全日本大学女子選手権 | ||||
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早大 | 1 | 0-0(前半) 1-0(後半) |
0 | 大体大 |
【得点】 (早大)52分:大山愛笑 (大体大)なし |
ついに早稲田大学ア式蹴球部女子(ア女)の第32回全国大学女子サッカー選手権(インカレ)が開幕した。2年ぶりの大学日本一を目指すア女は、大体大との初戦に臨んだ。相手の好守に苦戦したア女は決定機を得られないまま試合を折り返す。後半に入ると52分、MF大山愛笑(スポ1=日テレ・東京ヴェルディメニーナ)が待望の先制点を挙げる。その後は最終ラインが中心となって堅固な守備を見せ、1-0で見事インカレ2回戦を突破した。
得点を決めた大山(中央右)と浦部
冷たい風が吹き抜けるヨドコウ桜スタジアムで、今シーズンを締めくくる最後の大会が始まった。試合開始直後からペースを握ったア女は7分、大山のパスからMF三谷和華奈副将(スポ4=東京・十文字)が裏に抜けゴールに迫るが、相手ディフェンスにブロックされる。序盤からチャンスをつくるものの初戦ならではの固さから、徐々に拮抗(きっこう)した展開になる。17分には相手のミドルシュートがクロスバーを直撃する危ないシーンも。35分、スピードをもって三谷が右サイドを駆け上がり、ファーサイドに走り込んだMF白井美羽(スポ3=ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ)にクロスを上げるが、惜しくも合わない。前半終了間際にはFW千葉梨々花(スポ1=東京・十文字)のパスからFW﨑岡由真(スポ1=埼玉・浦和レッズレディースユース)がゴールに迫るが、得点にはつなげられず。両者の均衡は保たれたまま試合を折り返した。
指示を出すDF浦部美月副将(スポ4=スフィーダ世田谷FCユース)
浦部、三谷の左右を入れ替え臨んだ後半。その作戦が功を奏し、ついに試合が動く。52分、左サイドから縦に突破した三谷から繰り返しゴールに迫ると、ゴール前の混戦の中、大山がペナルティエリア内から右足を振り抜きゴールを奪った。その後も千葉や大山が果敢にゴールを狙う。75分には昨年のインカレ2回戦以来、365日ぶりの公式戦復帰となるFW生田七彩(スポ2=岡山・作陽)も投入されると、積極的に裏抜けを狙い相手ゴールを脅かす。「この4年生と戦いたいというのと、待っている仲間のためにも毎日リハビリを頑張れた」とこの1年を振り返る生田の出場に、チームも大きな盛り上がりを見せた。ア女の後半のシュート数が前半の3倍になったことからも分かるように、その後は自分たちのペースで試合を進めていく。しかし試合終了間際、最後まで諦めない大体大がコーナーキックを獲得し、手に汗握る展開に。それでもア女が最後まで粘り強く守り切り、1-0で試合は終了。ア女はインカレ3回戦進出を決めた。
ちょうど1年ぶりの公式戦出場となった生田
前半は初戦ならではの緊張感が見られたものの、後半はア女が主導権を握った今試合。「しっかり1点を取って守るところを守り切って、強さを見せてくれた」と後藤史監督(平21教卒=宮城・常盤木学園)が振り返るように、負けたら終わりというプレッシャーもある中、勝利への強い気持ちと、勝負強さを発揮した。次戦の相手は、昨年のインカレで辛酸をなめた日大だ。雪辱を果たし、西が丘の舞台に駒を進めたい。
(記事 渡辺詩乃、写真 髙田凜太郎、永田怜、勝野優子)
スターティングイレブン
早大メンバー | ||||
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ポジション | 背番号 | 名前 | 学部学年 | 前所属 |
GK | 1 | 石田心菜 | スポ3 | 大阪学芸 |
DF | 2 | 夏目歩実 | スポ4 | 宮城・聖和学園 |
DF | ◎3 | 後藤若葉 | スポ4 | 日テレ・メニーナ |
DF | 5 | 田頭花菜 | スポ3 | 東京・十文字 |
DF | 6 | 浦部美月 | スポ4 | スフィーダ世田谷FCユース |
MF | 7 | 笠原綺乃 | スポ4 | 横須賀シーガルズJOY |
MF | 8 | 白井美羽 | スポ3 | ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ |
MF | 9 | 三谷和華奈 | スポ4 | 東京・十文字 |
MF | 30 | 大山愛笑 | スポ1 | 日テレ・東京ヴェルディメニーナ |
FW | 26 | 千葉梨々花 | スポ1 | 東京・十文字 |
→75分 | 14 | 生田七彩 | スポ2 | 岡山・作陽 |
FW | 28 | 﨑岡由真 | スポ1 | 埼玉・浦和レッズレディースユース | ◎=ゲームキャプテン |
コメント
後藤史監督(平21教卒=宮城・常盤木学園)
――試合全体を振り返っていかがでしたか
初戦特有の緊張感含め難しさと、大体大さんの勢いのある縦に速いサッカーに圧を感じながらの初戦らしい試合だったかなと思います。1点をとって守るところを守り切って、強さを見せてくれたなと思います。
