第1回は、専門性を生かしてチームを支える裏方にフォーカス。安住伊代トレーナー(スポ4=宮城・仙台第二)と金城実希トレーナー(スポ4=沖縄・開邦)の4年生コンビと、その背中を追う黒澤舞水トレーナー(スポ2=埼玉・伊奈学園総合)と津田弥弥子トレーナー(スポ1=東京・武蔵野北)の下級生コンビに、チームに対する思いを伺いました。
※この取材は11月28日に行われたものです。
「どばどば使っていれば1か月位でなくなります」(黒澤)
節約術について話す黒澤
――まずはプライベートについてお互いの紹介をお願いします
安住 (金城)実希は、遠征で新幹線移動のときに1人だけテンションが高いです(笑)。
黒澤 サッカーだけではなくて他のスポーツも好きで幅広く関わっているみたいです。
津田 普段はしっかりしているのですが、実は抜けているところがあって、選手がけがしたのがどちらの脚か間違えることもあります(笑)。
金城 (安住)伊代も抜けています。みんなからお姉ちゃんと慕われていますが、携帯を片手に持って自分の携帯を探しています。他にもよく物を落としていくので、それを自分が拾いながら歩いたり、リュックのチャックとかも空きっぱなしのことがよくあるので閉めてあげています。
黒澤 甘いものが好きらしいですが、どうしてそんなに甘いものを食べても太らないのかなって思っています。
津田 スタイルがいいしファッションセンスがすごい。私が来世でしたいファッションをしているので、もうとりあえず伊代さんになりたいです。
安住 (黒澤)舞水といえば、大きな1キロくらいのきなこの袋を持ち歩いてロッカーに置いています。
黒澤 実家から通っていた時にお弁当を作るより楽なので、生協でヨーグルトを買ってきてきなこを入れて食べていました。甘いものは好きではないのと、そのままだと飽きてしまうので。
金城 よく食べているよね。スープとかを持ち込んで各部屋においしい匂いを充満させています。
安住 チーズとか大きいサイズを買ってきてそれをそのまま部の冷蔵庫に入れています。大家族じゃないと買わないようなサイズを買ってきて(笑)。多分いかに安くお得に買うかに命をかけているからコスパ重視で買ってくるのだと思います。だからよく冷蔵庫開けたら仰天みたいになる。
黒澤 どばどば使っていれば1か月位でなくなります(笑)。
津田 私は散財してしまう人なのでコスパ重視を見習いたいです(笑)。バイトもよくやっていてすごいと思います。
金城 (津田)弥弥子は何でもおいしそうに食べます。伏見だんごをほおばる姿が一番似合っています。最近はダイエットしているのでチートしていないか監視しています。
安住 私も一緒に年中ダイエットをしています。最近、「伏見だんごを食べるのを我慢してきました」と自慢げに部室に入ってきたことがありました。そうしたら部室に唐揚げ丼があって、それを弥弥子がおいしそうに食べていました。おかしいなと思いましたね(笑)。
金城 それは私の責任です(笑)。
黒澤 (津田は)よく食べる方です。おにぎり2つとかおにぎりと団子とか炭水化物と炭水化物みたいな食べ方をしています。
「実希と2人で号泣したこともあります」(安住)
金城との思い出を語る安住
――ここからはお互いの仕事ぶりについて聞いていきます。まずは金城さんについて教えてください
安住 仕事が丁寧だし、求めていることをキャッチする能力が高くて、実希としか築けない関係性を作ることができると思います。頼りたくなるような、唯一無二の存在感があります。細かな言葉のチョイスや仕事を誠実に行っているから、見習いたいし尊敬しています。
黒澤 知識や技術が段違いで、実希さんがいれば何が起こったとしてもなんとかなると思わせる器があります。
津田 プロや社会人トレーナーなのではと思うほどの安心感です。何かあれば求めていることを返してくれる先生のような存在で、トレーナー同士の関係も大切にしてくれています。わからないことがあれば逐一聞いて、自分の知識にできるようにしています。
――トレーナーをするうえで何を大切にして活動していますか
金城 トレーナーは色々なタイプがあるのですが、私と伊代も違う。その中でいかに自分の良さを出すか考えていた中で、慕ってくれる相手に対しては自分ができることを全力で、しっかり丁寧に、と心がけています。またトレーナーとしてのモチベーションは常に燃え続けていて、普段隠していますが、選手がけがするととても悔しくて内心落ち込みます。このけがは防げたなという気持ちで学び続けています。
