澤選手、北濱選手は見ていていかがでしたか

柳澤 早く投げたいという気持ちでいっぱいでしたね。ケガをしていて入れなかったという部分もあるのですが、大竹も同じスポ推(スポーツ推薦入学)で、その中でも春に最初に活躍していて、絶対に負けられないなと思いました。

――一年生の投手でベンチ入りしたのはこの三選手ですが、お互いに意識はしますか

大竹 そうですね。互いに高め合ってという意識でやっています。それぞれピッチングが違うので。

柳澤 タイプが違いますね。

大竹 (柳澤選手は)速球でバンバン押して、自分は全く別で速球というよりは変化球で、(北濱選手は)両方兼ね備えた感じで、球も結構速いので。

北濱 変なところから投げるので(笑)。

――北濱選手は早慶戦を見ていていかがでしたか

北濱 春は、自分は寮で電話当番をしていてテレビで見ていたのですが、優勝が懸かっていたので大竹が出てきたときには「頼むから抑えてくれ」という感じでずっと電話当番のみんなでテレビの前で願っていたという思い出があります。秋の早慶戦も優勝が懸かっていたのですが、3回戦は4年生がみんな入って、公亮さん(安達、スポ4=埼玉・早大本庄)であったり鈴木健介さん(教4=東京・早実)であったりが出て抑えていたのを見て、やっぱり4年生というのは違うんだなということを感じました。

――大竹選手は秋季リーグ戦で9試合登板して4勝2敗という成績でした。ご自身の評価としてはいかがですか

大竹 春が終わった時点で、秋は先発をできるくらいの投手になるということを目標に夏は取り組んでいたので、そういった意味では開幕から最後までどうにか先発として試合に出させていただいたということは個人的には評価できるところです。試合の期間というのは長いのですが(約2ヵ月)、その中でケガすることなく投げ続けられたということは評価できるかなと思うんですけど、その中で調子を維持することは難しくて、明大戦であったり最後の早慶戦であったり、自分の思うようなピッチングができなかったので、そういう感じだと有原さん(航平、スポ4=広島・広陵)のような絶対的なピッチャーとは言えないので、今後は投げたら勝てるとチームメートからも思われるようなピッチャーになりたいと思います。

――柳澤選手は法大2回戦で初勝利となりましたが、初勝利の思い出はどんなものですか

柳澤 自分が勝利投手になったということにびっくりしていて、本当は北濱が勝利投手だったと思うんですけど(笑)。自分もしっかりその試合では結果を出せたので、周りの評価をいただけて勝利がついたのかなと思います。

――北濱選手は初勝利を逃すというかたちになっていかがでしたか

北濱 試合が終わった時には、みんなから初勝利おめでとうみたいに言われて、俺が勝利投手なんだなと思っていたので、次の日にインターネットで見たら「あれ、違うじゃん」みたいな感じで、びっくりしたのとがっかりしたのと(笑)。あと、試合が終わってからファンの人に紙に初勝利と書かされて、サインくださいと言われて、サインをしたんですよ。それで「やばい、恥ずかしいな」と思いました。

一同 (笑)

――北濱選手、柳澤選手は中継ぎでの起用となりましたが、先発をやりたいという気持ちはありますか

柳澤 はい、ありますね。

北濱 自分は特には。先発タイプではないと自分で思っているので。

――柳澤選手は高校時代に捕手もされていたそうですが、中継ぎではあまり打席も回って来ない中でもっと打席に入りたいという気持ちはありますか

柳澤 1打席に立たせてもらって三振だったので、それがすごく悔しかったので次はもうちょっと立ちたいなと思いましたね(笑)。でもいまのポジション的には抑え、中継ぎなので、打つことよりも投げることに集中したいですね。

――大竹選手は打率1割8分8厘でしたが、打撃に関してはいかがですか

大竹 打つのは高校から嫌いではないので、試合前になればしっかりと練習して、(打つことができれば)自分を助けられると思うので、ホームランを打ちたいです。

――北濱選手は打撃に関しての意識はいかがですか

北濱 確かに大竹の言う通り、自分で打てればチームに貢献できると思うのですが、打てないので…まずバットに当たらないので。そこは練習して、ちょっとでも球数を投げさせたり、少しでも打撃の方でもチームに貢献できるようになれば使ってもらえるだろうし、バントであったり小技とかもしっかり決められるようになれば勝ちが近づいてくると思うし、自分も助けられるので。しっかり練習して、打てないですけど(笑)、ちょっとでも打てるようにしたいです。

