早慶戦直前女子部主将対談 早大・黒木麻衣主将×慶大・折笠舞主将

女子バレーボール

 硬式野球部が優勝をめぐり早慶戦を繰り広げたことがまだ記憶に新しいだろう。だが早慶戦は野球に限った戦いではない。バレーボール界にも毎年早慶両校による熱い戦いが存在する。早大の主将・黒木麻衣(スポ4=大阪国際滝井)と慶大の主将・折笠舞(環4=神奈川・慶應湘南藤沢)の二人の『マイ』主将に、主将としての思いや早慶戦への意気込みについて伺った。

※この取材は5月5日に慶応スポーツ新聞会と合同で行ったものです。

二人にとってのバレーボール

――お互いのチームにどのような印象を持っていますか

折笠 慶大は秋から3部に昇格することがきのう確定しました。でもワセダは2部で格上の相手なので、もちろん選手個人ごとの技術も高いと思うので、そういう意味では格上のすごいチームです。自分たちから見たら上の存在だけど、そのうえで私たちも私たちなりに戦っていける相手なのかなと思っています。

黒木 私たちが早慶戦をやるのはことしで4回目ですが、慶大さんはすごく粘り強くて、私達が忘れかけているものをいつも持ってプレーをされているという印象がすごく強いです。点数的には離れるケースもあるんですけど、いつも早慶戦が終わった時に新しいものを感じてまた頑張ろうという気持ちになることが多いので、そういう面ですごく尊敬するチームです。

――早大、慶大という大学をそれぞれ選ばれた理由を教えてください

折笠 私は小学校から慶大で、ずっと内部進学をしてきたので、大学を選ぶ理由というのは特になかったです。小学校入学時のことなどはよく覚えていないですが(笑)、16年間慶大で育ってきて良い学校だなと思いました。6歳ながらにしてした決断は間違っていなかったと思います。その中でバレーボールに関わってきた時間というのも半分ぐらいはあるので、慶大の中でもバレーというのは大きな存在かなと思います。

黒木 私は早大という大学を選ぶ前に上京するという目標が自分の中で大きくて、声をかけてもらい早稲田大学に入学しました。なぜ選んだかというと、大学自体が私からすればすごく一流でバレーボール以外の部分でも早稲田大学というのは全国の中でもトップレベルで戦う人たちの集団です。その中でも勉強も頑張ろうとする姿勢を感じて、ここならまた新しい自分に出会えると思って早稲田大学を選びました。

――前後してしまいますが、お二人がバレーを始めたきっかけはなんでしょうか

折笠 私は小学校5年生の時に始めました。姉がやっていてそれを見て自分も始めたというのが一番大きいですが、まあ気づいたらやっていたという感じです。姉が女子チームのコーチをやっていて、そういった意味で、姉妹でいまでも話はするし、姉の存在はこれまでも、いまでも大きいのかなと思います。

黒木 私は小学校2年生の時なんですけれど、母と兄がバレーボールをしていたのがきっかけで始めました。それと同時に小学生の頃からすごく背が高くて。小学校6年生から伸びてないですが(笑)。ずっとこの大きさだったので、私にはバレーボールしかないと思ってここまで続けてきました。

――昨シーズンを振り返っていかがでしたか

折笠 昨シーズンは、私たちの一つ上の代がプレーヤーが一人でマネジャーが一人という上が少ない状況で、後輩がメンバーに入ることが多く、その中でみんなの一人一人の力で目標に対して向かう姿勢というのはいまと同じようにあったと思うんですけれど、その中で結果を残せなかったというのがすごく大きなところで、明確にある目標に対して日々練習していることに間違いはありませんが、具体的に自分たちの成長やどのぐらい目標に近づいているのかという実感などがなかなかつかめないまま試合になってしまったところが結果を残せなかった理由だと思っています。その中で絶対的なリーダーの存在は心強く、当時の主将に対してみんながついていくチームの在り方というのは、私がいま主将になって、前主将に対して尊敬しているとか学ぶべきものが多かったなと感じます。