――安住さんについても教えてください
金城 メンタルや心のケアは自分にないものを持っているので尊敬するし、見習いたいところです。自分の片一方くらいの大切な存在で、いなかったら(ア女を)3回くらい辞めていたと思います。それくらいプライベートでもビジネスパートナーとしても、尊敬しているし信頼しています。
黒澤 みんなのお姉ちゃん、お母さんのような存在で、選手の懐に入っていきます。選手との関係の築き方がうまいです。先輩の存在は大きいです。
津田 努力もあると思いますが、伊代さんなら何でも話すことができて感情があふれてしまう、という人間性があります。トレーナーは人間性も大事だと思いますが、それを備えていてとても尊敬しています。
――――選手との関係をつくるうえで心がけていることはありますか
安住 トレーナーの業務ができることを大前提として、心も癒せるのであればいいと思っています。そのために気をつけているのは常に心に余裕を持って、グラウンドでは笑顔でいることです。心に余裕を持っていないと選手の細かな表情の変化に気づけないです。何か有事のことがあったときに自分たちが焦ってしまっては良くないので。自分を必要としてくれる人が1人でもいてくれるのであれば、その人のために全力を傾けたいと思っています。
――金城さんも安住さんもグラウンドでは明るく振る舞うとのことですが、グラウンド外ではどうですか
安住 実希と2人で号泣したこともあります。特に1年生の時は自分を見てくれる人が少ないから自分の存在意義に気づけないことがとても多かったです。専門性も他の仕事よりある分、一朝一夕には力になれないこともあります。一人前になるまでにすごく時間がかかるのでそこが一番辛かったです。
金城 選手に一人のトレーナーとして求められることと自分が応えられることのギャップがある時はとても辛かったです。
――黒澤さんについてはいかがですか
金城 仕事が丁寧で速いことが彼女の強みです。動きも早いのでボール拾いだとか副審だとか。他にも目配りがとても上手だなと思います。
安住 女子サッカーへの愛が強くて詳しかったし、私たちが時間のかかっていたことがすぐにできます。トレーナーの仕事以外での貢献度が高いのではないかと思います。何事もファーストアクションが早いし、よく観察しているし、来年からがとても楽しみだなと思って仕事ぶりを見ています。
津田 データ管理とか数字の管理とか、私の苦手な事が得意で、見えていない仕事の部分でも手を抜かずにやっているところを尊敬するし、私が引き継ぐことも多いと思うので、そこを舞水さんから学んでいきたいです。
――「WEリーグ開幕記念特集」にもインタビュアーとして参加していただきましたが、女子サッカーを好きになったきっかけ、ア女のトレーナーになったきっかけを教えてください
黒澤 気づいたらハマっていました。大学で好きなことをやりたいと思った結果が、早稲田に入ってトレーナーの勉強をすることで、ア女に入ってチームの力になりたいと思いました。好きを仕事にする、この一点ですね。選手の苦悩や自分がやりたくてもできないギャップに悔しい思いはあります。それでもサッカーを嫌いになることありません。
――それでは、津田さんについても教えてください
金城 向上心にあふれていて、毎晩のようにたくさん質問や共有したりして翌日にはそれを全て自分の力にしていることがとても誇らしいです。選手との距離の取り方がすごく上手で、慕われて姿を見ると嬉しいです。
安住 自分がわからないことを質問することは難しいと思うこともあると思います。ですが、先を見越してあらゆることを吸収しようという素直な姿勢は成長が期待できて安心して見ています。
黒澤 何事にも積極的に動いていて、存在意義に悩んでいる様子もありません。既に選手から必要とされていることがすごいと思います。
――大学までサッカーに関わったことがないと聞きましたが。どこに惹かれてア女に入ったのですか
津田 最初は何も知りませんでした。ですがインスタを見て明るくて楽しそうだと思い、知り合いもいない中でしたが飛び込みました。部室に入ったときに和気あいあいとしていて、大学のサークルは上下関係の厳しい軍隊のようなものだと思っていましたが、ギャップに驚きました。そして(オンオフの)切り替えに惹かれて入ることを決めました。
――いい恋しましたね(笑)。
一同 (笑)。
――来年は安住さんも金城さんも卒業されて、2人でコンビを組むことになります。抱負を聞かせてください