――前半はチーム全体も固さが見られたんじゃないかなと思いますが、どのように対処していましたか
私が思っている以上に固くはなかったです。特に1年生の崎岡、千葉、大山、彼女たちが躍動してくれました。4年生は最後への想いがあふれてきて、どちらかというと緊張していたのは上の子たちだなと思います。白井も良かったですよね。下の子たちがアグレッシブにやってくれましたし、途中からは緊張もなくなってきたかなと思います。
――1年生の3人はシーズン中もそうですが、頼りになっていますか
崎岡も千葉も、彼女たちなりに悩みながら経験を積んできてくれました。大山は長期離脱もあって別の悩みだったと思うんですが。その中で千葉はトップで入ってきたのに今インサイドハーフとして、攻撃も守備もすごく良かったですよね。リーグではあそこで出ていないので、チームとしてはプラスになっています。崎岡も前半から抜け出すところはもとから良かったですけど、キープするところをキープしてくれて、すごく良かったと思います。
――後半開始から三谷選手と浦部選手のサイドを入れ替えたと思いますが、どのような意図がありましたか
三谷は(相手に)ケアされている中で、相手の9番の選手がスカウティングと違い三谷をカバーしている上に、後ろの7番も縦へのケアをしていて。それでも三谷は突破できると思っていましたし、突破できていたと思うんです。ただやっぱり短い時間の中でハーフタイムで変えることで、和華奈自身ポジティブなプレーが出るかなと期待して、それに十分に応えてくれました。
――皇后杯が終わってから3週間ほど経ちますが、久しぶりの公式戦の戦いぶりに対する手応えや自信はいかがですか
練習試合で強度の高い相手と組ませていただいて、試合勘みたいなところについては大丈夫かなと思っていました。ただやっぱりインカレやトーナメント特有の緊張感やプレッシャーというのはありましたし、それにもしっかり対応してくれたと思います。もうあとマックスで3試合しかないので、もっと詰めていきたい部分ってありますよね。ゴール前まで行っているけれど、相手も必死に守ってくる中で崩しの部分でどう点をとるのかだったり、ヒヤリとする部分もあったので。あと3試合もっと良くなる部分があると思えば、個人としても最後まで突き詰めてやっていきたいと思います。
――次戦の相手は日大で、関カレの後期対戦時には引き分けた相手になります。どのように戦っていきたいですか
後期の引き分けもそうですが昨年のリベンジでもありますし、日大さんは今年もWEリーグに内定している選手もいて、年々力をつけている強豪のチームだと思っています。驕らずしっかりと自分たちのやるべきことを準備して勝ち切って、東京に戻りたいと思います。
DF夏目歩実(スポ4=宮城・聖和学園)
――試合全体を振り返っていかがですか
今シーズン最後のインカレのいうところで、しかも早稲田にとっては初戦なので、 少しみんな緊張して入ったところもあったと思います。結果的に無失点で勝ち切ることができたというのは、またもう1試合できるということでホッとしていますし、嬉しく思っています。
――後半はセンターバックにポジションが変わりましたが、そこからチームとして安定した印象があります。ご自身の中での手応えはいかがでしょうか
自分はどうだったのかとか、自分が入ったから良くなったという印象は個人的にはなくて。それこそ美月と和華奈のところのサイドの強みとしている部分でのポジションチェンジでもあって、そうやって託された2人が結果としてしっかり示してくれたのは感じていたので、個人的に自分がというよりかは、その2人がしっかり仕事をやりきってくれたな、という風に思っていて、やっぱり心強いなと改めて感じた後半でした。
――後藤若葉主将(スポ4=日テレ・メニーナ)と並んでのセンターバックでしたが、後藤選手と組むのはやはり安心感がありますか
4年目というのもありますし、若葉は途中離脱して今シーズンずっとやっていたかと言われるとそうじゃないのですが、2年生の時に無失点で(インカレを)優勝した年も、若葉と一緒にセンターバックを組んでましたし、 そういったところの積み重ねから、もうなんか「言わずともわかる」みたいなところはあります。結構な信頼を置いて自分もやっているので、すごく隣にいてくれて心強いなと思うセンターバックだと改めて思いました。
――相手の大きな選手に対しての守備はどのようなことを意識していましたか
自分はディフェンスの中でも小さい方ですし、あんなに大きい選手とマッチアップしたことが過去にあるかと言われたら、多分そんなになくて。止まっている中でのマッチアップは個人的にも得意ではないので、プレーの中で次に予測して守備をしたり、自分が対応しやすいように相手と駆け引きをしたりというところで、プレーがくる前に何か優位性を持って取り組めるようにというところは意識してやってました。
――最後に次戦への意気込みをお願いします
