全日本インカレ5連覇達成!紆余曲折経て『強い早稲田』見せる

男子バレーボール

 ついに来た全日本大学選手権(全日本インカレ)決勝。チームがまとまり切れず満足のいく結果やプレーを出し切れなかった時期を経て、ようやくここまでたどり着いた。

 決勝では、シード校である日体大、筑波大を破り破竹の勢いで勝ちあがってきた順大を相手に迎えた。序盤は相手の勢いに飲まれプレーに焦りが見られたが、セットを重ねるにつれ、ブロックとレシーブを連携させた丁寧な守備から展開される多彩な攻撃でブレイク。後半からは盤石な試合運びを見せ、セットカウント3-1(26―24、19―25、25―18、25―17)で制し、大会5連覇を達成した。

 水町泰杜(スポ2=熊本・鎮西)の強烈なジャンプサーブで幕を開けた。守備を乱して攻撃の的を絞り、岩本大吾主将(スポ3=兵庫・市立尼崎)と大塚達宣副将(スポ3=京都・洛南)のブロックで得点。しかし優勝候補に名乗りをあげていた強豪を倒してきた順大は、やはり一筋縄では行かなかった。「一本では決まらないのは想定内」(岩本主将)。リベロの高橋和幸を中心にディフェンスを組み立て、トランジションの場面でも簡単にはボールを落とさないのが順大の持ち味。スパイクを拾われ、バックアタックやフェイントなどで4連続得点を許し、1-4とした。その後も相手の背中を追う展開に。速いトスから繰り広げられるスパイクやサイドラインへのサービスエースで3連続得点され11-17にまで広げられると、早大はタイムアウトを要求。「(得点して)走り回るのもいいけど、集まって話し合った方が良い」(松井泰二監督、平3人卒=千葉・八千代)。焦りの見られる選手たちを落ち着かせ、冷静にコミュニケーションを取らせた。切り替えて本来の調子を取り戻した早大は、じわじわと点差を縮める。大塚副将、伊藤吏玖(スポ2=東京・駿台学園)のサービスエースや水町のブロックアウトなどで15-18に詰め寄り、相手にタイムアウトを取らせた。それでも相手に流れを渡さず、22-23までにこぎつける。2回目のタイムアウトを取らせたが、重藤トビアス赳(スポ3=神奈川・荏田)のブロックや大塚副将のスパイクで24-24に持ち込む。重藤、伊藤のブロックや大塚副将のサービスエースで逆転し、26-24で第1セットを先取した。

 

スパイクを打つエース・大塚

 第2セットは相手の安定した守備から展開される速い攻撃に苦しめられる。4年生でありエースの岡本捷吾や染野輝のスパイク、加藤亞夢のブロックやクイックを中心にブレイクされ、序盤から点差をつけられた。ボールを落とすまいとセッターの佐藤玲(社3=東京・早実)やリベロの荒尾怜音(スポ2=熊本・鎮西)を中心にスパイクを拾うが、最後まで追いつくことができず。19-25でこのセットを落とした。

 第3セットはセンター線を効果的に使った攻撃やブロックといった、早大が得意としてきたプレーが発揮される。伊藤を囮とし、ほぼブロックの無い状態で大塚副将がパイプ攻撃を仕掛け得点。さらに岩本主将のBクイックやサイドからのスパイクなど、セッター・佐藤のトス回しから相手ブロックをかいくぐる多彩な攻撃が繰り広げられた。また、伊藤や大塚副将のブロックポイントで9-6とし、タイムアウトを取らせた。20―14の場面では、4年生エースとしての意地を見せる岡本のスパイクや2本連続のサービスエースを決められ、流れを渡しそうになったが、タイムアウトを取り立て直しに成功。水町のスパイクで連続得点し、25―18とした。

 勝負を決めたい第4セット。序盤からブレイクを重ね、点差を広げる。大塚副将や重藤のスパイク、さらにブロックでプレッシャーをかけ続けたことにより誘発した相手のスパイクミスなどで7-2に。1回目のタイムアウトを取らせたが、その後も早大有利の展開は変わらず。ブロックとフロアディフェンスを連携させた丁寧な守備から着実に1点を重ねる。14―5では2回のタイムアウトを使い切らせた。ここで勝負を決めたい早大とここで終わらせたくない順大。ブレイクの応酬が続くが、早大がリードを保つ。最後はエースの大塚副将がインナースパイクを決め、25-17に。大会5連覇を達成し、涙を流して喜びを分かち合った。

 

優勝を決め泣きながら抱き合う岩本主将(左)と北川主務

 優勝を決め溢れ出るうれし涙が、これまでの険しい道のりを物語っていた。代替わりをした昨年の冬からチームがまとまらず、話し合いを何度重ねても解決できないこともあった。進むべき方向を見いだせないまま迎えた春季関東大学オープン戦、満足のいく結果やプレーを残せず、結果は6勝3敗。試合で勝てず苦しい時期が続いた。

 「このままではいけない」という焦りが募る。チームの足並みをそろえるべく、秋季関東大学リーグ戦(秋季リーグ戦)を迎えるにあたり、岩本がゲームキャプテンを任された。また、日本代表の活動を終えた大塚が戦線復帰し、気持ちを新たに臨んだ。大会序盤は連続得点され相手に流れを渡す場面が見られたが、試合を重ねるにつれ、狂っていた歯車が徐々に噛み合うように。秋季リーグ戦を終えてからは、岩本を主将に、大塚を副将に据える。一方で、4年生はチームの中心となる3年生を陰で支えてきた。4年生は常にコートにいるわけではない。上條レイモンド(スポ4=千葉・習志野)、仲濱陽介(スポ4=愛知・星城)はスタメンとしての出場が叶わない悔しさを抱いていたが、悪い流れを立て直し途中出場としての役割を果たしてきた。また、マネジャーの平田康隆(スポ4=宮崎・日南振徳)や北川諒主務(教4=東京・早実)は裏方としてチームの勝利のために奔走した。「支えてくれている4年生のために」。今大会を前にようやくチームが一つになった。

