第13回では、7月7日に行われる早慶クラシコ2023に向けて、今季のア式蹴球部女子(ア女)の重鎮たちにインタビューを実施。今回は今季副将を務める、三谷和華奈(スポ4=東京・十文字)、浦部美月(スポ4=スフィーダ世田谷FCユース)のお二人に、今季ここまでのア女の振り返りから、W杯、早慶戦について、たっぷりとお話しを伺いました!
※この取材は6月14日に行われたものです。
緩いプレーをしていたら示しがつかない(三谷)
質問に答える三谷(写真左)、浦部
――お二人にとって、ここまではどのようなシーズンでしたか
三谷 まだ序盤なんだけどね(笑)。
浦部 チームとしては、結果だけ見たら悪くはないと思っています。関東リーグ(関東女子サッカーリーグ)、関カレ(関東大学女子サッカーリーグ)共に、それぞれの試合で課題ももちろん見つかっているので、まだまだレベルアップできると感じています。個人としては、シーズン当初はアメリカ遠征で若葉(後藤若葉主将、スポ4=日テレ・メニーナ)や(三谷)和華奈といった幹部がいない中で、練習や練習試合で自分が引っ張ることが多くて。今だから言えることですが、最初は結構しんどい時期も多かったです。(幹部の)3人の中だと自分自身はめちゃくちゃ引っ張っていくタイプじゃないので、2人がいない中で自分が引っ張っていくことを経験できたのは、その後のシーズンでも自分としては良かったです。
三谷 昨シーズンの最後にタイトルを何も取れなかったという状態でスタートして、インカレも西が丘に帰らずに負けたことも踏まえて、シーズン入る前に4年生の間でしっかりどのようなチーム像にしていきたいのか、目標をしっかり話し合った上でのシーズンインでした。最初は南葛(SC)戦と十文字(学園女子大)戦で、なかなか点が入らなくて結果が出ず、今シーズンどうなるんだろうと不安の中でスタートしました。そんな中、東京国際大戦で綺乃(笠原綺乃、スポ4=横須賀シーガルズJOY)がしっかり点を決めて、やっと勝ちを手に入れることができた瞬間に、今年はこういうシーズンになるんだろうなとすごく実感しました。1点取れるか、無失点で抑えられるか、というのが今年はやっぱり全員で戦う上で重要になるシーズンなんだろうなとすごく実感しました。サッカー面ではそう言ったところですが、オフの面でも私たちが掲げている『WASEDA the 1st』というところで、ピッチ外のところも突き詰めていきたいです。もちろんピッチ内では結果を残すのは今後も追求していかなければならないし、今4連勝できているけどしっかりそこは突き詰めて、高め合っていかなければならないところだと思うんですけど、今年は特にピッチ外のところもしっかり突き詰めたいなと思っています。1つのミスに対しては何となく終わらせるのではなくて、それが結果にダイレクトにつながるとは言わないですけど、気の緩みが現れていると思います。そういった部分をないがしろにしてはいけないことを、常に自分たち自身に問い続けていくべきだと思うので、心身共に疲労する期間はすごく多いと思いますが、日本一という目標に向けてチームを作る上での疲労感なのであれば、それは立ち向かっていくべき壁だということを感じています。勝ち続けてトントン拍子に行っているわけではないですが、もがきながらも、ちょっとずつ前に進んでいる感覚はあるので、それはこの後に続くシーズンにも生かしていきたいと思います。
浦部 しっかり用意してるじゃん(笑)。
三谷 そんなことないよ、今考えた(笑)。
――副将という立場になじんできたように思えますが、お2人ご自身では副将という立場に関してはどのように感じていますか
三谷 どうなんだろうね。
浦部 こればっかりは自分自身というより、みんなが決めることだよね。
三谷 うん。でもやっぱり、今までの1年生から3年生の時に大きな役職に就いた時よりかは振る舞い方や言動はやっぱりだいぶ意識してます。してるよね?(浦部を見ながら)やっぱり下級生は見てると思うし、それこそピッチ内外関係なく手を抜いてたり、緩いプレーをしていたら示しがつかないという、良いプレッシャーの中でできていると思います。その責任は今までよりかは感じていますね。みんなにどう映っているかわからないけど(笑)。
浦部 求められることも多くなったし、求めなきゃいけないし。そのギャップに苦しんでいるわけではないけど、自分のこともだし、周りのことを考えなければいけないのは今まで以上に求められているのを感じています。
――お2人は両サイドに配属されることも多く、ア女にとっての強みだと思いますが、両サイドを副将コンビを担ってる点に関しては
三谷 全然正直意識したことなかったです(笑)。あっち側に副将いるわみたいな(笑)。システム的には3-5-2でサイドを起点にできるシステムになっていて、タイプ的にも少し違うので、両サイドが同じタイプというよりはお互い違った良さがあるので、そういう意味ではバランスは取れていると思います。
浦部 自分は最初ウィングバックで出た時、東京国際大戦だったんですけど、本当に疲れて(笑)。人生で初めて試合後にふくらはぎをつって。だから和華奈 とか、去年で言ったらそうちゃん(宗形みなみ、スポ2=マイナビ仙台レディースユース)とかすごいなと思って。
三谷 でしょ(笑)?
