今季より創設されたJ3(2014 明治安田生命 J3リーグ)。日本サッカーにとって新たな試みとなるこの舞台へ進んだ男がいる。DF望月理人(スポ4=鹿島アントラーズユース)。大学時代は出場機会に恵まれなかったものの、見事プロの世界への挑戦権を手にした。新たな環境、そして今後の目標などについて伺った。
※この取材は2月19日に行われたものです。
「多くのことを学びたい」
プロでの生活について語った望月
――プロとしての生活が始まって1カ月ほど経ちましたが、もう慣れましたか
プロに入ってまだ少しですけど、新しい環境での難しさを感じてます。ただその中でももっとやらなきゃなとは日々思ってます。
――プロでの難しさとはどういったものですか
プレーのところでも、サッカーについて考えることってのが増えたなとは思います。
――現在は一人暮らしをされているのですか
一応今はクラブに提供してもらってる部屋があって、そこで2人でシェアして暮らしてます。
――町田で気に入った場所とかは見つけましたか
まだそこまで行けてないんですけど、木曽食堂ってとこに結構行っています。ご飯もおいしいですし、お店の方もすごくいい人なので助かってます。
――町田ゼルビアにはどういった経緯で入団したのですか
昨年チームの練習に参加させてもらって、雰囲気だったり方向性だったりに強いものを感じていて、ここでらいねんプレーしたいという気持ちが強くなり入団を決めました。
――同じワセダ出身の相馬直樹監督(平5卒)の存在は大きかったですか
そうですね。もちろんワセダ出身ってのも大きかったですけど、同じサイドバックのポジションということで多くのことを学びたいと思いましたし、そういう影響もあって入団しようと考えました。
――クラブではどういった練習メニューが与えられているのですか
まだ始まって間もないですけど、対人だったり戦術面だったりと様々な練習をしています。
――大学時代の練習との違いとかは感じることはありますか
大学では体力的にきついメニューが多かったです。もちろんこっち来てからもきついメニューもありましたけど、それよりも頭を使ったメニューの方が多いなと思います。
――印象に残っている練習とかはありますか
最近はやってないんですけど、練習の最後にチーム分けをしてゲームをするときにパスを出す相手の名前を言ったりする練習がありました。本当に頭を使ってないといけないメニューが多いなと思います。最初は全然できなかったんですけど、今はかなり身になってると思います。
――2月になって宮崎でキャンプを行ってましたが、そこではどういったメニューをこなしてましたか
キャンプでは戦術的な練習に重きを置いてましたし、実践的な練習試合も組まれてました。
――練習試合ではJ1のヴァンフォーレ甲府などにも勝利を収めてましたが(2-1)、手応えはありましたか
甲府戦はチーム立ち上げて初めてのゲームで、J1のチームですしそういった試合で勝てたのは非常に自信になりました。チームでやろうとしていたのができていた試合だったと思います。
――キャンプで一番仲良くなった選手は
部屋がずっと一緒だった鈴木崇文さんと行動することが多くて、いろいろな話をする機会になったので仲良くなれたと思ってます。
――どういった話をされてたのですか
ことしプロに入って最初の年ということで、崇文さんは経験もありますしこれからいろんなことを経験していくとか、どんなところで頑張るべきかなどを教えてもらってました。
――キャンプを通じて何を得たと思いますか
サッカー面でもそうですけど、一週間弱みんなで過ごしてコミュニケーションを取れたのが一番の収穫かなと思ってます。
――合宿の練習は体力的にはきついものでしたか
もちろん負荷がかかるメニューもありましたけど、まあ何とかこなせました。
――町田ゼルビアの新加入選手には大学サッカー出身の方が多くいますが、そういった同期を意識することはありますか
同期に大学出身が多いので、張り合いがあるというか、ライバル心も出てきますし互いにいい影響を与えあってると思います。仲間ってのいうのもありますけど、ピッチの中ではライバルでもあるのでいい関係だと思います。
――コミュニケーションを取る回数も多いですか
そうですね。大卒の選手は部屋は違いますけど住んでる場所は同じなので、他の選手よりはコミュニケーションを取る回数は多いです。
――関東大学リーグ戦(リーグ戦)の話などもしましたか
結構しますね。喬穂(石川、国士館大)とはマッチアップする機会もありましたし、リーグ戦の話とかはしました。
――町田ゼルビアのメンバーとして地域との交流などはありましたか
まだないですね。ただ地域貢献とかホームタウン活動っていうのを率先してやっていくっていう方針があるので、自分も積極的に参加してチームに貢献できたらいいなと思ってます。
