東北の地で、早大が強さを証明した。東日本大学選手権決勝の相手は、同じ関東1部リーグの東海大。第1セットを先取して迎えた第2セットは、相手のサーブに苦しみ今大会初めてセットを落とす。しかし、それ以降はセンターを軸にしたバレーでセットを連取。セットカウント3-1(25-22、21-25、25-21、25-14)で、16年ぶりとなる優勝を決めた。
「いいモチベーションで試合に臨めた」(山口頌平副将、スポ3=長崎・大村工)。決勝の舞台でも、選手たちの表情もプレースタイルもいつもと変わることはなかった。山口がサーブで特定の選手を狙い、相手の攻撃コースを限定。いきなりの3連続得点で波に乗ると、そのまま相手に勢いを渡すことなく、難なく第1セットを先取する。
エースとしての活躍を見せた喜入(左)と、指揮官不在の中チームをけん引した福山
第2セット、自分たちのミスからリズムを崩すと、東海大が勢い付く。そして、追い打ちをかけるように襲い掛かる強烈なジャンプサーブ。サービスエースを2連続で献上するなど、その差は一時8点まで広がってしまう。しかし、そこで諦めてしまうような選手は誰一人としていなかった。そこから立て直し、5連続得点で19-21と2点差まで迫る。追い上げむなしくこのセットは落とすが、次につながるセットとなった。
第3セットは終盤まで一進一退の攻防が続くが、ここで喜入祥充(スポ2=大阪・大塚)がエースとしての真価を発揮する。23-21と差は2点あるが、決してサーブミスの許されない状況。それでも喜入は臆することなく攻め、この場面でサービスエースを決めてみせた。そんな先輩の姿に釣られたのか、藤中優斗(スポ1=山口・宇部商)が25点目となるスパイクを放つ。「先輩たちが声をかけてくださるので、思い切ってやることができた」と語ったスーパールーキー。二段トスを決めきり、頂点まであと1セットとする。もう東海大に、早大の勢いを止める力は残されていなかった。福山汰一主将(スポ4=熊本・鎮西)のクイックを皮切りに、序盤から主導権を握る。そして訪れた歓喜の瞬間――。リザーブ陣も駆け寄り、試合を戦い抜いた選手たちからも思わず笑みがこぼれた。
16年ぶりの優勝が決まり、喜びを分かち合う選手たち
春季関東大学リーグ戦(リーグ戦)こそ2位に終わったが、ついにつかんだ今季初タイトル。昨年は無冠に終わったチームが、なぜここまで強くなれたか。「本当に自分たちでよくやれている」と、松井泰二監督(平3人卒=千葉・八千代)不在の中で部を引率した塚田圭裕コーチは語った。ことしは4年生が主将の福山のみ、レギュラー陣も3人が新戦力と、決して経験の多いチームではない。だからこそ、昨年の悔しさを知る山口や喜入らが福山主将を支えようと奮起。4年生を勝たせたいという思いが、自然と下級生の気持ちを一つにしたのだ。しかし、これで満足するわけにはいかない。「(リーグ戦で負けたところに)しっかりと勝てるチームを作っていきたい」(福山)。再びの学生日本一へ向けて、まだまだ戦いは続く。
(記事 谷口武、写真 谷口武、渡辺新平)
早大男子バレーボール部
セットカウント | ||||
---|---|---|---|---|
早大 | 3 |
25-22 21-25 25-21 25-14 | 1 | 東海大 |
スタメン | ||||
レフト 喜入祥充(スポ2=大阪・大塚) レフト 藤中優斗(スポ1=山口・宇部商) センター 福山汰一(スポ4=熊本・鎮西) センター 加藤久典(スポ3=東京・早実) ライト 田中健翔(スポ3=熊本・鎮西) セッター 山口頌平(スポ3=長崎・大村工) リベロ 後藤光明(社3=東京・早実) |
個人賞
最優秀選手賞 福山汰一主将(スポ4=熊本・鎮西)
スパイク賞 加藤久典(スポ3=東京・早実)
セッター賞 山口頌平副将(スポ3=長崎・大村工)
レシーブ賞 喜入祥充(スポ2=大阪・大塚)
賞を受賞した4人。左から福山、山口、喜入、加藤
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コメント
塚田圭裕コーチ
――今大会を振り返ってみていかがですか
監督不在の中、自分たちで自立してやるということを普段から松井先生(泰二、平3人卒=千葉・八千代)が指導されて、そういう練習をしてきたのではないかと。いつも通りの力を発揮できたことが、今回の大会の結果につながったのだと思います。
――きょうの試合前のチームの雰囲気はいかがでしたか
本当に自分たちでよくやっていると思います。予選の時にアップなどであまり良くない入りをしていて、その大学相手に結構苦しい戦いをしてしました。それを自分たちで反省して、3日目の日体大や順大との試合では、相当自分たちの意識を変えてやっていたと思います。最終戦でも関係なく、別コートでアップの時から「ああ、これなら大丈夫だ」というようにやってきて、良い入り方ができたと思います。
――アップの際には気合いを入れて指導されていました