浦部 自分は運動量が武器なので、東京国際大戦よりはフィットできてるのかなと思います。
三谷 ほんとに(浦部は)運動量すごいから(笑)。後半にかけて、こっちが疲れててもクロス上げたり、ドリブルでえぐったり。
浦部 あんまりファー(サイド)まで(三谷は)上げてくれないけどね(笑)。
三谷 ごめんごめん修正するわ。…嫌だよここでも反省会なんて(笑)。こんな感じです(笑)。
一同 (笑)
――お互いのプレーはどのように映っていますか
浦部(三谷とは)一年生の頃からお互い1対1とかをしてきた仲で、その時は対サイドバックとしてやってたんですけど。和華奈みたいなスピードあるタイプが本当に嫌いで、一発でスピードでやられてしまうので、(三谷が)攻撃で自分が守備だったら嫌なタイプです。なので味方で良かったとすごく感じるし、プレーもそうですが和華奈自身がすごくストイックで自分はそれが1年の頃から刺激をもらっているので、そこは4年になっても変わらずいてくれるので、本当に同期で良かったなと思います。褒めすぎた?
三谷 そう思う(笑)。普段から言ってよ(笑)。さっきも(浦部の)運動量について触れましたが、今のシステムだと、どちらかのサイドがビルドアップのところで組み立てに参加しないと試合が成り立たないと思うので、私は落ちて受けるというよりはサイドで張って、みんながビルドアップしてきた中で、回ってきたボールをしっかり仕掛けて、シュートやクロスをやりきるのが仕事だと思っています。ただ組み立ての部分で、逆サイドの美月がバックラインと連携しながらフォワードと組み立てているのは、今のチームとしても戦い方の幅が広がります。プラスで、組み立てだけではなく最近はシュートまで狙っていたり、クロスも上げることができるので、今の左サイドをしっかり担っているのが私には持ってないところです。運動量あってのことだと思うし、サイドバックを経験していることもあると思うので、ポジショニングや組み立て方が器用なのはすごくいいなと思います。逆に褒めすぎてない(笑)?
浦部 褒めすぎですね(笑)。
(大学サッカーを選ぶのも)全然マイナスじゃないと伝えたい(浦部)
関東リーグの試合前、出場する選手たちを盛り上げる浦部
――先日(※6月13日)メンバーが発表されたなでしこジャパンに、三谷選手と同じ十文字高出身の藤野あおば選手(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)も選出されましたがどのように感じましたか
三谷 あおばに関しては良い意味で、「本当に一緒にやってたんだ」という感じです。WEリーグでもすごく活躍している姿を見るんですけど、思い返せば高校入ってきた時点でなにか違ったなと思います。フィジカル面や技術面は高校サッカーレベルではないと元から感じていたので、インターハイもありがたいことに優勝させてもらったんですけど、彼女の力もあってというのは正直ありました。
――お二人はなでしこジャパンやW杯はどれくらい意識していますか
三谷 今のレベルで見たら、本当に雲の上の存在みたいな感じなので、今は進路としてはWEリーグのチームに所属したいという目標で頑張っています。実はプロを意識したのが大学3年生とかでした。1年生の時とかは4年間頑張ったら、もう辞めようかなぐらいの気持ちでした。ただ、WEリーグができて、プロサッカー選手という目標がちょっと現実になってから、なんかもっと高み目指したいなと思い始めることができました。(WEリーグを目指す)ほとんどの選手はそれまでに代表に入りたいとかプロになりたいという一心で多分練習してきたと思うんで、 それに比べると、やっぱり私は気持ち的にもそこに気づくのがちょっと遅かった立場なので、今は本当にそれの倍やらなきゃいけないかなっていうのは感じています。プロサッカー選手になることだけを目標にしてしまうと、またどんどん基準も下がってしまうので、 W杯と言われたらちょっとわーってなったんですけど(笑)。代表に入るくらいの気持ちでやらないと、 プロサッカー選手になるのは難しいんだろうなというのは感じてるので、意外と意識しています。
