新体制で開幕戦勝利

男子バレーボール

 春季関東大学リーグ戦が開幕した。成績が振るわなかった昨年度の悔しさを胸に、福山汰一主将(スポ4=熊本・鎮西)率いる新体制で順大との初戦に臨んだ。緊張からか動きに固さが見られた第1セット。相手のライトに対応できずこのセットを失う。だが、第2セット以降は安定したサーブレシーブからセンターを軸に攻撃し、第2、3セットを取った。第4セットは序盤からリードを広げていたが、中盤に連続失点し接戦となる。それでもサイドアタッカーが要所でスパイクを決め、セットカウント3-1(15-25、25-19、25-17、25-23)で勝利を収めた。

 新体制の明確な方向性がうかがえた。第2セット以降、リベロの後藤光明(社3=東京・早実)や藤中優斗(スポ1=山口・宇部商)を中心にサーブレシーブが安定。「一本目がセッターに返せるというかたちが作れつつある」と松井泰二監督(平3人卒=千葉・八千代)が話すように、オフに取り組んできたサーブレシーブの成果が表れた。攻撃はセンターを主体に組み立てる。試合の序盤から加藤久典(スポ3=東京・早実)の高さを生かしたクイックが決まったことで、相手ブロッカーのマークを分散させた。攻撃の選択肢が増え、田中健翔(スポ3=熊本・鎮西)がセンターからスパイクを放つなどサイドアタッカーを有効に使った攻撃を展開。高い守備力を基盤とし、センターを積極的に使う攻撃が今季のチームスタイルになりそうだ。

得点を挙げ、喜ぶ選手たち

 早大の新たなエースとして喜入祥充(スポ2=大阪・大塚)が存在感を示した。上がってきたトスを確実に得点につなげ、難しい体勢でもスパイクを打ち切る。守備面ではレシーブ技術の向上が見られ、文字通り攻守の要として自身の役割を全うした。エースとしての自覚が表れた象徴的なプレーがあった。第4セット、24-23で早大のマッチポイントとなり、サーバーは喜入。サーブで相手を崩し、攻撃を限定したい場面だった。リスクの高いジャンプサーブだが、強気に攻める。縦回転がかかった速いサーブ。ボールは鋭く曲がり、相手のレシーブを大きく弾いた。試合を決するサービスエース。頼もしいエースが今季のチームをけん引している。

エースとしてチームをけん引する喜入

 初戦ということもありミスが散見されたが、チーム方針に沿った試合運びができた。また、新体制で定位置を確保した加藤と田中、ルーキーの藤中がそれぞれの特徴を生かしたプレーを見せ、次戦以降の活躍に期待が持てる。「日本一を目指してやっていく」と今季の抱負を語った福山。早大バレー部が新たな一歩を踏み出した。

(記事 渡辺新平、写真 稲満美也)


セットカウント
早大 15-25
25-19
25-17
25-23

順大
スタメン
レフト 喜入祥充(スポ2=大阪・大塚)
レフト 藤中優斗(スポ1=山口・宇部商)
センター 福山汰一(スポ4=熊本・鎮西)
センター 加藤久典(スポ3=東京・早実)
ライト 田中健翔(スポ3=熊本・鎮西)
セッター 山口頌平(スポ3=長崎・大村工)
リベロ 後藤光明(社3=東京・早実)
コメント

松井泰二監督(平3人卒=千葉・八千代)

――新チーム初勝利、おめでとうございます!

ありがとうございます。

――きょねんと異なり、幸先良いスタートが切れましたが、やはり格別な一勝でしょうか

やはり初戦というのは硬さがあったり、自分たちの良さがお互い、試合の中で出しにくい部分があります。その中で勝てたというのは、本人たちが頑張ったということですね。

――松井監督自身も監督2年目のシーズンですが、気持ちの面でも余裕などはありますか

ことしは4年生が福山(汰一主将、スポ4=熊本・鎮西)一人だけれど、3年生に副将の山口(頌平、スポ3=長崎・大村工)、加藤(久典、スポ3=東京・早実)、田中(健翔、スポ3=熊本・鎮西)、後藤(光明、社3=東京・早実)がチームに入っています。彼らが4年生と同じ気持ちで戦っているというのは大きいかなと思います。それで福山もだいぶ楽になっていると思います。

――3年生のメンバーもきょねん試合に出ていた経験が生かされているのでしょうか

そうですね。ただ実際には加藤と田中は控え要員ではあったので、そういう面では逆にプレッシャーのある中、よく主将・福山のためにやれていると思います。

――試合は出だしにつまずいてしまいました

サーブレシーブが全然(セッターに)返らなかったので、自分たちのセンターを中心とした速い攻撃ができなくなってしまいました。それで、相手に流れが傾いてしまったということだけです。