黒木 昨シーズンは2部に降格してしまい、秋季リーグ戦でも2部5位という結果に終わってしまいました。一番はもちろん勝てずに悔しかったことですが、それ以上に一人一人良いところがあって、その良いところを少しずつ出せればすごく良いチームになれると私たちにも確信があった中で、一人一人の力を出すことのできる環境というかまとまりがいま一つ作り上げられなかったというのが、私自身3年生でしたけどすごく反省していて、その中でどのようにこのチームをまとめていこうかいろいろと試行錯誤してやってくれた昨年の4年生の存在というのは私の中でも印象が強く、結果が出なかったので残念な感じではあったんですけれど、いまの私たちの代になって、きょねんの先輩のやってきたことや1年間の反省がいまの私たちにすごく活かされていると感じています。悔しかったですがきょねんの1年間は私にとって意味のある大きな大事な1年でした。

両チームとも、昨季は悔しさを味わった

――これまでの大学3年間で印象に残った試合やプレーはありますか

折笠 直近の話ですが、今シーズンがやはり印象的です。自分が最上級生で主将になって初めて挑んだ春のリーグ戦でしたが、きょねん結果が出せなかったという反省や悔しい思いというのをどういう風に自分たちの代になった時に突破できるかをいろいろ試行錯誤してきてリーグ戦に臨みました。きょねんと違って比較的若いチームでやっていますが、試合に出ている人もベンチの人も、本当にチームとしてすごく強くなったなというのがあって、総力戦で戦えるチームになり、全員で取りに行ったセットだったり、1点だったりというのに関しての重みが今シーズンは違って。そういった意味で3年間やってきて4年目に突入したいま、一番印象深いのがこの春季リーグ戦です。

黒木 きょねんの春季リーグ戦の嘉悦大戦なんですが、私たちからすればすごく格上でなかなか地無状態もよくない中挑んだ試合でした。試合の中で徐々にチームが成長していく姿が見られた試合で、格上のチームと試合しているのにこんなにもバレーボールが楽しいと一人一人すごく感じていて、初めて公式戦で嘉悦大に勝利できたんですけれど、1年生から4年生まで結構バラバラでまとまるのも難しい中、全員がまとまろうとする姿勢や、1点がほしいからみんなのために頑張ろうという姿勢がすごく見られた試合で、私の中でいま、その試合が一番印象が強いので、その試合のようにぶつかる気持ちなどがあればどんなチームにも私たちでも戦っていけるんじゃないかというモチベーションに変えていまも練習しています。

――大学バレーから学んだことはありますか

折笠 大きく二つあります。一つは、チームの一員としてチームに貢献するにはどうしたら良いのか考えること。上級生になってそれぞれ個性の強い仲間をどのように一つのチームとして目標に向かわせるためにどうするか考えることは、大学バレーの難しさでもあり、学ばされることでもあったなと。あとは、先輩たちが作り上げてきたバレーボール部という歴史の中で先輩たちの存在を忘れずに感謝して日々練習しなくてはならないというのは、いままでの小中高とは違った大学ならではの責任感や重みなのかなと思います。

黒木 大学生になって、いままではチームを作るのはやはり監督がやってくれていて、ダメなことはダメだと言われてここまで来ました。それで大学生になって、もちろん監督から指摘を受けることもありますが、主に学生主体となって自分たちでチームを作っていこうという姿勢や、自分たちで練習メニューは考えてやっているんですけれど、そういうのとかもいままでならやってきてもらったことを自分たちで考えてどうやったらチームがよくなるのかを考えながらやることで、また違った面でバレーボールを考えさせられるかというのをすごく感じています。また、チームをマネジメントしていく部分でもやはりOBさんやOGさんの力であったりとかをすごく近くで感じられるというか支えられているんだなというのをすごく感じて、OBさんやOGさんとお話しする機会があったりとかどういう気持ちで私たちを応援してくれているか聞く機会が多いので、また小中高とは違う感じで結果を残したいだとか、頑張りたいという気持ちがすごく強く感じられます。

主将としての思い

――主将として、現在のチームをどのように感じていますか

折笠 一人一人が責任感を持って、自ら考える力がすごくついたなと思っていて、やはりチームとしてバレーボールをする上で、もちろん個人の力やそれぞれやるべきことは違うでしょうけど、その上でじゃあ自分はどのようにチームに貢献できるのかということをすごく考えられるようになってきたと思っています。いままで以上にチームのために自分が何をできるかということを下級生上級生関係なく考えてプレーに反映させているという印象が上に立つ人間としてもすごく感じることなので、そういった意味で年齢関係なしに頼もしい子たちがチームとして集まっているので、私はすごく良いチームだなと思っています。