早大生としての素顔

あどけない笑顔を見せる北濱

――なぜワセダに進学しようと思ったのですか

柳澤 広陵高校の(中井哲之)監督と進路のことで話す機会があって、その時に監督から「どこに行きたいか」と聞かれたのですが、「監督に任せます」と言って任せていたら、ここに勝手になっていたというか。早稲田大学はすごいところなので行きたいとは思っていたのですが、まさか本当に自分が行けるとは思ってもいなかったので、ちょっとびっくりしましたね。

――広陵高校の先輩には有原投手がいますが、そのこと意識はしましたか

柳澤 まあ、(ワセダには)有原さんや丸子さん(達也、スポ3=広島・広陵)という、広陵の偉大な先輩がいるので、そこに入って自分もどのくらい通用するのかということを試したいという気持ちもありましたね。

――お二人はいかがですか

大竹 高校に入学した当初は野球をそんなに上のレベルでやれるとは思っていなかったので、甲子園に出てから少しずつ考えるようになって。その中でちょっとあまり言いたくないのですが、早慶のどちらかに行こうかなと思っていて、だいぶ悩んだのですがやはりプロ野球選手になりたいということを考えたときに、ワセダのほうが練習もストイックですし、自分を厳しい環境に置いてやるためにもワセダを選びました。

北濱 自分は高校受験のときに、まだ中学生だったのですが、高校の監督の方から「この高校に来ないか」と言われて。その高校に行くと指定校推薦があるのでワセダに入れるということを聞いて、石川県出身なのですが、石川県だと星稜、金沢、遊学館といった(野球の)強いところはいっぱいあるのですが、それらの高校に行くより、大学に進学するということを考えて高校に入学して。そこからはもう、大学名はほぼわからず早稲田大学くらいしか知らなかったので、進路志望調査にとりあえず「早稲田、早稲田、早稲田・・・」と書き続けまして。そうしたら先生が、「お前そんなに早稲田に行きたいのか」という感じで言ってきたので「行きたいです」と言ったら、指定校推薦の枠をもらえるようになりました。

――指定校推薦は評定が絡んできますが、部活との両立は大変ではなかったですか

北濱 大変だったのですが、とりあえず定期テストの点がとれれば評定は高くなるので、頑張って勝ち取りました。

――北濱選手は石川県で有名な選手だったと伺いましたが、夏の地区予選はどのあたりまで勝ち進んだのでしょうか

北濱 ベスト8までいったのですが、それはそこまですごくはないと思います。ただ自分の名前が石川県で有名なのは、中学時代に全国大会に行ったというだけで、それでたぶん有名になっているだけだと思います。

――実際にワセダに入学してみて、イメージの違いなどはありましたか

大竹 自分は思った通りですね。良い意味でも悪い意味でも伝統を大切にするという感じがします。

柳澤 自分もその通りだと思います!(笑)

――みなさんはいま寮で生活をしているのですか

大竹 すぐ近くに民間の寮があって、この前まではそこで三人とも暮らしていました。でも今週から自分はこの野球部の寮に住み始めて。

柳澤 自分もきょうからここ(野球部安部寮)に来たので。

大竹 で、なぜか(北濱選手は)ここではないんですよ(笑)。よく判断基準はわからないのですが。

北濱 まあ、投げてないので(笑)。

――寂しいですか

北濱 まあ、そうですね。

柳澤  絶対嘘だ(笑)。

――同じ寮だった時には、三人で話しもしましたか

北濱 そうですね。三人というより、八木(健太郎、スポ1=東京・早実)も入れて四人でご飯を食べに行ったりしていました。

大竹 基本的に軽井沢合宿のときに一緒だった1年生四人で行動することが多いので。その点で、四人の結束力というのは強いですね。

――以前までの寮では自炊などはしていたのでしょうか

大竹 やらないですね。

北濱 基本、全くやらないです。

大竹 朝晩は料理が出るので。昼は、練習が一日だとコンビニで買うか、授業日だとキャンパスの近くで食べるという感じです。

――大学の授業はいかがですか

北濱 難しいです。人間科学部は必修が多く、大変なことも多いですね。

大竹 自分は、高校に比べれば時間的にも余裕がありますね。高校だと朝早くから7限くらいまであったので。興味があることばかりなのでやりやすくもあります。

柳澤 スポーツ科学部は分かりやすい授業ばかりなので、しっかり集中しながら勉強できますね。

――高校よりも時間があるということですが、勉強との両立はいかがですか

柳澤 自分はいまのところは大丈夫ですね。

大竹・北濱 (うなずく )

