【特集】主務対談 芳賀雄治

男子バレーボール

 チームのマネジメントを担う役割として主務は欠かせない存在だ。多くの観客が詰めかけ、大盛り上がりをみせた早慶戦でも、運営として成功の立役者となったのは主務の芳賀雄治(商4=山形南)であった。芳賀は選手としてもベンチに入り、チームの雰囲気づくりをする傍らで、主務としての業務もこなしている。主務の仕事や芳賀のバレーボール人生に迫った。

※この取材は8月24日にオンラインで行われたものです。

 

ボールを追いかけることが好き

取材に応じる芳賀主務

 

――バレーボールとの出会いは

芳賀 僕が小学校5年生のときに兄がバレーボール部に入部して、そこで興味をもちました。もともと水泳をやっていたのですが、新しいスポーツがやりたいなと思い、小学校5年生のときくらいから遊びで(バレーボールを)始めて、中学に入学してから本格的にやり始めた感じです。

 

――中学生のころからアウトサイドヒッターをやられていたのですか

芳賀 そうですね。ずっとアウトサイドヒッターでやっていたのですが、中学生のときの県選抜の大会だけミドルブロッカーをやりましたね(笑)。

 

――急にミドルブロッカーをすることはできるものなのですか

芳賀 その当時は身長が180センチくらいあって、周りの中学生と比べて身長が高い方だったのでミドルブロッカーをやることになりました。

 

――高校時代はどんな選手でしたか

芳賀 今もそうなのですが、とにかくずっと熱い人だったのかなと思っています(笑)。1点1点にすごく喜んだりだとか、練習の1本を特に大事にしていて、練習の1本がいつか試合で出るというマインドでやっていたりだとか。あとは結果が出たときはやはりうれしかったですし、それが励みになりました。すごく真面目だったのかなと思います(笑)。

 

――山形南校からなぜ早稲田に

芳賀 もともと早稲田か慶應に行くことを迷っていました。春高(全国高校バレーボール選抜優勝)があったことで一般入試は受けられなくて指定校推薦ということは決まっていて。その中で早稲田か慶應で迷っていたのですが、バレーが強くてさらに同期に大塚(大塚達宣副将、スポ4=京都・洛南)が入学することがわかっていたので、レベルの高いところでやりたいなと思って早稲田を選びました。

 

――大学でもバレーを続けようと思ったきっかけはありますか

芳賀 先ほども言ったように、同期に大塚がいることや、あと当時は全日本インカレ(全日本大学選手権)で早稲田が2連覇していたこともあってレベルの高いところに身をおいて自分をさらに磨き上げていきたいなという思いがありました。あとは、自分の中で、高校時代はバレーボールをすることが呼吸のようなものだったので(笑)。そのこともあって自然に入部したという感じですね。

 

――得意なプレーや強みはなんですか

芳賀 ボールを追いかけることですかね。ボールを最後まで追いかけてつなぐということが得意ですし、すごく好きですね! 大学に入るとディグは速くて上がらないのですが、ちょっとでも上がったボールをつないで返して点を取ったときはすごくうれしいです。

 

――レセプションとディグだと、やはりディグが得意なのですか

芳賀 そうですね(笑)。レセプションだとセッターに返さなければいけないのですが、ディグは上にあがると評価してもらえるので、そっちの方が、気が楽でディグのほうが好きでしたね。

 

――芳賀選手はアメリカ留学に行かれていましたが、留学先での思い出などありますか

芳賀 ずっと勉強と就活しかしていなかったのであまり遠出はしてなかったんですけど(笑)。11月末くらいにあるサンクスギビングデーで、ロサンゼルスとかラスベガスの西海岸へ2週間くらい旅行に行ったのが1番の思い出ですね。

 

――そこでどんなことをされましたか

芳賀 とにかく観光しましたね(笑)。友人に連れられ有名なハリウッドの看板のところに行ったり、天文台に行ったり、ゴールデンゲートブリッジとか有名なスポットの写真撮ってみたいなことをしていました。あとはおいしいご飯を食べました(笑)。

 

――留学先から早稲田の試合を見ていましたか

芳賀 毎回というかむしろ見逃したことがないくらいずっと観ていました。勉強と就活以外は暇だったので、毎日の練習も観ていました。たまに留学先の友人と、大画面につなげて早稲田の試合を観戦して応援するみたいなこともしていました(笑)。

 

――アメリカでバレーはしていましたか

芳賀 やろうと思っていたんですけど、留学先に女子バレー部しかなくて(笑)。レクリエーションみたいなのでビーチバレーがあったので、ちょっとそこでやってみたりしていました。