津田 とても不安ですお互いの弱い部分を補いあって学べるところを吸収していきたいし、支え合える関係でありたいです。そして先輩がいなくてもア女は大丈夫だと思えるように取り組んでいきたいです。
黒澤 それぞれの長所、私はフィジカル面、弥弥子はメンタル面で支え合いながらやっていきたいと思います。
「ア女のサッカーは面白かったです」(津田)
今季を振り返る津田
――ここからは今シーズンの振り返りをしていただきます
金城 難しいですね。自分の立場は試合を決めたり変えたりすることはできませんから。個別の事象になりますが、「この時踏ん張れなかった」とか「足首が痛くて」とかの選手の言葉に、こうしておけばよかったと思う事もあります。自分たちのやってきたことに対する反省や後悔がないわけではないです。チームをまとめる立場で、サッカー以外の部分はその都度ベストを重ねてきたつもりでしたが、足りない部分があったと感じることもあります。今は前を向いて次につなげていきたいです。
安住 連戦で、目の前の試合を頑張るだけでした。選手の疲労もすごく感じられますが、ケアしてあげることしかできない。だから一戦一戦頑張ってきて、蓋を開けたらこういう結果、という感じです。自力優勝の残っている時は毎試合いろいろ感じていたし、自力優勝のなくなった時は悔しかったし、一喜一憂しながら過ごしていました。そして久しぶりに勝利できた時、みんなで抱き合うくらい感情があふれてしまいました。周りから見れば成績は落ちたかもしれませんが、自分はどちらかというと満足しています。
黒澤 自分たちはベンチにも入らないので、なおさらチームの結果がどうこうとは思わないです。選手を信じることしかできないし、ホーム戦ならケアもできますが、アウェイでは信じるだけなのですごく難しかったです。
津田 サッカーがよくわからない中で、選手にも見ていて楽しいのか、とか試合に興味ないのかと思われていて、でも、ア女のサッカーは面白かったです。選手としては悔しい結果だったでしょうが、一戦一戦ワクワクしていて、選手のプレーに心動かされることもありました。先輩の動きを今後のために観察することもありますが、勝っても負けても見ていて飽きないものだったので、いい戦いぶりだと感じました。
――今シーズンで一番印象的な試合を教えてください
安住 私は東京国際戦(関東大学女子リーグ後期第2節、11月3日、○1-0)かな。あんなに感情があふれたのは、一生忘れないんじゃないかなと思います。
金城 アウェイでやった筑波(関東大学女子リーグ後期第11節、11月7日、○5-0)かな。東京国際の時は安堵感の方が大きくて、やっと謎の呪縛から抜け出せたという安心感の方が大きかったです。その後に筑波戦でみんなの思いが大爆発して、選手の表情もすごく良くて、プレーも生き生きしていて、(普段は)あんまり感情を出さないけど、何回もガッツポーズして、何回も抱き合いました。試合後に早スポさんから送られてきた写真を見たら、すっごくガッツポーズしてました(笑)。
安住 無自覚だったんですよ(笑)。
金城 感情の赴くままに、楽しめた試合でした。みんなを見ていて楽しかったし、みんなが楽しそうにしてるのがうれしかったです。
黒澤 ホームでやった早慶戦(関東大学女子リーグ後期第4節、9月6日、○8-0)で、三谷和華奈(スポ2=東京・十文字)が復帰した試合です。去年の皇后杯でけがをして、今シーズンの初めに顔をけがして、復帰が長引いて苦しんでいました。リハビリを見ていたので、公式戦に復帰したのもうれしかったし、かつ得点を挙げたので、個人的には一番印象的でした。
津田 トレーナーとして同期を見ることが多いのですが、センターバックの田頭花菜(スポ1=東京・十文字)が点を決めた山梨学院大戦(関東大学女子リーグ後期第8節、10月16日、○2-0)です。私が入部してすぐに先輩から任された選手で、得点に私は直接的な関係はないんですけど、ケアしたり相談に乗ったりする選手が点を決めた時はすっごくうれしいです。先輩からは「見ている選手が得点を決めるとうれしいよ」と言われていましたが、それを肌で感じました。
「同期のとびっきりの笑顔が見たいです」(金城)
4年生に対する思いを吐露する金城
――いよいよインカレが近づいて来ていますが、注目選手を伺いたいです
津田 (山下)夏季(マネジャー、スポ4=静岡・浜松北)さんですね。夏季さんがいなかったら確実にア女は回らないです。役職が違うから、私に見えていないところでの苦労もしていると思います。夏季さんがいなかったら選手はのびのびとプレーできないので。仕事ぶりと安心感がある『ア女のドン』にぜひ注目していください。
