【特集】スタッフ対談 トレーナー堀内直人

男子バレーボール

 毎週末試合をこなし、時には連戦を戦い抜く選手たちが本来の力を発揮するために体のケアは不可欠だ。早大男子バレーボール部には、選手に最大限の力を発揮してもらうため、陰から支えているスタッフたちがいる。その中の一人が、唯一のトレーナー堀内直人(スポ4=愛知・滝)だ。トレーナーとはどのような存在なのか、堀内に話を伺った。

 

※この取材は8月22日にオンラインで行われたものです。

 

「選手が万全の状態で試合や練習に臨めるような環境づくり」を

 

取材に応じる堀内トレーナー

 

――バレーボールとの出会いは

堀内 出会いは中学生のときです。中高はプレイヤーとしてやっていました。中学のときに部活何しようと考えて、バレー部に入った感じですね。

 

――ちなみにポジションはどこをやられていたのですか

堀内 ポジションはいろいろ動かされていたので、一つここっていうのがないのですが(笑)。中学生のときはアウトサイドヒッターで、高校生のときはミドルをやっていました。

 

――中高でバレーをやっていて、大学では続けようと思わなかったのですか

堀内 早稲田のレベルが高いということもあって選手としては続けませんでした。でも何かしらのかたちで関われたらいいなという感じで入部しました。

 

――早稲田バレーのために早稲田にきたわけではないのですか

堀内 早稲田のスポーツ科学部のようにスポーツ系の学部がある学校を目指していました。その中のひとつが早稲田であったという感じですね。

 

――トレーナーをやろうと思ったきっかけについて教えてください

堀内 1年生のときは全員選手をやるという決まりがあるので、選手をしていました。だからトレーナーになったのは1年生の9月とか10月くらいです。きっかけはその当時、大人のトレーナーだけで学生が誰もいなかったのと、授業で扱っていた講義の内容がトレーナーに近いもので興味があったからです。学んだことをフィードバックできる場があればなと思って、徐々にそっちの道に進んでいった感じですね。

 

――トレーナーの普段の仕事について教えていただけますか

堀内 主な仕事は、選手がケガしないように万全の状態で試合や練習に臨めるような環境づくりをすることです。それこそ防げないケガというのは競技中にはあるので、そういった場面で対応することや、ケガが起きたときにどうやって選手が早く安全に競技へ戻れるかを、監督や選手とコミュニケーションを取りながらサポートすることが仕事になります。

 

――普段の練習中は何をされているのですか

堀内 ケガなどがなければ、練習の球拾いとかのサポートをしています。どこか痛みのある選手や、疲労で肩や膝などに痛みを抱えている選手がいるときは、テーピングやマッサージをしています。

 

――では試合の日は、試合前や後のケアをしているのですか

堀内 そうですね。あとは特に大きい大会のときだと、期間が長かったり連戦だったりするので、万全のコンディションじゃない選手がほとんどです。そういう状況でその場その場で何が最善なのかを考えながらやっていますね。

 

――ケアは全て堀内トレーナーに任せられているのですか

堀内 大人のトレーナーの方がいるので、その方たちとコミュニケーションを取りながらというかたちにはなりますね。(大人のトレーナーさんは)土日とかに来てくださるので、そこでしゃべります。毎日の練習に参加しているのは僕だけなので、その中でどう選手と関わっていくかという部分で、学生としての役割があるのかなと思いますね。

 

――それが大人のスタッフと比べて大事にしていることだったりするのですか

堀内 そうですね。大人のトレーナーさんは資格も持っていて、経験も豊富です。僕はそれに比べて資格もとっていなくて、勉強しているだけなので。そういった人たちの力を借りながらやっていますね。

 

――トレーナーなられたときには、新たに勉強されたのですか

堀内 授業の延長というか、講義でそういったのが多いです。それこそ実際にバレー部の練習を見ながら、こういった動きがこういったケガにつながるのかなという疑問を、トレーナーの先生とかの文献を探して調べていますね。

 

――普段の勉強が実際に役立ったエピソードなどありますか

堀内 体の使い方という部分で、トレーナー的な視点から見ることが競技のパフォーマンスとつながるような要素がいくつかあって。自分がバレーを経験していて、ある程度バレーの動作がわかることもあって、トレーナーとして体の動きやどの筋肉を使っているのかということと(実際の動きを)リンクさせることができるます。選手から「こういった動きを得意にしたいです」といわれたときに、こういうトレーニングして、こういった動きにつなげられるよというアドバイスをできますね。あとは選手から「こういったプレーが上手くいかないんですけど」という話があったら、どこに原因があるのかという体の動きの部分で、コーチングまではいかないのですが、改善のヒントになることはできるのではと思っています。

 

「誰からでも相談相手になれる存在でありたい」

早慶定期戦でベンチから試合を見守る堀内トレーナー

 

――試合中ベンチで良く声掛けをされていますが、声掛けは意識的にしているのですか

堀内 そこのポジションに入るのは、これまでは主務だったのですが、主務が選手もやりながらベンチに入っているので、そこを自分がやっています。常にコートに一番近い場所なので、データを見てコート内に伝えられることを探しています。ミーティングは試合ごとにするので、アナリストが出してくれたデータをメモして、選手に伝え直すことでそれを思い出してもらえたらプラスに働くかなと思ってやっています。

 

――選手のケアをする上で大事にしていることはなんですか

堀内 コミュニケーションは大事かなと思っています。学生同士ということで距離感が近いこともあって、いろいろ話せることも言いやすいことも少しあるのかなと思うので、しゃべりながらということは意識していますね。僕がやれることは限られているので、それをやる中でどうしたら選手にプラスに働くかを考えながらやっています。