「人間性という点で成長することができた」
早慶サッカー定期戦では完封に貢献した
――大学時代の話に移ります。ワセダのア式蹴球部(ア式)を卒業して数カ月経ちましたが、今のお気持ちは
ア式を卒業して一歩外に出て、ア式でやったこと、当時の環境の偉大さを感じることが多いです。
――大学4年間で全日本大学選手権(インカレ)優勝も経験されていますが、これは自分にとって良い経験になったと感じていますか
自分としても全国大会で優勝するのは初めてだったので、当時はあまり実感がなかったんですけど、自分のサッカー人生の中で本当に大きな経験になったと思っています。
――4年間で成長したと思う点は
サッカーの面で言うと、守備力であったり、ハードワークする力であったり、サッカーに対して考える力ということで、サッカー以外では人間性という点で成長することができました。
――プロに入って見つかった課題は
ワンプレーごとに、試合中これから起こることに対して考えて局面を打開する力をつけていかないとこれから通用しないなと思いました。
――以前、早稲田スポーツでDF三竿雄斗副将(スポ4=東京ヴェルディユース)に取材をさせていただいた際、「望月選手の存在が自分の成長につながっている」といったお話をされていましたが、望月選手にとって三竿選手はどういった存在でしょうか
三竿とは1年生から同じポジションで争っていて、良いライバルっていうのもありますが、自分からすると手本となる存在というか。常に自分の上に居て目の前でいいプレー見せてくれて、こうしてプロに入れたのも三竿が居たからだと思っているので、感謝しています。
――望月選手がスタメンで出場した早慶サッカー定期戦(○3-0)を振り返って
初めて出場した早慶戦で、あまり覚えてないんですけどあっという間に終わってしまって、自分の持ち味である攻撃っていうのが出せなかったのですけど、チームが勝てたので自分は嬉しかったし満足しました。ですが、欲を言えば持ち味を出してもっと活躍したかったです。
――具体的にその持ち味とは
積極的に攻撃参加をして、得点に絡むプレーをすることが持ち味だと思っています。
――やはりあの大舞台では緊張もありましたか
入場するまでは緊張はなかったんですけど、入場してピッチに立ってスタンドに多くのお客さんがいるのを見た瞬間、緊張したというより圧倒されました。
――持ち味は攻撃参加ということですが、試合中に意識しているプレーは
個人で打開するプレーというか、自分の力で突破することを心がけています。
――4年生では、インカレの初戦敗退(●1-2)をベンチから見ていましたがどのように感じましたか
あの試合はワセダが先制して、優勢に試合を進めていたと思うんですけど、ラストプレーで失点してしまって、最終的に負けという結果になってしまったんですけど、改めて(サッカーは)何が起こるか分からないなと思いました。
――試合後、古賀聡監督(平4教卒=東京・早実)からはどういった言葉を頂きましたか
個人的には、これからが勝負だなということと、大学時代あまり試合に出る機会がなかったので、その悔しさを生かして頑張れと言われました。
――その時点でゼルビアへの入団は決まっていましたか
まだ正式には決まってなかったんですけど、お話は頂いていました。
――古賀監督とは鹿島ユース時代からつながりがありますが、どんな存在でしょうか
ずっとサッカーをやってきましたが、古賀監督からは本当のサッカーを教えてもらいました。古賀監督はピッチの外では優しいんですけど、ピッチ内では厳しく容赦なく接してくれて、自分の成長に大きく関わっている本当にかけがえのない存在です。
――本当のサッカーとは
古賀監督に教えてもらったのは高校からなんですけど、小学校と中学校まではサッカーといっても、自分のことしか考えてない個人プレーでどうにかするっていうサッカーしかやってなくて、サッカーの難しさを知りませんでした。けど、高校に入って一気にレベルが上がって、そこで難しさ、チームでやるサッカーっていうのを教えてもらったし、サッカー以外にも人間性を強く追求することができたので、いろんな面で成長したと思います。
――引退後、同期と遊んだりしましたか
自分は引退してしばらく大学の寮にいたんで、寮に残っていたメンバーとはご飯を食べにいったりしたんですけど、寮外生であったり寮を出ちゃった選手とはあまり会う機会がなくなってしまいました。
――4年生はどういった代でしたか
4年間通して、1年生の時は古賀監督からも常々「どうしようもない代」と言われていて、個性が強くてチームに迷惑をかけることも多い代でした。でも、上の学年になるにつれて、個人個人が成長するというか、自分を変えなくちゃと考える選手が多くなりました。最上級生になってからは1年生を引っ張れる選手が多く出て、いい結果は残せなかったんですけど、自分からしてみたら素晴らしい代だなと思います。
