春のリベンジならず 悔しさにじむ秋の入れ替え戦 秋の陣

女子バレーボール

 森佳央理主将(スポ4=群馬・高崎女)のスパイクが桜美林大のカベに阻まれ早大コートに落ちる。沸き立つ桜美林大の傍、崩れ落ちる早大の選手たち。セットカウント1−3(25−20、25−27、19−25、20―25)。掲げた「1部昇格」という目標は、皮肉にも春に苦杯をなめた桜美林大にまたも打ち砕かれてしまった。

 試合前から奥行きの狭い会場は、両校の大応援団の熱気に包まれていた。1部、2部という立場が変わっただけで、会場、そして対戦カード共に5ヶ月前の再戦であることがその熱気を助長させる。入れ替え戦特有の緊張感の中、先に主導権を握ったのは早大だった。秋季関東大学リーグ戦(秋季リーグ戦)において課題だったブロック、フェイントのケアといったディフェンス面で河治えみり(社2=北海道・旭川実業)をはじめとし、高い集中力を見せ、守備からリズムを作っていく。攻撃陣も富澤結花副将(スポ3=東京・文京学院大女)を中心に高い決定力を見せ桜美林大に付け入る隙を与えない。盤石の試合運びを見せ重要な第1セットを先取する。第2セットも流れは依然として早大にあった。秋季リーグ戦で多彩なトスワークに磨きをかけてきた橋本美久(社1=福島・郡山女大附)が攻撃陣を巧みに操り、森とのブロードを決めたと思えば、マークが偏ったところでノーマークの井上裕利恵(スポ2=岡山・就実)にトスを供給し着実に点差を広げていく。このまま試合は早大ペースでいくかに思われた。しかし、桜美林大もそう甘くはない。これまで決まっていたスパイクがレシーブで拾われる一方、早大の守備に乱れが生じ5連続失点を喫し試合は振り出しに。そこからは両校の粘り合いで長いラリーが続き、拮抗(きっこう)した展開となる。桜美林大に先にセットポイントを奪われたものの、森主将がこれまでの試合同様、終盤で力を発揮し追いすがるが最後は連携にミスが生じ、惜しくも2セット連取には至らなかった。

きょうもディフェンスの中心となった河治

 1部昇格に向けもう一度息を吹き返したい第3セット。しかし、一度失った流れを引き戻すことはそう簡単なことではなかった。サーブで富澤が集中的に狙われ、思うように攻撃につなげることができない。それが攻撃にも影響し、決め切れないまま序盤から点差をつけられてしまう。これまでのセットとは違い空気が重くなるコート上。この劣勢の中、雰囲気を変えたのはピンチサーバー梨本未央(社2=東京・駒場学園)だった。サーブから相手を崩すと斎藤友里(社1=千葉・敬愛学園)の活躍が光り、徐々に点差を詰めていく。富澤にもようやくこのセット初めての得点が生まれるなど、序盤につけられた5点差をひっくり返す。しかし光明が差したその矢先、サーブミスから5連続失点。完全に流れを失った早大に立ち直る兆しは見えず第3セットも落としてしまう。後がなくなった早大。「去年勝った秋の入替戦と同じ展開」。そう森は周囲に言い聞かせ士気を高める。だが、勢いに乗った桜美林大は強かった。第1セットで相手を圧倒した粘りのバレーを桜美林大にされてしまい、ラリーを制すことができない。反撃の端緒を開くことができないまま終盤を迎える。植松知里(文構2=香川・高松第一)のスパイクが決まるなど追い上げたものの、最後はこれまでチームを救い続けてきた森主将がシャットアウトされ試合終了。「1部優勝」を掲げ、苦しみながらも成長し続けてきた早大の秋季リーグ戦が幕を閉じた。

得点を決め、喜びを爆発させる富澤

 「期待に応えられないのは本当に悔しい」。(富澤)この試合に勝つためにこれまで鍛錬を続けてきただけに試合後、選手たちは悔しさをあらわにした。第1セットの内容が良く、勝利の希望が見えただけにその悔しさはひとしおだろう。しかし、まだ終わりではない。「前を向いている」と森が語るように選手たちの顔にはこれまで以上に強い決意が満ちていた。残された大会はちょうど1ヶ月後に開幕となる全日本大学選手権のみ。早大女子バレー部の最終章はどういった幕切れとなるのか。この雪辱を果たすため、早大の未来を切り開くため、このままでは終われない。

(記事 遠藤伶 写真 松谷果林)

