【連載】『蹴大成』【女子部・第2回】三田一紗代×山田紅葉

ア式蹴球特集

 的確なセーブでチームに安定感をもたらすGK三田一紗代(社3=京都精華女子)と、1年生ながら早くも出場機会をつかんだGK山田紅葉(スポ1=東京・十文字)。切磋琢磨(せっさたくま)し高め合う二人の守護神に、ここまでの戦いを振り返っていただいた。

※この取材は12月18日に行われたものです。

「無失点で優勝したかった」

三田

――関東女子リーグ戦(関東リーグ)は無敗、関東大学女子リーグ戦(関カレ)は全勝で優勝を果たしました。手応えはいかがですか

三田 関東リーグではいろんな選手が出場して、徐々にチームができてきているという実感を得られました。課題も残る大会でしたが、それが関カレにつながったと思います。関カレは無失点で優勝したかったのですが、3失点してしまいました。自分としてもDF陣としても課題がたくさんありますね。ただ、全勝優勝というのは自分が入ってから初めてのことなのでとてもうれしかったです。

山田 正直、チームのレベルにも差があって、GKとしてはほとんどボールが来ないような試合もありました。このチームに初めて入って、みんなが当たり前のように勝つので、ワセダのレベルの高さを感じました。関カレは全日本大学女子選手権(インカレ)優勝へ向けて負けてはいられない大会でした。目標の無失点優勝は達成できませんでしたが、全勝優勝できた事は良かったと思います。大切なのはこれからなので、インカレへ向けて標準を合わせていきたいですね。

――失点数についてのお話が挙がりましたが、関東リーグ8失点、関カレ3失点という結果はGKとしてどう見ていますか

山田 こうやって数字で見ると少なく感じるかもしれませんが、チームがどんなにたくさん点を取って盛り上がっても、1失点してしまうとGKとしては負けというか、敗北感みたいなものを感じます。だから少なくてうれしいとかはないですね。トータルの結果で見るのではなく、一試合一試合の反省をしっかり生かしていきたいです。

――皇后杯予選でもある関東女子選手権では日体大に敗戦を喫しました。出場された山田選手にとってどのような試合でしたか

山田 日体大という相手は個人的に強く意識しているチームです。大会前からもこの試合に標準を合わせていましたが、実際に対戦して、プレーの質の高さというのを感じてしまいましたね。

――三田選手が感じる日体大の印象は

三田 FWに足の速い選手がいますし、得点力があります。クロスからの決定力もワセダより優れていますね。特にMF嶋田千秋選手はパスもさばけて上手い選手なので、しっかり抑えなければいけないという話をしています。

――山田選手が強く意識されている点も、やはり攻撃面でしょうか

山田 以前から試合を見て、パスやクロスの質、得点力が高いと感じていました。足の速い選手がいることで、GKとしては、ディフェンスラインの裏のスペースを連携してケアしていかなければいけないと考えています。他の大学に比べても秀でている面があると思います。

――皇后杯本選では日テレ・ベレーザ(ベレーザ)に0―4で敗れました。出場された三田選手が特に感じた点は何でしょうか

三田 チームとして、ベレーザ戦への持って行き方が昨季と違ったのかもしれません。昨季は皇后杯のINAC神戸戦へ向けて、4年生を中心に強い気持ちで臨んでいきました。今季がそうではなかったという訳ではありませんが、INAC神戸戦に比べて立ち上がりに気の緩みが出て、そこで4失点してしまったように思います。

――日本のトップレベルのチームと戦うワセダの試合を見て感じた点はありますか

山田 自分のチームがなでしこリーグのチームと戦うのは初めてでした。グラウンドに入った地点で雰囲気に圧倒されている感じがしましたが、自分もあの舞台に立ってみたいですね。早い段階で4失点してしまい、自分たちの隙を見逃さないベレーザはさすがだなと感じました。高いレベルの相手と戦うときこそ、自分たちの欠点が顕著に出てしまうということを思い知りましたね。

山田

――お二人にとって、今季特に印象に残っている試合はありますか

三田 関カレの筑波大戦(○2―1)です。筑波大は苦手な相手ですし、徹底的に守備をしてくるチームです。関東リーグでは2分けと勝ち切れない相手だったので絶対に失点してはいけないという気持ちで臨み、チームで勝ち取った勝利なので印象に残っています。あとは皇后杯のベレーザ戦ですね。

山田 関東リーグの尚美学園大戦(○4―0)です。その少し前にいささん(三田)がケガをして、自分に出番が来るかもしれないと思っていました。Aチームで出る初めての公式戦だったので緊張しましたね。自分のプレーとしては最悪でした。ビルドアップやコーチングなどが全く上手くできず、Aチームのメンバーについていけるのかなという不安ばかりで、中途半端なプレーばかりしてしまいました。それ以降、「自分はどうせいささんの次だ」という気持ちで練習していたことを反省しました。本気でAチームの公式戦に出ようという気持ちが足りなかったんですね。自分の心の面での甘さを知った試合でした。