――古賀監督も、今まで教えてきた中で一番ワセダらしさを表現できた代だった、とおっしゃっていましたが、そういった言葉を受けてどう感じますか
真面目さっていうのがチームとして最大の強みで、個人的にはそれで勝負していきたいという意志が強かったのでそういった、やろうと決めたことをやり通す力は強かったのだと思います。
――後輩の印象は
1個下の代は、ピッチ内外関わらず話す機会が多くて、相談に乗ることもあったし、逆にこっちが相談することもあって、いい意味で仲の良い関係でした。サッカーの面でも洋史(MF近藤、スポ3=名古屋グランパスUー18)であったり、貴司(MF近藤、スポ3=三菱養和SCユース)、松澤(GK香輝、スポ3=千葉・流通経大柏)であったりチームに貢献してくれる存在がいたので、とても心強かったです。2個下の代もしっかりしていて、拓真(DF金澤、スポ2=横浜F・マリノスユース)だったり、政幸(DF奥山、スポ2=名古屋グランパスU-18)だったり、リーダーシップをとってくれる選手いたので、4年生も自分たちも頑張らなきゃなと感じました。後輩ではありますけど、1年間通して力をくれる場面も多くありました。
――後輩に伝えたいことは
ア式っていう組織がやっていること、やろうとしていることっていうのは、他とは比べものにならないくらいすごくて、難しいことではありますが、その分達成感や得るものが大きいです。そして、関東リーグ優勝、インカレ優勝っていうア式の義務を果たしてほしいと思います。
――注目している後輩は
個人的には、宮本(FW拓弥、スポ2=千葉・流通経大柏)には頑張ってほしいし、チームを引っ張っていってくれると期待しています。
――その期待というのは、具体的には得点ということでしょうか
そうですね、得点であったり、個人でチームを勝たせる力っていうのをア式のなかで1番持っていると思うので、その力を生かしてチームを勝たせてほしいと思います。
――何得点くらい期待したいですか
欲を言えば年間通して20点くらい取ってほしいです(笑)。
――ア式での4年間を一言で表すと
『強さ』ですかね。サッカーもそうですけど人間としての精神力の強さであったり、そういうのに磨きをかけられた大学4年間だったかなと思います。
「スタメンとして試合に出られるように」
対人練習をこなす望月
――シーズン開幕を3月9日に控え、今はどういった心境ですか
1年目でどういったかたちでシーズンが始まって、戦っていくのかという部分は本当にわからないのですが、1年目ですけど逆に関係なくチームの力になっていかなければ、ここに来た意味がないので。強い気持ちを持ってやっていけたらなと思っています。
――シーズンに向けて練習も増え、オフも少なくなってきていますか
そうですね。この時期は結構ゲームが多く組まれていて、徐々に実践的な練習に近づけてきているので。個人というよりはチームでまとまって、どういう方向にもっていくのかというところをまとめていく時期なので。個人的にはチームとしてもここから開幕までの時間というのは大切な時間なのかなと思っています。
――プロになってからのオフはどんなことをされていますか
最近は新しい住まいになって間もないので、部屋にあんまり物がないので家具を買いに行くとか、新しい生活に慣れてという感じですね。でも部屋にいるときはテレビを観たり、ゆっくりすることが多いですね。
――開幕節で対戦する藤枝MYFCの印象は
個人的にはよくわからないんですけれど、確実に実力があるチームだと思うので。知らないチームだからこそ怖いなというか侮れないかなというふうに感じています。
――開幕節はホームでの試合になりますが、ホームグラウンドには足を踏み入れましたか
直接ピッチには入ってはいないのですが、チームの活動でスタジアムに行く機会はありました。本当に素晴らしいスタジアムで、早くあのピッチに立って試合したいという気持ちです。
――地域のサポーターの印象はいかがですか
新体制発表会でサポーターの方々と触れ合う機会があったのですが、その時も熱線というか応援を送ってくださって、本当に頼りになる存在だなと思っています。
――背番号の『28』が決まった経緯は
背番号は自分で決めたというよりはクラブに決めてもらってというかたちだったので。そうですね、28番という番号でことし1年間頑張っていきたいなという気持ちです。
――相馬監督の目指すサッカーの色は見えてきましたか
試合を進めていく中で、前からプレッシャーに行くことや、ボール奪ったらどんどん周りの選手が追い越して行ってというサッカーで。自分としてはワセダのサッカーに似ているなという印象を受けました。