――ことしもやはりセンターを軸に展開していくのでしょうか

はい。センター主体で考えています。

――サイドの選手たちもよく決められていました

センターあってのサイドだと思うので、やはりブロックを少し分散させるためにはセンターの攻撃は有効でないといけないです。そうしないとサイドも生きてきませんので。

――サイドには新しく田中選手と藤中優斗選手(スポ1=山口・宇部商)を選ばれましたが、決め手はなんでしょうか

田中に関しては攻撃力がチームの中で高くあります。藤中に関しては、サーブレシーブが弱いチームの中で、ディフェンスを固めるために入れました。攻撃の田中、守備の藤中という使い方です。

――藤中選手は実際に好レシーブが見られました

将来的に全日本代表に選ばれてもらいたいという思いでは、レシーブを鍛えてもらいたいというのは頭にあります。

――山﨑貴矢選手(スポ2=愛知・星城)は先発落ちというかたちになってしまいましたが

落ちたというより、いまはミドルブロッカーとしても頑張らせたいと思っていまして、そのトレーニングをしている最中で、もう少し時間がかかるかもしれないです。決して悪いということではないです。

――ポジションに捉われず、サイドの選手がセンターから打ったりする場面も見られましたが、何か変えたことはあるのですか

身長の大きい選手が集まっているわけではないので、バラエティに富んだ攻撃をしていかなくてはいけないです。その分自分たちで動いたりしています。

――全体的にレシーブ力が上がったのではないでしょうか

この冬から春の間に(サーブレシーブの)一本目の練習は入念にやってきましたので、少しずつ成果は出ているかなと思います。

――冬の間はレシーブを中心に基礎基本を徹底したのですか

そうですね。

――いまの新チームの強みはどんなところだとお考えですか

いまのチームの強みは、ディフェンスを固くできるところです。(レシーブの)一本目がセッターに返せるというかたちが作れつつあると思います。

――その新チームのスローガンが『個人日本一から、チーム日本一』ということですが、どのように決められたのでしょうか

4年生と3年生が中心に決めてくれました。個人で戦うのではなく、チームで、全員で、という思いがあるのだと思います。達成しなくてはいけないと思います。

――ピンチサーバーに関しても、昨年の4年生が抜けましたが、どうお考えですか

いまはまだ実際に試合で使って判断する段階なので、最終的にはインカレ(全日本選手権)までに決めたいと思っています。いまはいろいろな選手を試しながら、ミスしたり成功したりするけれども、春が終わった後に経験を積んでいるかも見ながら、最後に向けて選んでいきたいです。

――いまのメンバーも固定というわけではないのですか

固定はしていないです。

――藤中選手などは1年生ということで、長丁場のリーグ戦では体力も心配されると思いますが

そうですね。でもそこには2年生の加賀優太(商2=東京・早実)がいたり、1年生の鵜野幸也(スポ1=東京・早実)がいます。サイドプレーヤーは多くいるものですから、そこはうまく交代で使えていけたらいいなと思います。

――リベロに関してはどうお考えですか

後藤は本当に練習を多くこなしているので、その部分を評価したいと思っています。土屋(健太郎、スポ2=群馬・高崎)に関しても、少し試合から遠ざかっていますが、使っていきたいです。

――土屋選手は副務に就任したことも関係あるのでしょうか

副務は学年から一人選ばなくてはならないですが、実際にはうちはプレイングマネジャーが普通です。練習をしながら、仕事もするというのがうちのスタイルなので。副務だから使わないということはないです。

――改めて今季の意気込みをお願いします

春は練習してきたことがどれだけ出せるかということです。勝ち負けもこだわらなくてはなりませんが、練習してきたことが相手と対峙(たいじ)した時に出せるのか。それはじっくり見ていきたいです。

福山汰一主将(スポ4=熊本・鎮西)

――今季の目標についてお聞かせ下さい

4年生は自分だけですが練習中も良い雰囲気でできているので、前年度に引き続き、今季も日本一を目指してやっていきます。

――どのような主将を目指してらっしゃいますか

後輩に頼る部分も多くなると思いますが、それでも4年生としてしっかりみんなをまとめて引っ張っていけたらいいと思います。

――冬の練習はどのような課題を持って取り組まれていましたか

新チームに入ってサーブレシーブがあまり良くなかったので、とことん1月からサーブレシーブをやっていました。最近は前より入るようになったのですが、まだ(サーブレシーブが)乱れるときは乱れるので、サーブレシーブの練習を継続しています。新しいメンバーが何人か入り、ポジションもこの間の合宿で急に変わったりしたのでコンビを合わせる練習をしてきました。