――三田選手は今季、副将として意識された点はありますか

三田 何をしろっていうのはあまり4年生から言われていませんが、個人的に下の学年とのパイプ役になれるようにちょっとは意識していました(笑)。今季はケガが多かったのですが…。

――ディフェンスラインには4年生が多いですが、1年生の山田選手としてコーチングなど難しさはありますか

山田 それは感じましたね。どうしても、DFの選手の考えをうかがってしまう部分がありました。自分が一番後ろから見えているはずなのに、合わせようとしてしまうというか…。これも先ほどの尚美学園大戦で感じたことです。プレー中にそんな事を意識していたら高いレベルでやっていけませんから、いまはしっかり伝えられるように意識しています。

――強豪であるワセダの試合では守備機会が少ない試合もあると思います。強いチームであるがゆえの、GKとして難しさは感じますか

三田 攻撃時間が長い分、集中を切らさないようにしなければいけません。そして数少ないボールが来た時には落ち着いて処理して、自分なりに安定感をもたらしていけるように考えています。

山田 自分も攻めている時こそ集中しなければいけないですし、DF陣に「(集中を)切らすな」ということをコーチングしていくことを意識しています。ワセダに入ってから、カウンターに対して気を張るようになりましたし、特に冬場は体を固めないように気を付けています。

兄の影響で始めたGK

安定したセービングを見せた三田

――お互いの第一印象は

三田 練習試合で十文字高校とやった時に、十文字の監督に「やまだー!!」って怒鳴られていて、その印象しかないです(笑)。あ、山田っていうんだっていう(笑)。

山田 めっちゃミスしてんなっていう(笑)。

三田 あんなに言われるのかわいそうにみたいな(笑)。

山田 まずワセダに対してのイメージなんですけど、部室に入った時に誰も構わないんですよ。十文字の3人で始めて入ったのに好きにしてみたいな。自分たちがここにいることを気にしないで自分たちのことをやっていて、「あ、こういうところなんだ」と。自分で何でも考えないといけないなと。いささんに対しては、キーパー同士で1番最初に絡むんですが、はなさん(GK渡邊花観、スポ2=宮城・常盤木学園)がすごく話しかけてくれて、はなさんと話すようになってから、いささんと話すようになっていったかなと思います。あんまり喋ってくれなかったんですよ。

三田 仕方ないやん、人見知りなんだから(笑)。

山田 はなさんを通して徐々に。そしたら慣れてきましたね(笑)。

――1年間を一緒に過ごして、ピッチ内外それぞれの印象はいかがですか

三田 ピッチ外では一発芸とかめっちゃします。したがりなんですよね。

山田 (笑)。

三田 否定はしないんだ(笑)。したがりなんで皆で振るんですよ。で、監督がウケるみたいな。いつもの流れです。

山田 ボケ役になってていつのまにか。

三田 あと学年長をやっているので、引っ張っていける力はあるのかなと思います。ピッチ内では声がデカい(笑)。声がデカいです。自分が1年生の時に比べてすごく堂々とやっているなと思います。

――山田選手から見た三田選手の印象はいかがですか

山田 オフザピッチでは100パーセントツッコミタイプです。自分は抜けているところがあるので、良くないことをした時に指導してくれるのがいささんです。指導するのって言いにくいこともあると思うし、自分が気付けていないところを言ってくれるので、すごくお世話になってます。ピッチ内は、いささんがスタメンということで目標でもあって、練習中も意識してプレーを見ています。プレースタイルを真似したり(笑)。1番近い目標ですね。

――お二人はなぜサッカーを始めたのですか

三田 お兄ちゃんがやっていたからです。

山田 同じく(笑)。

――その中でキーパーを選んだきっかけは何ですか

三田 最初はじゃんけんでやっていたんですよ。

山田 あーあるある(笑)。

三田 で、小4くらいの時になんか知らないですけど、キーパーやりたいと思ってやり始めました。

山田 自分はお兄ちゃんがやっていたので。元々男子チームに入っていてお兄ちゃんがやっているのに混ざっていたんですけど、お兄ちゃんがキーパーやっているのを見て楽しそうだなと。自然の流れでキーパーやりたいなという気持ちになっていました。

――キーパーをやっている中で、気持ち良いプレーは何ですか

三田 シュート止めた時。絶対入っただろみたいなどや顔へ打ってくる選手のボールを止めた時は超気持ち良いです。

山田 分かる(笑)。超うれしい。

三田 こっちがどや顔みたいな(笑)。

山田 自分は試合中にPKを取られた時にテンション上がりますね。チームとしては全然良くないんですけど。

三田 見せ場だからね。

山田 見せ場だから上がりますね。

――サッカー人生の中で印象に残っている試合は何でしょうか

三田 昨季のINAC神戸戦(●0-1)ですね。これまでにないほど緊張して、アップとかも全然止められなくて、メンバー外の4年生のキーパーの人に「いさ大丈夫?」って言われるぐらい。試合前に泣いたんですよね。で、遅いんですけど失点した時に吹っ切れて、そこからだんだん止められました。