黒澤 アウェイだと試合前のアップで最初に雰囲気をつくるのはトレーナーだと思うので、伊代さんと実希さんです。試合中も、いつ選手がピッチに立ってもいいように、ぎりぎりまで準備します。あまり注目されないし、トレーナーが直接結果に関わることはないけど、(選手の)パフォーマンスは二人がカギを握っているので、注目していただきたいです。
安住 初めてトレーナー対談を組んでもらったんですよ。これまで学生スタッフのアカウントをつくったり、スタッフを増やす努力をしてきて、こうしてみなさんの目に留まるきっかけになればうれしいです。だから、マネジャーを含めて学生スタッフが躍動する姿に注目してほしいです。個人的には木南花菜(スポ1=ちふれASエルフェン埼玉マリ)ですね。今シーズン何度チームの危機を救っただろうかって感じです。ラッキーガールなんじゃないかという印象的なゴールが多いので、インカレでも何かやってくれるんじゃないかなって思っています。あとは4年生。自分自身も彼女たちのプレーを目に焼き付けて引退したいです。
金城 夏季かな。去年、夏季と初めてインカレに帯同させてもらって初戦敗退して、ホテルの部屋から伊代に報告しました。その時、来年自分たちが悔しさを晴らそうと約束しました。自分は一人の選手を推すことはできませんが、同期には少なからず情が移っています(笑)。同期のとびっきりの笑顔が見たいし、一試合でも多く楽しんでいる姿を見たいし、チーム全員で喜びたいです。
――最後に、インカレへの意気込みをそれぞれ聞かせてください
津田 インカレは帯同なしで、東伏見に残ります。みんなが出発する直前までコミュニケーションを多くとりたいし、選手を鼓舞したいです。緊張している同期がいれば声を掛けたり、そういう面でアプローチしていきたいです。残って練習する3、4日も、当たり前だけど手を抜かずに、インカレに言っている人たちと同じくらいの熱量と意欲を持って選手を支えていきたいです。個人的には、練習中に声を出すことにまだ恥ずかしさがあるのですが、どんどん声かけをやって伏見組を支えたいなと思います。
黒澤 自分も帯同しないので、(兵庫ラウンドに)行く前に選手から要望があったら、自分のできる限り応えて頑張っていきたいです。遠征中の東伏見での練習は、人数が少ないので難しい所ではありますが、伏見組のフィジカルを任せられているので。(離れていても)ひとつのチームではあるので、「こっちも頑張っているから頑張って」と頑張らせられるような存在になれるように支えていきたいです。
安住 個人的にはやることは変わらないのかなと思っていて、「最後だから」とか「インカレだから」じゃなくて「いつも通り丁寧に」。最後まで選手が求めていることを返せるように努力するだけだと思います。あとは最後は楽しく終わりたいと思います。
金城 伊代と同じですけど、インカレだからといってやることは変わらないし、あと1か月毎日100パーセントを積み重ねていくだけです。スタッフを含め、チーム全員がよりよいコンディションで日々の練習や試合に臨めるように体を整えるのが我々の仕事ですね。自分がチームにできること、自分にしかできないことを全力で、丁寧に、これまで積み重ねてきたことを出し切る。終わったらこのトレーナー4人で笑顔で写真を撮れたらうれしいです(笑)。
――ありがとうございました!
(取材、編集 手代木慶、有川隼翔 写真 西山綾乃)
◆安住伊代(あずみ・いよ)(※写真上段左)
1997年(平9年)7月22日生まれ。162センチ。宮城・仙台第二高出身。スポーツ科学部4年。和菓子から洋菓子まで守備範囲が広めな甘党で、『伏見だんご』のあんこがおすすめだそうです!
◆金城実希(きんじょう・みき)(※写真上段右)
1997年(平9年)5月13日生まれ。156センチ。沖縄・開邦高出身。スポーツ科学部4年。大学に入るまで新幹線に乗ったことがなかったため、今でも乗るたびにはしゃいでしまいます!
◆黒澤舞水(くろさわ・まみ)(※写真下段左)
2000年(平12年)10月11日生まれ。156センチ。埼玉・伊奈学園総合高出身。スポーツ科学部2年。トレーナー業とバイト(丸亀製麵、蒙古タンメン中本)の両立に苦心中です!
◆津田弥弥子(つだ・ややこ)(※写真下段右)
2002年(平14年)5月18日生まれ。170センチ。東京・武蔵野北高出身。スポーツ科学部1年。安住トレーナーのファッションに憧れており、来世は真似したいそうです!