 

―留学から戻ってきてからバレーボールの感覚はすぐに戻りましたか

芳賀 レシーブやトスはだいぶ良かったのですが、まずジャンプが全然できなかったです。ちょっと飛べるようになったと思ったら肩が痛すぎてスパイクが打てなくなるって感じで。一からエクササイズとか体幹トレーニングをして戻しました。感覚はありましたけど体がついてこないという感じでした。

 

 

『徹底』する

早慶戦にて得点に笑顔をみせる芳賀

 

――主務の仕事について教えてください

芳賀 一言でいうとチームのマネジメントです。大会に出場するための手続きやお金周りの管理が主な仕事です。あとはこの間の早慶戦(早慶定期戦)の運営や統括も行っていました。そういった部のイベントや大会の際の最高責任者になるのが、主務になりますね。

 

――早慶戦の仕事について振り返っていかがですか

芳賀 早慶戦は大変でしたが、とても良い思いですね。その中でも幅広く関係者と連絡を取ることがすごく大変でしたね。いろんな方とメールでやりとりしながら、コミュニケーションをとることです。

 

――いろんな方面と連携するなかで、意識したことはありますか

芳賀 とにかく早く連絡をすることと、連絡をしたときに別の質問が返ってこないように自分が持っている情報をとにかく相手に伝えることです。それをすると相手も楽ですし、こちらとしても楽になるのかなと思っているので、あいまいに返信するのではなく、どういう情報を持っているのかを明確に伝えることを意識しましたね。

 

――選手と両立していますがそちらはいかがですか

芳賀 僕としては忙しいほうが好きですし、元々選手をやるつもりで入部してプラスで主務をやっている状況なので辛いとかはあまりありませんね。やっていてすごく信頼してもらえるとうれしいので、今は楽しくやっています。

 

――主務の仕事でやりがいを感じた場面はありましたか

芳賀 やはり一番は早慶戦だと思っています。自分が手を尽くしてベストを尽くした結果、観客のみなさんに楽しんでもらえたりだとか、いろんな方に感動をもらえただとか言ってもらえて。部員からも「良かったよ」とか言ってもらえたときはやっていてよかったなと思えましたね。

 

――ここから再びバレーボールの話に戻ります。春シーズンはピンチサーバーや途中交代での起用でしたが、ご自身のプレーを振り返っていかがですか

芳賀 春リーグ(春季関東大学リーグ戦)はへまをしてしまった思い出が多かったのですが、少しずつ東日本インカレ(東日本学生選手権)に向かってバレーボールの感覚が戻ってきました。アウトサイドに今水町(水町泰杜、スポ=熊本・鎮西)と山田(山田大貴、スポ3=静岡・清水桜が丘)が入っていて、大塚がいない中で、僕が控えの一番のサイドにはなるので。そこでプレッシャーというか、筑波大戦では無力感も感じましたし、成長しなきゃいけない部分も多かったので、それを踏まえて今筋力トレーニングをしています。あとは自分の得意なプレーを伸ばしていこうかなと思っているので、春シーズンは改めてバレーボールをもっと頑張らなきゃいけないなと良い刺激になりました。

 

――4年生として、チームの士気を上げるために意識的に行っていたことなどありますか

芳賀 とにかく自分が一番前面に立って声を出してチームを盛り上げることです。僕自身がスーパープレーヤーというわけではないので、プレーではなく声出しなどの姿勢で引っ張っていくタイプです。厳しいことを言うことももちろん大切なことなのですが、厳しい面だけではなく選手それぞれの良いところに目を向けて、声掛けをすることは意識しました。あとはミーティングなどのシリアスな場面では、しっかりとダメなところは俯瞰的(ふかんてき)にみてしっかりと伝えられるようにはしています。

 

――4年生がまだ引っ張り切れていないというお話をよくインタビューで聞くのですが、その部分についてはいかがですか

芳賀 良くはなっていると僕はおもっています。やらなければいけないのは、僕たち4年生なので。春が始まったばかりのころは、どこかで大塚がいないからだとか、留学している4年生もいるだとかあったのですが、今は大塚がいなくても勝てるようにというスタンスで話し合ってやっています。そういった面では少しずつ良くなっていっているのかなと思いますが、まだまだ100点には程遠いので、もっと引っ張っていければいいなと思っていますね。