日本大学さんとは今年3戦目になるというところで、去年PK戦で負けていて、そこのリベンジというのもありますし、力をもっている相手だというのは身をもって感じているところではあります。しっかりとまた勝ち進んで、次は全員で東京ラウンドで戦えるように、中1日を挟んで全員で戦いにいきたいなと思います。
FW生田七彩(スポ2=岡山・作陽)
――試合全体を振り返って感想をお願いします
自分は最後の15分くらいで、追加点を、というところで出たんですが、後半はチームが攻めている中で、自分がどういうことをできるかと考えた時に、最後まで走るところだったり、相手が疲れているところで自分の裏の抜け出しとかでチャンスを作れれば良いなと思っていました。前に強い相手に対して自分で前を向けなかったりだとか、シュートまで行けないというところが、課題かなと思いました。
――1年ぶりの公式戦ということで、出場した時のご自身の気持ちはいかがでしたか
この1年間は本当に長くて、(サッカーを)やめようかなと思った時もあったんですけど。やっぱりこの4年生と戦いたいというのと、待っている仲間のためにも毎日リハビリを頑張ることができたので、こういう出場というかたちでみんなに見せられて嬉しかったです。
――積極的に裏を狙う姿勢を見せていましたが、裏抜けからの得点は狙っていましたか
自分はスピードが武器なので、裏に抜け出すことによってスペースも空いてきたりすると思いますし、自分の裏抜けで得点のチャンスを作ることができるのであれば、もっとチャレンジしていきたいと思います。
――1年前の戦術やチームの雰囲気とは異なっていると思いますが、チームへの適応に手応えはありますか
今年は4年生が後ろで支えてくれてるというのがとても大きくて、前線で好きなようにプレーして良いというスタンスでいてくれるので、自分の良さを自由に出せるチームだなと思います。
――怪我離脱の期間を振り返って、どのようなことを考えていましたか
当時は(同じケガが)3回目ということもあって、サッカーを続けるかどうかというのも分からない状況で、今年はインカレを目標に頑張ってきたので、コンディションはそんなに上がってない状況ではあるんですけど、チームのためにできることをやっていきたいなと思います。
――次戦への意気込みを聞かせてください
今日の試合はみんなに助けてもらったというか、良い流れで自分が出場できた試合だと思うので、自分の点でチームを勢いづけられるようなプレーをしたいと思います。フォワードとしての役割を全うして、次の東京ラウンドに進んで行きたいなと思います。
MF大山愛笑(スポ1=日テレ・メニーナ)
――試合全体を振り返って率直な感想をお願いします
前半に関しては相手のやりたいことをやられてしまって、その中でも自分たちのサッカーはしないといけなかったですけど、それができない中で、無失点で後半につなげられたのは良かったと思います。後半は自分たちがやるべきことがちゃんと整理できて、自分たちのサッカーをできたからこそ、何回かゴール前に迫られたこともありましたが、思い通りにいったかなという感じです。
――後半具体的に変えた点や、修正できた点はどのようなところでしたか
戦術的にというか、ハーフタイムで気持ち的に一旦落ち着けたところが、自分たちがやりたいパスサッカーをできた要因かなと思います。
――0-0の難しい状況で均衡を破るゴールを決められました。得点シーンを振り返ってください
あの直前に一本シュートを打ったのが相手に当たって、でも由真(崎岡由真、スポ1=浦和レッズレディースユース)がもう1回拾って落としてくれたので、正直コースは狙ってないのですが、思い切り打ったら入りました。
――インカレ初戦ということで難しさや固さもあったと思いますが、そこはどのように感じましたか
自分はそんなに緊張するタイプじゃないのでいつも通りだったのですが、(4年生は)最後の大会という部分もあって、気持ち的にもみんな焦っていますし、負けられないというプレッシャーがちょっと緊張につながってしまったかなと思います。
――その中で1戦目を無事に勝てたというのは大きかったと思いますが
雰囲気も上がりましたし、自分たちがやるべきことをやれば勝てるというのが分かったので、次に生かせると思います。
――ご自身のプレーとしては90分間ボランチでしたが手応えはいかがでしたか
試合の流れとほぼ変わらずに、自分も時間が経つにつれてボールを落ち着かすことができて、攻撃の起点となることはできたと思いますが、勝っていけばいくほど前半からそこはできないといけないなと思うので、前半から主導権を自分のところから握るところが課題だなと思います。
――そんな中でもバイタルエリアのところでフリーになってボールを受けるシーンが多かった思いますが、そこは意識していたところですか
自分の長所として、ゴールだったり攻撃の起点となるパスとかを出すことがあるので、そこでボール受けて味方を使うことは意識してました。
――次戦の日大戦への意気込みをお願いします
チームで優勝という目標を掲げている限り、ここではまだ負けられないですし、若葉さん(後藤若葉主将、スポ4=日テレ・メニーナ)を中心とした4年生を日本一にするためにここまで頑張ってきたので、チーム一丸となって何が何でも勝ちたいと思います。