――今日の試合について、第1セットでは相手のライトに手を焼いていました

順大のレフトがセンターに入るなどポジションがいろいろと変わっていました。その中でライトに入る選手はある程度は予想をしていたのですが、みんな見たことはなかったのでいつも通り(トスが)上がったところにブロックに行くというかたちで対応していました。セットは取られてしまいましたが、1セット目全体を見てライトの攻撃が軸になっていたというのがはっきりしていました。そのため、2セット目からはライトのブロックだけしっかりと張り、レシーブのポジションをしっかり考えながらやっていました。それがちゃんとはまってくれたので(続くセットを)しっかり取れたと思います。

――第2セットでは中盤以降、相手に点差を縮められる場面がありましたが振り返ってみていかがですか

乱れると3、4点簡単に失ってしまいますが、それが春リーグの難しさだと思います。3、4点取られてもしっかりと焦らず自分たちのバレーを展開できるようにやっていきたいと思います。

――きょうはサイドアタッカーが良かったと思いますがいかがですか

新しく(スタメンに)入った田中(健翔、スポ3=熊本・鎮西)がライトで良い活躍をしてくれていました。打つコースも幅広く、近畿の合宿に行ったときから田中が良いスパイクを打ってくれていたので、一つの軸になるのかなと思います。

――ご自身のスパイク決定率が高かったと思いますがいかがですか

途中(決定率が)少し上がったのですが、出だしは全然(トスと)合っていなかったので、試合の初めからしっかりトスに合わせていけるように調整したいと思います。

――次の試合に向けての意気込みをお聞かせください

東京学芸大についてのデータを取ってもらっているので、しっかりと対策を練って一戦一戦しっかりと勝っていけるように頑張っていきたいと思います。

山口頌平副将(スポ3=長崎・大村工)

――きょうの試合を振り返っていかがですか

毎年春リーグの1試合目は負けばっかりで。(きょうの)1試合目も緊張が出たのか、入りが悪かったんですけど、2セット目以降はまた集中力が増して、雰囲気もがらりと変えられたので、そこが良かったと思います。

――このリーグ戦までに、どのような調整をしてきましたか

サーブレシーブに重きを置いて練習してきました。春合宿も1週間くらいあったんですけど、ゲームをたくさんこなして、きょねんよりも良く走って、声の出るチームになったかなと思います。

――サイドアタッカーの顔ぶれが大きく変わりましたが、セッターとしていかがですか

誰に対しても自信を持って、信頼して(トスを)上げられるので本当に助かっています。

――ことし1年間、副将として何を心掛けていきますか

4年生がキャプテンの福山さんしかプレーヤーがいなくて、試合中も汰一さんは半分くらいコートの外に抜けてしまって、コートに3年生以下だけという場面も多くなるので。3年生が中心となって、4年生のつもりで汰一さんをしっかり支えていこうということは(3年生同士で)話していて。ベンチにいる3年生も、ベンチには入れなかった3年生も、コートにいる3年生も、3年生がもっと自覚を持ってチームを支えていきたいと思います。

――リーグ戦の目標は

一戦一戦しっかり大事に戦って、優勝したいと思います。

――あすに向けて意気込みをお願いします

きょうの過ごし方とか、しっかり調整して、また一試合一試合を大事に戦っていきたいと思います。

加藤久典(スポ3=東京・早実)

――初戦勝利おめでとうございます。試合はいかがでしたか

ありがとうございます。正直第1セットではいつも課題に出だしで失敗してしまいました。でも第2セットから切り替えられて勝てたことは、大きいことだと思います。

――先発出場されるのは初めてですか

はい、(大学に入学してから)初めてです。

――緊張などはありましたか

正直しました。でもやるしかないという気持ちだけでした。

――では試合にはスムーズに入れたのでしょうか

そうですね。意外と(スムーズに)入れました。

――要所で決められていましたが、プレー面を振り返っていかがでしたか

クイックで力みすぎてしまいました。セッターの山口(頌平副将、スポ3=長崎・大村工)がうまく使ってくれたので、山口に感謝しています。

――新チームの雰囲気などはいかがですか

雰囲気はみんないいので、今後も継続していきたいです。

――チームもだいぶ若返りました

4年生が主将の福山汰一さん(スポ4=熊本・鎮西)一人なので、そこを僕らがフォローしていかなくてはならないです。新入生を支えるのも僕らの役割なので、その中間でうまく頑張っていきたいです。