山田 高3の時の皇后杯のワセダ戦と冬の全国大会です。ワセダ戦は自分がワセダに来る理由でもあったので。自分たちが始めて出た皇后杯でワセダと当たって、アップの時点でレベルの高さを感じ、ここに入りたいなと思いました。試合中もプレーで圧倒されました。最初ポンポンと2点くらい取れたんですけど、後半入れ替わってからものすごい勢いできて、得点を入れられて、これが本当の実力なんだと思いました。冬の全国大会は十文字での締めくくりで気持ちが入っていて、全てを懸けたので印象的です。

「ワセダが1番なんだと示したい」(三田)

ルーキーながらコーチングで守備陣を盛り上げた山田

――トーナメント表を見ての率直な印象はいかがでしたか

三田 また仙台大と当たるのかと(笑)。あと毎年あんまり対戦相手変わらないなという印象はありますね。逆の山が気になりました。

山田 あんまり意識してないというか、知らないので。意識しないで1個1個勝たないとなと。

――対戦したい相手や意識している相手はいますか

三田 逆の山ですけど、吉備国際大。なでしこリーグにも入っていて、皇后杯の試合を見ていても上手いなと思ったので、吉備国際大とは戦いたいですね。あと日体大にはリベンジとして絶対に倒さないといけない相手なので、注目しています。

山田 自分も日体大ですかね。リベンジという意味も含めて日体大と戦いたいですね。

――いまのチームの状態はいかがですか

三田 紅白戦でBチームの子たちもメンバーに入ろうという意識を持って、全員が意識高い中でやっていたのかなと思います。個人的に残りわずかなので引き締めて、フィールドメンバーと一緒に練習する時、フィールドメンバーに喝を入れるというかチームを盛り上げようという気持ちがあります。

山田 インカレが近いので調整というのと、いささんが言っていたように、たまに練習中の空気がルーズになると思うことがあって、そういう時はプレーで見せるように意識しています。キーパー陣でそういう話になるので、自分も盛り上げるきっかけになろうしています。

――個人としてのコンディションはいかがですか

三田 悪くはないですね。

山田 そうですね、悪くはない(笑)。

三田 特別良くもない(笑)。

――インカレは今季最後の大会で、4年生ともこれで最後ということになりますが、いかがですか

三田 3年生が1番長く一緒にやってきているのでさみしい部分はありますけど、最後に絶対笑って終わりたいというのがあるので、自分たちが頑張るのは当たり前ですけど4年生には人一倍頑張ってほしいなと思います。

山田 自分はチームメイトのために貢献できたらと常に思っていて、もちろん4年生は最後なので特別ではありますが、チームメイトの1人なのでチーム全体のために力になれたらと思います。

――ワセダにとってインカレ優勝は大きな目標ですが、ここ2年逃しています。インカレ優勝への思いとはどのようなものですか

三田 自分たちが入ってから優勝してないのはちょっとネックというか気になっていて。自分たちが1年生の時はチームのレベルが高く、優勝しても良い実力はあったのに、グループリーグで敗退してしまって悔しい思いをして、昨季は決勝で国立で負けてしまって。近づいてはいるんですけど、目標達成はできていないので、ことし目標を達成しないといけないと。ワセダの使命というか、ワセダが1番なんだと示したいですし、自分たちも感じたいです。

山田 ア女に入ってきて1番最初に、目標はインカレ優勝と皇后杯ベスト8って言われたので、意識して標準を合わせていると最初から思っていて、自分の中でも大事な試合という意識で。新人には4年生のような深い思いというのは分からないかもしれないけど、新人だからこそ勢いというか、そういう面で活力になれたらなと思います。

――では最後にインカレに向けての意気込みをお願いします

三田 もちろん目標は優勝ですが、1試合1試合を大切にしてワセダらしさをみせ、キーパーとしては無失点で優勝したいです。

山田 自分も優勝が目標ですけど、私生活とか準備からやっていかないと足元をすくわれると思うので、確実に抜かりがないように準備して、土台のところからしっかりやっていきたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 佐藤拓郎、下村龍史)

山田(左)と三田

◆三田一紗代(みた・いさよ)(※写真右)

1993年(平5)3月16日生まれ。身長169センチ。京都精華女子高出身、社会科学部3年。相手のどや顔でのシュートを止めて、気持ち良くどや顔し返すという三田選手。インカレでは何度のどや顔を見れるのでしょうか?!

◆山田紅葉(やまだ・くれは)(※写真左)

1994(平6)年11月15日生まれ。165センチ。東京・十文字高出身。スポーツ科学部1年。真剣な表情で決意を語った山田選手。しかし、色紙に一筆お願いすると「上に寄っちゃった…」と苦笑い。大きく空いてしまった余白をなんとか隠そうとするおちゃめな一面も見せてくれました。