――大学の練習については高校の時と比べていかがですか

柳澤 自分のところはこっちの方がすごく楽ですね。

大竹 やはり自分も同じで、高校よりも時間も短いですし、そういった意味では自主性が求められるかなと思いました。

北濱 自分も楽です。

――自主性が求められるということですが、何か自主的にやっていることなどはありますか

北濱 最近はもう冬場なので、筋トレなどをトレーニングルームでやったりしています。

柳澤 シャドー(ピッチング)をしたり、筋トレもそうですけど、空いている時間を見つけたら何か体を動かすようにしていますね。

大竹 自分は走るのが好きなので、一人で青梅街道とかを走っています。

――高校の時にはなかった、ワセダならではの練習はありますか

柳澤 特にないです。普通ですね(笑)。

――オフの日はだいたい何をしているのですか

柳澤 基本、自分は寝ています!寝るのが好きなので。

大竹 自分は買い物に出かけます。アウトレットとかには一人でも行きます!

北濱 自分は、午前中は寝て、午後から授業に行きます。

――部屋に飾っている大事なものはありますか

北濱 高校を卒業する時に、後輩の部員から寄せ書きみたいな色紙をもらったので、それを部屋に飾っています。

大竹 こっち(東京)に出てくるときに、自分も北濱と同じく高校の部員から寄せ書きをもらったので、それは飾っています。

柳澤 自分は、卒業式のときに監督からもらった、監督の名前と『ありがとう』のメッセージが書かれた硬式のボール、そしてそれを入れるケースみたいなのを、しっかり大切に保管して飾っています。

――これから年末年始休みに入りますが、帰省はするのでしょうか

大竹・北濱・柳澤 はい、します。

――帰省したらやりたいことは

柳澤 自分は実家が大阪で、広島、広陵にもあいさつに行くのですが、どちらにも友達がいるので友達と会って遊びたいというのが一番ですね。それから監督たちにもあいさつに行くので、まずはお世話になった方々にあいさつに行くということをやりたいなと思っています。

大竹 自分は、まずは水道水をがぶ飲みしたいです。熊本の取り柄は、水道水が地下水で市販の水よりきれいということで、こっち(東京)で歯磨きするときに口をゆすぐのですら違和感があるので水道水をがぶ飲みしたいです。

北濱 自分も地元の友達とご飯を食べに行ったりしたいです。

――他の部活の試合を観に行ったことはありますか

柳澤 ラグビーの早明戦は、野球部全員で行きました。

――いかがでしたか

北濱 おもしろかったです。

柳澤 とてもおもしろかったです。

大竹 ルールとかは全然わからなかったのですが、それでもすごく楽しめて、あんなに人が入るなんて知らなかったので、すごく感動しました。

――大学に入って成長したと思うことは

北濱 親元を離れて出てきたので、親の大切さというか、家族の大切さが分かったということが成長かなと思います。

大竹 自分も同じく、高校まではずっと家から通っていたので、親の大切さがなかなかわからなかったのですが、最近はよくメールのやりとりもしています。あとは、やはり食べることですね。あまり朝も食べなかったのですが、しっかり食べられるようになりました。

柳澤 自分は高校から親元を離れてやっていたので、感謝の気持ちというのはもちろんありますし、こういうところで野球ができるということにすごく感謝している自分がいるということが成長していることかなと思います。