――上級生としての自覚なども出てきたのでしょうか

いままではプレー面で指示を出したりすることはできていなかったので、それで松井監督(泰二、平3人卒=千葉・八千代)に叱咤(しった)激励されることも多かったです。きょうはそこも意識してプレーしました。

――加藤選手自身、松井監督からの期待も大きいと思います

期待に応えられるように頑張ります。

――オフには大学日本代表にも選ばれるなど、いろいろな経験を積まれたと思います。いかがでしたか

高いレベルを知ることができたのがすごくありがたかったです。そういう機会を与えてくださった監督や周りの方々に感謝しています。僕はそのレベルに到達しているかまだわかりませんが、高いレベルを知れたことで、このリーグ戦につなげていけたらいいと思ってやってきました。

――キューバの選手と実際に対戦してみていかがでしたか

向こうの選手は身体能力が高い上、一球に対するハングリー精神がすごく強かったです。そこを僕らも見習っていきたいと思います。

――体格面も違いましたか

身長というより、身体能力ですね。

――代表合宿ではどのような練習をされたのでしょうか

基礎練習から入って、(身長の)高い選手を集めてきたので、高さを生かしたプレーができるようにコンビを合わせたりしました。

――新チームではどのような練習に取り組まれているのでしょうか

サーブレシーブが返らないと流れが悪くなってしまうので、その練習はたくさんしてきました。

――実際レシーブ返球率は高かったと思われます

後ろが(ボールを)拾ってくれたので、ブロックをする僕らからしたら助かりました。

――新チームのスローガンが『個人日本一からチーム日本一』ということですが、どのようなスローガンなのでしょうか

チームで日本一になるためには一人一人が日本一になれるレベルの選手でないと日本一にはなれないと話し合いました。例えば僕だったらセンターで日本一に、サイドだったらサイドで日本一に。そういうのを目標にしています。

――背番号も『3』という、歴代のエースの方々が着用してきた番号ですが、重みというのはありますか

きょねん僕と同じポジションだった濱松さん(啓陽氏、平27スポ卒)がつけていて、見習うところの多い先輩でした。きょねん、おととしとたくさん勉強させてもらったので、それを一つ一つ生かせるようにしていきたいです。

――濱松さんから試合前に声をかけられたりはしましたか

きょうは力みすぎと言われました。すごく助かりました。

――改めて、今季への意気込みをお願いします

一つ一つ勝って、春季リーグを優勝できるようにしたいです。あとは、一人一人が日本一の選手に近づけるようにどんどん練習していきたいと思います。

喜入祥充(スポ2=大阪・大塚)

――開幕戦の勝利の感想をお願いします

最初は固かったんですけど、しっかり練習してきた甲斐があって、みんな良い動きができたと思います。

――きょうのご自身のプレーに満足されていますか

エースとしては、まだミスが多いと思うので。決めにいくところと、繋ぎにいくところをしっかり判断しないと、今後大事なところでミスが出たらそれが勝敗を分けてしまうと思うので、エースとしてしっかりやっていきたいと思います。

――チームの顔ぶれが変わったことで、プラスになったことはありますか

ことしは早稲田の中ではセンター線が高くて、最初のレセプションを返せばなんとかなるので、スパイク重視からレシーブ重視に切り替えができていて、それが僕にとっては良いことだと思っています。

――インカレでの敗戦はその後にどのように生かされていますか

メンタルの弱さが出た試合だったと思うので、強気で、攻めの気持ちを忘れずに、受けるのではなく攻めるっていうメンタル面の強化をしてきたので、それがきょうは良いかたちで出たと思います。

――この1年、ご自身のチームでの役割は何だと考えていらっしゃいますか

専田さん(和也、平27スポ卒=現パナソニック)というレシーブの要が抜けてしまったので、その後継ぎになれるような選手になりたいです。

――試合中の声出しも意識的に行われているのでしょうか

まだ下級生なので、試合の雰囲気を盛り上げるために、(きょうの)1セット目のように固くなることもあると思うので、みんなの表情を良くできるような、リラックスできるような盛り上げ方をしていきたいと思っています。

――リーグ戦の目標は

一つ一つ大事に勝っていって、それが最終的に優勝というかたちになれば良いと思っています。

――あすにむけての意気込みをお願いします

きょうはきょうで、あしたはあしたなので、自分たちのバレーができるように頑張りたいと思います。