戦いの幕開けはそう甘くはなかった。ついに迎えた春季関東大学リーグ戦、早大の初戦の相手は東京学芸大。決して勝てない相手ではなかった。しかし自らミスを重ね1セット目を落とす。2セット目からは加賀優太(商3=東京・早実)を投入し得点を稼ぐが、一方では連係ミスが目立つ。そのままプレーは改善されずセットカウント1-3(18-25、25-20、14-25、23-25)。初戦でまさかの敗北を喫した。
立ち上がりから不安定さが見受けられた。やっとの思いでトスを上げても、スパイクが決まらない。攻撃の要である田中健翔(スポ4=熊本・鎮西)のスパイクもミスが目立った。自らのミスにより相手に主導権を渡してしまい、1セット目を取られてしまう。2セット目、早大は巻き返しを図る。確実に調子を合わせてきた加賀が、なかなか得点を決めることができない喜入祥充(スポ3=大阪・大塚)に代わってコートに入る。そこからは加賀が攻撃の軸となり、加えて4年生の田中や加藤久典(スポ4=東京・早実)が得点を重ね2セット目をもぎ取った。
スパイクでチームに得点をもたらした加賀
しかし、セットカウント1-1で迎えた第3セット。「(ブロックについて)まだ完成しきってない中ではあるが、それにしてもひどかった」と加賀が語るように、第3セットはブロックの甘さが命取りとなった。とにかくこれ以上譲れない早大は、加賀を中心にひたすらスパイクを打つが、相手のブロックに何度も阻まれてしまう。一方自身のブロックミスで相手に得点を許し、点差が広がっていく。そのまま3セット目も落としてしまった。「自分が決めきらなければいけないと思った」(加賀)。その言葉通り、4セット目で加賀はすさまじい勢いで得点を重ねていく。しかし周りの選手は調子が上がり切らず、主将の山口頌平(スポ4=長崎・大村工)や加賀への負荷がどんどん重くなっていく――。一度は追い付くも、疲労もありセット奪取は果たせず、試合は終了した。
主将として、そしてセッターとしてチームをけん引した山口
山口は「4年生が一人一人役目や責任を果たすことができなかった」ときょうの敗因を振り返った。また松井泰二監督(平3人卒=千葉・八千代)も「福山汰一(平28スポ卒=現ジェイテクトSTINGS)の代わりを加藤とか田中がやらなければいけないのにそれが全くない」と4年生に向けて厳しい指摘をした。確かに主将の山口や加賀が試合で奮闘する一方、田中や加藤の動きは硬く映るものがあった。昨年はたった一人の4年生であった福山が早大の柱だったように、ことしのチームも最高学年が一つの柱とならなければ、これから先も厳しい展開が予想される。チームの軸はぶれてはいけない。いま早大の前には、優勝のため越えなければいけない高いカベがそびえたっている。
(記事 鎌田理沙、写真 川浪康太郎)
セットカウント | ||||
---|---|---|---|---|
早大 | 1 |
18-25 25-20 14-25 23-25 | 3 | 東京学芸大 |
スタメン | ||||
レフト 喜入祥充(スポ3=大阪・大塚) レフト 藤中優斗(スポ2=山口・宇部商) センター 加藤久典(スポ4=東京・早実) センター 山崎貴矢(スポ3=愛知・星城) ライト 田中健翔(スポ4=熊本・鎮西) セッター 山口頌平(スポ4=長崎・大村工) リベロ 堀江友裕(スポ1=和歌山・開智) |
コメント
松井泰二監督(平3人卒=千葉・八千代)
――初戦まさかの敗北となってしまいまいましたが敗因は
敗因は4年生ですね。基本的に山口(頌平主将、スポ4=長崎・大村工)に全てを任せてしまって、特にコートに入っているメンバーが分散してストレスを感じていないという状況が顕著に表れていました。その分、頌平はキャプテンもやらなきゃいけない、トスも上げなければいけないと全部やらなければいけない状況なので、厳しい4年生だなと思いました。
――福山汰一前主将(平28スポ卒=現ジェイテクトSTINGS)が抜け、山口選手以外の4年生の自覚が足りないということでしょうか
足りませんね。福山の代わりを加藤(久典、スポ4=東京・早実)とか田中(健翔、スポ4=熊本・鎮西)がやらなければいけないのにそれが全くないです。
――今年度もセンターを中心にやっていくのですか
そうですね。センター中心でやっていきたいのですが、まだレセプションがちょっと安定しない部分があるので、その分使えなかったというのが反省ですね。
――ブロックはまだ完成していないという状況ですか
加藤なんかもブロックに対する考え方がやっぱり甘いので、もう少し積極的にいろんなこと考えられる選手になっていかないと困りますね。
――リベロが後藤光明選手(社4=東京・早実)から堀江友裕選手(スポ1=和歌山・開智)に変わりました