野球との出会いと野球が導いた出会い

和やかな雰囲気の中での取材となった

――お互いのことは高校時代から知っていたのですか

大竹・北濱・柳澤 知らないです。

――名前も知らなかったですか

柳澤 大竹は聞いていました。

北濱 自分は甲子園とかを見ていても名前は覚えられないので、大竹も全然知らなかったです。練習会に行って初めて知りました。すごい人なんだなと。

大竹 自分も知らなかったです。

――柳澤選手の印象はいかがですか

大竹 元気な関西人という感じです。関西ってこんな感じなんだなと思います。

――北濱選手、柳澤選手はいかがですか

北濱 自分は、まず大竹を初めて見たときは細いなと。本当にこんなやつがすごいのか、この細さですごいのかなとは一瞬思ったのですが、実際ピッチングを見たら、球はそんなに速いわけではないのにしっかりコーナーに投げ分けて抑えるということがすごいなと思いました。柳澤は、練習会のときに対戦していたので、「やばい、この球めっちゃ速い!」と思っていたら、ユニフォームに『広陵』と書いてあって、「やばい、広陵じゃん!」と思いまして。自分は本当に無名のところから来たので、「広陵だ、やばい」と思って、球も本当に速くバットに当てるのが精一杯だったので、早く終わりたかったです。本当に怖くて、とりあえずバットに当ててセカンドゴロで「よし!終わった」というような感じで、もうその時はほっとしていたので。それでまさか同じチームでやるとは思っていなくて、「こいつがあのときの、あの球の速いピッチャーか」というような感じがありました(笑)。

柳澤 大竹は、自分を持っているというか、自分の決めた道しか行かないというような感じの人なのかなと思いました。北濱は、常に静かで「こいつ話をするのかな」というような第一印象ですね。

北濱 最初は、静かにしておこうと思ったので(笑)。

――いま、その第一印象は変わりましたか

柳澤 俺は全然変わってないでしょ?

大竹・北濱 そのままです。変わってないです(笑)。

――同期で競技面・生活面問わず、すごいなと思った人はいますか

柳澤 自分はいないと思います。

北濱 二人のことはすごいと思っています。

――それは競技面においてですか

北濱 そうですね。

大竹 自分は、チームメイトの佐藤厚志(スポ1=茨城)です。自分が病気をしたときに外に出られなかったので、「冷えピタ買ってきて」と言ってお遣いに出したのですが、そしたら「お大事に」と言ってデザートみたいなものも買ってきてくれて、男と男にもそのような友情があるのだなと。男が女にとかなら分かるのですが、男と男でそのようなことをしてくれるやつが東京に出てきてもいるんだなということに、少し感動しました。

――では、この三人の中では絶対に負けないということはありますか

北濱 ひじの位置の低さ。

柳澤 地肩の強さですね。遠投なら絶対負けないですね。

大竹 体の柔らかさ。それは負けないです。

北濱 じゃあ、逆に体の硬さです(笑)。

――野球を始めたきっかけというのは

柳澤 小さい頃によくお父さんとキャッチボールをしていてそれがおもしろかったですし、お父さんがよくプロ野球をずっと見ていて自分もそれで見せられていたので、そのような影響があってやり始めたというのがきっかけです。

大竹 自分も同じく、父とよく野球だけではなくサッカーとかゴルフとかいろいろやったのですが、その中で一番野球がおもしろかったですし、2003年にダイエーホークスが優勝したのですが、自分は九州出身なのですごく応援していて、それを見ていたときに野球って良いなと思ったので、そこからずっと野球をしています。

北濱 自分も父と小さい頃からキャッチボールをしていて。それで、親が共働きで家にいなかったので、小学校1、2年生まで小学校の近くにある学童保育に入れられて、とりあえずそこがつまらなくて、「やめたい、やめたい」と言っていたら、「やめたいなら何かやれ」と言われまして。キャッチボールしかしていなかったので、「野球やる」と言ってやり始めましたね。

――いままで野球をやってきて、普段の生活に生かされたことはありますか

柳澤 礼儀が正しいとよく言われますね。何に対しても、自然に「ありがとうございます」といった言葉が出てくるので、周りからはすごく誉められるみたいです。自分ではそんなに意識してないのですが、そういった言葉が自然に出てくるようにはなったのかなと思います。

大竹 そうですね。やはり、先を考えて行動するということができるようになりました。下級生なので、次の練習に移るときに「こういう準備をしておかなくてはいけないな」とか常に先を考えて行動しますし、野球にしてもこのバッターにこれで投げたら打たれるのではないかと考えます。それは私生活でも同じで、何においても先を考えるという大事なことを学びました。

北濱 小学校の野球とかでは、とりあえずあいさつとかを徹底してやらせると思うので、そういった面では、やはり野球をやっていなかったら悪ガキに育っていたのかなとは思います。