 大会を通してリードされる場面は多々あった。しかし、すぐに立て直しを図り結束の強さを見せる。紆余曲折を経て強くなった早大は、全ての力を出し切り最高の笑顔で有終の美を飾った。

(記事 西山綾乃 写真 日浅美希、西山綾乃)

 

セットカウント
早大 26-24
19-25
25-18
25-17
順大
スタメン
アウトサイドヒッター 大塚達宣(スポ3=京都・洛南)
アウトサイドヒッター 水町泰杜(スポ2=熊本・鎮西)
ミドルブロッカー 岩本大吾(スポ3=兵庫・市立尼崎)
ミドルブロッカー 伊藤吏玖(スポ2=東京・駿台学園)
オポジット 重藤トビアス赳(スポ3=神奈川・荏田)
セッター 佐藤玲(社3=東京・早実)
リベロ 荒尾怜音(スポ2=熊本・鎮西)

<最終結果>

優勝(5年連続)

<個人賞>

最優秀選手賞 岩本大吾主将(スポ3=兵庫・市立尼崎)

ブロック賞  伊藤吏玖(スポ2=東京・駿台学園)

サーブ賞  大塚達宣副将(スポ3=京都・洛南) 

レシーブ賞  水町泰杜(スポ2=熊本・鎮西) 

リベロ賞  荒尾怜音(スポ2=熊本・鎮西)

 

<集合写真>

1年間お疲れさまでした!

コメント

※他の部員のインタビューにつきましては別途記事に掲載します。

松井泰二監督(平3人卒=千葉・八千代)※以下、記者会見より抜粋

――5連覇を成し遂げてどのような思いですか

結果的に5連覇を達成したのですが、まだ勝った気がしませんね。

――5連覇を成し遂げられた理由は何でしょうか

選手たちの頑張りと、その頑張りが他のチームと比べてうまくできていたところだと思います。

――決勝の勝因は何でしょうか

順天堂大学のチームは、岡本(捷吾)キャプテンと高橋(和幸)君が引っ張っていました。勝ったことを認識していないというのは、二人が頑張ったチームの姿に我々が相当押されてしまったからですね。

――そんな中で優勝を果たしまして、早稲田の選手や4年生にはどのようなメッセージを送りますか

今年はコロナ禍ということもあり、チームの中でも色々なことがありました。それもチーム全員で乗り越えてやってこられたので良かったです。

――応援してくれた皆さんにメッセージをお願いします

このような大会を開いてくださった関係者の皆様に深く感謝を申し上げます。若い人たちは見られて成長していくので、今回に限らずまたバレーボールの大会があった時はぜひ会場に足を運んでいただき、選手たちを応援していただきたいです。

岩本大吾主将(スポ3=兵庫・市立尼崎)

――見事な優勝でしたが、今の思いを教えてください

この大会を通して4年生は1人もスターティングメンバーに入ってなかったのですが、4年生のためにという大会だったので、最後優勝決めた時に、4年生がありがとうという言葉をかけてくれて、やっぱり溢れるものがありました。4年生のために優勝できたのは良かったです。

――勝因は何だったのでしょうか

準決勝の中央大学戦では完璧すぎるゲームをできました。しかし今日はセンターコートで、正直全然みんな良いプレーができませんでした。先生から集合をかけられたときに、チーム全員で協力して1点を取るという話をしていただいて、チーム全体でコートの中も外も、応援の皆様も一緒に優勝を取れたのかなと思います。

――3年生キャプテンとして戦ったインカレでしたが、どうでしたか

キャプテンを最初にやり始めた時は、大変なことも辛いこともたくさんありました。でも、4年生がやりやすいように任せてくれて、下もついてきてくれて、最後こういうふうに優勝できて結果的に良かったと思います。

――4年生に対して何かメッセージはありますか

今まで4年生に対して「こいつら何やねん」と思うこともありましたが、人がよすぎる4年生がほんまに大好きです。天皇杯(天皇杯・皇后杯全日本選手権)ファイナルを伸ばしてしまったので、今日が最後の試合だったのですが、こうやって笑って終えられることをうれしく思っています。

大塚達宣副将(スポ3=京都・洛南)

――まずは今の気持ちを聞かせてください

まずはこのインカレ(全日本大学選手権)をチーム全員で戦い抜けたことにほっとしています。そして4年生の最後の大会で優勝することができて、4年生には感謝の気持ちでいっぱいです。

――今日のプレーを振り返っていかがですか

センターコートは特別な舞台で、過去2年間スターティングメンバーで経験させてもらったんですけど、やはり慣れないものもあるし独特の緊張感もあります。その中で力のある順天堂大学さんにしっかり勝ち切れたというのは、チーム一丸となって戦いたからだと思います。

――今年、大塚選手はオリンピックやインカレなどありましたが、振り返ってどんな1年でしたか

僕のバレーボール人生で一番濃い1年間だったと思います。充実した1年間を過ごせたのは周りの方の支えのおかげで、今の自分があると思っているので、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

――最後に支えてくれた皆さんにメッセージはありますか

会場に足を運んで下さった皆さん、画面越しで応援してくださった皆さん、本当にありがとうございます。これで今年の早稲田のチームも終わりですが、来年も引き続き強いもう一度早稲田を作って、またインカレ優勝しますので、ぜひ応援お願いします。