――生かしていける部分ですね
そうですね。まだまだ周りとの連携とかは課題ですね。
――サッカー以外でのFC町田ゼルビアというチームの特色
地域の皆様に支えてもらっているクラブだなというのはありますし、木曽食堂さんとか、お店の方々も応援してくださる方が多くて。そういった地域に支えられているなという印象が強くありますね。
――J3ということで移動の面などでハードな部分もあると思うのですがいかがですか
移動やハードスケジュールというのはあると思うのですが、そういった中でも戦っていかないといけないと思っているので。それを言い訳にせず、逆にそれを力に変えてやっていければなと思っています。
――J2経験をしているチームとして、重圧や歴史の重みは感じますか
重みというか、いまの立ち位置で甘んじていちゃいけないなと思うので。J2に上がって、将来的にはJ1でチームとして戦っていかなくちゃいけない存在だなと強く思っています。
――クラブも25周年ということで25年という歴史に関してはどう思われますか
チームができて最初からこういう素晴らしい環境があったわけではないと思うのですけれど、多くの方々に支えられて素晴らしいクラブになっていると思います。いまも多くの方々に支えられていると思うので、そういった感謝の気持ちを忘れちゃいけないなと思っています。
――J3のチームの中で要注意だと感じているチームや、注目しているはありますか
きょねんJFLで上位だった長野パルセイロさん(AC長野パルセイロ)は個人的にも力のあるチームなのだろうなと思っています。
――今季からJリーグ・アンダー22選抜というチームも参入しますが、同世代の選手との対戦で意識や期待する部分はありますか
同じ年代、世代なので。負けたくないですし、相手はJ1とかJ2の選手がいる中でも負けたくないという気持ちは大きいですし、逆に負けたくないという気持ちはあります。
――チームの中でもDFのスタメン争いも過熱化していますが、スタメンを奪う立場としての意気込みは
ディフェンスや、自分と同じサイドバックの選手が多くいる中で、本当に見本となる選手が多く居て。そういった選手のいいところだったり素晴らしいところだったりを盗んで、自分ももっともっと成長して、スタメンとして試合に出られるようにもっと頑張っていかなければいけないなと思っています。
――開幕に向けて、期待と不安感はどちらのほうが大きいですか
不安というのはまだないですし、本当に楽しみな面が大きいですね。
――昨季はJFL4位と惜しい位置に居り、1年でJ2に上がる力はあると思うのですがそういった部分はどう捉えていますか
やっぱりチームとしてJ2に上がる力というのは多くあると思うので。そういった力をチーム全員で力を合わせて、力を引き出して。J2昇格というかたちで幕を閉じられるように今シーズン1年間やっていきたいと思います。
――望月選手個人の今シーズンの目標を聞かせてください
まず試合に出るということが目標です。その中で自分の攻撃の強さや、自分の強みを最大限に発揮してチームの勝利に貢献したいという目標があります。
――左SBとしてはFWへクロスを上げる場面もあると思います。FWでは鈴木選手(鈴木孝司)などもいると思うのですが連携面での手応えはありますか
まだ試合数も少ないですしそういった面もまだこれからだなと思うので。そういった面も話して解決していく部分も多いのでコミュニケーションも多く取っていければなと思っています。
――J3でシーズンを戦う中でアピールしていきたいご自身の武器は
攻撃面でも守備面でもそうなのですけど、スピード面での強みがあるので。そういった面で相手を圧倒できるようにするのと、対人のところで人に強く行けることも強みとしているので守備では好き勝手やらせなかったり、攻撃でも個人で突破したりといった面を出していきたいなと思っています。
――最後に今シーズンに向けての意気込みを聞かせてください
チームが今シーズン、J2に昇格できるように自分の全てを注いで、頑張っていきたいなと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 市川祐樹、佐藤凌輔、藤巻晴帆、増山祐史)
今季の目標は『勝利に貢献』
◆望月理人(もちづき・まさと)
1992(平3)年2月19日生まれ。177センチ、70キロ。茨城・鹿島学園出身。前所属・鹿島アントラーズユース。スポーツ科学部4年。実は取材を行った日が誕生日だった望月選手。「そういえばそうですね(笑)」と照れくさそうにしてました。プロとして過ごす今季。これまでよりもより良い一年になることを期待してます!