浦部 (なでしこジャパンに)入りたくないとかじゃないのですが、全然意識とかはしていないです。ただ和華奈もさっき言ったように、自分も来年WEリーガーを目指してもっともっと技術の部分を向上させていかないといけないなっていうのは感じています。それこそ植木理子さん(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)だったり千葉玲海菜さん(ジェフユナイテッド市原・千葉レディース、筑波大出身)とか、あおばも私が中学の時に向こうが(日テレ・メニーナ・)セリアスで自分がスフィーダ(世田谷FC)の時に対戦していたりしていて、2011年に(W杯で)優勝した澤(穂希)さんとかの代よりは、顔見知りや知り合いの代が(なでしこジャパンのメンバーに)入ってきていて、代表戦を見るのはすごい楽しみです。 理子さんとか玲海菜さんとか、関カレで2年前まで試合してたような選手とかが入っていることに対して率直にワクワクしています。
三谷 玲海菜さんが代表に選ばれたのは、大学女子サッカーの選手にとってすごいモチベーションになるんじゃないかなと個人的には思っています。男子だと三笘(三笘薫、現ブライトン・アンド・ホーブ・アルビオン、筑波大出身)選手とか、大学を卒業してというのは増えてきていると思うのですが、まだ女子サッカーにはあまりいませんでした。(夏目)歩実とか若葉とか、玲海菜さんとマッチアップしたことがある人もいるので、そういう意味では大学女子サッカーに大きな影響を与えるんじゃないかなというのは個人的には感じています。あとは大学を経由するのに、ちょっと遠回りみたいな印象はない?(浦部を見ながら)
浦部 そうだね。
三谷 私が中学のクラブから十文字高校に出る時とかも、「(クラブのユースチームに)上がれなかったから高校に行った」みたいなイメージがある感じがします。自分自身もすごい自覚していたので。 多分高校から大学に上がる人もクラブユースで上がれなかったから大学行った、みたいなマイナスなイメージが持たれてるなというのはあるんですよね。
浦部 確かにWEリーグができて、高校サッカーで活躍してる下の子たちがWEの道か大学を天秤にかけた時に、WEを選びやすいんだろうなとは思います。その気持ちはすごい分かるんですが、自分自身はなでしこリーグを選ばずに大学行った身なので、全然マイナスじゃないんだよというのは伝えたいです。
感謝の気持ちを忘れずに(三谷)、見に来てくださる人の胸に強く刻まれる早慶戦になれば(浦部)
関カレ第3節神奈川大戦で得点した三谷と駆け寄る浦部
――それでは続いて早慶戦についてお伺いします。4年ぶりの男女共催となりますが、率直にどのような思いを早慶戦に向けて持っていますか
三谷 やっとか、という気持ちです(笑)。
浦部 等々力行ったでしょ?高3の時。
三谷 行った行った。
浦部 それを見たから、そこからのこの3年間のギャップが…(笑)。
三谷 それを見て(早大に)入りたいと思ったもんね。
浦部 率直に楽しみしかない。
三谷 もともと三年間で男女別でも開催できる、という雰囲気ができ上ってしまったので、このまま4年目もそうだったら嫌だなと正直思っていました(笑)。朋香(菊池朋香マネジャー、政経4=東京・早実)とかが必死に訴えかけてくれたので、そこには感謝しかないです。
――今年のスローガンが「誇闘」ということで、選手の皆さんも「誇りを持って闘う」という話をされることも多いと思いますが、早稲田のユニフォームを着る誇りみたいなものを意識することはありますか
三谷 やっぱり年を重ねるごとに、それは結構思いますね、その深みといいますか。 1年生の時は「うおー!エンジのユニフォームだー!」みたいな感じだったのですが、今は袖通す時も「今日もしっかり戦わなきゃいけないな」とか、いろんな人が見ているし、私たちは4年間ですが、それまでやってきたたくさんの先輩方も見てくださっているというのはあると思います。そういう意味ではア女というのはこの4年間だけでは収まってないと思うので、このエンジのユニフォームを着れるというのはありがたいことですし、そこにはやっぱり誇りを持ちたいと思っているので、重みは4年目で一番感じますね。
浦部 どの試合でも、エンジのユニフォームを着る限りは誇りを持って闘うというのは変わらないです。でも、さらにそれを意識するのが早慶戦かなと。(早慶戦は)早稲田と慶応の意地と意地のぶつかり合いだと思っています。だからこそそのような舞台でエンジを身にまとって戦えるのはすごくありがたいことですし、誇りを持って闘いたいなというのは思います。