――もしも緊張した場合には、どういったほぐし方をしますか

柳澤 緊張したことないからな。

――私生活でも、授業での発表の前などに緊張したりはしないですか

柳澤 しないですね。

北濱 深呼吸します。

大竹 自分は、緊張しているのだという状態を第三者的な目で見て、「緊張している。やばいな」と思いながらも、普通に周りとコミュニケーションをとったりして、雑談とかをするという感じです。

鍛錬の冬、挑戦の春

来季も抑え投手としての登板が期待される柳澤

――チームは新体制となりましたが、新チームの雰囲気というのはいかがですか

柳澤 新チームになってベンチに入っていた新4年生、新3年生の方がたくさん残っていて、その中で自分たちも入らせていただいていて、新チームになって神宮球場で試合をした人がたくさん残れているという空気が練習中でもつくれているのかなと思っているので、そういうことに関してすごく集中しながら練習に取り組むことができているなと思います。

大竹 有原さん、中村さん(奨吾、スポ4=奈良・天理)、土屋さん(遼太、教4=東京・早実)、小野田さん(俊介、社4=東京・早実)といったスター選手というような選手たちが抜けて、全体で勝ちにいかないと勝てないなということを全員が意識していると思うのですが、そういった中で一人一人が団結して練習に取り組んでいこうという姿勢が表れていると思います。

北濱 有原さんたち4年生がいた頃とちょっと練習メニューを変えたりなどして、トレーナーなどが試行錯誤してやっていて、やっている意味などがちゃんとこっちにも伝わっていて、そういう意味ではとても良い感じの練習に変わりつつあるのかなと思います

――河原右京主将(スポ3=大阪桐蔭)になって、中村選手が率いていた前チームと変わったことはありますか

大竹 特には…。

北濱 にぎやかにはなったような気がします。

柳澤 にぎやかになって、その分集中すべきところで集中できていると思います。

――エースの有原選手が抜けた中でご自身の役割はどんなものだと思いますか

柳澤 自分は来年も後ろの方のポジションになると思います。ピッチャー自身も全員でつないでいかないと勝てないと思うので、その最後の役目をしっかり全うしたいなと思います。

大竹 自分は先発して、徐々に試合の中で改善していきながら投げていくというスタンスでいままでずっとやってきたので、それを変えずにできれば先発で使ってもらえるような成績を残して、後ろにゼロでつなげるように頑張りたいと思います。

北濱 自分はリーグ戦の時は先発が崩れたら代わりにいけというポジションだったので、なかなか投げる機会がなかったのですが、次の春は競争率が高い中でしっかりとベンチ入りして勝ちに貢献できるようなピッチャーになりたいです。秋に入ったことで調子に乗らずに謙虚にやっていこうと思います。

――正捕手の土屋選手も抜けてしまいましたが、そのことについてはいかがですか

大竹 (土屋選手には)ワンバウンドのカーブでも二塁で刺してもらったり、リターン(けん制)で刺してもらったりと自分はいままでは投げることしか考えずに済んだのですが、これからはそうはいかないのでさらにランナーなどに気を使いながら投げる必要があると思います。キャッチャーが変わるということはだいぶピッチャーとしては大きいので、次のキャッチャーとしっかりとコミュニケーションを図るということが必要だと思います。

北濱 自分は、土屋さんが抜けたことは大きいと言えば大きいですが、3年生には道端さん(俊輔、スポ3=智弁和歌山)も渡辺さん(琢也、教3=東京・早実)もいるので、問題はないかなと思っています。

柳澤 絶対的な正捕手の土屋さんが抜けて、そこまでまだリーグ戦の試合を経験していない道端さんや渡辺さんのどちらかがスタメンになると思うのですが、自分も土屋さんにリードしていただいていろんなことを学んでいるので、それを逆にコミュニケーションを取って伝えることをして、信頼関係を築いてやっていこうと思います。

――これから後輩も入ってきますが、どんな先輩になりたいですか

大竹 自分は気を使わないでいい先輩になりたいです。高校の時からそうなのですが、尊敬はされつつ相談もできるというのが理想だと思っています。次に入ってくる小島(和哉、浦和学院高)とも連絡を取っていろいろ教えてあげたりしているので、そういった意味で相談しやすい頼れる先輩でありたいです。

柳澤 仲良く一緒に切磋琢磨(せっさたくま)して、一緒に成長できるようにアドバイスもしつつ後輩から学ぶこともあると思うので、そういうことをやりながら仲良くやっていきたいなと思います。