 

――これまで一番大変だったことは

堀内 選手がケガしてしまったときは大変ですね。去年の夏に同じ日に二人ケガしたことがあって、その時は大変でしたね。そのケガしたときの対応とその後のリハビリから復帰までの計画をスタッフや監督と話しながら決めます。復帰がいつになるのかとかは、チームの戦力的な部分で大事になってくるので。あとは昨年の全日本インカレ(全日本学生選手権)の前に水町(水町泰杜、スポ3=熊本・鎮西)がケガをしてしまって。時期が時期であったのと、主力ということもあって、できることを監督が手配してくれて、トレーナーとしても可能な限り手を尽くしました。

 

――トレーナーのやりがいについて教えてください

堀内 時間をかけてリハビリを一緒にしてきた選手や、痛みが原因でプレーが伸び悩んでいた選手が、トレーニングやリハビリをしていく中で体のコンディションを改善していき、それがバレーボールのパフォーマンスの向上につながっていくことです。そういった選手が試合に出て活躍したり、大会で結果を残してくれたときはやっていてよかったなと思いますね。

 

――具体的なエピソードとかありますか

堀内 昨年、荒尾(荒尾怜音、スポ3=熊本・鎮西)がケガをしていて。リハビリの段階でプレーはできるけど、まだ痛みとか不安があって動きが悪くなってしまっていました。練習は参加してもいいけどまだパフォーマンスが戻っていないという状態のときは、大きい動きをされて状態が悪化することは避けたいのですが、本人としてはそれが不安で思うようにプレーできないことがストレスというか。苦しんでいる様子を見ていたので、最後大会の中で本人が万全の状態かどうかは、僕自身もわからないのですが、そういった不安を抱えた中で荒尾の活躍もあって、全日本インカレで優勝という結果を残すことがきたのは、すごくうれしいというかやりがいはありましたね。

 

――ケガで不安を抱えているときのメンタルケアとかもされているのですか

堀内 そこはあまり専門にしていないですね。踏み込むことはあまりないのですが、いつも思うのは誰からも相談相手になれる存在ではありたいなとは思っています。体育会の組織なので、組織内として上下関係がある中で、学生トレーナーと選手に上下関係ができてしまって言いたいことが言えない状況はつくりたくないと思っています。だから後輩からも接しやすいように努力はしているつもりです。どういう風に受け取られているのかはわからないのですが(笑)。コミュニケーションの部分につながってくるのですが、ちょっとした悩みを選手という立場じゃない僕に言いやすい思ってくれる選手が何人かいてくれたらなって感じですね。

 

――堀内トレーナーの原動力は

堀内 やはり選手が頑張っている姿が原動力です。練習中であったりトレーニングであったり、選手たちは自分のプレーがどうやったら上手くいくかということを練習の中や練習前後など、バレーボールに対して時間をかけている姿を見ています。今の早稲田の選手は将来的にバレーを続けることが考えられるので、そういった人たちに少しでも自分の体の使い方であったり、こういったときに痛みが出るということを一緒に理解してもらえると嬉しいなと思います。選手の努力が原動力になっているかなと思います。

 

――後輩との関わりでいうと、アンケートで布台駿(社3=東京・早実)についてよく答えられていたのが印象的でした

堀内 考え方が似通っている気がしますね(笑)。バレーボール以外の部分で思考が似てるのかなってことでよく話します(笑)。

 

――堀内トレーナーからみて4年生はどんな学年ですか

堀内 個性が強いのが一番に挙がりますね。それこそ自分はチームに一人しかいない学生トレーナーですし、今全日本でプレーしている大塚(大塚達宣副将、スポ4=京都・洛南)選手がいたり、留学行った人がいたり、アナリストがいて。それぞれが自分の得意な部分を持っているような学年で、そこを個性が強いと表現しました。それぞれが意外と違う方向を向いていることもあって、まとまらないこともあるのですが(笑)。そういう違う武器を持った人たちが集まってひとつの方向を向くことは、人数も多いですし、頼もしい存在というか心強いことが多いです。

 

――堀内トレーナーから見た今年のチームの印象はいかがですか

堀内 春リーグ(春季関東大学リーグ戦)は大塚選手が全日本に行っていて、チームを離れていました。それ以外の選手でやっていく中で、やはり大塚が絶対的な存在ではあって。各自が足りない部分をチームとしても個人としても認識しながら、その足りない部分や、自分の強みにしなければいけない部分を認識して練習しているような感じがありましたね。各選手武器を持っていて、役割やその人の持っている強みがわかりやすいチームだなと。その強みを生かせないときは伸び悩むというか、チームとしてうまく回っていかないこともあります。ですがそれぞれの強みを生かすというか、全員の強みが発揮できるようなチーム運営や、マネジメントができたときにはすごく良いチームになるのではないかなという印象ですね。

 

――ラストイヤーの目標を教えてください

堀内 チームとして掲げている全日本インカレでの優勝が目標にはなります。トレーナーとしては、誰もケガをしなくて万全の状態で試合に臨んでもらうことが願いです。まずはそこに向けてこれから先、ケガやどこか痛いとかあるときには、そういった選手が最大限コンディションの良い状態で試合に臨めるようにしたいと思います。

 

――ありがとうございました!

(取材・編集 山田彩愛、町田知穂)

 

◆堀内直人(ほりうち・なおと)

2000(平12)年7月2日生まれ。176センチ。トレーナー。愛知・滝高出身。スポーツ科学部4年。堀内トレーナーが尊敬しているのは、大塚達宣選手。これまでに出会った中でバレーボールに対する思いと熱意が群を抜いて高いからだそうです! トレーナーとして、選手を献身的に支えていきます。