――慶大に対する印象はどのようなものがありますか
三谷 早慶戦になるとめっちゃ変わらない?それまでが全然という意味ではないのですが、なにかやっぱり違うよね。
浦部 見えないなにかがあるよね(笑)。
三谷 そうそう。それこそあっちも誇りを持って闘いに来ていると思うので、やっぱり気を緩めたら絶対にやられると思いますし、そういう意味でも早慶戦は特別なのかなと思います。
――お二人へのマークは厳しくなりそうですね
三谷 それはもう性じゃないですかね(笑)。
浦部 まあ負けないけどね(笑)。
――お二人にとっての注目選手やスタッフがいらっしゃれば教えてください
浦部 自分は若葉(後藤若葉主将、スポ4=日テレ・メニーナ)で。若葉って1年生以来早慶戦出てなくて、なんだかんだ毎年スーツを着て運営をしてくれているイメージがあります。今年4年生になって、主将として迎える早慶戦なので、人一倍思いはあると思います。1年生で出てから2年、3年と出れなかった思いをぶつけてほしいです。正直言うと、みんないろんな準備とかしてくれているので、全員注目してほしいです(笑)。
三谷 営業みたいな(笑)。私もみんなに注目はしてほしいですけど、1人挙げるなら杉山(遥菜、スポ1=東京・十文字)選手ですかね。今は縦で組むことが多いのですが、彼女は本当に1年生なのかっていうぐらい貫禄というか、落ち着きがあるんです。ピッチ内でもなんですけど、ピッチ外でもすごい責任感強くて、今の1年生たちの中でも率先して荷物運びとかを積極的にやってくれたりとかもしてくれます。もちろんこれから競争がある中でポジションがどうなるかは全然わからないというのは前提なんですけど、やっぱり彼女が1年目でしっかり躍動して戦って、早慶戦の雰囲気を味わってくれるっていうのは、伝統を紡いでいくという意味でもこれからのア女にとってすごくプラスなんじゃないかなというのはすごく思います。なので彼女のプレーには注目したいですし、彼女が伸び伸びとプレーできるようにピッチの上級生の選手がしっかりリードしていけたらいいんじゃないかなというのはすごい思っています。
――早慶戦に向けて、個人として、チームとしての目標や意気込みをお願いします
三谷 チームとしてはもう絶対圧倒的に慶応を上回って、確実に勝ちたいというところがあります。個人としてはもう泣いても笑っても最後の早慶戦ですし、男女共催という本当に特別な機会を与えてもらったと思っているので、もう感謝の気持ちを忘れずに。多くの人が見に来てくださると思うので、もう躍動するだけです。頑張ります!
浦部 チームとしてはこれまで1回も負けてないっていうのが何年間も続いていると思うんですけど、それはこれまでの歴史でしかないと思っています。今年慶応に勝つことで、結果的に無敗記録につながればいいかなとは思います。個人としては、1年生の頃から(早慶戦は)ピッチに立っていなくてもずっと運営で関わってきたところなので、試合だけじゃなくてそこまでの準備とかも、和華奈も言っていたように、4年目で最後になるというのがすごい早いなという、感慨深いものが結構あります。ただ友達とかにも声かけているので、何よりもピッチで活躍してる姿が、見に来てくださる人の胸に強く刻まれる早慶戦になってくれればいいと思います。活躍します!
――ありがとうございました!
(取材、編集、写真 大幡拓登、髙田凜太郎、星野有哉、渡辺詩乃)
早慶戦への意気込みを書いていただきました!
◆浦部美月(うらべ・みづき)(写真右)
2001(平13)年6月24日生まれ。159センチ。スフィーダ・世田谷FCユース出身。スポーツ科学部4年。高い身体能力でア女の左サイドを支える。関カレ第2節から最終ラインから左ウイングバックに移ると、その運動量、スピード、突破力を遺憾なく発揮し、その後も好調を維持。副将として、試合前のアップからチームを盛り上げる。
◆三谷和華奈(みたに・わかな)(写真左)
2001(平13)年10月2日生まれ。159センチ。十文字高等学校出身。スポーツ科学部4年。圧倒的なスピードとキレのあるドリブルで相手守備陣を切り裂く、生粋のウインガー。今季もその突破力を生かし、ア女の攻撃の主軸となっている。副将として迎える、自身2度目の早慶戦で躍動する姿に期待がかかる。