僕はそれしかないので(笑)。本当に細かい指導や、大きくつくるということは松井監督がよく言われているのですが、そのつくってきたものは普段から指導されてきたのだなと思います。僕はいろいろなことは言わず、選手同士でアイデアを出しながらやるということができたと思います。
――昨年のチームと違う点は何だとお考えでしょうか
体作りを含めてよりきついことを自分から望んでやっています。接戦になったとき、きょうも2セット目から自分たちの空気を悪くしてしまったのですが、そういった苦しい場面を普段やっているからこそ、自分たちで切り替える力があるのだと思います。リーグ戦を含めて競った点を取る、そういう力がついたのだと思います。
福山汰一主将(スポ4=熊本・鎮西)
――目標であった優勝を達成されたいまのお気持ちをお聞かせください
春季リーグで東海大とやって3-1で勝っているので、本当はみんなで失セットなしで勝とうという話をしていました。しかし、ちょっと相手のサーブも攻めてくるかたちで苦しい展開になってしまいました。それでもみんな耐えてしっかりと持ちこたえて、なおかつ次のセットからは自分たちのバレーができたので、そこは彼らのメンタルもしっかりと成長しているのではないかと思います。
――監督不在の中で、先ほどおっしゃったメンタルの面で福山選手の貢献は大きいのではないでしょうか
いえ。自分は東日本インカレ前まで1週間しかやっていないので、自分がいなかった2週間ちょっとを自分たちでやってくれたことが、この大会ではすごく大きかったのではないかと思います。
――最優秀選手賞を受賞されましたが、いまのお気持ちはいかがですか
優勝してこの賞を得たので、今後秋季リーグ、全カレでしっかりと勝ちたいと思います
――前日には喜入祥充選手(スポ2=大阪・大塚)が「キャプテンに金メダルをあげたい」とおっしゃっていましたが、後輩の活躍はいかがでしたか
この大会、喜入が久しぶりに跳んでいるなというイメージがきのうもありました。さらにライトの田中(健翔、スポ3=熊本・鎮西)が春季リーグに比べてだいぶ成長して、調子も良くて要所でしっかりと決めてくれるオポジットの選手になってくれたと思います。その辺の一人一人の思いが強かったのではないかと思います。
――秋季関東大学リーグ戦に向けて意気込みをお聞かせください
東日本インカレでは結局春リーグに負けたところと当たっていないので、そこにしっかりと勝てるチームをつくっていきたいと思います。
山口頌平副将(スポ3=長崎・大村工)
――優勝を決めたいまの気持ちを教えてください
監督(松井泰二監督、平3人卒=千葉・八千代)不在の中、自分たちで修正やミーティングなどを繰り返しながらこの大会期間は戦い抜けたかなと思います。
――優勝できた要因としてはどのようなことが挙げられますか
監督がいなくてもみんなでやろうという意識で頑張れました。
――このチームの強みは
今回の大会でまた、自分たちで考えるバレーというのをかたちにできたのではと思います。
――試合前のチームの雰囲気はいかがでしたか
アップの時からみんないいモチベーションでした。昨夜のミーティングもみんな意見を言い合えていましたし、アップでもいいモチベーションで試合に臨めました。
――きょうはどのようなことを考えながらプレーされていましたか
トス回しに関しては、いつも通りセンターを基点にしてやろうと考えていました。キャッチもよく(自分に)返してくれていたので、自分の思うようなゲーム展開ができていました。
――最後のサーブミスは悔やまれますか
ちょっと調子に乗っちゃいましたね(笑)。
――唯一落としたきょうの第2セットも終盤は粘れたように見えますが、第2セットを振り返って
第1セットは相手に最初ミスが続いたのでそこから入れるサーブになっていきました。それで自分たちの思うようなバレーができたので、第2セットは(相手も)また(サーブで)攻め直そうということで攻めてきました。それでサーブを決められるようになってしまったので、サービスエースを決められたり、崩れる場面も増えて、自分たちが我慢できずにやられてしまいました。またキャッチの精度や、キャッチが崩れたときにどうやって早めに立て直すかが今後の課題かなと思います。
――セッター賞を受賞した感想をお願いします
正直うれしいですが、春季リーグでセッター賞を受賞した中大の関田誠大主将などがユニバーシアードの合宿でいなかったりするので…。でもレシーブをしっかり自分のもとに上げてくれたチームメートや、悪いトスでも打ち切ってくれたスパイカー陣に感謝したいです。
――昨年は悔しいシーズンを過ごされましたが、それからことしに向けて意識などで何か変わったり変えたりしたことはありますか
練習に対する意識などは、自分も大学3年目ということで年々高くなってきていると思います。
――秋は厳しいマークが予想されますが、どのようなチーム作りをしていきたいですか
