全日本大学選手権展望

野球

 10勝1敗1分という圧倒的な強さで東京六大学春季リーグ戦(リーグ戦)を制した早大。他の5大学全てから勝ち点を奪う完全優勝を達成したのは、2008年秋以来となる快挙だった。そして、早大は東京六大学連盟の代表として全日本大学選手権への出場が決定。大学日本一の座を懸けた、今季最後の決戦の幕が上がる。

 リーグ戦で採用されている2戦先勝の勝ち点方式とは異なり、トーナメント方式で行われる全日本大学選手権。一戦必勝の負けられない試合が続くため、投手陣の踏ん張りが必須となる。絶対的エースに成長した大竹耕太郎(スポ2=熊本・済々黌)に加え、カギを握るのは2番手以降の投手の活躍。短い期間で連戦が続くため、大竹一人に負担を掛けずに勝ち抜くことができるか。慶大2回戦で初先発し好投した小島和哉(スポ1=埼玉・浦和学院)や、今季調子の上がり切らない竹内諒(スポ3=三重・松阪)らの奮闘が命運を握る。また、アンダースローの吉野和也(社3=新潟・日本文理)も打者の目線を変えられるだけに貴重な存在だ。投手全員の総力戦で最小失点に抑え、1勝をもぎ取りにいく。

慶大1回戦では自身初の完封勝利を挙げ、優勝に大きく貢献した大竹

 一方の打線も大量得点は簡単には望めないだけに、1点を確実に取る野球ができるかが重要になる。その中で期待がかかるのは、1番を任されている重信慎之介副将(教4=東京・早実)の働き。リーグ戦では9盗塁、13得点を記録しており、いずれもリーグトップの数字をたたき出している。中軸には茂木栄五郎(文構4=神奈川・桐蔭学園)丸子達也(スポ4=広島・広陵)ら今大会でも屈指の強打者が控えているだけに、重信や河原右京主将(スポ4=大阪桐蔭)が走者としてプレッシャーをかけている状態でクリーンアップに回したいところ。先制点を取って主導権を奪えれば、早大優位に試合を展開することができる。

切り込み隊長として大暴れが期待される重信副将

 しかし出場する各大学も強豪ぞろいのため、思い描くような試合運びは簡単にはさせてくれないだろう。初戦で対戦が予想されるのは、桜井俊貴、西川大地の強力な二枚看板を擁する立命大。共に関西学生春季リーグ戦では先発で防御率0点台という圧巻の数字を残しているだけに、粘り強く戦うことができるかが勝負の分かれ目となる。さらに今季1部に昇格してそのまま東都大学連盟を制した専大、昨年度の全日本大学選手権王者・東海大など、強力なライバルは数多い。

 『早慶戦の勝ち点』、『リーグ戦優勝』、『日本一』。これは髙橋広監督(昭52教卒=愛媛・西条)が監督への就任が決まった際に掲げた、3つの目標だ。就任1季目にして既に2つを達成し、残るは『日本一』のみとなった。もう一度、全員野球で東京六大学の頂点から全日本大学選手権の頂点へ――。ついに始まる最高峰の戦い。その激戦を、見逃すな。

(記事 角田望、写真 河野美樹、三上雄大)