慶大・折笠主将

黒木 ことしのチームのスローガンが『つながり』なんですけれど、最初始動しだしたときはなかなかそれが定着せずに個々の気持ちが先に出てしまったりとか、まとまるのが難しい時期がありましたが、リーグ戦前の合宿だったり練習の中で一人一人が、このチームに何が必要で、どうしてスローガンが『つながり』になったのかというのを考えるようになったなと思っています。その中でどういう風に自分がチームのために動いていけば、『つながり』という部分でもどこにも負けないようなチームになれるかという風に考えてみんな行動してくれているので、とにかくいまはチームが家族のように楽しくて、一人一人がのびのびと自分らしさを出せる場所になってきているのかなと思います。

早大・黒木主将

――オフの日はどのように過ごされていますか

折笠 オフの日は・・・。最近オフの日があまりないんですけれど(笑)。でもバレーのことはあまり考えないようにしています。自分の好きなことをするようにしていて、映画鑑賞だったりとバレーから一回離れて、頭を切り替えるというか、そういう意味では全く違うことをやる意味は結構あるのかなと思っています。たとえば二日オフがあってバレーから少し離れると、二日目の昼頃に「バレーがしたいな」という気持ちが芽生えてきて。そういう意味でオンとオフの切り替えをすることでバレーに対してもモチベーションを持って取り組めるのかなと思います。

黒木 一人でどこかに行くのがすごく好きで、長時間どこかカフェとかに入って、何かするわけでもないですが、ぼーっとしたりとかバレーのことも考えずに、ただなにか音楽を聴いてゆっくり気持ちを落ち着かせる時間もすごく好きなのであったりします。でも、ちょっと振り返ってみると、オフは大概バレー部の誰かと一緒にいるなって思います(笑)。普通に友達がいないわけではないですけれど(笑)。でもなんかパッと連絡して、いま一人だから誰かとごはん行きたいなとか考えるときにすぐ思い浮かぶのが、同期だったり、後輩もあるんですけれど、それを思うと無理せずにいられる仲間がすごくいるのかなと思って飲みに行ったりします。すごく幸せだなと思います(笑)。

――つまり一人でいる時間は少ないのでしょうか

黒木 いやあるんですけれど(笑)。あるんですけれど、一人でいて、結局なんか連絡しちゃって。同期5人いるんですが、気がついたら5人全員集まっちゃったりとかよくあります。

――オフのときはいつもと違った選手の一面を見られたりしますか

折笠 本当に個性豊かな子たちで、バレーのときは真剣だけれどもバレーから一回離れるとみんなでワーワー騒いだりだとかみんなで集まって遊びに行ったりと、本当に学年関係なく仲が良いので。2年生と料理教室に行ったりなど(笑)。バレーから離れたところでも、密にコミュニケーションをとったりできる、みんなそういう気持ちでやっているので、カベがなくコミュニケーションできるのがうちの良いところだと思います。

黒木 コートの中でもそうかもしれないんですけれど、言い方が悪いんですけれどみんなバカというか(笑)。本当楽しいことが大好きな子が多くて、とりあえず体育館でもワイワイガヤガヤしている印象がすごく強いです。私たちの学年が特にそうなのかもしれないですけれど。全学年よく喋る子が多くて、個別に喋るというよりは、気が付いたら輪になってみんなで喋ってるみたいな感じが練習前の光景とかでもよく見られて、そういうのを見ていると、そういうのが良いところでもあるので、バレーでも縛ることなくそういう感じで、チームを組めたらいいなと思います。

――ガールズトークなどをされているのでしょうか

黒木 はい、されます(笑)。されますじゃないか(笑)。はい、します!

早慶戦とは

――早慶戦の話になりますが、これまで早慶戦を3度やって、振り返っていかがでしたか

折笠 私は3回対戦して、自分が出ていない試合ももちろんあったし、緊張している間にあっという間に終わってしまうというか。相手が格上で、食らいついてもやっぱり離されてしまうという展開が大いにあったので、そういう意味でもあっという間に終わってしまうことが多かったです。しかし本当に、熱中というか、早慶戦って特別な試合で、ある種のお祭りみたいなものなのかなと思っているので、その一瞬の盛り上がりに対して、観客も選手も一気に熱を帯びてバレーをして、スッと終わってしまう印象が私にはあります。もちろん選手として勝てなくて悔しい気持ちもあるし、でもそういう中で会場の一体感などは、やはり早慶戦はほかの試合に比べて段違いだなと思うので、年一回の貴重な試合である早慶戦をことしも楽しみにしていきたいなと思っています。

