三つのテーマを掲げ、V・プレミアリーグの王者から1セットを奪う健闘

男子バレーボール

 大阪市中央体育館で黒鷲旗全日本男女選抜が開幕した。高校・大学・V・チャレンジリーグ・V・プレミアリーグの各カテゴリーから選抜された16チームが、黒い鷲の描かれた優勝旗を懸けて戦う今大会。抽選で4グループに分かれて、第3日目まで総当たり戦のグループリーグが行われる。早大は豊田合成トレフェルサ(豊田合成、V・プレミアリーグ)、FC東京(V・プレミアリーグ)、大分三好ヴァイセアドラー(V・チャレンジリーグⅠ)と同じA組に入った。大会初日は豊田合成と対戦。セットカウント1-3(18-25、19-25、25-20、21-25)で敗れたが、粘り強い守備で健闘した。

 初戦の相手は2015/16シーズンのV・プレミアリーグを制した豊田合成。昨年12月の天皇杯での対戦では、組織的な守備とエースのイゴールを中心とした攻撃を前にストレートで敗れている。国内トップレベルの企業チームに対して、早大は三つのテーマを掲げて試合に臨んだ。まず一つ目はリバウンドを取ること。序盤、早大はサイドアタッカーを軸に攻撃を組み立てる。「相手ブロックが高いので、1回で(スパイクを)決めようとはしなかった」(藤中優斗、スポ2=山口・宇部商)。強引に強打を打つのではなく、リバウンドを取って攻撃を組み立て直すシーンが見られた。二つ目はサーブミスを減らすことだった。慣れない体育館で立ち上がりこそミスが目立ったが、次第にその数は少なくなる。チーム全体でリベロに取られないコースへ、正確にサーブを打ち続けて相手の攻撃を限定した。そして三つ目は、時間差攻撃でブロッカーのマークを外し、勝負どころでスパイカーがしっかりと打ち切ることだ。第1セットから積極的に時間差攻撃を使い、エースの喜入祥充(スポ3=大阪・大塚)らがしっかりと得点を積み重ねた。

高いブロックを相手に果敢に対し打ち込む喜入

 第1、2セットを失ったが、この三つのテーマに沿ってプレーした早大。試合が進むにつれ、徐々にリズムが生まれて守備が機能する。第3セット、6-8の2点ビハインド。藤中と喜入のスパイクで同点に追い付くと、山﨑貴矢(スポ3=愛知・星城)がイゴールのスパイクをシャットアウトする。このプレーに会場は沸き、早大は逆転に成功した。選手たちは声を掛け合ってブロッカーとレシーバーの位置を調整し、その後はリベロの堀江友裕(スポ1=和歌山・開智)を中心に豊田合成のスパイクを上げる。リードを4点に広げて、迎えたセットポイント。最後はレフトから藤中が右腕を振り抜き、スパイクを決める。V・プレミアリーグの王者から、ついに1セットを奪った。続く第4セットを落として敗れたが、粘り強いレシーブとスパイカーの積極的な姿勢に、会場からは惜しみない拍手が送られた。

相手エースを止めた3枚ブロック

 「きょうの結果は一人一人の自信につながる」。試合後、主将の山口頌平(スポ4=長崎・大村工)はこのように手応えを口にした。春季関東大学リーグ戦ではディフェンス面で安定感を欠いていただけに、この試合の内容は今後につながるはずだ。あすは強力なウイングスパイカーを擁するFC東京との対戦が控えている。堅い守備とコンビバレーで金星を挙げられるか。

(記事 渡辺新平、写真 鎌田理沙、藤原映乃)

セットカウント
早大 18-25
19-18
25-20
21-25

豊田合成トレフェルサ
スタメン
レフト 喜入祥充(スポ3=大阪・大塚)
レフト 藤中優斗(スポ2=山口・宇部商)
センター 加藤久典(スポ4=東京・早実)
センター 山崎貴矢(スポ3=愛知・星城)
ライト 田中健翔(スポ4=熊本・鎮西)
セッター 山口頌平(スポ4=長崎・大村工)
リベロ 堀江友裕(スポ1=和歌山・開智)
コメント

山口頌平主将(スポ4=長崎・大村工)

――きょうの試合にどのような気持ちで臨まれましたか

春リーグが3勝3敗で黒鷲旗(全日本男女選抜)前の前半戦を終えることになりました。不本意というか、目標通りに前半戦を折り返すことができませんでした。チームの雰囲気的にも自信がなくなったり、うまくいかないもやもやの中で大阪に入りました。きょうはV(プレミア)リーグのチャンピオンと戦いましたが、このような方と戦う機会は滅多にありません。なので、とにかく思い切りプレーしてました。きょうはサーブを攻めながらミスを減らすということと、ブロックが高いのでブロックフォローを絶対に落とさないということを意識しました。また、パイプなどのバック攻撃を増やしていき、リーグではミスを恐れてつなぐようなプレーが多かったので積極的に打ちに行く、という三つの目標に立てました。その三つのことをみんなで共有しながらプレーを最後まですることができたと思います。きょうの結果は一人一人の自信につながるものになったのではないかと思います。

――きょうはレセプションが良かったように見えました、いかがでしたか

相手のイゴールさん(豊田合成トレフェルサ)がすごいサーブを打ってきました。しかし、それ以外は序盤から大量リードを奪われるような展開もありませんでしたし、相手もミスが続いていたので終始攻めるようなサーブは打ってきました。そして、レシーバーは最後まで集中力を切らさずによく返してくれたと思います。