セットカウント
早大 25-20
25-27
19-25
20-25

桜美林大
スタメン
レフト 富澤結花(スポ3=東京・文京学院大女)
レフト 植松知里(文構2=香川・高松第一)
センター 森佳央理(スポ4=群馬・高崎女)
センター 斎藤友里(スポ1=千葉・敬愛学園)
ライト 井上裕利恵(スポ2=岡山・就実)
セッター 橋本美久(社1=福島・郡山女大附)
リベロ 河治えみり(社2=北海道・旭川実業)
コメント

森佳央理主将(スポ4=群馬・高崎女)

――試合を終えて率直なお気持ちをお願いします

本当に悔しいです。自分も含め要所要所で痛いミスが出てしまったので、そこは詰めが甘いというかそれに尽きるんですけど、第1セットの流れでいければ良かったんですけど…

――第2セットまでは早大らしいバレーができていたと思います

そこからトントントンと得点を奪われて、第3セットは私のサーブミスが本当に申し訳ないんですけど、そこからキャッチやレシーブでチームとしていつものプレーができなくて、回るところが回らなかったりとか言いだしたらきりがないんですけど、なんというか力不足だったのかなと思います。

――第3セット以降はチーム、個人と苦しい展開だったと思います。どのようにチームを鼓舞されましたか

自分たちは失うものは何もないと今週ずっと言ってきたんですけど、2セット取られた時に去年勝った秋の入替戦と同じ展開だから、第4セット何がなんでも取りにいこうって言って第4セットに入りました。でも、気持ちが受け身になってしまっていて、つなぎでバタバタしたりで、取れるところで取れずに第4セット取られてしまったので、もっと自分が声かけないといけなかったかなと思います。

――今回で7度目の入替戦ですが、またこれまでと違った緊張感のようなものはありましたか

4年間ずっと入替戦に出ていて、1年生の時は何も重みも分からなかったんですけど、2、3年になるにつれてその重みもだんだんわかるようになってきて、4年目の今回はどうしても勝ちたかったんですけど、春に対戦した相手に勝ちたいという一心でみんながこれまで練習してきて、それでも負けてしまったのは自分の責任なので後輩に1部の舞台を残せなかったことが申し訳ないです。

――全日本大学選手権に向けての意気込みをお願いします

負けてしまって申し訳ない気持ちでいっぱいなんですけど、自分としてはこの世の終わりみたいに落ち込んでいるわけじゃなく前を向いているので、1ヶ月しかないから後輩のために何かを残して引退するために1ヶ月頑張りたいことと、ここで落ち込んでいてもインカレまでの30日はどういう精神状況だろうが変わらないから、この30日間をどう過ごすかが大事になってくると思うので、反省するところは反省して、でもいいところはいっぱいあるからそこをもっと伸ばしていけるように残りの30日を過ごしたいと思います。

富澤結花(スポ3=東京・文京学院大女)

――試合を終えて率直なお気持ちをお願いします

悔しいです。

――第1セット、第2セットは守備からリズムを作る早大らしいバレーができていたと思います

第1セットから足が動いていたのでそこは良かったんですけど、第2セットから気の緩みがあったのかなと思います。

――第3セット以降はチームとしても富澤選手ご自身としても苦しまれた印象を受けましたが

第1セットからキャッチを狙われているのはわかっていたんですけど、やっぱりそれが返らなくなるとチーム的にも自分的にもきついし…自分から1本目崩しちゃったなと思っています。

――第1セットなどご自身のプレーが光っていた場面も多かったと思います。ご自身のプレーについて振り返っていただけますか

全然ダメですね。全然飛べないというかこの試合の空気に慣れないというか。何回目だよって話しですけど、やっぱりダメですね。

――入替戦特有の緊張感は今回も感じましたか

そうですね。集中はしてるんですけどリラックスしては全くできないというか、いい緊張ではないので、いいところが全く出せなかったです。

――観客の数もいつものリーグ戦とは全く違う人数だったと思います。応援はいかがでしたか

桜美林大もすごかったですけど、OBさんOGさんとかいろんな人が来てくれて、応援してくれるのはプレッシャーに感じる部分はあるんですけど、やっぱり応援してくださっているのは本当にありがたいので、その期待に応えられないのは本当に悔しいです。

――全日本大学選手権に向けての意気込みをお願いします

四年生とできるのは最後なので、いい思い出ができるように一試合でも多く試合をするために頑張りたいと思います。