リーグ戦や全日本インカレ(全日本大学選手権)のトーナメントなどは長丁場になってきます。(自分たちは)波のあるチームなので、その波をいかに小さくしていくかです。調子の悪いときでもどうやって勝ち抜くかが今後の課題になってくると思います。
加藤久典(スポ3=東京・早実)
――今大会を振り返っていかがでしたか
予選から慶大と当たって、監督が今回不在でしたが、自分たちでしっかりアップからできていたので良いかたちで入れたんじゃないかと思います。
――東日本インカレの優勝は16年ぶりです
みんな東日本は絶対にタイトルを取るという意気込みを持って来ていたので、優勝できたことは素直にうれしいです。
――スパイク賞を受賞されましたが、今大会のスパイクはいかがでしたか
勝つためには、まずはセンター線が効かないと駄目なので、そこで賞を取れたのはすごくうれしいし、また山口(頌平、スポ3=長崎・大村工)のトスがすごく良かったので感謝しています。
――U-23の遠征にも参加した今季、最も成長したと思う部分はどこですか
世界を知れたということで、高い意識を持って練習したりだとか、そういうことができたので良かったです。
――秋季リーグに向けた意気込みを聞かせてください
秋もまた優勝を狙っていくので、そのために夏しっかり練習して頑張りたいと思います。
喜入祥充(スポ2=大阪・大塚)
――優勝おめでとうございます!いまのお気持ちは
ありがとうございます。やっぱりうれしいですけれど、(シーズン)半分終わっただけなので、残りの秋季リーグと全日本インカレ(全日本大学選手権)でいい結果を残せるよう、頑張っていきたいです。
――大学入学後初の優勝です
そうですね。よかったです、うれしいです(笑)。
――決勝戦を振り返っていかがでしたか
相手のケガに助けられた部分もありますが、自分たちがいまできることを精いっぱいやれたんじゃないかなと思います。
――大会を通してエースらしい活躍が目立ちました
自分の中ではまだまだやりきれない部分もありますが、要所で決めきれたことは良かったです。
――リーグ戦に続き今大会でもレシーブ賞を受賞されるなど、以前から目標にされている専田和也前主将(平27スポ卒=現パナソニック)に着実に近づけているのではないでしょうか
いやー、賞はもらえていますが、内容がまだ備わっていないので…。
――理想としてはこれからどのような選手になっていきたいですか
打つ方は今大会で結構合格点を与えられると思います。あとは専田さんを超えられるようなレシーブ力が求められますね。喜入が拾えばボールが落ちへんなと言われるぐらいの選手になりたいです。
――昨年から特に成長された点はどのようなところでしょうか
ブロックとの関係がうまくなりだしたのがきっかけです。
――来季はどのようなシーズンにしたいですか
まだ細かい部分でのミスは目立つので、きょうも1セット落としましたし。その1点にこだわるというか、全部落とさず勝てるような、固いチームを作りたいなと思います。
――ガッツポーズが派手になっていますが、何か意識していることはあるのでしょうか
ことしスタメンで入っている藤中(優斗、スポ1=山口・宇部商)がちょっと冷静と言いますか、そういう感じの選手なので(笑)。盛り上げ役は自分かなと思っているので、チームをしっかり盛り上げていきたいなと思います。
藤中優斗(スポ1=山口・宇部商)
――16年ぶりの優勝となりましたが、決勝戦を振り返って一言お願いします
自分たちのバレーができたことが一番の勝因です。中でも、4年生の福山汰一主将(スポ4=熊本・鎮西)を優勝に導いてあげたいという気持ちで全員が団結してできたと思います。
――大学入学後初のセンターコートを前に、緊張や疲れは感じませんでしたか
緊張は全くしませんでした。先輩たちが声をかけてくださるので思い切ってやることができました。
――いつも以上に気合いを入れているように見えた第4セットはどのような気持ちで臨みましたか
春季リーグはあと一歩というところで悔しい思いをしたので、練習してきたことを実戦で出そうという強い気持ちで最後の1点まで戦うことができました。
――大学に入って初のシーズンはいかがでしたか
大学に入って高校とは違う高さやレベルがあったので、最初は戸惑いばかりでしたが、練習の内から先輩たちが声をかけてくれたりアドバイスしてくださったり、とにかく先輩の支えがあって成長できた前半だったと思います。後半もいつまでも頼ってはいられないので、自分がもっと得点できるように、活躍できるように頑張りたいと思います。
――秋季関東大学リーグ戦に向けた意気込みを聞かせてください
個人としては、もう少し守備の面や攻撃の面でしっかり1点が取れるように貢献していこうと思っています。チームとしては、やはりセンター線が自分たちのチームは軸なので、常に自分たちの良いバレーができるようにモチベーションや気持ちをつくって後半戦も頑張っていきたいと思います。