――ブロックフォローなど守備の意識や粘り強さが見られましたがいかがでしたか

前半戦を終えた後にミーティングで一回自分たちのビデオを見返したり、自分たちのデータをアナリストに出してもらい、前半戦の振り返りをしました。ブロックがそろっていないだとか、ブロックの手が不完全な状態の時に当てられて変なところに飛ばしてしまったりという場面が多かったです。ブロックポイントも出ず、ブロックがバラバラだから後ろのレシーブも機能しないという悪循環が起こっていました。なので、ブロックからもう一回真っすぐ出すだとか、そこから抜けたところにしっかりレシーバーが位置取りをするということをもっと徹底していこうときょう臨みました。Vリーグのチーム相手にもそういうレシーブの粘りとかでは負けてないと思いました。

――ブロックも機能していました

(相手のボールが)上がらないなというところは捨てて、スパイカーの的を絞りました。ラリー中はイゴールさんに集まるということがわかっていたので、しっかりそこに3枚ブロックを付けるだとか、1枚でも真っすぐ出すだとかということを終始徹底できたことで、ブロックの本数や、粘りにもつながったのではないかと思います。

――チームの雰囲気も含めきょうのプレーはワセダのやりたいかたちを出せたのでしょうか

体格が全然違うので、小さいながらにもっとチーム全体としてレシーブだとか細かいプレーで勝たないと勝利というものはないと思います。もっとやるべきこととか、これは通用するんだということが分かった一試合になったと思います。

――あしたに向けて

きょういい試合はできましたけど、あしたもきょうみたいな雰囲気やきょうみたいな一回一回の打ち合わせ、最後まで集中を切らさないことなど一人一人がやることをやらないとこういうバレーはできません。きょうはできた、あしたはできないということではチームの成長はないと思います。なので、きょうできたことでもっと詰めていかないといけないところをミーティングで話し合い、Vリーグの方の胸を借りながら全力でぶつかって行きたいなと思います。

喜入祥充(スポ3=大阪・大塚)

――天皇杯以来となる豊田合成トレフェルサとの試合でしたが、振り返ってみていかがですか

相手が強いのは分かっていましたが、自分たちが思い切ってプレーできたので良かったと思います。

――きょうの試合に向けて取り組んできたことは何でしょうか

きょうの試合に向けてというのはあまりありませんでした。ただ、自分たちのやるべきことというのが決まっていたので、そこをきのうのミーティングで徹底してやろうということになりました。それができたのかなと思います。

――そのやるべきことというのは具体的には何でしょうか

大まかには三つあります。まず、サーブは一人で誰にも邪魔されずに打つ個人プレーなので、それのミスを減らすことです。それとブロックが大学と違って高いのでリバウンドを取ることと、自分が打つのかつなぐのかの判断をしっかりとすることです。そういう部分がきょうの試合ではできたのかなと思います。

――サーブミスはありましたが、相手のリベロを外すなど目的を持って攻めていました

そうですね。組織的にやれていました。初めは体育館にみんな慣れていなくて、やろうとしていたことができていませんでした。それでも途中からは、自分たちで調整してできたので良かったと思います。

――先ほどお話にもあったリバウンドに関しては、喜入選手も藤中優斗選手(スポ2=山口・宇部商)も良かったと思いますがいかがでしょうか

まだリバウンドしたボールが100%攻撃につながっているかと言われたら、そうではないです。その1本のミスで試合を落とすこともあるので、しっかりと詰めていきたいです。

――喜入選手のレセプションは非常に良かったと思いますが、振り返ってみていかがですか

自分自身すごく試合を楽しめていました。そういった部分でレセプションであったり、スパイクであったり、いいプレーが出ていたのだと思います。

――チーム全体として声が出ていて、ムードが良かったと思います

相手は格上なので、自分たちはチャレンジャーの気持ちでできたのが一番良かったと思います。

――ブロックとレシーブの関係が良く、きょうの試合は自信になったのではないでしょうか

レシーブもよく上がっていました。相手は大学リーグにはいないようなチームなので、その中でできたことは自信につながったと思います。

――あしたのFC東京との試合に向けて意気込みをお聞かせください

あしたもやることは一緒です。自分たちのいいプレーがいっぱい出るように精一杯やって勝ちにいきたいと思います。

藤中優斗(スポ2=山口・宇部商)

――きょうの試合の手ごたえは

相手が格上ということもあり、前半戦は僕たちの満足するかたちではありませんでしたが、思い切って向かっていくことにしました。また
この大会に2つ課題を掲げていたので、そのことが少しできたかなと。これからの試合に少しでもつなげられたかなと思います。

――課題とは具体的に

相手ブロックが高いので、リバウンドというか、スパイクを1回で決めようとせずに、ブロックフォローに入ることと、バックアタックを増やして真ん中の攻撃を中心に攻撃していくことです。

――きょうのレセプションはいかがでしたか

相手があまりサーブを攻めてこなかったのでやりやすかった部分はありました。ただ、チャンスボールなどそれほど攻めていないボールの中で僕自身もっと拾えたボールがあったので、合格点はあげられないです。

――ご自身のスパイクの決定率については

相手ブロックが高かったので、同じ大学生にない高さで最初はびっくりしたのですが、その分逆にそれが見やすかった部分がありました。そこは頌平さん(山口主将、スポ4=長崎・大村工)が僕をうまく使ってくれて、決めることができたので少しは自信になったかなと思います。

――この試合で課題と収穫はありましたか

収穫は自分たちで攻めていこうということと、2つの課題を少しは出せたかなというところだと思います。取れるセットだったと思うので、前半ついて行くことだったり、我慢強さが課題かなと思います。

――あしたの試合に向けて

きょう負けはしましたが、自分たちの自信になるいいかたちができたと思います。あしたはきょうより真ん中の攻撃を中心にして行きたいです。あしたも相手ブロックは高いと思うので、難しいときはリバウンドをとって、1点でも多く取れるように頑張りたいです。