――夏休みはどんな練習をされていますか

芳賀 ずっと基礎練習に取り組んでいます。ボールの下に早く入ることや、コースに打ち分ける練習、思っているところにボールを運ぶ練習を徹底してずっとやっていたかと思います。あとはやはりトレーニングです。ウエイトトレーニングやタバタトレーニングというちょっときつめなトレーニングをやって、基礎体力と基礎力をつける練習を夏休み期間中はずっとやっていました。

 

――タバタトレーニングとは何ですか

芳賀 タバタトレーニングは、田畑さんという方が考案されたトレーニングです。30秒動く、20秒レスト、30秒動く、20秒レストというのを7セットぐらいやって、心肺機能と持久力を高めていくみたいなトレーニングです。

 

――基礎的な練習は松井監督(松井泰二、平3人卒=千葉・八千代)の方針でされているのですか

芳賀 そうですね。それもありますし、チームとして基礎的な練習をする期間が取れなかったので、その練習をする期間として東日本インカレが終わって夏休み期間というのが一つありました。元々、松井先生も基礎は大切だからということでどこかで入れたいとは考えていたと思います。

 

――夏休みはどんなところに重点を置いて練習していますか

 チーム作りもそうですけど、今は合宿期間なので、個々の力を伸ばすというところに重点を置いています。チームの連携というよりかはとにかく個々のスキルをどれだけ最大限伸ばせるかで。それで最終的にどうやって化学反応を起こせるかを考えるのはこの先なので、まずは個々を大きくすることに重点をおいて練習してきました。

 

――今のチームの雰囲気や状態はいかがですか

芳賀 今は良い状態とは言きれないですが、皆さんにお見せするリーグや全日本インカレまでに最高な早稲田を作っていくつもりです! 

 

――秋季リーグ戦(秋季関東大学リーグ戦)に向けて現状のご自身の課題は

芳賀 もっと雰囲気をがらっと変えられるような選手になりたいなと思っています。もちろんスタメンで出場することが目標ではありますが、世代を代表する選手が集まっていることもあり、正直難しさも感じているので。そういったところを割り切って自分の役割は何かと考えたときに、ベンチで声を出し続けることや、1点入ったときにチームが沸きあがるように雰囲気を作ること(が役割)だと思うので、普段の練習から取り組んでいきたいです。もちろんバレーボールをやっているからには活躍はしたいので、サーブのスピードを上げることや厳しいコースを狙うこと、スパイクをしっかりコートに叩き込むことをやっていきたいです。

 

――チームの課題は

芳賀 チームとしては、チームの核となる部分や軸がないことです。何で攻めるのか、何で得点を取るのかという部分をコートに立つ6人がまだわかっていないことが課題です。相手に対応しながら、戦略を考えていくのですがそこの部分がまだできていないので、それを今の合宿で克服しているところです。

 

――秋季リーグ戦での目標は

芳賀 勝ちにこだわって優勝することはもちろんですが、チームの核となる部分が見つかるようにしたいです。僕たちの最終目標は、全日本インカレでの優勝なので、秋リーグで糧となるようものを見つけて全日本インカレに全員で向かっていければと思います。

 

――これまでバレーボール続けられた原動力を教えてください

芳賀 一番は両親の支えかなと思います。20年間育ててもらっていろいろな支援もしてもらっているので。あとはいろんな人から応援していただいているので、そういったところが原動力になっているのかなと思います。

 

――ラストイヤーの選手としての目標は何でしょうか

芳賀 僕の目標は、全日本インカレで最後の1点を取るトスを託されるようになることです。24点目で「行ってこい」と背中を押してもらえるような選手になることが目標です! 普段の練習の姿勢やプレーの質をあげて頑張りたいと思います。

 

――では主務としての目標はありますか

芳賀 とにかく『徹底』することです。いろんなことに手を抜かず、チームのためを考えて最善を尽くすことです。手を抜かないことは僕の人生のモットーというか、僕が手を抜かずにやりきってチームが良くなったりだとか、誰かが笑顔になってもらえるとそれは幸せなので。主務としてチームを司ることや、人を動かすことが多いので、特に自分が犠牲になって人に尽くしていきたいなという思いがあるので、徹底して取り組んでいきたいなと思います。

 

――ありがとうございました!

(取材・編集 山田彩愛、新井理沙)

 

◆芳賀雄治(はが・ゆうじ)

2000(平12)年6月29日生まれ。180センチ。アウトサイドヒッター、主務。山形南高出身。商学部4年。宝物は早稲田の部員だという芳賀選手。主務としてチームを裏から支え、プレイヤーとしても声やサーブでチームに勢いをもたらします。ラストイヤーを全力で駆け抜ける姿は必見です!