彼は世界大会を経験したり下の世代での日本代表でもあるので育てなければいけないということと、堀江を先に行かせてもしうまくいかない場合には4年生が後から行くというかたちにしたので、使い方としては間違ってなかったと思いますね。
――山口選手、加藤選手を武藤鉄也選手(スポ1=東京・東亜学園)、小林光輝選手(スポ2=長野・創造学園)と二枚替えしていました
練習でもやっていた通りですね。小林と武藤もいいところがあるので、それを出そうと思ってます。
―― 喜入祥充選手(スポ3=大阪・大塚)に代わり加賀優太選手(商3=東京・早実)を投入しました
きょうは喜入はサーブレシーブもスパイクもいいところが出ていませんでした。加賀がすごく調子が良かったものですから、調子が悪いサイドの選手がいたら加賀を入れようと決めていたので加賀にしました。
――加賀選手は昨年度の全日本大学選手権を通してレベルアップしているように見えました
高さがさらについてきて、レセプションでもサーブ狙われても何とか頑張るようになったので、非常にたくましい存在だと思います。
――きょうの試合を終えて春季関東大学リーグ戦の展望をお願いします
相手ではなくて自分たちの中で4年生の自覚がなく、頌平に頼り切ってしまっているチームの状況というのを周りが分かっていません。それを解決しない限りはなかなか勝つことは厳しいですね。
山口頌平主将(スポ4=長崎・大村工)
――初戦を終えて、率直な感想をお願いします
負ける相手ではなかったのですが、自分たちのミスばかりで何もいいところが出せずに終わってしまったかなと思います。
――開幕戦ということで、いつもと違った部分はありましたか
新1年生もスタメンに一人入れて、下級生には思い切りプレーしてもらって4年生がチームを引っ張っていこうということで挑んだのですが、その4年生が一人一人役目や責任を果たすことができませんでした。そういう姿では下級生もついてこれないと思うので、4年生がしっかりしないことには始まらないと思います。
――主将として臨む初めての試合でしたが、特別に意識したことはありますか
緊張すると言っていた下級生もいたので、そういう下級生に声掛けをしたりして、できるだけ思い切りプレーできる環境をつくろうということは意識していました。ですが、それに伴うプレーができていなかったので、自分もキャプテンとしての仕事は果たせなかったかなと思います。
――試合は序盤から押される展開となりましたが、気持ちの面ではいかがでしたか
守りに入っていたので攻めなければ始まらないということはベンチでも言っていたのですが、点数的に序盤で走られる展開ばかりだったので、そうなると厳しい部分があると思います。
――新体制となりましたが、新メンバー間でのコンビネーションはいかがでしたか
去年から抜けた選手は一人しかいないのでメンバーは大して変わっていないのですが、まだチームの軸がない状態で試合をしてしまっているので、それがいけないなと思います。
――あすの試合への意気込みをお聞かせください
下級生は思い切りプレーしてくれているので、あとは4年生が姿勢とプレーで引っ張るだけだと思います。みんなには切り替えてプレーしてほしいし、自分たちも引きずらずにあした勝てるための準備をしたいと思います。
加賀優太(商3=東京・早実)
――リーグ戦初日ということでしたが、加賀選手から見たチームの手応えは
去年とメンバーが1人しか変わってなくて完成度としては悪くなかったと思うのですが、自分の持ち味を出しきれていませんでした。それは外で見ていても、実際自分が中に入っても思いました。
――加賀選手は2セット目からコート入りして、着々とワセダに得点をもたらしていましたが、その点を踏まえて自己評価するといかがですか
みんな緊張があったのか自分の力が出し切れていませんでしたが、自分は調子が良かったです。自分が決めきらなければいけないと思ったのですが、最後の最後で大事なところで決めきれなかったのはだめだったと思います。
――久しぶりの公式戦ですが、去年と比べてご自身の成長は感じられましたか
自分は苦しい場面で出ることが多いと思うのですが、今回は去年と比べて落ち着いて自分のプレーに入れたかなと思います
――福山汰一前主将(平28スポ卒=現ジェイテクトSTINGS)がチームを去られて、チームの強化対象の1つにブロックがあったと思いますが、本日のブロックの完成度はいかがですか
まだ完成しきってない中ではありますが、それにしてもひどかったと思います。長い目で見て、全カレ(全日本大学選手権)までに仕上げられたらと思います。
――あしたの日体大戦へ向けて
日体大も去年に比べてチームがだいぶ変わっていて、フレッシュな1年生の選手も多いと思います。きょうも初戦勝ちましたし、勢いがあると思います。こちらも受けに回らずに勢いよく、入りを気を付ければ勝てる相手だと思います。