北濱 自分も高校時代はそんなに上下関係がない高校だったので、上下関係があるというのはあまり好きじゃないので大竹が言うようになんでも相談できたりだとか、話しやすい、信頼してもらえるような先輩になりたいです。

――理想とする選手像はどんなものですか

柳澤 自分は有原さんのような勝てるピッチャーになれるように頑張っていきたいと思います。

大竹 自分は大学の先輩でもある和田投手(毅、平15人卒=現米大リーグ・シカゴカブス)のような、スピードガンはそんなに速くなくてもバッターは打てないという伸びやキレで勝負できるようなピッチャーになりたいです。

北濱 自分のようなピッチャーはあまり見たことがないので、強いて言うなら点を取られないピッチャーになりたいです。

――投手というポジションの魅力はどんなところにあると思いますか

大竹 やはりテレビで一番映るのがピッチャーですし、勝っても負けても絶対自分が一番影響してくるし、責任は一番大きいですけどその分勝った時の喜びも大きいし、注目度も高いのでやりがいのあるポジションだと思います。

柳澤 その通りだと思います(笑)。

北濱 ピッチャーは球場で見ていてもみんなピッチャーを見ると思うので、注目されるポジションだと思います。

――これから冬場はどんなところを強化していきたいですか

柳澤 変化球の精度を上げるのと、もうちょっと長いイニングを投げられるスタミナをつけていきたいです。

大竹 自分はケガをしない体づくりに着手したいです。ケガをしたらそこから崩れていく選手を多く見てきたので、まずはケガをしないということを最優先課題にして取り組んでいます。

北濱 自分もケガをしない体づくりです。自分みたいなスポ推ではない選手はケガをしたら終わりだと思っているので(笑)、ケガをしない体づくりを一番に考えてやっていきたいと思っています。

――来年一年間はどんな一年にしたいと思っていますか

大竹 自分は来年のきょうに何となく(一年が)終わったなと思いたくなので、何となく過ごすのではなく、テーマを持って取り組みたいと思います。それは冬や春のキャンプでテーマや目標が明確になってくると思うので、それを意識して一年間やっていきたいと思います。

柳澤 スピードに関しては誰にも負けたくないというのがあるので、そういう点で六大学の中で何か一番目立てるものをつくれればいいかなと思います。

北濱 とりあえずはもっと試合に出るということ、結果を出すということがことしできなかったことなので、来年はできるようにしたいと思います。

――最後に来年に向けて具体的な目標と意気込みをお願いします

柳澤 ことしは2回(春、秋)とも優勝が懸かった試合で負けて、優勝ができずに2位という一番悔しい結果になったので、その悔しい結果をしっかり受け止めて、来年は春、秋両方とも優勝できるように貢献できればいいなと思います。

北濱 さっきも言いましたが、春に(ベンチに)入ったからといって調子に乗らずに謙虚に、かつ野球では大胆にやっていきたいなと思います。

大竹 秋はあれだけ投げたので来季からもっとマークも厳しくなると思うのですが、その上をいくピッチングをして、目標は最多勝を取ることです。

――ありがとうございました!

(取材・編集 深瀬真由、谷田部友香)

来季への意気込みを書いていただきました

◆大竹耕太郎(おおたけ・こうたろう)(※写真中央)

1995年(平7)6月29日生まれ。182センチ。74キロ。熊本・済々黌高出身。スポーツ科学部1年。年末年始休みは実家に帰省するという大竹選手。熊本で楽しみなことは温泉につかることだそう。ゆっくり休んで、春には温泉のように熱い投球を見せてください!

◆北濱竣介(きたはま・しゅんすけ)(※写真右)

1995(平7)年4月20日生まれ。176センチ。74キロ。石川・金沢桜丘高出身。人間科学部1年。上京して約1年、方言が抜けないことを大竹選手から暴露された北濱選手。しかし、敬語で話すときは方言はほとんど出ないそう。来季は方言での取材対応を楽しみにしています!

◆柳澤一輝(やなぎさわ・かずき)(※写真左)

1995年(平7)8月3日生まれ。180センチ。87キロ。広島・広陵高出身。スポーツ科学部1年。中学校までを大阪、高校時代を広島で過ごした柳澤選手。長年過ごした大阪の方が愛着は強いようですが、広島も人が優しくて好きだそうです。