黒木 個人としてはすごく人が多くて、応援部も来てくれて、男子部もいたりだとか、バレーボールを知っている人が周りでたくさん見ていて、本当に緊張する試合という印象が強いです。その中でも、自分がどれだけ力が出せるかだとか、チームがどれだけ成長しているかなど、それらを見つけられる試合だなと思います。毎年早慶戦はいろんな選手が出て、普段試合に出ないような選手も出て、メンバーに入っている人だけですけれど、普段の練習の成果を出せる良い機会なので、そういった部分でもチームの一体感などを感じられる、普段とは違う大切な試合だと思います。

――応援部や観客もたくさん来るとおっしゃっていましたが、自分たちのチームの注目してもらいたいところはありますか

折笠 ことしのチームに関しては、目標を達成できたという意味でも成長しているというのは確実に言えることだと思っています。そこを見てもらいたいです。具体的にはないのですけれど、ちょっとしたつなぎや、どれだけ決まるかわかりませんが点を取ろうという姿勢や、点を取ろうとしてコースを狙うとか、そういうちょっとしたところに私たちの成長が現れるんじゃないかなと思っているので、見過ごされちゃうかもしれないですが、そういうところに注目してほしいです。

黒木 毎年選手の高さが目立っていて、なぜかレシーブが目立ちませんが、ことしはレシーブに重点を置いてチームを作ってきているので、気持ちで上げるじゃないですけれど、ボールをつないだりだとか、必死に食らいつく姿を見てほしいなと思います。あとは、私たちが始動したときから意識している『つながり』の部分を、目に見えるものではないかもしれないですけれど、多くの人に感じてもらえるような試合をしたいと思っているので、そういったところに注目してほしいです。

――早慶戦のキーマンとなる選手はいらっしゃいますか

折笠 本当に、誰一人欠けても成立しないなと思っているんですけれど、その中でもことし入ってきたセッターの植松彩香(商1=高松商)です。個人としての技術もすごく高いですし、これまで私たちのチームにはなかったものを見せてくれる重要な人物なので、彼女のプレーを注目してもらいたいです。

黒木 いないと言ったらおかしいですけれど、ことしにもレギュラーはもちろん存在しますが固定されてなくて、あとから出場した子たちも力を出して、結果全員で戦った試合だったなみたいのがすごく多いので、誰に注目というよりは、誰が出てきても個々のカラーが出せて、それでもちーむのかたちが崩れることはないところなど、一人一人のダイナミックさを見ていただけたらいいなと思います。

――早慶戦に向けて意気込みをお願いします

折笠 慶大はやはり格上の相手との試合になるので、胸を借りるかたちですが、その上で自分たちがやってきたことというのを存分に出して、少しでも成長した私たちがワセダにどういう風に戦っていけるかを私自身も楽しみにしているので、もちろん勝つ気持ちを忘れないで正面からぶつかっていきたいなと思います。

黒木 とにかくやってきたことをぶらさずに、自分たちのバレーをするだけだと思うので、緊張するかもしれないですけれど、『笑顔』で自由に一人一人がみんなのためにプレーできるように、試合を楽しんでいきたいなと思います。

――早慶戦が待ち遠しくなってきました。ありがとうございました!

早慶戦への思いは同じ

◆黒木麻衣(くろき・まい)

1992(平4)年7月29日生まれ。169センチ。大阪国際滝井高出身。早稲田大学スポーツ科学部4年。セッター。チームの司令塔であるセッターとして、プレー面でもチームを引っ張る黒木主将。プライベートでは一人でぼーっとする時間が好きと語ってくれましたが、バレー部の仲間と集まる時間も同じくらい、もしかしたらそれ以上に好きみたいです

◆折笠舞(おりかさ・まい)

1993年(平5)2月24日生まれ。162センチ。神奈川・慶應湘南藤沢高出身。慶應義塾大学環境情報学部4年。レシーバー。今季は主将としてチームをまとめ、かねてからの悲願であった3部昇格を成し遂げた。後輩と料理教室に行くなど、こちらもチームの仲の良さがうかがえました